シグマ 14-24mm F2.8 DG DNレビュー|星景用レンズの決定版と呼ばれる3つの理由

ShaSha編集部

シグマ14-24mm 広角で雄大な景色を撮影.JPG

はじめに

 これまで45mm F2.8 DG DN Contemporary35mm F1.2 DG DN Artをご紹介して、衝撃の発表会で発表された3本のレンズレビューも残すところあと1本になりました。最後の1本、14-24mm F2.8 F2.8 DG DN Artのご紹介です。

 広角側は14mmから始まり、望遠端は24mmまでカバーし、ズーム全域の開放F値が2.8のいわゆる“大三元レンズ”と呼ばれる性能を持つ広角ズームレンズです。

 ワイドに切り取ることができ、開放F値も2.8と明るいこともあり、その特徴から本レンズには“星景写真用レンズの決定版“というキャッチコピーが付けられました。
 しかし、レンズラインナップを見ると、すでに14-24mm F2.8 DG HSMという同じ焦点距離・開放F値の性能があるため、同性能では2本目となるArtレンズになります。

 いくらミラーレスカメラ用とはいえ、なぜシグマは同じスペックを持つレンズを、マウント部分の変更・チューニングしたモデルではなく、新しく開発したのか疑問を抱きました。
 そこで今回は、なぜ本レンズが“星景写真用レンズの決定版”なのか、風景写真も交えながら考えてみましたので、ぜひご覧ください。

14-24mm F2.8 DG HSMよりも軽くなった

箱根の街並みを広角で撮影.JPG

■使用ボディ:α7III
■撮影環境:1/250秒 F2.8 ISO100

 先述した通り、シグマのArtレンズには本レンズと同じ焦点距離・開放F値である14-24mm F2.8 DG HSMというレンズが既に発売されています。こちらのレンズも光学性能、描写力が高いレンズですから、風景はもちろん、星の撮影用レンズとしても非常に人気なレンズです。

 同スペックを持つレンズですが、違いは本レンズが同時に発表された2本のレンズと同様に35mm判フルサイズ(DG)センサーに対応した、ミラーレスカメラ専用に設計(DN)されたレンズであることです。
 大きなメリットはやはり大幅な軽量化に成功したことでしょう。

 本レンズの重量は約795gなのに対して、14-24mm F2.8 DG HSMは重量が約1,150gですから、およそ355gも軽くなりました。
 355gほどの浮きがあれば予備バッテリーや、SIGMA 45mm F2.8 DG DNなど軽い単焦点レンズを持っていけば、安心感や撮影の幅を広げる準備もしやすいかと思います。

 軽量になったことで持ち運びが楽になりますし、本体が軽いミラーレスカメラとのバランスも良くなったため撮影がしやすく感じました。
 さらに「重量がネックで持っていくか迷う」ということも減るかと思います。例えば旅行の際に持ち出せば、旅行先での風景やスナップもより広く撮影でき、広角側が足りずに撮れなかったという撮影ロスが減ります。

 また、風景撮影では三脚、星の撮影では三脚だけでなく赤道儀を使用することがありますが、それらの機材は、載せられる重量が決まっています。
 その中でも星の撮影では、カメラを赤道儀に載せ、その2つを三脚に乗せるため重量が増えます。重量が増えると安定性が心配になりますし、レンズ側が重いと重力で徐々に下がってしまうことも考えられます。

 長時間露光や少しのズレも現れやすい星景写真では特に気を付けたいところですが、そのリスクも軽減できると思いました。

超広角14mmの世界

夕焼け空と湖を14mmで撮影.jpg

■使用ボディ:α7III
■撮影環境:1/60秒 F4 ISO250

 本レンズの広角側は14mmで、超広角と言える焦点距離です。
 目の前に広がる雄大な風景や大きな建物などを見つけて撮影する時、標準ズームレンズでは広角側の画角が足りず、切れてしまったという経験はありませんか?

 それも、東京タワーや東京スカイツリーなど予め検討がつく被写体は良いのですが、天気や光の向き、流れ星など刻々と変わる自然は調べても綺麗に撮れる確約はありません。

 たまたま出逢った一瞬のシャッターチャンスを、逃すのはもちろん、切れて撮れなかったということは避けたいものです。できるだけ広く撮れればトリミングすることもできるので、広角レンズがあるだけで安心するケースがあります。

 比較として、同じ位置から望遠端の24mmでも撮影してみました。2枚の作例写真を入れたのですが、上の写真が14mmで下の写真が24mmで撮影したものです。

■14mmで撮影
14mm側で撮影 広く撮れる.JPG

■24mmで撮影
 24mmで撮影し、やや狭い.JPG

〔上作例撮影データ〕
■使用ボディ:α7III
■撮影環境:1/200秒 F5 ISO200

〔下作例撮影データ〕
■使用ボディ:α7III
■撮影環境:1/60秒 F4 ISO250

 焦点距離24mmは標準ズームレンズの広角側で採用されているものが多いので、イメージしやすい方も多いかと思います。
 対して14mmの写真を見てみると、24mmと比べて非常に広い範囲が写っていることが一目で分かります。また、ただ広い範囲が写っているだけではなく、超広角レンズ独特のパースが若干ついたおかげでよりダイナミックな写真に感じます。

星景写真にピッタリな設計

リア側にフィルターホルダーがついている.JPG
 既に発売されている14-24mm F2.8 DG HSMもそうですが、広い範囲を撮影できる14mmから24mmの焦点距離は、星景写真の撮影で非常に使用しやすい焦点距離の一つといえるでしょう。

 というのも星と風景を一緒に撮影することをまとめて星景写真と呼びますが、広い場所で風景も入れて撮影する時に広角側が足りなければ、一緒に撮ることができない場合もあります。
 反対に、広角過ぎて街灯や車のライトなどが多く写りこんでしまうと、星が写らなくなることや、露出のコントロールが難しくなるためできるだけ避けたい場面もあります。

 これらの広角レンズあるあるは、単焦点レンズで発生することが多く、本レンズのようなズームレンズはこの問題も解決しやすいです。
 広角側の14mmを活かして広く、ダイナミックに写すこともできますし、14mmでは写りこんでしまう場合は、ズームして写らないように調整することもできるので、作品のバリエーションや幅も広がりやすいと感じました。

 前玉が出ている.JPG
 星の撮影では、大きく明るい星を強調するためにソフトフィルターを使用するという方も多いかと思います。
 しかし、前玉が半球状に出ている超広角レンズでは、そのままフィルターを装着することができず、角形フィルターが必要で準備物の増加や設置の手間がありますよね。

 シグマではその問題を解決するために、14-24mm F2.8 DG HSM Art(キヤノン用)14mm F1.8 DG HSM Art(キヤノン用)の2製品限定になってしまいますが、レンズの後玉(リア)側にシートフィルターが装着できるリアフィルターホルダー(FHR-11)を付ける有料サービスがあります。
 
 本レンズは、初めからシートフィルターホルダーが後玉(リア)側に搭載されています。このおかげでソフトフィルターだけでなく、NDフィルターを付けられるようになります。ロック機構もついているため脱落を防止でき安心です。
 初めから搭載されているので、シートフィルターさえ買ってしまえばすぐに撮影できます。またシートタイプのフィルターなので、通常のフィルターと比べて重量や荷物を減らせられることも嬉しいですね。

撮影後記

湖畔のボートの作例.JPG
トンネル構図で撮影.JPG湖と木を撮影(反射).jpg
空まで広く写る.JPG

 毎年行われるカメラの祭典「CP+」のシグマブースでは、山木社長が新製品の発表やバージョンアップの情報を伝える時間を設けられていることがあり、話の面白さからいつも大盛況なブースです。(筆者も大好きです)

 CP+2017では当時の新製品で“星景写真に使える革命的大口径超広角レンズ”と銘打たれた14mm F1.8 DG HSM Artを紹介する場面があり、内容はレンズの設計者が14mmの焦点距離は天体の撮影にピッタリな理由を説明しています。(もちろん風景写真にも最適!と仰っていました)
 翌CP+2018では14-24mm F2.8 DG HSMを紹介していますが、星についても触れています。もちろん本レンズの発表会でも星について触れています。

 星の撮影は解像感や収差が顕著に表れるので、非常に厳しい被写体ですが、3年連続でプレゼンテーションに入れていることから、私はシグマが星の撮影に対して強いこだわりと、高品質の自信を持っている印象を抱いています。

 本レンズもきっと、天体撮影が好きな開発設計者が撮影中に「もっと軽量だったら・・」や「フィルターが付けられたら・・」という気持ちから新開発されたのかな?と思うほど、随所にこだわりを感じました。

 “星景写真用レンズの決定版”と銘打たれただけあって星景写真はもちろんですが、風景の撮影でも四隅までバッチリ解像した美しい写真が撮れます。
 標準レンズ・望遠レンズでは表現が難しいダイナミックな表現ができる超広角レンズの世界、ぜひ踏み込んでみてください。

関連記事

人気記事