SAMYANG AF 45mm F1.8 FE レビュー|小型軽量!大口径標準レンズの新定番

齋藤千歳

SAMYANG AF 45mm F1.8 FEで撮影したひまわりの画像

最新のミラーレス専用設計の標準レンズで、質量わずか約162g

SAMYANG AF 45mm F1.8 FEで撮影したひまわりの画像

■SAMYANG AF 45mm F1.8 FE/Sony α7 II
■絞り優先AE(F5.6、1/500秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

 多くの35mm判フルサイズのミラーレス一眼カメラは、カメラ本体は小さくなったものの、カメラの大きなマウントや高い解像力などを引き出せるレンズを設計した結果、一眼レフ時代よりも大きなレンズになるのが一般的になっています。

 そんな中、今回ご紹介するSAMYANG AF 45mm F1.8 FEは、最新の35mm判フルサイズのミラーレス一眼ソニー Eマウントに対応しながら、大きさは約Φ61.8mm×56.1mmで、質量は約162gと小型軽量の大口径標準レンズです。
 光学性能を追求するとレンズは基本的に大きく、重くなり、その結果として材料費がアップし、高くなるはずです。

 私としては、光学性能も求めていますが、それと同時にバランス面も考慮した小さくて軽いレンズがよいと考えています。絶対ではないですが、小さくて軽いレンズは価格も安くなることが多く、大きくて重いレンズよりも有利な点が多いのです。

19世紀から続くダブルガウスからの脱却

家屋の作例画像

■SAMYANG AF 45mm F1.8 FE/Sony α7 II
■絞り優先AE(F1.8、1/50秒)/ISO 640/露出補正:−0.3EV
■WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 一眼レフ時代のもっとも有名な標準単焦点レンズのレンズ構成といえば、ダブルガウス型(単にガウス型と呼ぶこともあります)です。最初のダブルガウス型はなんと1888年(19世紀)に製作され、絞りを挟んでほぼ対象形にレンズが配置されるのが最大の特徴になっています。実はダブルガウス型は、ゾナー型に比べて、コマ収差を抑えるのが難しく、絞るとシャープですが、開放付近からシャープに設計するのが、難しいレンズ構成とされていました。

 しかし、近年レンズ硝材やレンズコーティングの進化により、ダブルガウス型はレンズ構成からの弱点を克服し、一眼レフ時代の多くの標準レンズが採用するレンズ構成となったのです。

 実際に解像力のチャートなどを撮影すると、一眼レフ時代に設計されたダブルガウス型のレンズは、絞り開放時の描写がふんわりとやわらかくなるものが多い傾向といえます。そのため、レンズ性能を追求した最新のミラーレス一眼向け35mm判フルサイズ用標準単焦点レンズでは、SAMYANG AF 45mm F1.8 FEのようにダブルガウス型とは異なる、新たなレンズ構成を採用し、シャープネスに描写ができるよう設計されていると考えています。

絞り開放からはっきりとした高いシャープネス

高原の作例画像

■SAMYANG AF 45mm F1.8 FE/Sony α7 II
■絞り優先AE(F1.8、1/5,000秒)/ISO 100
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

 電子書籍『SAMYANG AF 45mm F1.8 FE 機種別レンズラボ』にも掲載した各種実写チャートの結果を元に、SAMYANG AF 45mm F1.8 FEの画質について解説していきます。
 まず解像力ですが、前述したようにダブルガウス型を採用する一眼レフ時代の標準単焦点レンズは、絞り開放付近で画像の周辺部分はもちろん、中央部分においても紗のかかったようなフワッとしてやわらかな描写になり、シャープネスが低下する傾向があります。原因は、球面収差やダブルガウス型の弱点であるコマ収差の補正による影響などと言われています。

 これに対してSAMYANG AF 45mm F1.8 FEは、画面中央部分については絞り開放からシャープです。周辺部分についても、中央部分には劣るものの、F2.8まで絞ると画面全体にシャープネスが広がります。一番良い状態が見受けられるのはF8.0からF11程度です。ただし、F16以降は小絞りぼけによる解像力の低下に注意してください。

 また開放付近で若干の収差は観察されるものの、歪曲はほぼ観察されない優秀な結果です。SAMYANG AF 45mm F1.8 FEは絞り開放からクリアでシャープな描写で、絞るとより画面全体にシャープになる35mm判ミラーレス一眼向けの最新レンズと同傾向の特徴を備えています。

やや硬めのぼけをどうとらえるかがキモ

掛け時計の作例画像
■SAMYANG AF 45mm F1.8 FE/Sony α7 II
■絞り優先AE(F1.8、1/50秒)/ISO 500/露出補正:−0.3EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

 サムヤンの小さくて軽くて安いAFレンズシリーズとして、SAMYANG AF 45mm F1.8 FEよりも先に発売されているSAMYANG AF35mmF2.8FEとSAMYANG AF24mm F2.8 FEでは、共に100gを切る超軽量広角レンズということもあってか、開放F値が2.8と暗めですが周辺光量落ちが気になる傾向がありました。
 これに対してSAMYANG AF 45mm F1.8 FEはシリーズの中でも開放F値が明るく、周辺光量落ちはさほどきになりませんでした。

 一方、少し気になったのが、ぼけのディスクチャートです。中央部分のぼけは絞り羽根の形状にも気が配られており真円に近いのですが、周辺部分については口径食による変形が見受けられました。また、ぼけの円のフチ付きや同心円状のシワも目立つ傾向で、ぼけはやや硬い傾向といえます。

軽やかに、シャープに気持ちよく撮影できる常用レンズ

窓の作例画像

■SAMYANG AF 45mm F1.8 FE/Sony α7R III
■絞り優先AE(F1.8、1/125秒)/ISO 100/露出補正:−0.7EV
■WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 同じサムヤンで見れば、大きさ・重さよりもぼけ描写を重視するなら、SAMYANG AF 50mm F1.4 FE、SAMYANG XP 50mm F1.2を使いたいというのが本音です。
 ですが、同じ50mmの単焦点でありながら、質量約1,200gで大きさ約Φ93mm×117.4のSAMYANG XP 50mm F1.2に至っては10万円を超える価格も含め、まったく商品コンセプトの違うレンズといえます。(商品コンセプトの明確に違う同焦点距離のレンズがそろうのもサムヤンのレンズメーカーとしてのおもしろさともいえますが…。)

 絞り開放からクリアでシャープ、しかも小さくて、軽くて、安いSAMYANG AF 45mm F1.8 FEは、ミラーレス一眼のなかでも軽くて小さいαシリーズに普段から装着して常用レンズとして使うにはぴったりのレンズだと思います。サムヤンのAFも以前よりはかなり気持ちよく、きびきびと動くようになった印象ですし、小型軽量な35mm判フルサイズのミラーレス一眼を叶えてくれる選択肢が、またひとつ増えたという意味でも素晴らしい標準単焦点レンズです。

 贅沢をいってもいいのなら、最短撮影距離45cmで最大撮影倍率が0.12倍というスペックが、もう少し寄れるものであったら、私にとってほぼ完璧な常用の標準レンズと言えるほどの仕上がりになっています。

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