LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM レビュー|35mm判フルサイズ広角ズームレンズの実力は?

齋藤千歳

LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMで撮影した倉庫の画像

チャレンジングな35mm判フルサイズの世界最広角ズームレンズ

LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMで撮影した倉庫の画像

■LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM/Sony α7R III/10mm
■絞り優先AE(F8.0、1/160秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV
■WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 今回取り上げるのは、LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMです。2019年9月現在、魚眼ではない35mm判フルサイズに対応する世界最広角のズームレンズとなっています。AFを搭載しないマニュアルフォーカスレンズですが、ソニー Eマウントとニコン Zマウントに対応するモデルが用意されています。

 35mm判フルサイズ対応の世界最広角ズームレンズというだけでも、かなり攻めの姿勢のレンズといえます。しかし、それ以外にもLAOWAのレンズブランドとして、チャレンジングな思想が満載されたLAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMを詳細にみていきましょう。

35mm判フルサイズ対応の10mmはわずか3本しかない

海と空を写した画像

■LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM/Sony α7R III/10mm
■絞り優先AE(F5.6、1/100秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV
■WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 マイクロフォーサーズやAPS-C専用、そして魚眼レンズズームなどのレンズがあるため、最近の広角単焦点やズームレンズは、広角端が10mmを切っているものも珍しくありません。
 しかし、35mm判フルサイズ対応で魚眼ではないレンズで10mmという焦点距離を達成しているのは、2019年9月現在でSAMYANG XP10mm F3.5とVoigtländer HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical、LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMの3本のみとなっています。
 この中で唯一のズームレンズがLAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMです。単焦点レンズでも困難な10mmをズームレンズで達成した世界最広角ズームレンズになります。

 LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMのズームレンズとしてのライバルを考えるのであれば、対応マウントが異なりますが、Canon EF11-24mm F4L USMが近い焦点距離のズームレンズとなります。
 ただし、Canon EF11-24mm F4L USMは高価格なレンズで、質量は約1,180g。500gを切る軽量設計で10万円前後のLAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMとは、焦点距離は重なるものの同カテゴリーのレンズとはいえないでしょう。

クォーターマクロでフィルターも使用可能な独自設計

動物の骨を写した画像

■LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM/Sony α7R III/10mm
■絞り優先AE(F8.0、1/250秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

 LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMは世界最広角のズームレンズでありながら、レンズサイズは長さ90.9mmとコンパクトで、質量は約496gとなっています。超々広角ズームとは思えない軽量コンパクトで、普段からカメラに装着していても取り回しのよいサイズになっています。
 さらに、最短撮影距離はわずか約15cmで、望遠端の18mmでは最大撮影倍率が0.25倍とクォーターマクロを実現しています。

▼レンズ後玉の後にリアフィルターが装着可能なレンズ設計になっています。
LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM製品画像

 レンズ前玉が半球状に出っ張ってしまいがちな超広角レンズでは、レンズ先端にねじ込み式の丸型フィルターが装着できないという問題が発生します。本レンズも同様にフロントには装着できません。
 この問題に対してLAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMは、レンズ後玉の後に37mm径のリアフィルターが装着できる独自の設計で対応しています。標準で同梱されたリアフィルターを装着した状態で光学設計的に最適化されているので、常にフィルターを装着した状態がデフォルトです。37mm径でフィルター枠:5.5mm以下、フィルターガラス:1.1mmの各種フィルターが使用できます。

 画角が130度から102度の超広角ズームで500gを切る小型軽量でクォーターマクロを実現し、丸型フィルターも使用可能と非常によくできたレンズといえます。

LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMの光学性能

差し込む光の風景画像

■LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM/Sony α7R III/10mm
■絞り優先AE(F8.0、1/320秒)/ISO 100/露出補正:−2.0EV
■WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 小さくて軽くて、近接撮影も可能なLAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMですが、レンズ光学性能的には、これらの要素は光学性能の制約となってきます。
 実際に解像力やぼけディスク、最短撮影距離、周辺光量落ちのチャートを撮影して、私が制作した電子書籍『LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM レンズデータベース』にも掲載した各チャートの結果を元に、本レンズの光学性能を詳細に解説していきます。

 広角端の解像力は、画面中央部においては絞り開放のF4.5から問題を感じることはありません。ただし、画面周辺部分については、さすがに10mmの開放では厳しい部分が見受けられます。個人的にはF8.0前後が画面全体の解像力のピークではないかと考えます。また、四隅周辺には収差が見受けられます。歪曲の発生は陣笠型です。一方、望遠端の18mmでは開放がF5.6となることもあり、中央部の解像力に不満を感じることはありません。周辺部も広角端の10mmに比べると解像力が安定しF11程度で解像力のピークとなります。歪曲は広角端が陣笠型なのに対して望遠端では糸巻き型となります。広角側ではF22、望遠側ではF32で小絞りぼけによる解像力低下が見受けられるので注意して撮影しましょう。

 LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMはカメラ本体との各種情報をやりとりする電子接点をもたないレンズなので、周辺光量落ちなどをカメラボディ側でデジタル的に補正することができません。そのうえ35mm判フルサイズ対応の10mmという超広角なので、ある程度の周辺光量落ちが発生します。必要なシーンではRAW現像時などに後処理で対応がオススメです。また、望遠端の18mmでは広角端の10mmに比べると周辺光量落ちはかなり改善されます。気になるシーンでは後処理で補正すればよい程度といえるでしょう。

10mmという超々広角を手軽に使える唯一無二の魅惑のズーム

海と列車を写した画像

■LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOM/Sony α7R III/10mm
■絞り優先AE(F8.0、1/100秒)/ISO 100/露出補正:−0.3EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

 広角端10mm、望遠端18mmの超広角ズームのぼけに期待する人がどれだけいるか? と思ってしまいますが、LAOWA 10-18mm F4.5-5.6 FE ZOOMは最短撮影距離が約15cmでクォーターマクロでの撮影が可能なため撮影シーンによっては、それなりにぼけが発生します。そのためか、望遠の18mm側の開放ではぼけの形も絞り羽根の形そのままの五角形ではなく、ほぼ円形になり、ぼけにも気を使った設計となっているようです。

 レンズ長は10cm以下、500gを切る携帯性の高さ、そしてなによりも広角端10mmが生み出す超々広角の迫力とズームの利便性は唯一無二の魅力です。
 適当に撮影して思ったような結果を得るのは難しいレンズですが、故にレンズの特徴をしっかり把握して撮影し、レンズの長所を引き出してやる上級者ならではのテクニックと、その手間をいとわないユーザーにとっては、他のレンズでは得られない表現の得られる魅惑のズームレンズになっています。
 個人的にも、小さく軽いのでレンズバッグにいつも入れておきたい1本です。

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