タムロンSP35mm F/1.4 Di USDレビュー|タムロン史上、最高傑作のレンズ!これは凄い。

花を撮影した写真.JPG

“タムロン史上、最高傑作”のレンズ


ベンチを撮影した写真.JPG
 今回はタムロンから発売されている“SP35mm F/1.4 Di USD for DSLR”のレビューです。本レンズは35mmフルサイズセンサーに対応しており、2019年6月に発売された単焦点レンズです。
 ここ最近タムロンからは、ミラーレスカメラ専用設計のレンズを多く発売しており、特にソニーEマウント専用では28-75mm F/2.8 Di III RXDや、17-28mm F/2.8 Di III RXDが品薄になるほどで、大人気レンズとなりました。

 それに対して本レンズは、一眼レフカメラ専用となっており、キヤノン用とニコン用の2種類が用意されています。
タムロンの商品ページを見てみると、“タムロン史上、最高傑作”と銘打たれており、本レンズへのこだわりを感じます。
 35mmの単焦点レンズといえば、各メーカーを代表するクラスのレンズが揃っているだけに期待値は十分。今回は描写性能を確かめるべく、ニコン一眼レフカメラの高画素モデルD850を使用しましたので、ぜひご覧ください。

タムロンが目指した究極のレンズとは?


靴を撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/2500秒 F1.4 ISO1600

 タムロンレンズといえば、柔らかなボケ味を含め、描写力があることはもちろんですが、なによりも軽量を謳っていることが特徴だと思います。
 それは上記に挙げた、ミラーレスカメラ専用設計レンズの2本もそうですが、「写真を撮るとき、手元になければ意味がない」という思想からも読み取れます。(引用:公式HP

 一方で、軽量さや取り回しよりも、描写力に注力したレンズも設計しています。それはSPシリーズと名付けられ、製品名の頭部分には“SP”と付けられています。
 本レンズの製品名にもついていますが、そのSPシリーズの中でも本製品は「“点が点として写る”超高画質」を目指した究極のレンズとして、あらゆる収差を抑えるための設計で作られました。

 収差と言ってもたくさんあります。例えば、風景撮影やポートレートでは、玉ボケの内側が年輪のようになってしまうことや、輪郭に出る色にじみ。逆光撮影時などで、ハイライト部分とシャドー部分の境目に起こるフリンジが気になる方が多いと思います。
 その他では、星景や夜景の撮影時に、点光源の形がまるで鳥の翼を広げた時の形のように歪んでしまうサジタルコマフレアなどが良く知られています。

 単焦点レンズであれば、焦点距離を固定することができるため、それらの収差を徹底的に解消しやすく、あらゆるシーンの撮影でも収差の少ない写真が撮れることでしょう。

絞り開放から非常にシャープ


酒樽を斜めから撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/5000秒 F1.4 ISO800

 まずは絞り開放時の描写力についてですが、本レンズは絞り開放でもピント面が非常にシャープです。
 作例は神社に奉納されている酒樽を撮影した写真ですが、右側の酒樽にピントを合わせて撮影しています。
 ピントチェックのために拡大をしたとき、文字だけなく、布の繊維や織り込まれている綱の質感までしっかりと描写していることに驚きました。

 ピント面以外では、右隅の樽を見ると分かりやすいのですが、繊維の質感が失われることなく、解像しています。
 特に風景撮影や星景写真では、四隅まで植物や建物を入れて撮影することもあるため、周辺部までの描写力は気になるところです。周辺部までしっかり解像しているだけで、写真自体がキリっと締まり、全体の印象が変わることもあるからです。
 開放でもこれだけ描写力の高いレンズですから、開放で使用することが多い星景写真の撮影でも大活躍することでしょう。


手水舎をアップで撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/80秒 F1.4 ISO200

 次の作例は絞り開放で手水舎を撮影したものです。柄杓の金属部分と、柄の付け根のあたりにピント位置を合わせて撮影しました。

 柄杓のピント位置を見てもシャープで描写力が高いことが分かるのですが、特に柄杓が置かれている竹の部分を見てみると、ピント面が鮮明でシャープなことがより分かります。濡れている部分と、乾いている部分の質感の違いはもちろん、竹に付いた水滴を見ると反射した光まで鮮明に描写しています。

 それにしても、柄の部分の描写力が非常に良く、実際に手に取れそうなほど立体的だと思いました。

伝統を受け継いだボケ味


廊下を撮影した写真.jpg
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/320秒 F1.4 ISO1000

 タムロンで“伝統的なレンズ”と言えば、私は90mmのマクロレンズを思い浮かべます。開放F値が2.8で、本レンズと比較すると開放F値は低いものの、中望遠ならではの大きなボケに加えて、とろけるような美しいボケ味を持っています。もちろんピント面はシャープなので、マクロ撮影をされる方だけでなく、ポートレート撮影でも人気なレンズの一つです。

 本レンズはF1.4の開放F値であることから、大きくぼかすこともできるのですが、なによりも90mmマクロレンズのように、ピント面から外れるとなだらかにぼけていくボケ味が魅力的に感じました。

 例えばポートレートでは、背景ボケや前ボケを入れるために、大口径レンズを使用することが多いです。しかしF1.4レンズクラスだと、近い目にピントを合わせると、もう一方の目や鼻などがぼけてしまうこともあります。そうするとどこか不自然な写りに感じてしまいます。
 ピントを合わせた目の位置からなだらかにぼけることで、より自然な描写に仕上げやすくなることから、本レンズはポートレート撮影にもピッタリなレンズと言えます。

 また、実際に目で見ているようなボケ味に近いことから、その場にいるような臨場感も演出しやすく、旅行に持っていくレンズとしても良いと思います。

デジタル一眼レフカメラ専用設計


木を撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/4000秒 F1.4 ISO1250


 本レンズは名前に“for DSLR”とあるように、一眼レフカメラ専用に設計されたレンズです。
 一眼レフカメラはAFスピードが速く、精度が高いとはいえ、ファインダーを使用した撮影では、多くのミラーレスカメラに搭載されている瞳AFや、画面四隅に一瞬でAFポイントを移動させる機能がありません。
 ライブビューモードを使用すれば、それらの機能を使うことができる機種もあるのですが、大きなメリットであるファインダーを使用した撮影ができなくなってしまいます。

 本レンズの焦点距離は35mmなので、動物や乗り物などの撮影で使用するシーンは少ないかもしれませんが、ピント位置を変えたときのAFスピードが気になるところです。

 ポートレートの撮影を例に挙げると、止まっている被写体だけ撮影するだけでなく、躍動感を出すため、被写体に動いてもらって撮影する場合もあります。
 本レンズでは設計の段階で無理なくAF駆動システムを入れたことで、速いAFが可能で、スムーズにピントが合います。

財布を撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/80秒 F9 ISO6400

 光学ファインダーを使用する一眼レフカメラだからこそ嬉しいと思ったのは、ピントリングにアソビが少なく、MF時でもピント位置の確認と微調整がしやすいことです。

 というのも光学ファインダー使用時では、ミラーレスカメラに搭載されていることが多いピーキング機能が使えません。F1.4の被写界深度は浅いため、少しのズレでもピントが外れてしまいます。
 特に光学ファインダーは確認と調整が、電子ビューファインダーよりも難しいため嬉しい仕様だと感じました。

逆光耐性は非常に高い


逆光で木を撮影した写真.JPG
■使用ボディ:ニコン D850
■撮影環境:1/30秒 F9 ISO100

 逆光耐性は非常に高いものがあり、風景やポートレートなど逆光の撮影でも問題なく撮影できると思います。あまりにも逆光耐性が高いので、どんどん取り入れても良いのですが、撮影時は光学ファインダーを覗いて、直接太陽を見ないように気を付けてくださいね。

撮影後記


建物の紋章を撮影した写真.JPG
格子と木を撮影した写真.JPG
酒樽を明るめに撮影した写真.JPG

 冒頭でもお伝えした通り、最近のタムロンレンズはミラーレスカメラに合った、軽量・コンパクトに設計されたレンズが大人気なことから、本レンズもミラーレスカメラ専用に設計されてもおかしくありません。
 しかし、ミラーレスカメラ用を併売せず、一眼レフカメラ用のみ発売したのはミラーレスカメラだけでなく、一眼レフカメラでも最新の技術を使ってほしいというタムロンからのメッセージだと感じました。

 一眼レフカメラで撮影すると、光学ファインダーで見ている景色と撮影後モニターに映し出される写真が違うことで感動することがあります。それは、目の前に広がる光景とファインダーの中で見えている景色が一緒でも、映し出される写真が綺麗で「キレイな写真が撮れた」と思うからでしょうか。

 焦点距離の制限があるので、撮影位置が決められているスポーツ撮影や、近づくと逃げてしまう動物の撮影では使うのが難しいレンズです。
しかし、焦点距離に縛りの少ない風景やポートレート、収差の少ない描写力が求められる星景写真の撮影では、より綺麗な写真を描き出してくれるレンズです。
 キヤノンかニコンの一眼レフカメラを使用している方はぜひ手に取って、描写力を実際に見てみてください。(それにしても非常に良いレンズなので、ミラーレスカメラ用もぜひ発売してほしいです)