LAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dレビュー|解像力チャートを3度見直したほどの高い解像力を示す超広角

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例

明るく、小さく、軽い


LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■絞り優先AE(F2.8、1/1,250秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV
■WB:日陰/クリエイティブスタイル:ビビッド/オートHDR


 今回、紹介するLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dは、中国安徽省合肥に拠点を置く中国新興系メーカーVenus Optics(安徽長庚光学)が製造する12mmで開放F値2.8という明るい超広角レンズです。35mm判フルサイズフォーマット対応でキヤノン EF、ソニー AとE、ニコン F、ペンタックス Kマウントに対応するモデルがそれぞれ用意されています。

 2018年1月時点でのVenus Opticsの調べでは、開放F2.8での広角レンズであるにも関わらず、大きさは約Φ74.8×82.2mm、レンズ質量は約610g(大きさ、質量ともにレンズマウントにより変動あり)と軽量でコンパクトです。この軽くて小さくて明るいレンズは、特許取得済みの10群16枚のレンズ構成で特殊低分散レンズ3枚、非球面レンズ2枚を含む豪華なものになっています。

 さらにレンズ名称にZERO-Dと明記されているように、超広角レンズでありながらディストーション(Distortion:歪曲)が極めて小さくなるように設計されているそうです。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例2
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■絞り優先AE(F8.0、1/400秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド


 明るくてコンパクトで軽量、しかも歪曲が少ない超広角レンズというと自然風景の撮影はもちろん、星空の撮影や建築写真など、さまざまな分野の撮影で多くの方が期待するレンズといえます。

 また、レンズの造りも非常に良くできています。長く使うレンズになることを考慮してか、耐久性を重視したというLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dは金属製のレンズ筐体を採用しています。同じような質感の金属製のピントリングや絞りリングのスムーズでなめらかな動き、適度な操作トルクも非常に気持ちのよいレンズです。撮影することが楽しくなるレンズといえるでしょう。

 良いこと尽くめのLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dですが、弱点が無いわけではありません。そのひとつは、カメラとの情報をやりとりするための電子接点をもたないフルマニュアルレンズであることです。ピント合わせはもちろん、開放測光も行われません。そのため、一眼レフでは絞り込んで撮影すると光学ファインダーが暗くなるという現象が起きます。

 また、最近では一般的なカメラ本体とデータをやりとりしてリアルタイムで画像を補正するといったことも行えないわけです。ある意味、レンズ自身の光学性能だけが頼りのレンズともいえます。そして、最大のハードルが2020年1月の原稿執筆時点で、実勢価格が約10万円を超えるかなりいいお値段のレンズであることです。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例3
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■絞り優先AE(F2.8、1/13秒)/ISO 100/露出補正:−1.0EV
■WB:電球/クリエイティブスタイル:スタンダード
撮影協力:サケのふるさと 千歳水族館

結果がよすぎて不安になるほどの高い解像力


 私の中では、「安いのに、結構いい」イメージに変わりつつある中国系カメラ用品ですが、それでも中国新興系メーカーのフルマニュアルレンズに10万円を越える投資をするのはかなり勇気がいるかと思います。ラオワは創始者が日系の大手光学メーカーで20年に渡って光学設計を行っていたためか、基本的に光学性能の高いレンズが多いブランドですが、それでも躊躇する方も多いのではないでしょうか。

 しかし、それでも私がLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dをおすすめするわけを「解像力」「ぼけディスク」「周辺光量落ち」「最短撮影距離と最大撮影倍率」の実写チャートを掲載して制作した『LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D レンズデータベース』の結果を元に解説していきます。実写のチャートの撮影にはLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dのソニー Eマウント用をSony α7R IIIを使用しています。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D実写チャート


 LAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dの解像力チャートの撮影は、実は電子書籍の制作時に3回行っています。理由は、結果が悪かったからではなく、良すぎたためです。超広角の12mmで周辺部分までこんなにしっかり解像するのは、私が撮影の設定を間違ったかと思い不安になりました。結局3回も撮影を行いましたが、素晴らしい結果でした。

 その解像力チャートの結果を電子書籍から一部抜粋して掲載しましたが、絞り開放のF2.8から中央部分はもちろん、周辺部分までしっかりと解像しているかがわかります。10mm台前半の35mm判フルサイズ対応レンズで周辺部分が、ここまで写るのはちょっと異常な解像力といえます。また、絞るほどに周辺部分のコントラストがアップし、F8.0前後が中央部分、周辺部分とも解像力のピークになる傾向です。

 とはいえ、絞り開放のF2.8から周辺部まで解像力の高いレンズなので、開放F2.8からF11まで、絞り過ぎによる解像力低下が始まるF16付近までは好きな絞りで撮影できる優秀なレンズです。周辺部分は周辺光量落ちの影響が強いのと、開放付近では各種色収差が観察されますが解像力に影響は与えない傾向になっています。解像力チャートで歪曲(ディストーション)も観察しているのですが、レンズ名通りゼロとは言えないまでも、歪曲はわずかに陣がさ型で発生するものの、超広角とは思えないほど少なく優秀な結果でした。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例4
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■絞り優先AE(F5.6、1/50秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

最短撮影距離18cm、最大撮影倍率0.2倍の寄れる超広角


 ラオワの広角レンズは近接撮影に強い傾向にあるのですが、LAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dも類に漏れず、最短撮影距離は18cm、最大撮影倍率は0.2倍となっています。当然、最短撮影距離の18cmは撮影像面からのなので、レンズ先端から被写体までの距離は思う以上に近くなります。

 最大撮影倍率も0.2倍を超えると一般的なレンズでも寄れると実感できる撮影倍率で約18×12cmの範囲、B6よりも少し小さな範囲を画面いっぱいに撮影できるわけです。メイン被写体に大きく寄って、背景は広い範囲を入れるような広角マクロ的な撮影も得意なレンズといえます。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例5
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■絞り優先AE(F2.8、1/500秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV
■WB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド

最大の弱点である周辺光量落ちと、その対策


 明るくて解像力も高く、近接撮影にも強いLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dですが、解像力チャートの撮影時にも周辺光量落ちの影響の強いレンズであることを予測していました。実際に周辺光量落ちのチャートを撮影するとF4.0まで絞ると改善するものの周辺光量落ちが見受けられます。カメラ本体と電子接点を通じて情報のやり取りをして補正を行う純正レンズなどでは、撮影時にレンズの特性に合わせて補正するので、レンズの光学性能上は発生していても、ユーザーはその周辺光量落ちを気にする必要のないことが増えています。

 しかし、そのような仕組みを持たないLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dでは、JPEG撮影時などにどうしても周辺光量落ちの影響が見受けられます。最近のレンズの設計のトレンドとしては、デジタルで補正可能な周辺光量落ちなどはレンズ光学系で補正せず、カメラ本体や後処理で補正するのが一般的です。周辺光量落ちが気になる可能性があるシーンではRAW画像も同時に記録しておきましょう。純正レンズなどのようにカメラ本体でリアルタイムに補正することはできないので、RAW現像時にAdobe Camera Rawなどで周辺光量落ちを補正するのがおすすめです。

 絞り開放からの高い解像力をデジタル補正可能な周辺光量落ちを軽減するために使わないという選択肢はないと思います。小さくて軽くて、明るくて、絞り開放から解像力の高いレンズを実現するために周辺光量落ちはデジタルで補正する方向に割り切ったレンズと考えると、本レンズの魅力が際立ってきます。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例6
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■マニュアル露出(F2.8、10秒)/ISO 250
■WB:色温度・3,200K/クリエイティブスタイル:ビビッド

12mmの超広角でぼかすならF2.8がおすすめ


 開放F値2.8とはいえ、超広角の12mmレンズのぼけに期待する人が、どれだけいるかは疑問です。
 しかし、最短撮影距離が18cmと短いこともあり、ぼけディスクチャートの結果からはLAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dがぼけにもある程度の配慮がされていることが見てとれました。2枚の非球面レンズを採用しているため、ぼけディスクのなかには同心円状のシワ(玉ねぎぼけ)が発生することがあるものの、超広角レンズとしてはザワつきが少ない傾向です。

 また、7枚羽根の絞り羽根を採用していますが、開放F2.8の中央付近では真円に近い形のぼけが得られます。ただし、F4.0などに絞るとぼけの形が7角形になるので注意してください。12mmの超広角なので積極的にぼけを楽しむようなレンズではないですが、ぼけが発生するシーンでは開放のF2.8をおすすめします。

LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D作例7
■LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D/Sony α7R III/12mm
■マニュアル露出(F2.8、30秒)/ISO 2500
■WB:色温度・3,200K/クリエイティブスタイル:スタンダード

驚くような高い解像力が魅力のLAOWA 12mm F2.8 ZERO-D


 超広角レンズの周辺部分は、ある程度解像しないのは仕方ないのが常識ですし、私もそう思っていました。そのため、LAOWA 12mm F2.8 ZERO-Dの開放F2.8での解像力チャートを結果があまりにもしっかりと解像していることに驚き、3度も撮影したわけです。

 単焦点の12mm(画角約122度)は、光学性能を追求すると、ここまで解像するということを教えてくれたのが、このレンズです。素直に驚きの結果といえます。マニュアルフォーカスのみで、開放測光も行われないフルマニュアルレンズです。

 しかし、私が撮影に使用したのはソニー Eマウントのミラーレスカメラ用だったため、開放測光が行われない影響はありませんし、マニュアルでのピント合わせもピーキングの併用で被写界深度の深い超広角のため苦になることはありませんでした。最も気になったのは、デジタルで補正することを前提とした周辺光量落ちです。今回の記事に掲載した写真はすべて補正なしのJPEGデータになっていますので、これで気になる方は撮影後に補正を行うことをおすすめします。

 カメラによる補正なしでの圧倒的な解像力と歪曲の少なさなどは、驚きのレベルです。価格も含め、誰にでも勧められるレンズというわけではありませんが、高性能な超広角がほしいと考えている方なら、ぜひ性能を確認してほしい1本になっています。