NDフィルターとは?|風景写真家が教える使い方とコツ

NDフィルター作例3

はじめに


 前回ご紹介したPLフィルターに続いて、NDフィルターについてご紹介していきます。
フィルターは、種類によって効果や使用シーンが全く異なりますので、ぜひ、前回記事と合わせてじっくりご覧ください。

NDフィルターの効果


 NDフィルターの表面を見るとグレーっぽい色(濃度によっては黒っぽい)をしていることがわかります。それによってレンズを通過する光の量を減らすことができます。
EX_ND4フィルター.jpg
■ND4フィルター



どんな時に必要なの?


 NDフィルターを使用する代表的ケースとして滝や渓流の撮影が挙げられるのですが、話を進める前に写真が写る仕組みを少しおさらいしておきましょう。

 写真はレンズを通ってきた光がデジタルカメラのセンサーもしくはフイルムに導かれることで写るのですが、明るい所でも暗い所でも適正露出で写すことが出来ます。
それは、その場の光量に応じてシャッタースピードと絞りの組み合わせを変え、センサーやフイルムにあたる光の量を調節することで実現されています。(カメラが自動でやってくれています)

 例えば絞り優先モードで絞り値を固定した場合、明るい所では、速いシャッターが切れます。つまり十分な光量があれば、センサーにわずかな時間、光があたるだけで適正露出が得られるというわけです。逆に光量が少ない暗い所でも、シャッターを長く開けてセンサーに光を当て続けさえすれば適正露出を得ることが出来ます。

 以上を踏まえたうえで話を戻しましょう。水の流れの撮影ではスローシャッターで(概ね1/8秒以下)その流れている様子を表現することが多いのですが、前述の仕組みから暗い場所でF値を絞り気味にした場合、必然的にスローシャッターになります。なので三脚をきちんと立て、カメラブレ対策を講じればNDなしでも流れの表現が可能です。

 しかし晴天時の日中など明るい所では光量が多く、最小絞りまで(f16やf22)絞ったとしても十分な低速にすることが難しく、描写が中途半端になってしまいます。(作例1)スローシャッターを切ろうとシャッター優先モードやマニュアルモードを使って無理やり低速に設定したところでそもそも光量が多すぎるのですから露出オーバーになってしまいます(作例2)


 そこでNDフィルターを使って、レンズを通過する光を減らし、デジタルカメラのセンサーに達する光を制限すれば明るい場所でもスローシャッターが切れるようになり、適正露出かつ滑らかな流れ表現の両立が可能になるのです(作例3)

NDフィルター作例1
■作例1:NDフィルター未使用 ISO100 f16 1/15秒 ※露出は良いが流れが中途半端


NDフィルター作例2
■作例2:NDフィルター未使用 ISO100 F16 1/2秒 ※流れの形は良いが露出オーバー


NDフィルター作例3
■作例3:ND8使用 ISO100 F11 1/2秒 ※流れの形、露出が両方適正


NDフィルターでどんな写真が撮れるの?


 前項までの解説でNDフィルターを使えば明るい所でも低速シャッターでの撮影が可能だという事がご理解いただけたと思います。そこで、ここからは具体的にNDを使用すればどのような写真が撮れるのかを紹介していきましょう。

NDフィルター作例4
■ND8使用 ISO100 F16 1秒
滝に直接光が当たるような状況でもNDフィルターがあれば低速シャッターを使い
水が流れる様子を柔らかく表現することが可能です。


NDフィルター7・8.jpg
■作例7(左):NDなし ND8使用 ISO100 F16 1/125秒
■作例8(右):ISO100 F16 1/15秒
NDを使ってシャッタースピードを低速にすれば、風の動感を表現することが可能です。


NDフィルター作例5
■作例5:ND64使用 ISO200 F11 30秒
高濃度NDがあれば日中でも超低速シャッターが可能。落ち葉を軌跡として
捉えることが出来ます。



NDフィルター作例6
■作例6:ND64使用 ISO100 F16 15秒
高濃度NDの大きな減光効果を利用すれば極めて明るい場所でも、長秒露光が可能。
海面を平滑化させることが出来ます。


NDフィルターの種類


 ここではNDフィルターの種類についてお伝えいたします。


NDフィルターの濃度


 NDフィルターには色が薄く減光効果が少ないものから色が濃く減光効果の大きなものまで濃度の違いによってたくさんの種類があります。そのフィルターがどれだけ減光できるかを示した数字が必ず書かれており、ND◆とあればレンズを通過する光の量を◆分の1に出来ることを意味します。

 代表的なものを例に挙げるとND2ならレンズを通過する光の量が半分に、ND4なら1/4に、ND8なら1/8に、ND16を装着すれば1/16になります。
 また、光の量を1/64にするND64や1/1000にするND1000等、高濃度なもの、その他にもC-PLフィルターのように回転枠がついていて、それを回すことで濃度が変えられる可変NDフィルター(ND2~400等)があります。

NDフィルター濃さ一覧
■NDフィルター濃さ一覧

EX_ND1000フィルター画像
■ND1000フィルター

マルミ可変NDフィルター
■可変NDフィルター



 露出の関係性からレンズに入る光が半分になるとシャッタースピードが1段階遅くなりますので、それに従うとND2をつけると1段階分。ND4なら2段階分、ND8なら3段階分、ND16なら4段階分シャッタースピードを低速にすることが出来ます。


(例)ISO100、絞り優先モードでf16に設定。NDなしでシャッター1/30秒の場合
  NDフィルターを装着すると以下のようになります。
  
 ND2装着 → 1/15秒(1段階減光)
 ND4装着 → 1/8秒(2段階減光)
 ND8装着 → 1/4秒(3段階減光)
 ND16装着 → 1/2秒(4段階減光)

 なお、NDを重ね掛けする場合はその数字を掛け合わせることでその濃度を計算します。
 
(例)ND4とND8を重ねると4×8=32となりND32相当。
ND8とND16を重ねると8×16=128となりND128相当になります。
 
 2枚掛けは高濃度NDフィルターを持っていない場合に有効ですが、フィルターの厚みが増してしまいます。特に広角レンズ使用時においてはケラレを起こす場合がありますので注意が必要です。

※ケラレ:フィルター枠が映り込んでしまい画面の四隅が暗くなってしまうこと。


NDフィルターの形


 フィルターは円形のものが多く、各レンズのフィルター径に合わせたものが販売されていますので自分の持っているレンズにあったものを選びましょう。円形はねじ込むだけで装着できるのでスピーディーなセッティングが可能です。
 もちろんレンズフードも使用できます。最初は円形のものを選ぶと良いでしょう。

 そして角形のNDフィルターも販売されています。こちらはフィルターホルダーを介して取り付けます。まずホルダーをつけてからNDフィルターを装着するのでセッティングにやや時間がかかりますが、フィルター径を問わずに使用できる事がメリットです。ただしレンズフードが使えない点はデメリットとも言えます。

角型NDフィルター
■角型NDフィルター



どう使う?どのタイミングで付ける?


 風景撮影において主にシャッタースピードを遅くするために使うNDフィルターですが、低速にしたいからと言って、必ずつけなければならないわけではありません。

 スローシャッターを切りたい場合、まずISO感度を最低感度(100、カメラによっては200)にした上で、被写体に合わせて絞り値を設定します。天気が悪い、または早朝や夕方など光量が少ない時、薄暗い渓谷などでは、光量が少ないため、その状態でシャッターが低速になる可能性が高く、その時点で自分の望むスローシャッターになっていれば、NDは必要ありません。

 しかし上記の設定にしても日中の明るい場所では光量が多くシャッタースピードが低速にならないので、そこで初めてシャッタースピードを遅くするために減光効果のあるNDフィルターが必要になるのです。

 以上の理由から、スローシャッターで撮りたい場合、明るい場所では最初からNDを装着しておいても良いのですが、暗い場所では、露出を確認する前からNDをつけておくのはオススメしません。あくまでも必要だと思った時に使うようにしましょう。

 なお、NDをかけたことによって「シャッタースピードが遅くなりすぎた」と感じることもあるでしょう。皆さんもご存知の通り、デジタルカメラは自由にISO感度を変更することが出来ますよね。そのような場合はISO感度を調整することでシャッタースピードがコントロールできることを頭に入れておきましょう。

NDフィルターの選び方


 では、実際に購入する際にはどのNDフィルターを選べばよいのでしょうか?
 効果が薄いものを選ぶよりも、しっかりとスローシャッター効果が得られるものがおススメです。先ず1枚ということになるとND8 or ND16あたりが良いでしょう。

 水辺で使うことの多いNDフィルターですので防汚撥水コートが施されているものを選んでおくと心強いと言えます。

 とにかく使ってみて、その面白さに目覚めれば、さらにND64やND1000のような高濃度のものを使って15秒や30秒、さらには1分など、さらなる低速シャッターの世界に足を踏み入れてみるのも楽しいですよ。


NDフィルターを使う上での注意点


 繰り返しになりますが、NDフィルターを装着するとレンズに入ってくる光が少なくなります。そのため、その場の明るさにもよりますが、ファインダー像が暗くなり構図の確認がしにくくなる場合があります。特にミラーとプリズムを用いてファインダーへ直接的に光を導く一眼レフでは、その傾向がより顕著になります。

 ミラーレス一眼に関しては、光量が低下した分を電子ビューファインダーが補って明るく見せてくれるので、像が確認しやすいといえますが、それにも限界があり、濃色NDなどを使用した際には、一眼レフと同様、ファインダー像が確認しにくくなります。

 さらに、オートフォーカス用のセンサーへの光も少なくなるので、ピントが合いにくくなり、シャッターが切れなくなることがあります。そのような場合は、まずはNDを外して構図を決め、ピントを合わせてから、装着すると良いでしょう。

 他のフィルターとの重ね掛けについてはC-PLの上にNDフィルターを装着する等、使用目的が違うフィルターを2枚重ねで使うことに問題はありません。実際にC-PLとNDを併用するケースは非常に多いです。

 ただし、普段から保護フィルターを付けている場合は必ず外してからNDやC-PLを付けましょう。不用意な重ね掛けによってフィルターの厚みが増せばケラレの原因にもなりますし、光線状態によっては画質の低下を招くことがあります。

ハーフNDフィルターについて


 ここまで解説してきたNDフィルターは画面全体の光量を下げるものでしたが、ハーフNDは異なった使い方をするフィルターです。

角型ハーフNDフィルター
■角型ハーフNDフィルター


 朝景や夕景のような空と地上に大きな明暗差がある場合、カメラはその両方を肉眼のようにうまく表現出来ません。夕焼け空がきれいに写るよう露出を決めると地上の風景が暗くなりますし(作例9)地上の風景に露出を合わせると空が明るくなりすぎてしまいます。(作例10)

作例9.JPG
■作例9


作例10.JPG
■作例10


 それを解決してくれるのがハーフNDフィルターです。夕焼け空が白っぽくなってしまうようなケースでもハーフNDの暗い部分を明るい空に重ねて、部分的に減光すれば画面全体の露出が整うという理屈です。(作例11)

NDフィルター作例11
■作例11

 ハーフNDフィルターにも円形と角形(長方形)がありますが、こちらに関しては角形をおススメします。というのも円形はフィルターの中心に明暗の境目が固定されてしまうので空と地上が半々にしか撮れなくなってしまうからです。
 角形もフィルターの中心付近に境目がありますが、長方形になっているのでそれをレンズの前で上下させると境目を移動させることが出来ます。基本的に取り付けは、フィルターホルダーを介して行いますが、急いで撮影しなければならない場合は手で持ってレンズの前にかざすように使っても構いません。

 ただしレンズ面と平行になるようフィルターを合わせないと変な反射が映り込んでしまうので注意しましょう。

 なおハーフNDには大きく分けて境目が出にくく使いやすいが効果が弱めのソフトタイプ、そして境目が出やすく注意が必要だが明暗調整効果が強いハードハイプがあり、それぞれに濃度が違うものが販売されています。
 明暗差によって使い分けが出来るので各タイプ1枚ずつ持っているのがベターですが、どちらか1枚でなるべく失敗したくないという方には、先ずはソフトタイプが良いでしょう。濃度は0.9が(ND8、透明部分との露出差が3段階分)おススメです。

 さらに樹脂製とガラス製のものがあります。樹脂製は静電気によるホコリが付着しやすく、キズに弱い面があり経年劣化の影響を受けやすいですが、割れる心配がなく軽いというメリットがあります。価格もやや安めです。

 それに対してガラス製は、キズに強く、経年劣化も少なく画質的に優れますが、落下させると割れることがあるので取り扱いには注意が必要です。個人的にはガラス製がおススメですが、価格的に樹脂製に比べると高価だと言えますので、そのあたりは使用頻度などを考えて選べば
よいでしょう。

さいごに


 ここまでNDフィルターについて解説してきましたが、いかがでしたか?一言では表せないほど、色々な種類があり、またどのような写真を撮りたいかによって選ぶものも異なってきます。「何を買えばよいのかわからない」と困った時には、やはりお店の出番。

 全国のカメラのキタムラ各店舗には、頼りになる写真のエキスパートが揃っています。わからない時は実際に相談して自分にピッタリのフィルターを選ぶと良いでしょう。