富士フイルム レンズ比較|旅写真家が選ぶ標準ズームはどれ?

富士フイルム 標準ズームレンズ

はじめに



 こんにちは。旅写真家の三田崇博です。私は海外での撮影が多く、現地では電車やバスまたは徒歩での移動がほとんどなので、機材は必要最低限にしたいと常々考えています。フルサイズカメラも所有していますが、海外に出るときはAPS-Cサイズで画質も良い富士フイルムのカメラを持っていくことが多く、レンズは持っていく数を減らすためズームレンズを主体としています。

 富士フイルムには軽量コンパクトなレンズが多く、標準域をカバーするレンズに去年登場した「XF16-80mmF4 R OIS WR」が加わり選択肢が増えました。

 その中で旅に適した標準ズームレンズとして手振れ補正を搭載している3本、「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」(以下18-55)「XF16-80mmF4 R OIS WR」(以下16-80)「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」(以下18-135)のうちどのレンズが旅写真に適しているのかを実際に海外で撮影した作例を見ながら考えていきたいと思います。

 これらのレンズ以外にも写りがピカイチの「XF16-55mmF2.8 R LM WR」というレンズもありますが、大きさと手振れ補正がないという理由で今回の企画では候補から外しています。(決して悪いレンズという訳ではありませんので悪しからず)

レンズのスペック比較



 まずは各レンズのスペックの比較をしてみましょう。

富士フイルム標準ズームレンズ比較表
■富士フイルム標準ズームレンズ比較表


 一般的には撮影倍率の低いレンズの方が良い画質と言われていますが、ズームレンズの性能は年々進化しているので一概にそうとは言い切れません。赤字で記した部分が他レンズより優れているところです。
 表で見ると焦点距離や最少絞り(F値)以外にも細かな違いがあることが分かると思います。次に実際の作例を見ながら各レンズの特徴を検証してみたいと思います。

 ちなみにレンズ名の後ろについているアルファベットの記号はそれぞれ以下の意味があります。

■R:Ring (絞りリング)
■LM:Linear Motor (リニアモーター※)
■OIS:Optical Image Stabilizer (光学式手ブレ補正機構)
■WR:Weather Resistant (防塵・防滴)

※駆動させるレンズ群を非接触の状態でダイレクトに駆動させるリニアモーター技術は、静粛性・応答性に優れるという特性があります。



XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS作例



 このレンズの魅力は軽さとF2.8から使えるところです。私も長年愛用してきたレンズで、3.5段の手振れ補正を搭載し、広角18mmから中望遠55mmまでをカバーしています。数値以上にとてもコンパクトなので広角レンズや望遠レンズで撮影時にポケットなどに忍ばせておき即座にレンズ交換することができます。ただ防塵防滴仕様になっていないので雨の日の使用には慎重になる必要があります。


XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS作例1
■撮影環境:絞りF7.1 シャッター速度1/75秒 ISO640 焦点距離50mm
■使用機材:X-T3

 中国敦煌にある1000年以上枯れたことがないと言われる月牙泉。人の目の見た感じに近いといわれる50mmで撮影しました。逆光での撮影で普通なら手前の砂漠は黒くつぶれてしまうこともありますが、しっかりと暗部の質感も残っています。


XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS作例2
■撮影環境:絞りF13 シャッター速度1/50秒 ISO200 焦点距離55mm
■使用機材:X-A5

 中国で最も人気の観光地のひとつでもある北京にある故宮博物院。夕方に故宮北側にある景山公園から夕景を撮影したものです。最望遠側の55mmを使っていますがズーム比を抑えているだけあって画質も満足のいくものでした。

DSCF5568.JPG
■撮影環境:絞りF2.8 シャッター速度1/34秒 ISO12800 焦点距離18mm
■使用機材:X-A5


 ミャンマーへ向かう飛行機の機内から撮影したタイ、バンコクの夜景。このような場面では思い切ってF2.8で撮影します。ただしF2.8で撮影できるのは18mm付近のみなので必ず最広角側で撮らなければいけません。それでもF2.8を使えるのはとっさの時にありがたいです。

XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS作例4
■撮影環境:絞りF11 シャッター速度18秒 ISO200 焦点距離42mm
■使用機材:X-A5

 クロアチアの世界遺産「スプリト」での一枚です。町を見下ろす高台のカフェから三脚を構えじっくりと撮影しました。このブルータイムと呼ばれる時間帯が個人的に大好きです。

XF16-80mmF4 R OIS WR作例



 2019年9月発売の執筆時で最新設計のレンズです。広角16mmから中望遠80mmまでをカバーし、前述の18-55よりも広角側が2mm広くなっています。たった2mmと思うかも知れませんが広角側は望遠側に比べ1mmの違いで画角がかなり変わるので18mmと16mmだと目に見えて違いが分かります。

 また手振れ補正の効果も6.0段と3本の中で最も高く、手持ち撮影に最適なレンズであると言えます。他の2本に搭載されているステッピングモーターが非搭載になっていますが使っていてオートフォーカスのスピードに不満が出ることはありませんでした。また防塵防滴仕様になっているので雨の日でも安心して使うことができます。

XF16-80mmF4 R OIS WR作例1
■撮影環境:絞りF4 シャッター速度1/40秒 ISO400 焦点距離80mm
■使用機材:X-T3

 ミャンマーでよく食卓に出てくるサンニュイマゲンというバナナと餅で作られた伝統的な甘いお菓子です。望遠側の80mmを生かしてマクロレンズ的な撮影をしてみました。
 このレンズの最短撮影距離(撮像素子から被写体までのピントの合う最短距離)が35cmと18-55の30cmと比べて長いように感じますが、このレンズはズーム全域で35cmなので望遠撮影時でも35cmまで被写体に寄ることができます。なのでマクロ的な撮影は3本の中で一番得意なところです。

XF16-80mmF4 R OIS WR作例2
■撮影環境:絞りF22 シャッター速度1/105秒 ISO160 焦点距離16mm
■使用機材:X-T3

 ミャンマーで2019年に世界遺産登録されたバガン。その中でも最も重要な位置づけの寺院のひとつであるアーナンダー寺院。16mmの広角を生かして手前の木々の中から覗くような構図にしてみました。絞りを絞る(F値をあげる)ことによって太陽の光芒を出してみましたがこのレンズは絞り羽が9枚なので計18本の光の筋が現れました。


XF16-80mmF4 R OIS WR作例3
■撮影環境:絞りF4 シャッター速度1/800秒 ISO1000 焦点距離80mm
■使用機材:X-T3

 こちらもミャンマーのバガンで撮影した男の子です。急だったので望遠レンズに付け替える時間はありませんでしたが80mmまであるので近くであればアップの表情を狙うこともできます。

XF16-80mmF4 R OIS WR作例4
■撮影環境:絞りF6.4 シャッター速度1/4秒 ISO250 焦点距離16mm
■使用機材:X-T3

 2020年の新年を迎えたバガンでは、早々に始まるアーナンダー祭りの屋台がそこかしこに立ちならんでいました。感度をあげて撮影することもできるのですがなるべく画質を落としたくないのでスローシャッターの1/4秒で撮影。広角側でしっかり構えて撮るとほとんどがブレなく撮影できました。


XF16-80mmF4 R OIS WR作例5
■撮影環境:絞りF14 シャッター速度1.3秒 ISO160 焦点距離21mm
■使用機材:X-T3

 さらにシャッター速度を落として手持ち撮影してみました。ここまでのシャッター速度になると車のライトなどを光跡で描くことも可能です。たださすがにここまでなるとブレてしまうカットも多くはなってしまいますが・・・


XF16-80mmF4 R OIS WR作例6
■撮影環境:絞りF11 シャッター速度1/85秒 ISO400 焦点距離53mm
■使用機材:X-T3

 ヤンゴン近くのお寺からの夕日。逆光の厳しい条件でしたが手前も黒つぶれせず太陽周りのグラデーションも綺麗に表現することができました。近くで晩御飯の準備をしている煙が辺りに漂い、幻想的でした。

XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR作例



 このレンズ最大の特徴は、望遠側が135mm(フルサイズ換算で206mm)まであることです。ここまであるとほとんどの場面で他の望遠レンズは不要になると思います。他社にはもっとズーム比の大きなレンズがありますが画質のことを考えるとこのあたりがバランスのいい焦点距離でしょう。

 また前述の16-80には及ばないまでも約5段の手振れ補正は特に望遠側の撮影時にはその恩恵を受けました。また16-80と同じく防塵防滴仕様になっているので安心して使えます。


XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR作例1
■撮影環境:絞りF6.4 シャッター速度1/170秒 ISO1600 焦点距離116mm
■使用機材:X-T3

 ミャンマーの伝統的な日焼け止めとお化粧を兼ねた「タナカ」をつけた少女。ミャンマーでは恥ずかしがり屋さんが多く少し距離を置いて撮影することにより自然な表情を引き出すことができました。余裕のある焦点距離のおかげです。


XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR作例3
■撮影環境:絞りF11 シャッター速度1/420秒 ISO200 焦点距離135mm
■使用機材:X-T3

 ミャンマー南部のマウンマガンというビーチ近くで早朝に撮影しました。望遠レンズ特有の圧縮効果が生まれています。圧縮効果とは遠くにあるものが望遠効果により大きく写り近くのものと重なり遠近感が失われたようになることです。


XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR作例4
■撮影環境:絞りF9 シャッター速度1/100秒 ISO200 焦点距離20mm
■使用機材:X-T3

 ミャンマー東部のパアンという地域にある洞窟寺院からの日の出です。20mmの広角側で撮影しています。他の2本に比べるとわずかに周辺の解像感が弱いようにも見えますが高倍率ズームレンズであることを考えると優秀な画質だと思います。

富士フイルムの標準ズームは、結局どれがいい?



 各レンズに一長一短があり、どれか1本に決めるのは難しいところではありますが、トータルのバランスでおすすめできるのは16-80です。最新設計のレンズで手振れ補正が強力、近接撮影も得意となると、旅先で料理などの撮影も出来るし、夜の街歩きでも手持ちで撮影できてしまいます。

 また最小絞り値がF4で固定なので、ズームして画角を変えたときにシャッター速度が遅くなっていて手振れしたというようなミスもなくなります。一方で、旅先で人物スナップ撮影や動物をよく撮る方には18-135をおすすめします。旅での出会いは一瞬です。望遠レンズに交換しているうちにその瞬間は終わってしまうことだってあるので1本で望遠レンズの役割までこなせるのは魅力的です。

 18-55は星空を撮る人や夜のお祭りを撮るというようなF2.8が必要な明確な理由がある場合を除いては、防塵防滴仕様がついている他の2本のレンズをおすすめします。もちろん他に望遠レンズを持っているということであれば最軽量の18-55もいいと思いますがレンズ交換を頻繁に行う場合には埃がセンサーに入ってしまうというリスクがあります。

 特に今回作例を紹介したミャンマーなどは砂埃が多く、私は他のレンズを使う場合にはもう一台カメラを用意して極力レンズ交換をしないように心掛けています。

まとめ



 旅に行くと様々な被写体に出会います。特に海外となると今後何度も来れる場所でもないという思いからあらゆるものを写真に残したくなります。移動中などに突然いい被写体が現れることもあるのでとっさに対応できるズームレンズがお勧めです。

 今回はミャンマー・中国・タイ・クロアチアでそれぞれ撮影した作例をお見せしながら各レンズを紹介しましたがキットレンズから一歩ステップアップして旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

※各レンズおすすめ度
「XF16-80mmF4 R OIS WR」      ★★★★★
「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」 ★★★★☆
「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」    ★★☆☆☆