ニコン D780レビュー|ニコンの本気が見える本格派一眼レフ

ニコンD780で撮影したポートレート作例_モデル辻美咲さん_1.jpg

はじめに


 2020年1月24日に発売された、ニコンのD780は、有効画素数2450万画素、最高常用ISO感度51200、約7コマ/秒の高速連続撮影、フルフレームでの4K UHD/30pの動画撮影も可能な、高性能FXフォーマットデジタル一眼レフカメラです。画像処理エンジンは、ミラーレスカメラのZ 7Z 6Z 50と同じEXPEED 6を搭載していて、AFシステムが強化されているため、ファインダー撮影も、ライブビュー撮影も快適な機種に仕上がっています。

 今回は、ポートレート撮影で本機の性能をレビューします。レンズは、筆者がポートレート撮影時に絶大な信頼を置いている「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」をすべてのシーンで使用しています。偶然ではありますが、絞りはすべて開放の作例となります。屋外、室内共に照明やストロボは使用せず、自然光とレフ板のみで光を回して撮影しました。D780がポートレート撮影で見せる本気をご覧ください。

繊細なふんわり感を描き出す描写性能


ニコンD780で撮影したポートレート作例_モデル辻美咲さん_1.jpg
■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/80秒 ISO100 WB:4350K
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート アクティブD-ライティング:強め
■モデル:辻 美咲

 筆者がポートレート撮影時に必ず撮るのは、ふんわりとした優しいムードのカットです。強い逆光の状態で露出を上げることによって、背景はかすかに見える程度だけ残して白とびさせて、モデルが光に包まれているようなイメージに仕上げます。

 今回使用している「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」は、白とびギリギリのグラデーションが絶妙に美しく、絞り開放で使用することによって、浅い被写界深度がふんわり感を増長させてくれることから、ぜひD780との相性を見たいと思い、このレンズ一本での撮影としました。

 結果、これからもポートレート撮影ならこのセットで勝負できると自信が持てるほど、繊細で美しい画を描き出してくれました。モデルの顔の輪郭を優しく、でも滲みなくなめらかに描写し、光の当たっている鎖骨のハイライト部の、ギリギリのグラデーションを表現しているのには感動しました。

文句なしのファインダー性能


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/8000秒 ISO400 WB:自然光オート
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート アクティブD-ライティング:弱め
■モデル:辻 美咲

 昔からニコンのファインダーの性能は高い評価を受けていますが、本機のファインダーも「やっぱりニコンだな」と思える、撮っていて楽しくなるファインダーでした。見やすい、綺麗というのは、常々覗くファインダーの性能としては絶対条件です。そこを軽々クリアーしてもらえるのは、カメラを所持する側として、とても有難いことだと言えます。

 ミラーレス機での撮影に慣れると、ファインダーは使わずに、ライブビュー撮影がメインになるんじゃないのかと聞かれることもあるのですが、太陽が背面液晶にあたって反射で液晶が見えにくいときや、撮影に集中したいときなどは、ミラーレス機、一眼レフ機ともにファインダー撮影も行っています。今回も、撮影の半分はファインダー撮影で、AFモードはシングルAFサーボで、AFエリアモードはシングルポイントAFモードで瞳に合わせています。

 ライブビューの静止画撮影時にAFエリアモードをオートエリア設定にすると、Zシリーズと同じように顔認識、瞳AFが働いてくれるので、もちろん使用してみましたが、Zシリーズを常用している筆者としては、いつもと同じような撮影シーンで使用することで、その性能の確かさはすぐに確認できました。ファインダー撮影、ライブビュー撮影、どちらの撮影方法がいいかというよりも、好みで使い分けられるのがいいですね。

凛としたシャッター音


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/8000秒 ISO400 WB:自然光オート
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート アクティブD-ライティング:強め
■モデル:辻 美咲

 とてもマニアックなお話になりますが、筆者は銀塩時代からニコンのシャッター音がとても好きです。まだカメラを始める前のモデル時代から、撮影される方のカメラの、カシャっという音がかっこいいなと思うカメラは、いつもニコンだったことを覚えています。

 本機のシャッター音も軽快で、空気を切り裂くような凛とした音色でした。ポートレートにおけるシャッター音は、モデルとダンスを踊る音楽のようなもので、筆者はステップを踏みやすいようにリズミカルさを大切にしています。「カシャ…カシャ…カシャ…」と等間隔だと、モデルもポーズ替えのタイミングを計りやすいのですが、「カシャカシャ………カシャカシャカシャカシャ…カシャ……」のように、いつシャッターを押されるかわかりにくいリズムだと、ポーズ替えがなめらかに行えず、お互いのリズムが崩れることでいい表情に出会えるチャンスが減るのとともに、目つぶりショットが増えることもあります。

 撮っている実感が感じられるしっかりとしたシャッター音なので、今までリズムを気にしていなかった方は、本機のオーナーになりましたら、ぜひリズミカルにシャッター音を響かせてください。

直感で使える i メニュー


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/400秒 ISO100 WB:4300K
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:辻 美咲

 Zシリーズと同じように、背面液晶にワンタッチで呼び出せる i メニューが搭載されました。このメニューに何の項目を当てはめるかは、自分でカスタマイズすることができます。筆者は、右手でグリップを持っている都合上 i メニューの左側を多用するので、一番変更頻度の高い「ピクチャーコントロール」を左上に、その下に「ホワイトバランス」を当てはめています。

 ポートレート撮影では、ピクチャーコントロールのポートレートモードを多用します。その名の通り、人物の肌色を明るく活き活きと描き出してくれる、スタンダードよりも少し柔らかな描写のモードです。これにプラスして、モデルの肌色と服の色によって、ホワイトバランスをケルビン数で設定することが多いです。この作例では、はっきりした紺色のドレスの色味を出したいのと、白い肌の透明感をさらに上げるために、ホワイトバランスを4300Kに設定しています。

 D780は、ホワイトバランス設定をこの i メニューからでも、カメラ上部のISOボタンからも変更できるので、ファインダー撮影時は上部の物理ISOボタンから、ライブビュー撮影時はZシリーズと同じように i メニューからと、撮影状況に合わせて使用できたのがとても便利でした。

しっかり握れる有能グリップ


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/80秒 ISO200 WB:4760K
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:辻 美咲

 ニコンの特徴でもある、切れ込みがしっかり入った、ぐっと握れるグリップは、ローアングルの撮影時に重宝します。モデルが座っている高さまでカメラを低くすると、ほぼ床に付くくらいになります。さっとその姿勢をとれるのは、握りやすい形状のグリップのお陰でもあります。スナップだけじゃなく、ポートレートも一瞬が命です。シャッターチャンスを逃さないために、ローアングルも、ハイアングルも、素早くカメラを落としそうにならずに構えられることは、地味だけどとても大切です。

 また、この撮影時はかなり暗い室内で、さらに逆光の状態で撮影しているので、この写真で見るよりも肉眼で見る方が暗い状況でした。D780は、ライブビュー撮影時にローライトAFのお陰で-7EVの暗さまでAF検出ができます。つまり、被写体が暗くても瞳AFが効きやすいということ。

 作例のように、しっとりとしたムードにしたいときは、全体のトーンを落としながら、でも背景や体の一部にハイライトを作って撮影したりします。そんな薄暗いなかでも瞳を認識してもらえるので、構図や光の状況に気持ちを配って撮影できるのが、瞳AFの恩恵でもありますね。

他のカメラと共有できる低消費電力バッテリー


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/1600秒 ISO100 WB:4350K
■使用モード:ピクチャーコントロール:ポートレート アクティブD-ライティング:強め
■モデル:辻 美咲

 D780のバッテリーは、D850D750、D610、D7500でも使用可能なLi-ionリチャージャブルバッテリー「EN-EL15b」なので、当該ボディをお持ちの方はバッテリーの共有ができます。筆者もD850を所持しているので、D780のオーナーになった場合、いざというときの予備電池がすでにあるという、心強い状況になります。とはいってもこのバッテリー、低消費電力設計で、1回の充電で静止画は最大約2,260コマ、動画は約95分の撮影が可能なので、ハードな連写や、ライブビュー撮影を多用しなければ、それほど電池の減りにどきどきしなくても大丈夫でしょう。

 ニコンにはアクティブD-ライティングという、白とび、黒つぶれを抑えてくれる機能が搭載されているのですが、ポートレート撮影のときはこれを強めにかけると、特に暗い部分が明るく持ち上がって、コントラストが高くならないようにしてくれるのでお勧めです。

クリエイティブピクチャーコントロールで様々なムードに!


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/80秒 ISO100 WB:4350K
■使用モード:クリエイティブピクチャーコントロール:サイレンス
■モデル:辻 美咲

 本機には、Zシリーズと同じ20種類のクリエイティブピクチャーコントロールが搭載されています。これは静止画でも動画でも使用でき、色味や鮮やかさ、コントラストやムードをワンタッチでがらりと変えることができます。効果の度合いも、0から100まで10ステップ刻みで適用させられるので、見たままから感じたままへ、自分の思い描いたムードをそのまま写真にすることのできる、素敵なシステムです。

 今回使用した「サイレンス」は、全体の彩度を押さえたモノトーンに近い色合いになりながら、赤やピンク色などの鮮やかな色はほんの少し色味が残るので、モデルの唇を強調した、シックなムードにしたくて使用しました。また、普通のモノトーンよりも全体が優しい輪郭の軟調になるので、女性ポートレートに向いているクリエイティブピクチャーコントロールです。

一緒に作品作りができる本格派一眼レフ


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■使用機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
■撮影環境:F1.4 1/80秒 ISO400 WB:晴天
■使用モード:クリエイティブピクチャーコントロール:ドリーム
■モデル:辻 美咲

 この作例では、モデルの肌を少し赤く染めるために、ピンク色のラグの上に寝っ転がってもらっています。ここで使用したクリエイティブピクチャーコントロールは「ドリーム」です。このクリエイティブピクチャーコントロールも「サイレンス」と同様、全体の輪郭を優しく弱めて軟調なイメージにしてくれるので、女性らしさを強調したポートレートにぴったりです。さらに、ミドルレンジシャープを-1.5に、明瞭度を-1.5にして、全体をさらにふんわりと描く設定にしたので、その名の通り、夢の中のようなイメージになりました。

 この日はほぼ一日、D780を使って撮影していましたが、グリップの握りやすさのお陰か、右手の疲労感はほとんどありませんでした。グリップが握りにくいと、変な所に力が入って、手の筋が痛くなることもあるのですが、本機ではそれは感じませんでした。

 シャッターを押すたびに響く凛としたシャッター音、見やすいファインダー、ライブビュー撮影での瞳AFの確実性、使いやすいメニュー画面と、見惚れる描写性能!ニコンの本気を見させていただきました。