ポータブル赤道儀の使い方 | 広がる星空写真の世界

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はじめに


 星空撮影の支援アイテムに「赤道儀」という星空を追尾する為のモーターを内蔵した雲台があります。あまり馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとつあるだけで星空撮影の幅を大きく広げてくれます。ビクセンから今年1月に発売されたポータブル赤道儀「星空雲台ポラリエU」を使って、星景写真、天体写真、タイムラプスの3つの観点から赤道儀を使った撮影方法を紹介していきます。
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ポータブル赤道儀:ビクセン「星空雲台ポラリエU」

ポータブル赤道儀を使った「星景写真」


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■使用機材:ニコン Z6 + タムロン 15-30mm F/2.8 f2.8 Di VC USD G2 + マウントアダプターFTZ + LEE ソフトフィルターNo.1 + ビクセン 星空雲台ポラリエU(星追尾モード)、ポーラメーター
■撮影環境:ISO 3200 15mm f2.8 SS 30秒 WB 自然光オート 画像処理なし

 「点で撮る」撮影方法は前回の記事でご紹介した通り、星空撮影は露出が長くなってしまうため、焦点距離によっては星が流れて写ってしまいます。ポータブル赤道儀を使えば、露出中に星空を追尾してくれるため、長い露出でもつぶつぶの星空を撮影することができます。反面、星空は点で撮れますが、地上風景は流れてしまいます。星景写真は星をメインに撮るか、風景をメインに撮るかで作風が大きく変わりますが、ポータブル赤道儀は、星空をメインで撮る撮影に適していると言えます。

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画像は24mmの広角レンズで撮影したオリオン座の部分を拡大したもの。60秒の露出だが、赤道儀を使うかどうかでこれだけの差が出る。

 星空雲台ポラリエUは、従来のモデル「星空雲台ポラリエ」と比べて、20%と大幅に軽量化したにも関わらず、耐荷重が2.5kgに上がっています。以前はコンパクトなミラーレスカメラ用を謳っていましたが、新製品のポラリエUはフルサイズ一眼カメラや大口径レンズの使用も視野に入れることができます。
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 ニコンZ6にタムロンSP15-30mm/f2.8と、私が持っている中で一番大きな自由雲台を取り付けてみました。耐荷重が上がったおかげで、非常に安定感があり、どの方向に向けてもポラリエU本体がカメラに干渉することはありませんでした。赤道儀のセッティング(三脚と赤道儀の間に使用する雲台)には微調整がきくギア雲台がおすすめ。この画像で使用しているのはLeofotoの「G4」ですが、このクラスでは小型・軽量なのに動きが滑らかで非常にセッティングがしやすかったです。

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■使用機材:富士フイルム X-T3 + XF8-16mm F2.8 R LM WR + ビクセン 星空雲台ポラリエU
■撮影環境:ISO 1600 f2.8 SS 60秒 WB Auto 恒星時追尾モード Photoshop CCで画像処理
ポータブル赤道儀と相性がいいのは、このような"広い遠景と星空"だ。露出時間にもよるが、遠景の場合は星空の追尾による風景の流れもさほど気にならない場合が多い。低感度でたっぷりと露出することにより、低ノイズでしっとりとした描写を得ることができる。

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素通しファインダー

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極軸合わせ

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 北極星の見つけ方は上の画像のように、北斗七星・カシオペヤ座からたどると良いと思います。それぞれの星座から「こぶし3個分」離れたところにあるのが北極星です。最初はコンパスなどを使って北の方角を調べてみましょう。また、季節によって星座の位置は変わるので注意してください。

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ポーラメーター装着時

 北極星探しに不安がある方は、別売りの「ポーラメーター」の使用をオススメします。傾斜計、コンパス、水準器が一体となった商品で、北極星が見えない場所でも簡易的に極軸合わせを行うことができます。使用時は、カメラから発する電磁波の影響を受けないよう、カメラから離して使用してください。使用方法についてはビクセンのYoutubeチャンネルのこちらの動画をご覧ください。

ポータブル赤道儀を使った「天体写真」


 天体写真とは、星空の中にある星雲・星団といった天体をクローズアップ撮影した写真を指します。長い焦点レンズ(500mm~)でひとつの天体を撮影する手法と、短い焦点距離(35mm~300mm程度)で隣り合う天体を同一構図でおさめる手法があります。ポラリエUの耐荷重があがったことで、長焦点とまではいかなくてもカメラ用望遠レンズでの撮影が可能になりました。

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■使用機材:ニコン Z6 + タムロン SP 35mm F/1.4 Di USD + 星空雲台ポラリエU + 極軸微動雲台DX(試作) + マルチ雲台ベース + スライド雲台プレート + APフォトガイダー用ウエイト軸 + バランスウエイト1.0kg + クイックリリースクランプセット
■撮影環境:ISO 3200 35mm(35mm換算) f 2.2 SS 30秒 48枚を加算平均合成(総露出時間約24分) Stella Image8で加算平均合成 Photoshop CCで強調処理。
焦点距離35mmのレンズで撮影した天体写真。夏の大三角のひとつ、はくちょう座のデネヴ付近の領域を撮影。

 こうした標準レンズでも天体写真の撮影は可能で、広々としたつぶつぶの星空を表現することができます。この上の作例は加算平均合成したものですが、この加算平均合成とは、同一構図・複数枚の画像を一枚にまとめてノイズを平均化する手法です。ソニーの「マルチショットノイズリダクション」や、富士フイルムX-PRO3の「多重露出→加算平均」などはカメラ内でこの作業をしてくれるものです(枚数制限あり)。この加算平均合成を行ったうえで更に強烈な画像処理を加えてこのような天体写真が表現できるのですが、それほどまでに天体は淡く、そして日本の空は明るいのです。
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天体写真使用イメージ

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極軸望遠鏡

 望遠レンズを使用する場合は、①精密な極軸合わせが必要になるため、極軸望遠鏡を使って極軸合わせを行うこと、②搭載したカメラの反対側にバランスウエイトを付けてポラリエUに対して均等に負荷がかかるようにすることが必須になります。それによって、1分・2分といった露出時間での追尾撮影が可能となります。これは完全に私の感覚ですが、100mm以上のレンズを使用するあたりから、こうしたバランスをとる作業が必要となってくると思います。使用方法についてはビクセンのYoutubeチャンネルのこちらの動画を参考にしてください。

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■使用機材:キヤノン EOS Ra + ビクセン FL55SS + レデューサーHDキットforFL55SS + 星空雲台ポラリエU + 極軸微動雲台DX(試作) + マルチ雲台ベース + スライド雲台プレートDD + APフォトガイダー用ウエイト軸 + バランスウエイト1.0kg + クイックリリースクランプセット
■ISO 3200 237mm(35mm換算) f 4.3 SS 90秒 15枚を加算平均合成(総露出時間約22分) Stella Image8で加算平均合成 Photoshop CCで強調処理
焦点距離200mm程度のレンズで撮影した天体写真。二重星団h-χ(左下)、胎児星雲(右上)、ハート星雲(右下)、パンスターズ彗星(左上のちょこっと緑の星)を撮影(2020年1月16日撮影)。パンスターズ彗星は3月までこの領域で撮影することができる。

 天体写真はものすごく長い焦点距離で撮影するイメージがありますが、普段から使用している標準レンズ〜望遠レンズの焦点距離でも十分撮影を楽しむことができます。どんな焦点距離のレンズでも必ず撮影できる対象があるのでレンズ資産が無駄になりません。これが天体写真の醍醐味だと思います。

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サンニッパテスト

 私のセミナーに参加するお客様からの質問で「サンニッパ(300mm/f2.8のレンズのこと)は載りますか?」という質問が多くありました。元々のポラリエでは厳しかったのですが、ポラリエUではどうなのか気になり試してみたところ、とても大きなレンズなので多少のバランスの悪さを感じましたが、30秒程度の露出ならしっかりと点で撮影することができ追尾に問題はありませんでした。ただし、三脚とカメラの間にカメラ用の雲台を使用した場合では最初は問題ないのですが、過剰な負荷をかけているため徐々にガタがでてきました。望遠レンズを使用の場合は、今後発売予定の「ビクセン 極軸微動雲台DX」の使用を強くオススメします。

ポータブル赤道儀を使った「タイムラプス」


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タイムラプス動画


 「タイムラプス(Time-lapse)」という言葉をご存知でしょうか。「時間の経過」を示す言葉で、近年はカメラにタイムラプス動画を生成する機能搭載したり、TVCMやアニメでも見ることが多くなってきていると思います。最近になってよく見るようになった気がすると思いますが、実はデジタル以前から知られている古典的な手法で、「一定間隔で撮影した写真をパラパラ漫画のようにまとめたもの」がタイムラプス動画なのです。特徴は数分・数時間の経過を数秒に圧縮して表現できることになります。例えば、20秒ごとに50分間撮影したとすると、1分につき3枚×50分=150枚が撮影できますが、これを1秒間で30枚使用する動画(30fpsという)にすれば、50分の時間の経過をたった5秒間に圧縮することができます。主な被写体は、雲の動き、人の流れ、水の流れ、光と影の動き、星空など。「それって動画の早送りじゃだめなの?」と思うかもしれませんが、50分間のデータ量はなかなかのもですし、ましてや4K(800万画素)、8K(3300万画素)となるとデータの管理が大変なことになってしまいます。なによりビデオカメラでは長時間露光ができませんが、スチルカメラでは可能で、この特徴を生かして、天の川などがスムーズに動く星空タイムラプスに人気があります。
日中にタイムラプス撮影を行う場合、シャッタースピードが速いため数秒の間隔をあけて撮影するのがおすすめです。雲の動きなどであれば15~30分を目安に200枚程度を撮影できれば充分な時間の経過を表現できます。その際は、カメラ内インターバル撮影機能や、インターバル機能付きのレリーズを使うのが良いと思います。反面、星空のタイムラプス撮影を行う場合、露出時間が長くなります。仮に20秒の露出で200枚撮影するとなると、1時間以上の撮影が必要となるわけですから、撮影感覚は限りなく短い設定が適しています。カメラ内インターバル撮影機能を使用する場合は、撮影間隔を「1秒」にします。そうでない場合は、レリーズを使用してレリーズロックをします。すると、スローシャッターでの連写になりますので最も短い間隔で撮影することが可能です。

 最近のカメラには、撮影した素材をカメラ内でタイムラプス動画に生成する機能を持つものがありますが、そうでない場合はタイムラプス動画生成ソフトを使ってPCで動画を生成します。

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テスト風景。左が昼に撮影している様子、右が夜→朝まで撮影したときのもの。タイムラプスはなめらかに見せるために基本的にスローシャッターを使う。そのため、左の画像のようにNDフィルターを使用してスローシャッターで撮影する。星空のタイムラプスの場合は右の画像のようにフィルターなしが基本だ。

 タイムラプス撮影は、三脚とカメラで撮影(固定撮影)ができますが、それをひとつの動画作品としてYoutubeやSNSなどにアップする場合、構図に動きが少なく視聴者にとってアクセントのない作品に感じられてしまう事も少なくありません。そこで役に立つのがモーション機器という動画に動きをつける機材です。これらの機材を使用して作成するタイムラプスをモーション・タイムラプスと呼び、モーション機器で表現する動きには、パン(横回転)、ティルト(縦回転)、レール(左右・前後の移動)の3軸があり、ポラリエUには、このうちパン(横回転)、ティルト(縦回転)の動きを表現する機能が備わっています。この機能はポラリエでも代用できますが、それをより完成度の高いものにする「SMS(シュート・ムーブ・シュート)」という機能がポラリエUに搭載されています。

 ポラリエUに搭載された「SMS」とは、露出中はモーションが止まり、露出が終わるとモーションが動くという動作のこと。撮影枚数分繰り返すことにより、一枚一枚のシーンが完全な静止画になる。ポラリエにはこの機能がなく、露出中も常に回転している状態だったため、少しぼやけた印象のタイムラプス動画に仕上がっていました。近年4K・8Kと動画も高画質になってきている中、さらなる高画質を求めて生まれた技術になります。実際にSMSあり・なしでどれだけ変わるのか、同じ条件で比較をしてみました。

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テスト風景

 右に動く星空を左に回転しながらタイムラプス撮影。後半に月が昇ってきて山肌が徐々に照らされていくシーンを撮影ました。どちらのカメラもISO3200、f2.8、SS30秒で撮影しています。

ポラリエでパンモーションを加えて撮影した動画がこちら。

ポラリエ(SMSなし)

次にポラリエUでSMS機能を誓ってパンモーションを加えた動画がこちら。

ポラリエU(SMSあり)

 おわかりいただけますでしょうか。ポラリエで撮影したものはぼんやりしているのに対し、ポラリエUで撮影したものはそれよりもシャープで、手前の手すりの模様などもはっきり写っています。これでもかなりの差がありますが、それぞれから一枚ずつ切り取って拡大してみましょう。

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SMSあり・なし比較1
動画の一部を比較してみましょう。左はSMSなし、右はポラリエUでSMSあり。左は回転しながら露出しているので、輪郭がぼんやりしていますが、右は露出中に回転が停止しているので輪郭がはっきりしている。

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SMSあり・なし比較2
星空の部分を拡大してみましょう。同じく左はSMSなし、右はポラリエUでSMSあり。最も動きの少ない北側の星を拡大。左の画像は回転方向に星が流れているのに対し、右の画像は星を点で写すことができた。星の流れ方は、撮影する方角によっても変わってくるが、SMS機能によって近景・遠景の双方にこのような差が出る。

 これが、ポラリエUに搭載された新機能「SMS(シュート・ムーブ・シュート)。より高精細なタイムラプス撮影をする上で、欠かせない機能です。ポラリエUは回転速度を10倍速まで制御することができるため、昼夜を問わずモーション・タイムラプスを楽しむことができます。

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 ちなみにポラリエUでSMS機能を制御するのは専用アプリで、android、iOSでポラリエUとWi-Fi接続することで、制御が可能となります

まとめ


 星空撮影はとても奥が深く、広い可能性を秘めている。こういったひとつの機材で様々な用途が楽しめると、星空撮影への夢は広がるばかり。みなさんもこの新しい分野へ挑戦しぜひ楽しんで欲しいと思う。