モデルの気持ちがわかるポートレート撮影術 ~オススメLUMIXカメラ&レンズ~

パナソニック LUMIX G9 PROで撮影した女性のポートレート.jpg

はじめに



 ポートレート撮影のテクニックは沢山ありますが、今回は、元モデルの女性写真家として、撮られる女性モデルの気持ちをお話しながら、コミュニケーション術を併せてレクチャーしたいと思います。

 今回使用しているカメラはパナソニックのLUMIX G9 PROです。ハイエンド・ミラーレス一眼として、ポートレート撮影で長く愛用しているカメラです。このカメラの高性能な顔・瞳認識AFと6.5段の頼れる手ブレ補正機能のお陰で、ポートレート撮影の自由度がぐんと上がりました。モデルがターンをしている体と顔にピントを合わせ続けてくれるなんて、一昔前には想像もできませんでしたよね!

 そして、このカメラと相性のいい、ポートレート撮影用のレンズは「LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.」を、声を大にしてお勧めします。開放絞り値F1.2の、いわゆる大口径の中望遠レンズですが、製品名にライカを冠するだけあって、モデルが画面から浮き上がって見えるほどの立体感と、滑らかなボケのグラデーションを実感できるレンズです。

 素早いAF、光学式手ブレ補正搭載はもとより、使っていて楽しい高級感のある金属外装もポイントが高いです。持つ喜び、使う楽しさは撮影する際のテンションに繋がります。このカメラ&レンズのセットは、ポートレート撮影をより楽しくしてくれます。

女性を柔らかく表現してくれるSライン


Sライン.jpg
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■撮影環境:F1.2 1/100秒 ISO200 AWB
■モデル:大城優紀


撮影テクニック


 女性の体の曲線を構図の中に組み込むと、優しさと柔らかさを表現することができます。具体的にどうすればいいかというと、アルファベットのSやCの字をモデルの体や腕、頭などを使って描くようにします。この作例では、頭頂部から肩まで、肩からウエストまで、ウエストからヒップラインまでをゆるやかな曲線でつないで、Sの字を描くようなポーズと構図にしています。

 まっすぐ平行にカメラの前に立ってしまうと曲線が描きにくいので、斜め後ろを向いてもらって振り向くようなポーズにすると、モデルの体で自然な曲線を描きやすくなります。

 髪や顔の辺りに手を持ってくるポーズは、目線の行きやすい顔周りを華やかにするテクニックのひとつです。このような構図の場合、カメラに近いほうの手を上げたり曲げたりすると、遠近感の関係で太く見えてしまいますので、カメラから遠いほうの手をポーズに使ってもらいましょう。

コミュニケーション術


 撮影の最初のカットは、上半身か膝上位の構図のカットにして、大声を出さなくてもモデルと話ができる距離から撮影しましょう。

 何回も撮らせてもらっていて、お互いに慣れているモデルなら話は違いますが、撮影スタート時にいきなりどアップのカットから撮り始めてしまうと、プロのモデルといっても、顔に多少の緊張が出てしまいます。

 また、超望遠レンズで遠くから撮り始めてしまうと、モデルにポーズ指示の声が届きにくく、コミュニケーション不足になり、打ち解けるまでの時間が通常よりも長くかかってしまったりします。

 ポートレート撮影のキモはモデルとのコミュニケーションです。お互い感情のある人間同士の撮影ですので、モデルのいい表情を引き出したかったら、コミュニケーションをしっかりと取るようにしましょう。

 そこでまず行って欲しいのは、声を出すことです。ポーズ指示はカメラを構えながらでも、シャッターを押しながらでも、大きな明るい声で伝えてあげましょう。ファインダーを覗く・液晶を見ながら撮影していると、顔の前にカメラがあるので声が遮られて、意外とモデルまで届きにくいのです。

 男性の場合、低い声は空気に乗りにくいこともあるので、電話に出るときのワントーン高めの声を意識するとちょうどいいでしょう。

流れるポーズのなかに潜むベストショット


流れ.jpg
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■撮影環境:F1.2 1/1000秒 ISO200 AWB
■モデル:大城優紀


流れ_連続.jpg

撮影テクニック


 ふとした仕草や、動作の一瞬にベストショットが潜んでいます。大体の構図と、動いてもらうスペースやイメージをモデルに伝えて、自由に動いてもらうと、自分が指示したのとはまた違う、躍動感のあるポートレートが撮れます。

 今回使用したLUMIX G9 PROは、モデルの顔と瞳にピントを合わせたAFモードのまま、約20コマ/秒の超高速AF追従連写モードがありますので、ピント合わせに追われることなく、モデルの動きを追うことに集中できます。

 さらに人体も認識するので、後ろ姿もピントを合わせ続けてくれます。振り向いた一瞬の表情を逃さず撮れるのが、本機最大の強みです。

 また、全身撮影だから広角レンズを使おうなどとは、思わないようにしましょう。背景をボカさずにしっかりと写し込みたいときは広角レンズが有効ですが、作例のように、背景はふんわりとボカして被写体を浮かび上がらせたい全身撮影の場合は、中望遠の描写が綺麗な単焦点レンズがお勧めです。

 筆者は、通常のポートレート撮影ではアップでも全身でも、今回紹介している「LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.」で撮影することがほとんどです。

コミュニケーション術


 ポーズの指示をするときに、右や左などの方向を指示することがあると思います。この場合は、モデルから見ての右、左で指示するようにしましょう。

 たとえば、自分から見て一歩右に動いて欲しいときは「(モデル)さんの左に一歩動いてください」と、右回りに回転して欲しかったら「時計回りにゆっくり回転してください」と伝えると、モデルがスムーズにポーズできます。さらに、自分のことを思いやって撮影を行ってくれていると感じられて、撮り手に対する親近感と信頼感が増します。これも、コミュニケーションのひとつになります。

 ただ、撮影しながらモデルから見ての右・左に変換してポーズ指示するのが混乱してしまう方は、カメラを持っていない左手で矢印を作って、右の方向を指して「あっちに一歩動いてください」などと、体を使って指示をすると混乱が少なくなります。

ピントのセオリーはカメラに近いほうの目のマツゲの根元


パナソニック LUMIX G9 PROで撮影した女性のポートレート.jpg
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■撮影環境:F1.2 1/100秒 ISO200 AWB
■モデル:山内エレナ


撮影テクニック


 ポートレート撮影のセオリーとして、特に他の意図がないとき以外は、ピントはカメラに近い方の目にします。もっと言ってしまうと、カメラに近いほうの目の上まぶたのマツゲの根元にピントを合わせると、拡大再生したときにマツゲが一本一本数えられるくらいシャープに描かれて、瞳の印象が強いポートレートになります。

 昔は一点のフォーカスポイントでここにピントを合わせていたのですが、LUMIX G9 PROは、顔・瞳認識AFがこのポイントにしっかりとピントを合わせてくれるので、ピントはカメラ任せにしてしまってもOKです! あえて奥の瞳にピントを合わせたいときは、モニターで任意の瞳をタッチしてピントを切り替えましょう。ファインダー撮影時は、ジョイスティックでのピント切り替えが便利です。

 両方の瞳がほぼ平行にカメラに対しているときは、どちらの瞳にピントを合わせてもいいのですが、より明るい瞳に合わせると見やすいポートレートになります。

コミュニケーション術


 ここでNGワードをひとつお教えしましょう。「彼氏」です。ポーズや表情の指示のときに、「彼氏と待ち合わせしている感じで」とか、「彼氏と部屋でくつろいでいるようなゆったりした表情で」などと言う方がいるのですが、モデルとしてどういう表情をしていいか、はっきり言って悩みます。

 実際に彼氏がいるか、いないかは置いておいて、その指示に従ってうきうきしている表情や、リラックスしたムードを演じてしまうと、「ああ、やっぱり彼氏いるんだね」、「彼といるときはそんな顔してるんだね」などと言われてしまうからです。

 モデルにも色々なタイプがいて、ファッション誌やコマーシャルがメインのモデルもいれば、ファンが付いてくれていて、その方々のお陰で撮影会やライブ配信ができているタイプのモデルもいます。後者のモデルはアイドルと一緒だと思ってください。

 アイドルが握手会で彼氏の話をしますか? ライブ配信を彼氏としますか? あなたはそのモデルに彼氏がいても、いなくても関係ないかも知れませんが、同じ会場に、そういうことにこだわりを持っているファンの方がいらっしゃらないとも限りません。モデルのことを思うのであれば、「彼氏」のワードは口にしない方が安全だと思ってください。

 じゃあ、どういう言葉で表情を引き出すか。たとえばうきうきした楽し気な表情が欲しかったら「これから友達とケーキバイキングに行く待ち合わせ中で、お店のサイトの写真で見た、ショートケーキと濃厚そうなチョコレートケーキが頭に浮かんじゃって、思わずにこにこしちゃうくらいうきうきしている様子で」とか、「休日に間違って早起きしちゃったけど、もう一度寝直せる幸せをかみしめて、もうすでに眠くなってきちゃった、まったりした表情で」などと、テレビCMのようなショート・ストーリー仕立てでイメージを伝えてあげると、演じるモデルもわかりやすく、楽しんで演じられます。

 そこまでしっかりとストーリーを組み立てられなくても、してもらいたい表情を、言葉を沢山使って伝えるというひと手間はとても大切です。そこをさぼらないことで、モデルとの信頼関係は構築されていきます。つたない言葉でも、いい言い回しが見つからなくてもいいのです、「がんばって」伝えてくれていることが、モデルに伝わることが大事なのです。

美肌の秘訣はほんの少し明るめ!


美肌.jpg
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■撮影環境:F1.2 1/125秒 ISO400 AWB
■モデル:辻 美咲


撮影テクニック


 露出、つまり明るさのお話です。ポートレートは逆光か半逆光の状態で撮影することが多いので、そのままだと顔は暗く写ってしまいます。そのため、レフ板で光を回したり、ストロボで明るく起こしたりもしますが、ポートレートでは露出の調整は必須になります。そのときの顔の明るさの基準は、見た目よりもほんの少し明るい露出がお勧めです。

 見た目の通りの色味だと、少し暗めに写ってしまうことが多く、特に日本人の黄色味がかった肌色は、暗い露出だと土気色の不健康な顔色に見えてしまいます。女性の場合はほんの少し明るい露出にすることで、白い肌に透明感が増しますので、より活き活きとした印象の肌になります。

 さらに肌を綺麗に描くために、カメラに搭載されている画づくり設定を使用することをお勧めします。LUMIX G9 PROのフォトスタイル「人物」は、肌色を美しく、でも自然な色味で描き出してくれるのでお勧めのモードです。筆者がポートレート撮影をするときは、いつもこのモードを使用しています。

コミュニケーション術


 撮影位置やポーズによって、モデルのインナーが見えてしまうことがあります。肌色っぽいものが見えると、下着が見えちゃったのかとドキッとすると思いますが、大丈夫です、プロのモデルは見えちゃいけないものは絶対に見えないように、しっかりカバーしています。

 ただ、インナーが見えてしまうと、作品としては成立しなくなってしまいます。せっかく頑張ってポーズを取って表情を作ったのに、作品としてお蔵入りしてしまうのはモデル側も悲しいものです。ですので、見えちゃいけないものが見えていたら、モデルに教えてあげてください。

 照れながら「あの…ちょっと…胸元に…えっと」なんてしどろもどろされてしまうとモデルも照れてしまいますので、からっと明るく「胸元が見えそうなので、ちょっと直してください」と言ってください。

 撮り手とモデルは共同作品制作者です。ビジネスライクにさらっと言ってもらった方が、言われずに、見えちゃいけないものが写っている写真がPCのなかに保存されるよりも、より信頼のおける関係になれます。


ヒザが醸し出すかわいらしさ


ヒザ.jpg
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■撮影環境:F1.4 1/125秒 ISO200 AWB
■モデル:辻 美咲


撮影テクニック


 女性の女性らしさを強調するポイントとして、ヒザがあります。ヒザをチラッと構図の中に入れるだけで、ぐっと女性らしさが増します。ポイントは、スカートなどで覆われていないヒザにしましょう。肌色の丸みのあるヒザがちらっと見える効力は、意外と大きいのです。

 試しに、作例の左下のヒザの部分を手で覆って見てみてください。手を外して見てみてください。イメージがガラッと変わると思います。

 ヒザが出ていない衣装の場合は、ヒザが見えるように、スカートであれば不自然じゃない程度にふんわりとまくったり、たくしあげたりしてもらうといいでしょう。

コミュニケーション術


 モデルにはもちろん、モデルの衣装には断りなく触らないようにしましょう。ただ、モデルが届かないところや、意図する構図や衣装の状態があるときは、その旨をモデルに伝えて、許可を得てから作業するようにしてください。

 また、モデルには体がどこまで写っているかを撮影した写真を見せることや、口頭で教えてあげると、モデルはポーズが取りやすくなります。作例のように足が写っていないときは、その旨教えてあげれば他の部分のポーズに集中できるし、つま先まで入っていれば、足先まで綺麗に写るようなポーズを取れます。

 綺麗に写るポーズって、意外と筋肉を使うので疲れるのですよ。写っていないところも、場合によっては筋肉を使っていますが、休めるところは休ませないと、数時間の撮影の後半の疲労度が違います。プロのモデルたるもの、顔に疲れを出すことはありませんが、それでも人間なので、やっぱりつらいものはつらいです。

 撮り手側は、モデルが最後までベストコンディションで撮影に挑めるように、フォローしてあげる意味でも、無意味な筋肉は使わなくていいようにしてあげることをお勧めします。

写真の色味はイメージで決める



WARMとCOOL(1)

色味01.jpg
■左はWARMの作例、撮影環境:F1.2 1/640秒 ISO200 AWB(6384K)
■右はCOOLの作例、撮影環境:F1.2 1/640秒 ISO200 WB:5000K
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■モデル:大城優紀


WARMとCOOL(2)

色味02.jpg
■左はWARMの作例、撮影環境:F1.2 1/1000秒 ISO200 AWB(6156K)
■右はCOOLの作例、撮影環境:F1.2 1/1000秒 ISO200 WB:5000K
■撮影機材:パナソニック LUMIX G9 PRO + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
■モデル:大城優紀


撮影テクニック


 最近のカメラのホワイトバランスはとても優秀なので、見た目通りに撮るのにはオートを使用すれば大丈夫です。ですが、ポートレートの場合、色味を変えることでムードを変えることもできるので、ぜひ積極的に色温度設定を変えてみましょう。顔のアップの場合は、顔色が不自然な色にならないように気をつけないといけませんが、背景の色味が変わる作例のような引きのカットは、色温度で遊べるシチュエーションです。

 顔がこちらを向いているカットは、顔色が自然な「WARM」のほうがいいかな?とか、全身のカットは「COOL」のほうが背景の海の色味が面白くなるなとか、自分のイメージを表現する手段として、ホワイトバランスは使用できます。

 色温度を変えて撮影した写真は数字が小さくなればなるほど青味がかり、数字が大きくなると赤味がかります。筆者がポートレートでよく使用する色温度は4300K~5000Kです。作例は夕日の出掛かっている時間帯に撮影しているので、ホワイトバランスを通常よりも高く設定しています。

コミュニケーション術


 ここまで色々なコミュニケーション術をお話してきましたが、最後にお話ししたいのは、楽しく撮影することです。その楽しくは、撮影している自分だけではなく、モデルにも楽しんでもらえる撮影が一番です。

 その為には、黙ったままよりは、どういうムードや表情がいいかなどを細かく話してくれる方が、ポーズを取りやすいし、そのポーズがいいと思ったら「いい」と言ってくれれば、撮り手の好みを把握できるので、似た方向性のポーズを提案することもできます。

 そうやって撮っていった写真は、いい作品として仕上がります。モデルも自分の仕事のあがりとしていい写真が仕上がるのは、やっぱり何よりも楽しいのです。ポートレート撮影は自分だけで完結しないので、ぜひ、モデルとの共同作業として、コミュニケーションを沢山とりながら、作品づくりをしてくださいね。