ニコン D780レビュー | 動体撮影での適応力を検証

ニコン D780で野鳥を撮影した際のスルー画.jpg

はじめに


 D780 は、ニコンの一眼レフカメラD5のAFアルゴリズムを最適化した51点位相差AFシステムを搭載。さらに、同社一眼レフカメラとしては初めて撮像素子に位相差センサーを組み込むことで、FXフォーマットの水平・垂直約90%の広範囲を237点もの測距点で網羅する像面位相差AFシステムを採用。
 画像処理エンジンには最新のEXPEED6を搭載し、ライブビュー撮影時のAF測距性能は同社ミラーレスカメラZシリーズと同等の快適性を実現。ファインダー撮影・ライブビュー撮影の両方の機能に同社の最新技術を与えられた真のハイブリッド一眼レフと呼べるカメラです。

 その先進のAFシステムによる動体撮影時の被写体捕捉やAF追従の実力、使い勝手をファインダー撮影とライブビュー撮影の両面で探ってみました。

 今回は全ての撮影でレリーズボタンを半押ししてAF制御を継続的に行うAF-C(コンティニュアスAFサーボ)に設定。ピントを合わせる測距点の選択はファインダー/ライブビュー撮影それぞれで、撮影シーンに応じて変更。一部は同シチュエーションで異なるAF設定を撮り比べています。

 使用AFフレームを表示した再生画面や撮影時の実際のライブビュー画面のキャプチャー動画を掲載します。作例と合わせて見ていただくことでD780での撮影フィーリングを疑似的に体感できると思います。

鳥の飛翔をファインダー撮影で狙う


 カモメは海や港の近くで多く見かける身近な野鳥です。羽根を伸ばせば適度な体長サイズがあり、飛び方も力強く羽ばたく姿やスピード感のある滑空、急旋回。風を受けてホバリングをするなどの豊富なバリエーションを、様々な高度や距離感で見せてくれるので、特に望遠レンズで被写体追従するスキルを磨く練習相手として最適です。

 最初の検証では望遠ズームの AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRを装着したD780で、飛び回るカモメをランダムに狙い撃ちする撮影をしてみました。最もベーシックな撮影設定ともいえる51点のAFエリアを全て使用するオートエリアAFモードでの撮影です。



 オートエリアAFでは必ずしもファインダーの中央で被写体を捕捉していなくても、51個並ぶAFエリアのどれかに被写体の一部が重なっている状態にすると高い確率でピントを合わせ続けます。実際に測距に使用されたAFフレームを再生画面で表示して確認するとカモメの動きや移動に応じてAFエリアが切り替わりながら捕捉を続けている様子がわかります。

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ニコン D780で野鳥を撮影した際のスルー画.jpg
■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:500mm f/5.6 1/640秒 ISOオート (ISO 180)


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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:500mm f/5.6 1/800秒 ISOオート (ISO 400)

 一羽の飛翔をファインダーで追えるのはせいぜい数秒間程度と短い時間ですが、時間帯によっては群れで飛翔するカモメを次々と狙えるチャンスもあります。ファインダーで目当ての被写体を素早く捕捉し構図も意識しながらベストなタイミングで撮影する一連の動作をこなすのは、やはり光学ファインダーを持つ一眼レフの得意とするところです。

 右目はファインダーを注視しつつも、左目で周囲の状況判断をしやすい事や、一時的にピントがずれて多少ボケた状態でも光学ファインダーなら被写体を捉えやすい点は、ミラーレスカメラのEVF性能が向上しても、まだ一眼レフの光学ファイダーが勝っているからです。

 特にD780はガラスペンタプリズム使用で視野率100%という光学系を更に向上し、従来機よりも一段と見やすくなったファインダーでリアルタイムに被写体を追えることも、動体撮影では大きなアドバンテージと言えます。
 カメラ方向に向かって飛んでくる正面気味のフォルムは、AFエリアに重なる被写体面積が少ないためAF条件的には厳しいものがありますが、思いのほかしっかり捉えられていることにD780 のポテンシャルの高さを感じます。

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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:500mm f/5.6 1/800秒 ISOオート (ISO 450)


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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:500mm f/5.6 1/640秒 ISOオート (ISO 140)

迫りくる電車を構図固定で撮影した場合のAF追従性能を撮り比べ


 カモメの撮影ではカメラを動かして被写体をAFエリアに重ねる撮影をしましたが、こちらでは構図を固定してAF追従性を検証します。

 ゆるやかなカーブを走行しながらカメラに接近してくる列車の先頭車両を追尾可能なAF設定で連続撮影しました。カメラは三脚に装着して撮影中の構図変更は行っていません。画面内を移動する先頭車両部分へのAFの食いつきと追従性を検証するため、列車がかなり遠い位置にある段階から連写をスタートし、先頭車両が真正面を向いた1カット前(先頭車両左側面が僅かに見える画像)をベストショットと見立て掲載しています。

1.ファインダー撮影 3-Dトラッキング


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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:320mm f/9 1/125秒 ISOオート (ISO 100)




 光学ファインダーの撮影では、画面の中心部分に配列された51のフォーカスポイントを利用した複数方式のAF測距が行えます。

 中でも3DトラッキングAFは、1点を指定して測距を開始するとシャッターボタンを押している間は、構図や被写体が移動するとそれに合わせてフォーカスポイントが自動で切り替わりながら被写体を追尾します。
 本来はスポーツシーンなどで予測できない動きをする被写体を、ファインダーで追うスタイルの動体撮影を主眼に置いたAFモードです。
 しかし、このシーンでは構図の変化はないので、再生画面で連写画像を送りながら見ていくと先頭車両の移動にあわせてAFポイントが切り替わっている様子がわかります。
 撮影開始から掲載した作例までドライブモードHの7コマ/秒で連続撮影した57画像の全てでしっかりと合焦しており、優秀な位相差AFシステムと言えるでしょう。

 なお、このシーンにおいて、他のファインダー撮影用のAFエリアモードを選択した場合、測距開始と同時に画面内に主被写体ではない要素(電柱等)に合焦してしまうことや、先頭車両に合焦しても画面内の移動に追従対応できないケースもあり、特に3Dトラッキングの有効性が際立つ形になりました。

2.ライブビュー撮影 オートエリアAF (サイレント撮影)


 ライブビュー撮影時は像面位相差AFセンサーで測距可能な範囲が大きく広がり、画面の周辺部分でもAFが可能になります。このシーンのように、構図を固定した条件で被写体の動きに対応できるAFエリアは、カメラが自動的に全てのAFフレームから被写体を判別して、AFフレームエリア内で被写体にピントを合わせるオートエリアAFが便利です。
 また電子シャッターを利用するサイレント撮影を設定すると、連写速度が最高で12コマ/秒にアップしてAF/AE追従が可能です。

 実際の撮影ライブビューを動画キャプチャーして見ると、電車が画面内に進入後、2回目までのAF測距(シャッターボタン半押し)では電柱部分に合焦していますが、3回目のAF測距で先頭車両を被写体と判断して測距でき、それ以降の撮影コマでは正確にAF追従ができています。

 撮影開始のタイミングが少々遅くなった関係で、掲載の作例画像までにシャッターを切れた枚数は44枚。光学ファインダーは遠くの動く被写体に素早くピントを合わせて撮影が出来たので、それよりは撮影開始が遅れ撮影枚数は少なくなりましたが、高速に測距する像面位相差AFのおかげでリカバリーでき、欲しい画像も撮れています。

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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:390mm f/5.6 1/320秒 ISOオート (ISO 100)




3.ライブビュー ターゲット追尾AF(サイレント撮影)


 ライブビュー撮影のオートエリアAF設定時にOKボタンを押すと、フォーカスポイントがターゲット追尾AF用の形に切り替わり、ターゲット選択画面になります。
 被写体にこのAFポイントを重ねてOKボタンを押すか、レリーズボタンを半押ししてAF測距を作動させると、追尾を開始してフォーカスポイントが移動します。

 作例では構図を固定しているためマルチセレクターの操作で先頭車両が通過する位置に移動しておき、通過のタイミングに合わせてターゲット追尾AF撮影を開始しています。
 先頭車両に確実にAFが食いついて追尾を継続できる位置はファインダー撮影での3Dトラッキングよりは手前になりましたが、ライブビューオートエリアAFよりは遠くの段階から構図内の他の要素に影響されることなく測距と追尾が出来ています。

 撮影開始から作例画像までの間に切れたのは62コマで全てピントがずれることなく良好な撮影結果を得ました。サイレント設定は電子シャッターを使うため連写速度は上がりますが、被写体の速度や移動方向などによっては像が歪んで写ることがあるので注意しましょう。

 なお、通常のライブビューでターゲット追尾AF撮影をした場合の撮影コマ数は22となりましたがAF合焦結果は他の方式と比べても遜色はなく同様に撮影した全コマで良好な結果となりました。

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■撮影機材:ニコン D780+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
■撮影環境:320mm f/5.6 1/125秒 ISOオート (ISO 180)




インラインスケートのジャンプを捉える


 最後のシーンは、少しハードルを上げてアグレッシブインラインスケートを被写体に選びました。躍動感溢れるシーンの撮影にはファインダーで被写体を捕捉する一眼レフカメラとしての使い方が有利なことは言うまでもありません。

 しかし、D780はライブビューでの撮影においてもミラーレスカメラZシリーズとも互角のAF性能を搭載していることや、チルト式液晶モニターを備えており、液晶固定式の一眼レフカメラよりも圧倒的に自由なアングルからの撮影ができるのですから動体撮影でも積極的に利用すべきでしょう。

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■撮影機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
■撮影環境:22mm f/4 1/2500秒 SB5000 ISOオート (ISO 200)
■インラインスケート ライダー:Yuki Kishiro
■撮影協力:MURASAKI PARK TOKYO




 カメラの直前を駆け抜ける瞬間を撮影してみました。被写体との距離は1,2メートル程度(安全な場所から撮影しています)で撮影時のライブビュー動画からも、目の前を通り過ぎるスピードの速さが分かると思います。

 このシーンはローアングルの手持ち撮影のためチルト式液晶モニターを利用し、被写体追従はせず構図はほぼ固定。オートエリアAFに設定し助走からタイミングをはかり撮影しています。シャッターチャンスは一瞬のため、AF測距を開始した際の食いつきかた次第でピントの結果に多少の差が生じることがありましたが、AF測距性というよりもレリーズボタンを押すタイミングのズレによる影響も大きいようで、撮影者自身が場数を踏んでコツを掴めば精度はより向上するはずです。

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■撮影機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
■撮影環境:32mm f/4 1/3200秒 ISOオート (ISO 200)
■インラインスケート ライダー:Yuki Kishiro
■撮影協力:MURASAKI PARK TOKYO




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■撮影機材:ニコン D780 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
■撮影環境:52mm f/4.5 1/2500秒 ISOオート (ISO 400)
■インラインスケート ライダー:Yuki Kishiro
■撮影協力:MURASAKI PARK TOKYO


 最後は空を背景に高いジャンプが決まったシーンを狙いました。駆け抜けるシーンとは異なり、ジャンプ台がブラインドとなり助走やジャンプ直前の挙動を目視できない状態での撮影です。
 いきなりフレーム内に飛び込んでくる被写体でしたが、僅かな滞空時間と被写体の大きさもありファインダー撮影、ライブビュー撮影ともにオートエリアAFで問題なく合焦成功できています。

 しかしオートエリアAFは、カメラに近い分部にピントを合わせる特性があるため脚やスケートに合焦することもあります。
 もとより被写界深度の深い超広角レンズのため、スケート部分に合焦していたとしても大きく印象が変わってしまうことはありませんが、厳密に人物にピントを合わせるには、ファインダー撮影では数点のAFエリアのみ限定して測距するグループエリアAF、ライブビューモードではワイドエリアAFが有効です。その場合は、フレーム内の何処に被写体を配するか構図をイメージし、それに適した位置に予めAFフレームを移動しておくことが大切です。

 実際に撮影をするまでこのシーンでは、ライブビュー撮影のほうが不利かと想像をしていました。しかし、ジャンプのスタートが見えない状況下でも顔がカメラから離れていることで、ファインダーを覗くスタイルよりスケートの音を聞き取りやすく、タイミングをあわせてレリーズできました。この点はライブビュー撮影の利点とも言えます。

 しかし、ジャンプの高さの違いなどに瞬間的にフレーミング修正で対応する場合にはカメラをしっかり保持できるファインダー撮影の方が適しているように思います。

まとめ


 D780は一眼レフとしての光学ファインダー×51点AFエリアと、ライブビュー撮影では273点像面位相差センサーにより、高速かつ精度の高いAF測距を実現できるハイブリッド機種です。従来の一眼レフカメラユーザーにとってライブビュー撮影は被写体が動く要素の少ない風景やテーブルフォト用の印象が強かったかもしれませんが、D780にはそれを払拭する動体への十分な適応力が備わっていることがお分かりいただけたと思います。

 ファインダー撮影、ライブビュー撮影それぞれのメリットをシーンや表現意図に応じて撮影者が自由かつ臨機応変に使いわけができるのです。また豊富なニッコールレンズ群をそのまま利用できるのも一眼レフカメラD780だからこその大きな魅力と言えるでしょう。