富士フイルム XF56mmF1.2 R APDレビュー|ボケと描写性能をポートレート撮影で検証

XF56mmF12 R APDで撮影したポートレート_1.jpg

はじめに


 美しいボケと高い描写性能がウリの FUJIFILM XF56mmF1.2 R をベースに、ボケの輪郭を柔らかくする APD(アポダイゼーション)フィルターを搭載し、さらに美しいボケ味を目指したレンズが、今回扱う FUJIFILM XF56mmF1.2 R APD です。XF56mmF1.2 Rを所有している筆者が、APDと比較して気付いたことやレンズ選択の方法をレビューしてみようと思います。

大口径ながらコンパクトなレンズ


 35mm判換算で85mmと中望遠の焦点距離を持ち、開放F値は1.2という大口径レンズ。ただし、APDフィルターを挟んでいるため、実F値は開放でF1.7となります。APDフィルターの効果は開放で撮影した際に最も効果が出るため、明るい場所でも積極的に開放値で撮影を楽しんで欲しいとの配慮から、約3段分のNDフィルターが付属しています。

 大口径レンズのため、405gという重量は手にとると塊感を感じますが、取り扱いやすい重さでもあります。全長69.7mmでフィルター径も62mmなので全体としてはコンパクトにまとまっており、金属ならではの質感が高品位な外観を保っています。

 今回はX-Pro3と組み合わせて撮影をしました。大口径とはいえ全長がそれほどでもないため、カメラとレンズのバランスはとてもよく、X-Pro3 のチタン外装と相まって、高級感を伴った雰囲気を漂わせていました。

APDによる柔らかさとシャープネスの共存


夕日のポートレート_2.jpg
■撮影機材:富士フイルムX-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO160、F1.2、1/1100sec、56mm、Pro Neg. Std
 海面に太陽の反射がきらめくタイミングでの撮影です。通常のレンズですと海面の反射の丸ぼけは、もっとエッジが効いたキラキラした感じになるのですが、APDフィルターのおかげで丸ぼけのエッジが柔らかくなっており、逆光の具合やモデルさんの表情と相まって、優しさや儚さがより伝わる写真に仕上がっています。


振り向く女性のポートレート_3.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO160、F1.2、1/480sec、56mm、ASTIA
 ボケの柔らかさが特徴とはいえ、当然シャープに写すべきところはシャープに写ります。元々描写性能がとても高い XF56mmF1.2 R をベースにしているため、基本的な描写性能に関しても文句のつけようがないでしょう。開放で撮影してもフォーカス面にある髪の毛やまつげは一本一本シャープに描写されます。

作例_4.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO200、F3.6、1/420sec、56mm、クラシックネガ

 X-Pro3から搭載された新フィルムシミュレーション、クラシックネガを使ってみました。後ろからの光でハイライトがはいった腕や金属感あふれるスマホ、そしてAPDフィルターの効果でなだらかに柔らかくぼけていく自動販売機の描写に注目して下さい。

 さすがに56mmだとスナップに使うにはやや長めの印象がありますが、立ち位置や切り取り方の工夫で対応できるので、このレンズをお使いになる方は、APDフィルターをいかした56mm開放スナップ撮影にチャレンジしてみると良いでしょう。出てくる絵を頭の中でイメージして逆算的に撮るような手法は、まるでパズルを解いているような感覚で面白いと思います。

開放時のなだらかなグラデーションのようなボケが真骨頂


海辺で花束を持つ女性_5.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO160、F1.2、1/80sec、56mm、Pro Neg. Std
 ちなみに本レンズはAPDフィルターを内蔵している為、位相差AF内蔵機種であってもコントラストAFでのオートフォーカスとなります。そのためフォーカス速度はやや遅め。とはいえ最近の機種であればコントラストAF速度もかなり速くなっているので、遅すぎて撮れない!ということはないでしょう。「ワンテンポ遅れる」ということを念頭に置いて撮れば大丈夫。


女性のポートレート_6.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO160、F4.0、1/340sec、56mm、Pro Neg. Hi

 F4.0まで絞ってみました。開放でも十分シャープではありますが、少し絞ったことで得られるシャープな感じと被写体の立体感は格別です。レンズの基本性能が高いからこそ得られる描写と言えます。

 ちなみにF5.6まで絞ると、APD無しの XF56mmF1.2 R と同等の描写になります。ですから、APDの特徴を最大限活かした撮影をしたい場合は、開放近くのF値を活用しましょう。


女性のポートレート_7.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO250、F1.2、1/80sec、56mm、クラシックネガ
 このカットではあえて唇にフォーカスを合わせています。フォーカスが合ってシャープに描写された箇所から徐々になだらかなグラデーションのようにボケていくのがこのレンズの真骨頂です。やはり女性の肌を美しく表現したい時にはベストマッチのレンズですね。わずかにフォーカスアウトした瞳の描写も柔らかく、なにか訴えかけているかのようです。


女性のポートレート_8.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF56mmF1.2 R APD
■撮影環境:ISO800、F1.2、1/80sec、56mm、Pro Neg. Hi
 なお、開放時の実F値が1.7ということは、ノーマルの XF56mmF1.2 R と比べるとそれだけ暗くなっていることを意味します。つまり、暗い場所での撮影では(F1.2と比較すると)ISOは上がりがちになりますし、それだけ手ぶれにも気をつけないといけません。

 特にXF56mmF1.2 R と併用している場合は、XF56mmF1.2 R だと手持ちで撮れた環境でも、XF56mmF1.2 R APD で撮るとISOが上がり、手ぶれしやすくなるので注意が必要です。

肌を美しく表現したい人におすすめ


 APDの威力は絶大で、基本的な描写性能もとても高く、XFマウント唯一無二の滑らかで美しいボケを手に入れることができます。個人的な要望を述べると、もう少し寄れるか、もしくは焦点距離が長ければ、よりAPDの効果が強調されるので表現の幅が広がると思います。

 ノーマルの XF56mmF1.2 R と迷っている人は、イルミネーションを撮ったときに現れる丸ボケをカリッと表現したい場合はノーマルの XF56mmF1.2 R を、ポートレートなどで肌を美しく表現したい場合は XF56mmF1.2 R APD を選ぶようにすると良いのではないでしょうか。