ライカ M10-Rレビュー|コムロミホ

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はじめに


 長い歴史の中でカメラのデザインや撮影スタイルを引き継ぎながら作られてきたM型ライカ。そして、2020年7月また新たにM10-Rというカメラが登場した。M10をベースにM10-P、M10-D、M10モノクロームときて、今回、高画素タイプのカメラが加わることになった。

高画素機としての表現力


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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/3000秒 ISO100 焦点距離50mm

 M10-RのRはResolutionの略で、高画素機であることを意味している。M10は2400万画素なのに対して、M10-Rは約4000万画素の画像素子を搭載している。それにより、少し離れたところにある東京タワーのディテールも細かく解像し、建物や手前の木の質感もリアルに表現してくれている。特に驚いたのは写真を拡大してみてみると、東京タワーの右奥に小さくヘリコプターが飛んでいるのを確認できたことだ。肉眼では感じることができないところまで写っているのが高画素機の面白さの一つかもしれない。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/180秒 ISO100 焦点距離50mm

 上の写真はカメラの設定をあれこれ触らずに、デフォルトの設定で撮影を行った。見たままの色を生かしながらも深みのある色表現で、しっとりとした曇りの日の雰囲気を出すことができた。撮って出しのjpegデータでも十分に作品として使用できるレベルだ。この表現力が作品を撮る意欲を十分に掻き立ててくれる。

アポ・ズミクロンとの相性


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 今回はM10-Rの実力を生かせるようにレンズはアポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.を使用した。アポ・ズミクロンはアポクロマートレンズを使用し、現代のデジタルカメラの性能を最大限に引き出すために設計されたレンズで、絞り開放から極めてシャープな描写を楽しめる。それでいて、滑らかで美しいボケを両立しているのが特徴だ。絞り開放のF2で撮影すると、それらを両立できるため、個人的には絞り開放で使うべきレンズだと思っている。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/4000秒 ISO100 焦点距離50mm

 それにしてもM10-Rとアポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.との相性は最強だ。M10でアポ・ズミクロンを使用していた時も十分にその解像感を堪能できていたが、M10-Rと組み合わせると、さらにピント面がシャープになり、滑らかなボケを生かしながら撮影すると、今まで以上の立体感を写真に与えることができる。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO100 焦点距離50mm

 ピントを合わせた被写体が浮き立つように際立ち、何気ない1コマもドラマチックなワンシーンへと写し撮ってくれる。ライカに出会ってから今まで、このライカマジックに魅了されてきた。ライカは作品を撮る上でなくてはならない存在だが、M10-Rを使用すると更なる表現力を手に入れることができそうだ。

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■撮影機材:ライカM10-R + ズミルックス M f1.4/35mm ASPH.
■撮影環境:f/1.4 1/2000秒 ISO100 焦点距離35mm

 今回は解像感を活かすためにアポ・ズミク ロンを使用したが、ズミルックス M f1.4/35mm ASPH.のように描写が柔なかなレンズと合わせてもおもしろい。さらに柔らかな描写を楽しみたければ、オールドレンズなどのチョイスも面白いだろう。

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■撮影機材:ライカM10-R + ズミルックス M f1.4/35mm ASPH.
■撮影環境:f/1.4 1/4000秒 ISO100 焦点距離35mm

 純正に限らず、M型ライカに使用できるレンズは数えきれないほどたくさんあり、レンズ次第ではシャープにも、柔らかくも表現を楽しめる。画像処理でシャープネスを上げたり、やわらかくしたりすると不自然になってしまうが、レンズ本来の味を生かしながら表現方法に結びつけられる。レンズの性能を最大限に引き出してくれるM10-Rを使用すれば、表現の幅がさらに広がりそうだ。

望遠、マクロ効果を得るためのトリミング


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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO100 焦点距離50mm

 高画素機を使用するメリットはトリミング用途でも使用できる点だ。私はスナップにおいてトリミングをすることはないが、望遠効果を得たいときやマクロ的に被写体を切り取りたいときに行うことがある。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO200 焦点距離50mm

 たとえば、私が愛用しているアポ・ズミクロンの最短撮影距離は70cmのため、小さな被写体を画面いっぱいに切り取りたいと思っても叶わない。そういうときは接写リングを使用する方法もあるが、大概は撮影した後からトリミングしてマクロ効果を得ることが多いだろう。M10-Rであれば、1/4の大きさにトリミングしても約1000万画素確保でき、それはA3サイズにプリントする場合でも十分な画素数になる。

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上の画像をトリミングした作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO200 焦点距離50mm

M型ライカを使用する理由


 そして、M型ライカの良いところはカメラの操作がとてもシンプルな点だ。私が愛用しているM10とはほとんど外観も操作感も違いがないので、手にした瞬間から違和感なく、撮影を開始できる。違うところといえば、軍艦部分の「LEICA M10」が「LEICA M10-R」と刻印された文字が変わっているところくらいだろう。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO200 焦点距離50mm

 その場の露出を気にしながら、レンジファインダーから被写体を見て、ピントを合わせてシャッターを切る。ずっと変わらない撮影スタイルのおかげで新しいカメラでもしっくりと手に馴染み、ずっと使ってきたカメラのように使用することができる。

期待以上の高感度性能


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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/180秒 ISO1600 焦点距離50mm

 高画素機は実はメリットばかりではない。画素数が多くなることで、受光素子の面積が小さくなり、ダイナミックレンジが失われたり、高感度性能が悪くなる傾向がある。しかし、M10-Rはその2つを克服し、むしろM10よりも性能が高いというから驚きだ。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/3.4 1/4000秒 ISO100 焦点距離50mm

 まず、ダイナミックレンジに関してだが、明るい部分から暗い部分まで階調豊かに表現しており、特に暗部の粘りがあるように感じる。M10よりも性能が高いとされているが、個人的にあまり違いがなく、同じ感覚で撮影できるといった印象を受ける。

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ISO1600の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/160秒 ISO1600 焦点距離50mm


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ISO3200の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/125秒 ISO3200 焦点距離50mm


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ISO6400の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/250秒 ISO6400 焦点距離50mm


 次に高感度性能だ。ISO1600からISO50000まで設定を変えながら撮影を行った。ISO3200までは拡大すればノイズを確認できるが、そのまま見る分にはノイズがまったく気にらない。ISO6400からノイズが目立ち始めるが、許容範囲だろう。

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ISO12500の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/500秒 ISO12500 焦点距離50mm

 ISO12500はノイズを確認できるが、ノイズの粒が小さいため、フィルムの粒状感に近いのではないかと思う。これはこれで表現として使ったらおもしろいと感じた。ノイズを除去しすぎて、ディテールが壊れることもなく、ISO12500と思えないほど解像感も高い。

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左:ISO25000の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/1000秒 ISO25000 焦点距離50mm

右:ISO50000の作例
■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/2000秒 ISO50000 焦点距離50mm

 さすが、ISO25000とISO50000はノイズで画質が荒れてしまう印象がある。ノイズを目立たせたくないのであれば、ISO3200までが使いやすい印象。しかし、個人的にはシーンや被写体によってはISO12500までありなのではないかと思う。ぜひ作風に合わせて、自分の許容範囲を見つけてもらいたい。正直、高画素機ということもあって高感度性能はあまり期待していなかったが、ここまで頑張ってくれているのは嬉しい。ライカM9から使用しているため、その名残であまり高感度で撮影することはなかったが、あえて高感度で撮影するのも楽しそうだと感じた。

高画素機の注意点


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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/250秒 ISO1600 焦点距離50mm

 高画素なカメラは少しのブレでも写真に影響が出てしまうため、手ブレには気をつけたい。手ブレぎりぎりのシャッター速度で撮影するならば、ISO感度を上げて、シャッター速度を稼ぎながら撮影するようにしてもらいたい。この写真はISO1600で撮影しており、ノイズもなく、夜の横丁の雰囲気を引き出すことができている。そして、M10と比べてシャッター音が静かでシャッターによる衝撃によるブレも最大限に抑えられるようになっている。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2.4 1/90秒 ISO100 焦点距離50mm

 そして、高画素機は細部の表現力が高い分、ピントのずれが目立ちやすくなってしまう。写真のように被写界深度が浅いシーンや厳密なピント合わせが必要な場合はライブビューを使用し、ピント位置の拡大画面を確認しながら、ピント合わせすると便利だ。

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■撮影機材:ライカM10-R + アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
■撮影環境:f/2 1/90秒 ISO200 焦点距離50mm

まとめ


 今回、M10-Rでスナップしてみたが、一度この表現力を知ってしまうと、M10に戻れなくなる怖さがある。高い解像感を実現するだけでなく、高画素機とは思えないほどのダイナミックレンジと高感度性能を持ち合わせ、それでいて往年の撮影スタイルを貫いたM10-R。
ライカには様々なカメラがあるが、これからライカを使い始める方におすすめしたいのは、やはりM型ライカだ。前述したようにM10、M10-P、M10-D、M10モノクローム、そして、M10-RとM型だけでもさまざまなラインナップがある。撮る被写体や撮影スタイルに合わせて選択できるので、自分にぴったりなライカを選んでもらいたい。ちなみに私はシャッター音やシャッターフィーリングが好きで、M10を発売の2017年から愛用している。ぜひこのライカマジックを体感していただき、ライカのおもしろさにどっぷりとハマっていただきたい。


■写真家:コムロミホ
福島県出身。文化服装学院で学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。ニコン、パナソニック、オリンパスのカタログ撮影も担当する。ルミックスフォトスクール講師、オリンパスデジタルカレッジ講師、エプソンセミナー講師、ライカやリコーペンタックス、をはじめ多くのメーカーで講師を務める。

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