富士フイルム X-T4|抜群の安定感でどこにでも連れて行きたくなるパワフルなカメラ

片岡三果

X-T4レビュー

はじめに

 2020年4月28日に発売されたX-T4。初代X-T1から愛用し始めX-T2→X-T3と使用していました。前モデルは2018年9月20日に発売されましたので、1年半というスピードでパワーアップして登場しました。

 今回はX-T4購入から1年近く撮影し続けてきたからこそ分かった、このカメラの良さをレビューさせていただきたいと思います。

X-T4ってどんなカメラ?

 X-T4はAPS-CサイズのX-Trans CMOS 4センサー搭載のミラーレスカメラ。有効画素数は2610万画素。登場してから、わたしにとって1番の相棒カメラです。

 同じくフラッグシップ機であるX-Proシリーズはレンジファインダー搭載機。今回紹介するTシリーズは中央にファインダーを搭載しており、それぞれユーザーの撮影スタイルに合わせて選べるラインナップとなっています。

 今回のX-T4の登場で一番注目されていたのが「ボディ内手ブレ補正」機能搭載ということ。X-H1の登場でとても評価されていた機能がX-T4にも搭載され、さらには防振ユニットの小型化・軽量化の実現にも成功しています。現行レンズ群との組み合わせにより最高で5軸・6.5段という高い補正効果を発揮し、手ブレを抑えられることで写真も動画も以前より撮影がますます楽しくなるでしょう。

 また、引き続き防塵防滴なタフなボディですので、対象レンズとの組み合わせであらゆる天候でも安心して撮影に臨めます。新バッテリーNP-W235は、従来品の約1.3倍を誇る大容量の専用バッテリーです。長時間の撮影や寒い環境でも、今まで以上に頼れる存在となりました。 本体充電はUSB Type-Cに対応しており、給電しながら撮影することができます。インターバル撮影などの長い撮影時間の時も、モバイルバッテリーなどを使用することで給電できるので心強いですね。

暗いシーンでもAF迷わない!

 暗い場所でのAFの性能も、最大で-7.0EVの環境下でAFがしっかりと起動するため、フォーカスで迷うことがありません。遅めのシャッタースピードでもブレることなく、手持ちで撮影が楽しめます。
※露出補正については-5.0EVから+5.0EVまで対応。(動画の際は- 2.0EVから+2.0EV)

X-T4作例
■撮影機材:X-T4 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:ISO400 F1.1 SS1/20
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

 AF速度は最適化の環境では最速0.02秒という驚きの速さ。霧が立ち込めるような場所でもAF合わせは素早いです。この恩恵で、撮影者側はフレーミングやタイミングに集中することができます。

やっぱり推したい、フジの色。

 「色」はフジフィルムを使い続ける理由のひとつ。富士フイルムが長年培ってきた色再現の技術を簡単に作品に取り入れることができます。

 それをより実感するひとつは「空の色」。

X-T4作例2
■撮影機材:X-T4 + XF35mmF1.4 R
■撮影環境:ISO80 F1.4 SS1/15
■フィルムシミュレーション: Velvia

 自然が織りなす美しい色が移り変わる時間「マジックアワー」は、薄オレンジの「鴇色」から、紫がかった「紺色の花紺青」へと刻一刻と変化する薄明の時。「何色」とは一言で言い表せないほど壮大に広がる空のパレットを、見たままの色・残したい色で表現できるのが富士フイルムの素晴らしいところのひとつです。

 色表現でもうひとつの推しポイントは「肌の色」。ポートレート撮影時に気にしなければならないのは美しい肌色ですよね。

X-T4作例3
■撮影機材:X-T4 + XF16-55mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:ISO3200 F2.8 SS1/140
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■モデル:恋七(lena)

大事なポートレートのお作法

 撮影シーンによって、ダークな印象の仕上げや消えてしまいそうな儚い印象の仕上げなど、人肌は世界それぞれ。

 わたしが撮影時に意識しているのは「撮られる側が嬉しい肌色」です。 せっかくの撮影なのに肌への色被りが激しく、肌が美しく見えないトーンに仕上がってしまっては、「被写体が喜んでくれる写真」からは遠くなってしまいます。もちろん、難しい光源や環境での撮影ではうまく質感をコントロールできないこともあるでしょう。

 でもそんな時にX-T4なら、肌色はAWB(オートホワイトバランス) に頼りっきりでオッケーです。わたし自身モデル経験がある中で様々なカメラで撮っていただきましたが、いつも思っていたのは「フジのカメラで撮ってもらった時の肌色が好きだなぁ」という率直な感想です。

 写真家に転身して6年になり、その経験からいろんなカメラでポートレートを撮影してきましたが、やはりこのカメラが一番信頼できる確かな色を実感できるのです。

X-T4作例4
■撮影機材:X-T4 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:ISO800 F1.0 SS1/30
■フィルムシミュレーション: ASTIA
■モデル:矢沢なり

 AWBが非常に優れているので、日中の自然光下の撮影でも夜の様々な色の街灯が光輝く環境でも、あとから肌色を調整することもなくそのままの色で楽しめます。

 顔瞳AFの性能もバッチリです。しっかりとAFポイントが追従しますので、モデルさんに動いてもらいながらでも慌てずにしっかりカメラを構えて撮影に専念しましょう。

ボディ内手ブレ補正が使えてこの軽さ!

 カメラの重さはバッテリーとSDカード含めて約607g。わたしが標準装備としているXF35mmF1.4 Rレンズを装着すると約794g。この重さを他のものに例えると、ジーンズ1本分だそうです。この軽さなら、女性のわたしでも毎日持ち歩く相棒として全く苦になりません。

X-T4作例5
■撮影機材:X-T4 + XF35mmF1.4 R
■撮影環境:ISO320 F1.4 SS1/80
■フィルムシミュレーション: ACROS+Yeフィルター

 前機種のX-T3から約68gの重量増となった訳ですが、この差でX-T3には搭載されていないボディ内手ブレ補正の恩恵が受けられるのは、とってもとっても大きなメリットです!通常、ボディ内手ブレ補正を搭載するとシルエットが大きくなるものですが、ボディの厚みもX-T3と比べてほぼ違いを感じない造りになっています。

 美しいボディデザインを損なわずに機能は格段に向上。カメラ内はこの1年半で凄まじい進化を遂げたのですね。

毎日持ち歩きたくなる、そんなカメラです。

 カメラは持ち歩いてこそ。 現在世界的に大変な世の中になっていますが、自分ができる範囲で日常を写真に残すことはとても大切です。

X-T4作例6
■撮影機材:X-T4 + XF35mmF1.4 R
■撮影環境:ISO320 F1.4 SS1/80
■フィルムシミュレーション: クラシックネガ

 今は決して無理はしないこと。そのなかで見つかる自分の世界を写真に残す。 カメラと一緒に歩いていくと、普段では見過ごしてしまうような存在に気付けたりします。

X-T4作例7
■撮影機材:X-T4 + XF35mmF1.4 R
■撮影環境:ISO320 F1.4 SS1/240
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

 肉眼で見えている世界とはまた別の世界を表現することができるのも、カメラならではの楽しみです。アングルを変えてみたり、色温度を意図的に変えてみたり、レンズを変えてみたり。

X-T4作例8
■撮影機材:X-T4 + XF35mmF1.4 R
■撮影環境:ISO80 F8.0 SS1.0
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

 シャッターを開ける時間が1秒間でも、三脚なしで通過する車のライトの軌跡を表現できます。ボディ内手ブレ補正のおかげで撮影できる写真表現の幅が広がります。

 どんなシーンでもX-T4があれば、自分の想像の中の世界を具現化して写真に描くことができます。

液晶は便利なバリアングル式タッチパネル!

 撮りたい被写体が自分の目線の高さと差がある場所にあっても、X-T4の液晶画面はバリアングル式を採用しているのでローアングル、ハイアングルの撮影が簡単です。

 また、動画配信の際に自分の顔を確認することや、手持ちでセルフィー撮影など3方向チルト式のX-T3ではできなかった、アングル確認をしながらの撮影ができます。

X-T4作例9
■撮影機材:X-T4 + XF23mmF2 R WR
■撮影環境:ISO400 F2.0 SS1/35
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

 このご時世ですので被写体がわたしの作例が多くて失礼いたします。腕を伸ばした状態、かつ片手でずっとセルフィーの構えは少し重みを感じますが、X-T4のバリアングル液晶のおかげでセルフ撮影が容易になったことは、わたしにとってとても嬉しいことでした。

 もちろんX-T3の3方向チルト液晶もスナップ撮影時にとても助かっていました。チルトかバリアングルかについては、撮影者側の好みに左右されます。どちらの液晶も良い点がありますが、X-T4では「できることが広がったな」という印象です。

4K動画やハイスピード動画を気軽に楽しもう

 カメラ業界で4Kムービー撮影は標準な世の中になってきました。その中でいかに綺麗に、難しい撮り方をせずに簡単に撮影できるかが、今までの写真撮影ユーザーとこれからはじめようとしているユーザーには肝になってくる部分ですよね。

 もちろん動画撮影時にもボディ内手ブレ補正は効果を発揮します。 加えて、動画時に使用できる電子式の手ブレ補正機能(DIS)を搭載しているので、動いている被写体相手でも強力にブレを補正することができます。

 ダンサーの恋七(lena)さんに動画を撮らせていただきました。夜の地明かりだけの光源で動いていてもしっかりと顔瞳AFが効いていることがお分かりいただけると思います。

 そして、まるで時の流れが止まったかのような、最大10倍のスローモーション効果で撮影ができるハイスピード動画機能も搭載しています。(ハイスピード動画はFull HD 240Pです。) 動画のアクセントに挿入するとより印象的に作品を作れます。

X-S10との差別化は?

 X-T4の良さについて作品とともにお話しさせていただきましたが、昨年11月に発売されたX-S10との比較が気になる方も多いのではないかと思います。

 まずは前述したバッテリーの容量。X-T4の大容量バッテリーの心強さは他のラインナップに比べてトップクラスです。 写真も、動画もこまめに…と一生懸命撮り続けて、更にもう1撮影もってくれるなぁ、と感じています。今のところ、念のため撮影時に予備電池を持っていきますが、大抵は使わずに済むことが多いです。このバッテリーNP-W235が対応している機種は執筆時現在でX-T4とGFX100Sのみです。

 X-S10では背面の物理ボタンである十字ボタンがなくなり、タッチやジョイスティックでの操作です。十字ボタンで慣れている人はX-T4の物理ボタン操作が早いです。タッチパネル操作もユーザーの好みに依存するところがありますね。

 SDカードのスロットの数はX-S10は1つ。X-T4は2つですので、2枚のSDカードで同時記録や、容量がいっぱいになった後にもそのまま撮影など、必要に応じて切り変えることができます。 プロユースとして使う現場にもX-T4は活躍してくれることでしょう。

 また、防塵防滴かどうかも違いの一つですね。わたしは雨の日の撮影も好きなので、X-T4の防塵防滴の機能は非常にありがたいです。

 そしてダイヤルボタン。X-T4はISO感度ダイヤル、シャッタースピードダイヤル、そして露出補正ダイヤルが上面についています。 X-S10は代わりに使いやすいモードダイヤルが搭載されていますが、撮影する前から「現在のカメラの設定」がわかるのはX-T4の各ダイヤルの恩恵です。

 いつどんなシャッターチャンスに出会えるのかは誰にも予測ができません。そんな運命的な瞬間に出会い、ファインダーを覗くと 「…あれ、ISO感度とシャッタースピードは昨日の星空撮影のままだった??ということもあるかもしれません。

 ファインダーを覗く前から、液晶画面を確認する前から今のISO感度、シャッタースピード、露出補正設定を知ることができると、撮影に取り掛かるまでの時間を短縮することができます。双方の違いの中でこれが一番大きな差かなと感じます。 運命的な瞬間を逃さずに撮影したいものです。

まとめ

 どんな天候でも、どんな撮影シーンでも自分のペースに合った撮影を思う存分楽しむことのできる、フラッグシップ機のX-T4。クラシカルなデザインも毎日連れ歩きたくなる存在で、所有欲も撮影欲も満たしてくれます。

 こだわり派のカメラユーザーに是非使って実感していただきたいカメラです。
※これらの撮影は、緊急事態宣言期間外に、周りに人がいないことを確認した上でマスクを外して撮影しています。

■ダンサー:恋七(lena)
https://www.instagram.com/lenakatsumata/
https://www.facebook.com/lena.katsumata

■モデル:矢沢なり
https://www.instagram.com/nari_yazawa/

■写真家:片岡三果
北海道三笠市出身、絵画を描く気持ちで写真を表現する写真画家。FUJIFILM X photographer。漫画家の両親、大叔父が油絵画家という家庭環境で育ち、幼い頃から美術、デザインを学ぶ。写真を通して一期一会を忘れないよう、自分史を提案し撮った写真をプリントして楽しむことを大切にしている。

「X-T4」はこちらの記事でも紹介されています ~

■FUJIFILM Imaging Plaza東京でのX-S10取材記事
富士フイルム X-T4 レビュー|ボディ内手ブレ補正など新機能満載!
https://www.kitamura.jp/shasha/fujifilm/x-t4-2-20200227/

【フジフイルム】XF50mm F1.0 R WR

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【フジフイルム】XF23mm F2 R WR

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