パナソニック LUMIX S5 で気軽にムービー撮影を楽しもう|【第4回】シネマティックムービーに挑戦しよう!

三井公一

00_パナソニック LUMIX S5で動画撮影している画像_FP003812.jpg

はじめに

 昨年登場したパナソニックのフルサイズミラーレス一眼カメラ「LUMIX S5」。シリーズ中もっとも小さくて軽いサイズながら、上位機種「LUMIX S1H」顔負けのムービー撮影機能を盛り込んで話題になりました。スチル撮影はもちろん、高解像度の4Kムービーから、魅惑的なスローモーションとクイックモーションなど、このカメラがあれば誰にでも楽しむことができるようになっています。その素晴らしいムービー機能に親しむビギナー向け短期連載の第4回目です。

より本格的なムービーを撮影してみよう

 前回の連載第3回目で「LUMIX S5」はカンタンに4Kムービーの撮影ができ、iPhoneを使って手軽に編集できることがお分かりいただけたと思います。パナソニックやシグマ、ライカ製の豊富なライカLマウントレンズを使いこなせば、より自分なりの映像表現ができ、スチルとムービーという両方の楽しみを存分に味わえるようになります。

 さて近ごろ「YouTube」を見ていると「シネマティックムービー」という言葉を目にすることがあります。これは4Kなど高解像度なだけでなく、色合いや階調などをまるで映画のように仕上げたムービーのことを指します。これらのムービーを見てみると独特のトーンを持った印象的な色彩で、一般的なムービーとは異なる仕上がりになっています。実はパナソニック「LUMIX S5」なら撮影および編集でひと手間かければ、このようなシネマティックなムービーを作ることができるのです!そのためにはどうすればいいのか今回はカンタンに解説していきましょう。

スチルのようにムービーも「RAW」で撮る

 カメラのキタムラファンでスチル撮影を楽しんでいらっしゃる皆さんなら「RAW」という言葉を聞いたことがあるでしょう。これはデジタルカメラで撮影したときの「JPEG」など一般的なファイル形式に出力される前の「生(RAW)」データのことを指します。カメラの映像エンジンで処理される前のデータは、メーカー独自の発色傾向などが加味されていないので、RAW現像に対応したアプリケーションで「現像処理」することにより、撮影者が自分好みの個性を持った色合いやコントラスト、シャープネスなどの特徴を引き出すことができます。

 「LUMIX S5」はその「RAW」の「ムービー」を撮影できるフルサイズミラーレス一眼カメラなのです。一般的にこのような機能を持ったカメラは少なく、存在していてもメーカーのサービスセンターに持ち込み、有償で機能制限を解除をしないと「RAWムービー」の撮影ができません。「LUMIX S5」はその必要がなく、周辺機器を揃えるだけで「RAWムービー」の撮影が可能になっています。まるで上位機種の「LUMIX S1H」のようですね。

 ではその「RAWムービー」を「LUMIX S5」で撮影して編集するには何が必要なのでしょうか。まず「RAWムービー」を収録する機器が必要です。この「RAWムービー」はアップルが提唱している「Apple ProRes RAW」という形式となり、認められた機器でしか収録できないようになっています。そのために必須なのが外部レコーダーです。

01_ATOMOS NINJA V製品画像_FP008929.jpg
ATOMOS NINJA V

 この製品は5.2インチ・1920 x 1080 ピクセル 10bit HDR 表示が可能なディスプレイで、SSDドライブを挿入してHDMIケーブル経由で映像の収録ができるモニターレコーダーです。高い性能を誇りながらボディわずか360gと軽く、自由雲台などを用いて「LUMIX S5」のホットシューに搭載できます。対応のバッテリーとSSDドライブを装着して使っているシーンがこんな感じです。使用前にユーザー登録をして、メールで送られてきたコードを入力すると「Apple ProRes RAW」の収録が可能になります。

02_製品画像FP008936.jpg

 このように被写体を大きい画面で確認しながら「RAWムービー」を「NINJA V」に収録していくのです。設定が終わると「5.9K RAW」 5888 x 3312 という超高解像度の「RAWムービー」が撮影できるようになります。
※「LUMIX S5」との詳しい設定などは英語のメニュー表記になってしまいますが、ATOMOS社の公式YouTubeチャンネルが詳しいのでこちらを参照してください。

撮影から編集まで

03_製品画像_FP003819.jpg

 今回の撮影では「LUMIX S5」に自由雲台を介して「NINJA V」を搭載し、「befree live カーボンT三脚ビデオ雲台キット」に装着して撮影をしました。カメラ一式とのバランスもほどよく安定していましたが、もしこれより長いレンズを使う場合は三脚と雲台をランクアップした方がいいかもしれません。

 さて撮影が終わったら編集です。「Apple ProRes RAW」の編集アプリケーションといえばアップルの「Final Cut Pro」でしょう。Mac専用となりますが「Apple ProRes RAW」を策定しているアップル製だけあって動作も軽快で扱いやすいです。その機能や手順を広く紹介するとかなりのボリュームになってしまうので、要点をいくつかピックアップします。

04_キャプチャー画像_fcp.png

 「NINJA V」に収録された撮影したデータは「RAW」なので、これを「Final Cut Pro」に読み込み、前回の「iMovie」のようにタイムラインに並べて長さなどを編集し、色補正やトーンを調整していきます。また必要であれば色空間も一般的なものに変更します。

 「Apple ProRes RAW」はこのように眠い感じのムービーになっています。なので「Final Cut Pro」で現像処理をする必要があります。

 「Final Cut Pro」で処理したムービー。カラーホイールを使って明るさを調整し、LUTを当ててコントラストをハード目にし、メリハリの効いたムービーにしてみました。

05_キャプチャー画像_info.png

 「LUMIX S5」で撮影したデータを「Final Cut Pro」で読み込むと自動的に「Panasonic V-log」という「LUT(ルックアップテーブル)」が当てられ、パナソニックらしいLogムービーになっています。「Log」とは乱暴に言ってしまえばフィルター効果を施したような感じの、やや「調理」された「RAWムービー」です。またこの「Final Cut Pro」の表示を見るとわかるように、この画面で「ISO感度」「露出オフセット(露出補正)」「カメラの色温度(ホワイトバランス)」の変更が可能なことが確認できるでしょう。これが「RAWムービー」のいいところなのです。撮影時のカメラ設定そのままでなく、自分が意図した色合いや明るさに撮影後でも自由にコントロールできるのです。

06_キャプチャー画像_iso.png

 ISO感度も自由にプルダウンメニューから選択して変更できます。明るさが目まぐるしく変わるシーンなどでも、編集作業で対応できるところがうれしいですね。同様にスライダーで露出補正もホワイトバランスも変更可能となっています。

07_キャプチャー画像_lut.png

 ではシネマティックに仕上げるにはどうすればいいのでしょうか?「Final Cut Pro」の「カラーホイール」などで明るさなどをコントロールするのはもちろんですが、先ほどの「LUT」を当てて独特のトーンを演出することが可能なのです。この「LUT」はパナソニックがウェブサイト上で無料配布しているものがあるので、まずはその「.cube」形式で好みのものを「Final Cut Pro」に読み込んでムービーに適用するといいでしょう。

 またインターネット上に「LUT」を販売していたり配布しているところもあるので、検索して好みのものを導入して撮影したムービーに当ててみるのもオススメです。そしてイメージ通りのものができたら書き出して完成です!

 古刹(こさつ)の雰囲気を出すようにアンダー目にコッテリとした色合いを出すLUTを当ててみました。適用後に好みに応じて補正をかけることにより、もっとイメージを変えることも可能です。

 「LUMIX S5」は音声収録も高性能です。鳥の鳴き声や鐘の音など実にきれいに録ることができます。もしインタビューなど人物の声を録る場合などは外部マイクの導入を検討するといいでしょう。純正アクセサリーでも「ステレオガンマイクロホン DMW-MS2」、「ステレオマイクロホン VW-VMS10」が用意されています。より高性能なマイクが使用できる「XLRマイクロホンアダプター DMW-XLR1」もラインナップされている点が心強いですね。

 休日の公園風景を明るくポップに仕上げてみました。インターネット上のさまざまなサイトでは無料でLUTを配布していたり、有料で販売しているところもあるので、ネットサーフィンをして気に入ったものをダウンロードして適用すると面白いと思いますよ。場面転換のトランジションやBGMも同様です。

 手持ちでブラブラと散歩しながら撮ったムービーを繋いでみました。「LUMIX S5」は小型軽量なので「NINVA V」を装着してもさほどかさばらないのがいいですね。「Final Cut Pro」でカンタンに速度調整などを行い、フィルムルックなLUTをかけてみました。

まとめ

 「LUMIX S5」は素のままで「RAWムービー」が出力できるモンスターカメラなのです。あとは「NINJA V」など外部収録機器を用意すれば、シネマティックなムービーを撮影できてしまいます。軽量コンパクトなフルサイズミラーレス一眼カメラなのにとてつもないパワーを秘めているのです。今回は駆け足でそのシネマティックな基本性能を紹介しました。この世界はとても奥が深いので、もし興味をお持ちになったらインターネット上を検索して最新の情報を得ることをオススメいたします。「LUMIX S5」は多数のライカLマウントレンズを使うことができるので、交換レンズでの素晴らしい描写と、ポテンシャルを秘めた「Apple ProRes RAW」撮影とでフルサイズ一眼ムービーの世界を楽しんでください!

~ 「パナソニック LUMIX S5 で気軽にムービー撮影を楽しもう」の連載はこちらからご覧頂けます ~
【第1回】スチルだけでなくムービーも簡単!
【第2回】ムービー三脚と電動ジンバルを使ってムービー撮影
【第3回】ムービー撮影設定と iPhone でのカンタン編集!

■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。

その他の商品はこちらから

関連記事

人気記事