シグマ fp Lのパウダーブルーで楽しむポートレート|水咲奈々

水咲奈々

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はじめに

 4月16日に発売されたSIGMA fp Lは、先に発売されていたSIGMA fpと見間違えるほど似たデザイン、形状で、並べて置くとどちらがどちらかわからなくなるほどです。でも中身は密やかながら変わっており、本機を買い増しした筆者が、見える変化と見えにくい変化を、新しく搭載されたカラーモードのパウダーブルーを使用したポートレート作品とともに紹介します。

00_シグマ fp Lを持つモデルの大川成美さんの写真.jpg

ポートレートを透明感高く仕上げてくれるパウダーブルー

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■撮影機材:SIGMA fp L + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:f/2.8 1/800秒 ISO100 WB5000K
■カラーモード:パウダーブルー
■モデル:大川成美

 本機はSIGMA fpと同じ、裏面照射型ベイヤーセンサーを搭載したフルサイズミラーレスカメラですが、スペック上で大きく違うのは有効画素数です。SIGMA fpは有効約2460万画素でしたが、SIGMA fp Lは有効約6100万画素とかなりの高画素となっています。

 有効画素数の比較だと、カタログなどでは風景写真がよく使用されますが、ポートレートでも奥行き感やモデルの肌の質感で、高画素の恩恵を感じることができます。

 手ブレ補正機構がついていないので、高画素になることで手ブレには注意したいのですが、晴れている外で撮影する分には必要以上に神経質になることもなく、カメラをしっかり構えるだけでブレのない画を得られます。

 そして、ポートレートを撮る方にお勧めなのが、今回新たに搭載されたカラーモードのパウダーブルーです。明るく涼やかな色味に仕上げてくれるカラーモードなので、モデルの顔色を始めとした全体を、透明感高く表現してくれます。

 画面内のコントラストが高くないシーンで明るめに撮影すると、全体がクールなイメージになり、これからの暑い季節にぴったりの涼し気な写真にすることができます。また、ホワイトバランスを変えることで、さらに白さを乗せて透明感を上げたり、赤みをプラスして肌の質感や、その場のムードを増したりという遊びもできるのが楽しかったです。

パウダーブルーでポートレート・ムービー

■撮影機材:SIGMA fp L + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■カラーモード:パウダーブルー
■モデル:大川成美
■三脚使用

 今回のムービーは、パウダーブルーで全編撮影しました。室内の照明の色味を活かして、パウダーブルーの青白いベールにプラスして、少し黄味がかった薄いベールを被せるような色味にしています。カラーグレーディングして自分好みの色味にするのもいいのですが、メーカーが打ち出す色味を楽しむのも、カメラを所有する醍醐味だと、筆者は常々思っています。

精度と速度が上がったAF

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■撮影機材:SIGMA fp L + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:f/2.8 1/500秒 ISO100 WB5300K
■カラーモード:パウダーブルー(-1)
■モデル:大川成美

 ポートレートがテーマということもあり、SIGMA fpと本機の大きな違いのひとつでもある、AFについて言及したいと思います。

 本機はコントラストAFと像面位相差AFを採用しており、SIGMA fpよりもAFの精度と速度が上がっています。ポートレート撮影では顔/瞳優先AFモードを使用していますが、SIGMA fpでは迷いがちだった逆光のシーンで、AF精度が上がっているように感じました。

 ポートレートでは逆光での撮影が多いので、逆光時にAFが迷い過ぎてしまうのはちょっと困ってしまうのですが、本機ではAFのグレードアップを体感できました。細かいピントはAFで合わせた後にMFで追い込むこともありますが、そのファーストアクションでもあるAFの精度が上がったことは、スムーズな撮影を行えるありがたい点でもあります。

待望の外付け電子ビューファインダー「EVF-11」

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 本機と同時発売、セット発売もされた外付け電子ビューファインダー「EVF-11」は、0.5型、約368万ドットの有機ELパネルを採用、90度のチルト機能、EVF使用時の外部SSD使用可能、モニタリング用ヘッドフォン端子搭載など、機能も充実の待望のアクセサリーです。

 天気のいい日に撮影をしていると背面液晶が反射してしまって、ライブビュー画像も、再生画像も確認しにくいことがあります。そんなときの強い味方になってくれるのが、この電子ビューファインダーです。

 見え方も自然でクリアー、この手の製品にありがちな、ガチガチにシャープな像を出していないことに好感が持てました。ちょっとした親切設計なのが、この電子ビューファインダーを装着するときは、カメラボディ側のHDMI端子カバーを取り外すのですが、取り外したカバーを電子ビューファインダー側に取り付けておけるのです。

 このHDMI端子カバー、SIGMA fpをWEBカメラとして使用した後にはめるのを忘れて、無くす寸前!ということが、数え切れないくらいありました。SIGMA fp Lは無くさないように、電子ビューファインダーにしっかりと取り付けておきたいと思います。

 電子ビューファインダーの取り付けには、慎重さと力が必要です。USB端子カバーをめくった状態で、電子ビューファインダーを垂直にぐっと差し込み、前面のダイヤルを回して締めていきます。USB端子カバーに弾力があるので、差し込みには少々力を要します。ここが緩いと、撮影しているうちに取れて来てしまうこともあるので、しっかりと締めましょう。また、歪んで差し込んでしまうと故障の原因になりますので、差し込みは慎重に行うことをお勧めします。

 ただ、何度も付けたり外したりするものではないので、付け外しをしない方は、使用時に緩みだけチェックすれば良いでしょう。

小さいけど大きな変化のあるデザイン

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■撮影機材:SIGMA fp L + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:f/2.8 1/500秒 ISO100 WB5300K
■カラーモード:パウダーブルー(-1)
■モデル:大川成美

 今回のポートレートは、スチールもムービーもレンズは「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」を使用しています。Iシリーズの中では珍しいふんわり表現が叶う、筆者お気に入りのレンズです。

 ここでは、背景の木の葉の緑色とそれを映した白いワンピースの色反射を、その場にいる気持ちになれるように残した表現をしたかったので、パウダーブルーをマイナス1に調節して、ホワイトバランスを5300Kにして撮影しました。

 本機はSIGMA fpと見間違えるほど似たデザインと冒頭でお話しましたが、違う点ももちろんあります。前面のロゴに「L」の文字が入っている点や、マイク端子のラバーが不意に開いてしまわないように変更されている点、誤動作防止のために、背面のMODEボタンの突出が微細ながら少なくなっている点などです。

 筆者が気に入ったのは、背面のダイヤルが少し重目になったことで、クリック感が増して操作がしやすくなったことと、回転音が低くなったので、高級感がアップしたことです。小さなことではありますが、このような操作に関わる変更点は、持つ喜びにつながる大事な点とも言えます。

カメラ起動中のUSB給電が可能に!

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■撮影機材:SIGMA fp L + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:f/2.8 1/500秒 ISO1600 WB4300K
■カラーモード:パウダーブルー
■モデル:大川成美

 どんなカメラもですが、スチールとムービーの両方を数時間撮影していると、バッテリー残量が不安になってしまいます。これから発売するすべてのカメラに付けて欲しい機能として、筆者が強く推したいのはUSB給電です。

 筆者はライブ配信用のカメラとしてもfpシリーズを使用しているので、DCカプラーは所持しているのですが、カメラを据え置かない撮影では、コンセントとの距離を考えなくてはいけないので、実用的ではありません。予備のバッテリーも持ち歩くようにはしていますが、一日中の撮影では保たないことも……。そんなときに、手持ちのモバイルバッテリーで給電できることは、屋外撮影時の心配事をひとつ減らしてくれます。

 USB給電が可能な本機はバッテリーの残量を気にせず、気軽に持ち歩けるコンパクトサイズの高画素機として、これからポートレートはもちろん、色々な被写体を撮影したいと思わせてくれるカメラでした。

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。

「fp L」はこちらの記事でも紹介されています

■シグマ fp L レビュー|三井公一
https://www.kitamura.jp/shasha/sigma/fp-l-4-20210416/

■シグマ fp L レビュー|映像表現の可能性について
https://www.kitamura.jp/shasha/article/481458600/

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