パナソニック LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S. レビュー|高性能かつ使い勝手の良い望遠ズームレンズ

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はじめに

 2021年4月、パナソニック社のLUMIX Sシリーズに高性能かつ使い勝手の良い望遠ズームレンズが加わりました。LUMIX Sシリーズは、2019年に同社がスタートさせた35mm判フルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼カメラ、レンズシステムの総称。そのシリーズの中で公表されていたレンズロードマップの中で、最後の発売となったのがこの S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.となります。

 Sシリーズ専用設計となるレンズ群は非常にクオリティが高く、24-70mmや70-200mmといったオーソドックスな焦点距離をカバーするズームレンズもありますが、20-60mmといった面白いレンズも存在。単焦点レンズも色々な焦点距離を選択可能です。そんなSシリーズのレンズの中で、テレコンバーターを使用することなく最も長い焦点距離を持つのがこのレンズ(2021年現在)。

 飛行機の撮影ではもちろん、鉄道やスポーツ撮影などでよく使われる焦点距離を網羅していますが、柔らかなボケ味を活かしたポートレート撮影やお花など、最短撮影距離の短さを活かしたマクロ撮影にもオススメしたいレンズです。

外観と携行性

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例1
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:100 F8 1/640sec 焦点距離220mm

 レンズの外観は直線的なシャープなデザインが特徴。Sシリーズのカメラと共通の高級感溢れる艶のある黒が所有欲を満たしてくれます。手にしっかりと馴染むフォルムや材質が使われていますが、ズームリングなど以外はやや滑りやすいため扱いには注意が必要。

パナソニック LUMIX S 70-300mm F45-56 MACRO OISの製品画像.jpg

 先端にピントリング、その後ろにズームリングがあり、側面には手ブレ補正のON/OFFスイッチ、AF/MFの切り替えスイッチなどがオーソドックスな場所に配置されています。重さは約790g、全長は148mm※と、このクラスの同じようなスペックのレンズと比較しても一般的な重さ、サイズ。LUMIX S5との組み合わせで色々な場所を歩いてみましたが、携行性や取り回しに問題はなくキビキビと快適に撮影をおこなうことができました。

※レンズ先端より、レンズマウント基準面まで

レンズ構成・画質について

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例2
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:200 F8 1/1250sec 焦点距離300mm

 本レンズは11群17枚のレンズ構成。UHRレンズ、UEDレンズ、EDレンズが惜しみなく使われています。焦点距離が長くなる望遠レンズでは、標準レンズに比べ一般的に色収差が大きくなり、色滲みやコントラストの低下が発生しやすくなりますが、この問題点を克服するために採用されたのがEDレンズに比べて分散性の高いUED(特殊低分散)レンズ。蛍石に近い性能であるため、レンズの色分散作用を抑えて軸上色収差を良好に補正することで、画面の隅々まで解像感に優れる画を得ることが可能です。MTFチャートも優秀。ワイド端、テレ端ともに高画質での撮影が可能であることを示しています。

 飛行機の撮影では、小さな文字やリベット(鋲)などがしっかり表現されているか重視されますが、細部のディテール部分までしっかりと表現されていて優秀。LUMIXのレンズは柔らかい表現が得意なので、今回の作例撮影時にも周辺部の解像感に少しゆるさを感じることがありましたが、2〜3絞りすればこの部分は解消されます。

 LUMIX Sシリーズのレンズには上位モデルとしてS PROシリーズがラインナップされていますが、正直なところなぜこのレンズがPROシリーズではないのか疑問に思いました。それほど、ヌケが良く描写力に優れるレンズです。

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例3
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:3200 F16 4sec 焦点距離300mm

 絞り込んだ際の光芒の美しさがS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.の特筆すべき特徴。鋭く伸びるランウェイライトや機体が放つライトが飛行機夜景写真を彩ってくれます。反面、開放絞りでは口径食が小さく、輪線の無い丸く柔らかなボケ表現が可能。LUMIX Sシリーズのレンズが得意とするポートレート撮影やお花の撮影でも大活躍してくれます。細部のディテールまでしっかり表現する硬さ、ふんわりとした柔らかいボケ表現という柔らかさ、この相反する表現を見事に両立する絞り羽根機構が組み込まれたバランスの良いレンズといえます。

 また、もうひとつ特筆したいのがテレ端300mmでの撮影倍率が0.5倍というハーフマクロ性能。ワイド端で0.54m、テレ端で0.74mまで被写体に近づけるので、ことさらお花の撮影をする方にはオススメとなります。

オートフォーカス性能について

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例4
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:100 F16 1/4000sec 焦点距離150mm

 飛行機を含む動体モノの撮影ではオートフォーカス(以下AF)性能を重視しますが、日中の屋外撮影でピント合わせに苦労することはありませんでした。毎秒480回にも及ぶAF制御にて合焦速度はかなり高速。カメラ本体のAF方式がコントラスト方式であることに加え、レンズ内の超音波アシストが働くため、かなり精度の高いピント合わせができます。

 写真のような逆光撮影においても高速、高精度の撮影が可能。カメラ側で被写体の大きさに合わせたAF枠を設定することにより、快適に撮影ができます。スチル撮影だけでなく、動画撮影においてもアドバンテージが豊富。動画撮影におけるフォーカス合わせの際、ピンと位置の移動に伴い画角が変化してしまうブリージングが抑制されている他、ズーム位置検出の精度が高められるとともにズームトラッキング制御周期が最大240Hz(4K30p、4K60p時)まで高速化することにより高精度なズームトラッキングが可能です。

手ブレ補正について

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例5
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:1600 F5.5 1/10sec 焦点距離110mm

 手ブレ補正機構はレンズ単体でも強力な補正効果を発揮しますが、手ブレ補正機能「Dual I.S.2」に対応したカメラのボディ内手ブレ補正と組み合わせることにより、さらに強力な手ブレ補正効果を発揮。約5.5段分という高い補正効果は、手持ち撮影の多い飛行機撮影において大きな助けとなります。

 作例も低露出下での手持ち撮影ですが、ゆっくりとこちらに向かってくる機体を1/10secというスローシャッターで撮影。ミラーショックレスのファインダー撮影ができるというミラーレス一眼の利点もありますが、カメラボディとレンズの高い手ブレ補正効果が活きた結果です。

 また、「Dual I.S.2」で補正することにより、広角側よりも難しいとされる望遠域の手ブレ補正も可能に。望遠域をよく使う飛行機撮影ではこちらも一助となります。手ブレ補正ブーストにも対応。手持ちでの動画撮影時、安定した構図を保つことができます。

その他、防塵防滴など

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例6
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:400 F16 50sec 焦点距離300mm

 S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.は防塵防滴仕様。ほこりや水の侵入を完全に防ぐものではないという注意書きはありますが、多少の雨やほこりはしのぐことができます。飛行機撮影は屋外撮影が中心。雨が降ってくることもありますが、意外にほこりっぽい場所での撮影も多いのでこの仕様は助かります。

 レンズの耐温度設計は-10℃〜40℃。寒冷地での撮影にも対応しています。この作例の撮影時は雨。防塵防滴機構にも助けられましたが、暗闇の中でカメラやレンズを手探りで操作するのに、カメラやレンズのボタン類の切り欠きなどが役に立ちました。バルブ撮影から動いている機体の撮影への切り替えはISOの設定などカメラの設定、手ブレ補正のON/OFFなどレンズの設定を大きく変更することが少なくありません。これをできるだけ瞬時に…という時にすごく役立ちました。

まとめ

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.作例7
■使用機材:LUMIX DC-S5 + S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.
■撮影環境:100 F10 1/500sec 焦点距離300mm

 70〜300mmと旅客機撮影において使いやすい焦点距離を持つこのレンズ。主に機体の真横を撮るスポッティングカットを主体に撮られる方にオススメのスペックです。

 色再現性に優れているため、機体のカラーリングを忠実に再現。少し絞ることにより、機体のディテールもキレイに出ます。主に通われる空港が海上空港などで「撮影ポイントがどこも機体まで遠い」という方は、景色主体で機体小さめという撮影にオススメ。望遠レンズならではの圧縮効果を活かした撮影にも適しています。動画撮影にも配慮された設計なので、動画主体の方にもオススメ。最近のスチルカメラは動画性能の向上も著しいため、どちらも撮るという方にもオススメのレンズとなります。

■写真家:A☆50/Akira Igarashi
絶景ヒコーキ写真を求め全国を駆け巡る瞬撮系航空写真家。雑誌、WEB、TVなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどのオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。

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