ニコン Z 6IIとオールドレンズで楽しむ水族館写真

水咲奈々

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はじめに

 ニコンのZ 6IIはミラーレス機の中でも特にフランジバックが短いので、マウントアダプターを使用すれば、様々なオールドレンズを装着して撮影を楽しめます。今回は、最新のフルサイズミラーレス機と、半世紀前に作られたオールドレンズの組み合わせで撮影した水族館写真とともに、マウントアダプター遊びについてレビューしたいと思います。

オールドレンズ撮影で手ブレ補正が使える!

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マウントアダプターを使いオールドレンズを装着したニコン Z 6II

 筆者が使用しているマウントアダプターは、焦点工房の「Megadap(メガダプ)」です。このマウントアダプターは、ライカMマウントレンズをニコンZマウントに変換する製品ですが、特筆すべきはAF駆動用モーターを搭載している電子マウントアダプターな点です。オールドレンズなのに、AFを使って撮影ができるのです。もちろん、瞳AF、顔検出も使用できます。

 今回のような魚の撮影では瞳AF、顔検出機能は使用しませんが、ポートレート撮影もされる方は、なかなかおもしろい体験ができます。AFの音は少々派手ですが、今までMFでしか使用していなかったオールドレンズでAF、しかも瞳AFが働くのは、新鮮な驚きとともに便利でした。

 さらに、このマウントアダプターはカメラボディ内の手ブレ補正機構「VR」に対応しており、事前にレンズの焦点距離を設定するだけで、手ブレ補正の恩恵を受けることができます。これは、暗い水族館の撮影ではとても重宝しました。

最短撮影距離を短くしてくれる自動ヘリコイド機構付き

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ヘリコイド機構付きのマウントアダプターを使えばさらなる接写が可能

 筆者がマウントアダプターを購入するときに重視するのが、ヘリコイド機構が付いているかです。ライカMマウントレンズの最短撮影距離は0.7~1.0mほどと、あまり被写体に近付けないのですが、マウントアダプターにこのヘリコイド機構を組み込むことで、さらなる接写が可能になるのです。

 このヘリコイドを繰り出せば接写が、繰り出さなければ無限遠の撮影ができるので、さらに幅広い被写体の撮影を楽しむことができます。本製品は、フォーカスリングの距離目盛を最短撮影距離に合わせて、被写体に向けてシャッターを半押しすることで、このヘリコイドが自動で繰り出して、本来のレンズの撮影最短距離よりも近寄った接写ができます。

 水族館撮影では、なるべく水槽のアクリル面に近付かないと、撮影している自分や、後ろを通るお客様、点灯している非常口の照明などが、反射して写り込んでしまいます。また、小さな魚を大きく写すために、被写体に近付きたいということもあります。

 そんな訳で、通常のレンズでもマクロレンズを愛用していますが、オールドレンズでもできるだけ魚に近付きたいという気持ちから、ヘリコイド機構付きのマウントアダプターを好んで使用しています。

高感度でもクリアーに描いてくれるニコン Z 6II

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ニコン Z 6IIであれば暗い水族館でもキレイに撮ることができる

 水族館は暗い水槽が多く、撮影ISO感度は高くなります。その点、常用感度が高いニコン Z 6IIは、ISO1600からISO12500の間で撮影することが多い水族館で、とても活躍してくれます。

 今回はF1.5からF2のロシアレンズ数本を使用して、すべて絞り開放で撮影しているので、シャッタースピードは稼げているのですが、それでも低感度では暗いかブレブレの写真になってしまいます。

 最新のデジタルミラーレス機だからこその技術の恩恵を、オールドレンズの撮影で受けられるのは、マウントアダプターレンズ遊びの醍醐味と言えるでしょう。

水族館撮影でのピントの合わせ方

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動き回る魚に対してはMFでシャッターチャンスを狙う

 今回使用しているレンズは、金魚は「ジュピター8」と「インダスター」、クラゲは「ライカズマリット」になります。いずれもライカLマウントのレンズなので、「Megadap(メガダプ)」に装着できるように、「K&F Concept KF-LM-5075 マウントアダプター」を使用しています。

 金魚を撮影している「ジュピター8」は1962年製、「インダスター」は1961年製で、ロシア製のレンズになります。いずれも、柔らかくてとろみのある滲んだようなボケ味と、ムードのある立体感を生み出してくれるレンズです。外観がクラシカルなのも筆者的にはかなり好みです。

 AFが使えるマウントアダプターを使用していますが、水族館撮影では明るいところで最短撮影距離にピントを合わせてからMFにして、自分が前後に動くことでピント合わせを行いました。

 明るいところではいいのですが、水族館のような暗いところで、動き回る小さな魚にAFを合わせるのはなかなか難解で、ヘリコイドが繰り出した接写の状態でピントを固定してしまったほうが、シャッターチャンスに強いレンズになります。

 この作品は、デコボコした水槽の中にいる金魚の正面の顔を捉えました。色味は特に変えておらず、全体に緑がかった水槽でした。つまり、コントラストが低い、カメラが被写体を認識しにくい、かなりAFに意地悪な撮影状況となっています。

 こんなときは、思い切ってMFで撮影してしまったほうが、自分の意図する箇所にピントを置けるのでお勧めです。

色味は変えすぎないようにピクチャーコントロール:風景を使用

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水族館の演出をそのまま活かす色味調整で撮影

 筆者が水族館で写真を撮り始めたのは、水中をただようクラゲがドレスをひるがえしながらステージで踊るダンサーのように見えて、その一瞬の表情をポートレートのように表現したいと思ったからでした。

 最近の水族館では魚の種類や季節によって、照明や音楽で様々な演出がなされています。特に半透明の体を持つクラゲは、カラフルな照明に彩られていることが多く、とても幻想的です。そのカラフルさをそのまま出すために、色味の過度な調整はせず、見た目よりもほんの少しだけ鮮やかな表現になる、ピクチャーコントロールの風景を主に使って撮影しています。

ミストなふんわり描写が楽しいオールドレンズ

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独特な味が出る柔らかな表現はオールドレンズならでは

 なぜ、オールドレンズで魚たちを撮影しようと思ったかと言うと、はっきりくっきりのシャープな作風よりも、ゆらゆらと捉えどころのない、水というよりも霧のような作品を撮りたかったからと言えます。

 半世紀前のロシアンレンズは、ピントが合ったところは切れ味よく、でもその周辺部は、足元の床がストーンと無くなったかのように、急に滲んだようなボケが広がる。古いレンズ特有の、個体差のあるクモリは周辺部にあればそれもまた味となります。

 最新のデジタルミラーレス機で高い解像力を得て、独特の味を出せるオールドレンズで柔らかい表現を得る。マウントアダプターを使ったオールドレンズ遊びは、この時代だからこそできる贅沢な遊びです。

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。

水咲奈々 写真展「みずあかり」

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■会期:2021年9月17日(金)~23日(木)
■時間:10:00~20:00 ※最終日は16:00まで
 ※店舗の営業時間に準じて変更になる可能性があります。
■会場:新宿 北村写真機店 6F Space Lucida
■住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-26-14  
■入場料:無料

写真展「みずあかり」情報サイト https://lit.link/misaki7info

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