オリンパス PEN E-P7 レビュー|コムロミホ

コムロミホ

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はじめに

 OMデジタルソリューションズ株式会社からOLYMPUS PEN E-P7が発売される。新会社になってから初の新機種となる。OM-DとPENの2ラインナップがあるが、OM-D E-M1 Mark III、E-M5 Mark III、E-M10 Mark IVとOM-Dシリーズの新機種が続いており、PENを愛用している私にとっては待ちに待ったPENの新機種となった。

E-P7のポジション

 まずは既存のPENと比較しながら、今回のカメラの立ち位置をご紹介したい。E-P7の名前から見ると、2013年に発売されたPENのフラグシップ機E-P5の後継なのかと思われるが、デザインやサイズ感を見るとE-PLシリーズに近い。そして、PEN-Fに搭載されていたモノクロプロファイル、カラープロファイルを搭載している。まさに、E-Pシリーズの高級感と、E-PLシリーズの手軽さと、PEN-Fの表現力を1台に凝縮したようなカメラに仕上がっている。

外観

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 外観は今までのPEN同様クラシカルなデザインを採用している。アルミ削り出しのダイヤルや上質な革張りのようなボディがソリットで美しい。重厚感のある高級な見た目とは裏腹にボディ単体の質量が337gとかなり軽量。E-PL10よりも軽量化を実現できているという点が驚きだ。ボディカラーはホワイトとシルバーの2色展開となる。

プロファイルコントロール

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 E-PL10と比べてみると、軍艦部分のダイヤルが二つに増え、操作がしやすくなっている。そして、カメラ前面にはプロファイルコントロールスイッチを配置。こちらを切り替えることで、モノクロプロファイルとカラープロファイルを使用することができる。

 PEN-Fはモノクロプロファイルとカラープロファイルのプリセットが3つずつ搭載されていたが、E-P7にはそれぞれ4つのプリセットを搭載している。まずはそれぞれの効果をご紹介したい。

■MONO1 標準のモノクロ
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■MONO2 クラシックフィルム モノクロ
粒状感のあるザラザラとした風合いで、コントラストが高く重厚感のあるモノクロ表現
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■MONO3 クラシックフィルム IR
赤のカラーフィルター効果を強調し、赤外線フィルムで撮影したような効果を得られる
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■MONO4 クラシックフィルム ローコントラスト
コントラストを抑えて、やわらかく優しい印象のモノクロに
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■COLOR1 標準(Natural)
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■COLOR2 クラシックフィルム リッチカラー
色が少し鮮やかになる渋みのある表現を楽しめる
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■COLOR3 クラシックフィルム ビビッド
彩度が高く、より鮮やかに被写体を表現する
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■COLOR4 クラシックフィルム ソフトトーン
淡く柔らかな印象に仕上げられる
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 私が好きなモノクロのプリセットはMONO2。コントラストが高く、暗部が締まり、重厚感のあるかっこいいモノクロの表現を楽しめる。その場の光と影を意識しながら撮影すると、何気ないワンシーンもドラマチックに表現することができる。

11作例_P6050344.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/200秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 いつもの道や見慣れた街並みもモノクロで切り取ることで、味わい深い情感のある写真へと仕上げられるので、ぜひ試してもらいたい。カラーだとリアリティが出過ぎてしまうようなシーンもモノクロで表現すると、写真の中の世界に想像を膨らませたくなる。

12作例_P6050359.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/400秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
13作例_P6050361.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/2 1/320秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 そして、カラープロファイルの中で一番好きなプリセットはCOLOR2だ。派手に鮮やかになるのではなく、程よい彩度と深みのあるトーンで被写体の色を美しく表現してくれる。

14作例_P5310057.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/3.2 1/800秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 下の写真は露出補正を-1/3EVに設定しながら撮影を行った。少しローキーめの露出に設定すると、より色に深みが出て、独特なトーンで表現することができる。

15作例_P6050260.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/200秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
16作例_P6050272.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/1600秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 新たに追加されたMONO4は全体的に淡く柔らかなトーンで、どことなくノスタルジックな印象のモノクロ写真を撮ることができる。そのため、MONO4に設定しているときは古めかしい被写体ばかり探しながらスナップしていた。女性ポートレートなどにも相性が良さそうだ。

17作例_P6050427.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/20秒 ISO200 露出補正+0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
18作例_P6050428.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/30秒 ISO200 露出補正+0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 COLOR4も全体的に柔らかさのある写真を撮ることができるが、ただ柔らかく、ただ淡いだけでなく、被写体の色を損わずに表現してくれる。淡さの中に芯があるというのか、独特な味わいを楽しめる。派手ではないが、素朴さの中に美しさがあるようなそんな絵作りだと感じる。

19作例_P6050421.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/125秒 ISO200 露出補正+0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
20作例_P6050413.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/1250秒 ISO200 露出補正+0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 同じ被写体でもプリセットを変更しながら撮影すると、印象の異なる写真を撮ることができる。下の1枚目がMONO2で撮影した写真。黒が締まり、重厚感のあるモノクロ表現で、年代を感じるような味のある写真を撮ることができる。下の2枚目はMONO3で撮影。赤いカラーフィルターを使用したように青い空と白い雲のコントラストを強調することができる。それにより、空に立体感が生まれ、力強い写真に仕上げることができた。

22作例_P5310019.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/3.2 1/1000秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
23作例_P5310029.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/3.2 1/1000秒 ISO200 露出補正+0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 プリセットそれぞれの特徴を生かしながら撮影できるだけでなく、そこからさらにカスタマイズして自分好みの表現を追求できる。シェーディング(写真の四隅の明るさの変更)やハイライト&シャドウ(明部、中間部、暗部それぞれの明るさを個別に変更できる)を変更できるだけなく、モノクロプロファイルはカラーフィルター、カラープロファイルは12色の彩度を個別に調整可能。下の写真はCOLOR1に設定し、シェーディングを-1、グリーン系の彩度をプラスに設定。シェーディングをマイナスに設定すると、画像の四隅が暗くなり、雰囲気のある写真に仕上がる。さらに周辺が暗くなるところで、真ん中にある被写体に視線誘導させることもできる。そして、カラープロファイルは12色の鮮やかさを個別に変更できるため、グリーン系の色のみを鮮やかになるように彩度を調整。それにより、葉っぱの緑を際立てられている。

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■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/200秒 ISO200 露出補正-0.7 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 下の写真はMONO2にシェーディングを-1に設定。カメラの中で細かく絵作りを調整できるため、撮って出しで作品レベルの完成度の高い写真を撮れるのがE-P7の魅力だろう。モノクロもカラーも表現の自由度がかなり高いので、ぜひ自分好みの表現を見つけてもらいたい。

25作例_P6050342.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/200秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

手ブレ補正

 E-P7は5軸のボディ内手ブレ補正を搭載し、最大4.5段分の手ブレ補正効果を得ることができる。同じサイズ感のE-PLシリーズは3軸だったのに対して、5軸に進化している。本来手ブレしてしまいそうな暗いシーンでも安心して撮影できるのが嬉しい。夜でもISOを上げずに撮影できるため、ノイズレスで高精細な写真を手持ちで撮影を楽しめる。

26作例_P5310083.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/25秒 ISO200 露出補正-0.7 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 こちらの写真は最低ISO感度のISO200で撮影。本来であれば、三脚が必要になるような低速のシャッター速度だが、暗所でも身軽に撮影できる。

27作例_P5310164.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/3秒 ISO200 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8

 今回はより身軽にスナップするためにレンズはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8(35mm版換算34mm相当)を選んだ。M.ZUIKO PREMIUMシリーズのレンズはどれも小型軽量で描写力も高いため、E-P7と合わせると、より身軽にカメラを持ち運べる。特に今回セレクトした17mmは金属外装でクラシカルなデザインを採用しているため、デザインの面でも相性がいい。

28作例_P6050222.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/800秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 35mm版換算で34mm相当とスナップに使いやすい画角で、被写体だけでなく、背景も生かしながらその場を切り取ることができる。

29作例_P6050268.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/1250秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

 そして、被写体にぐっと近づけば遠近感を活かして、主題を際立てなら撮影することもできる。また開放F値のF1.8でぐっと近づけば、ボケを活かした写真も楽しめる。大きくボケるというよりは輪郭の残るボケ感で、ピント面だけでなく、背景の雰囲気が伝わりやすい写真に仕上げられる。

30作例_P6050265.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/1250秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

さいごに

 今回掲載している写真はすべて撮って出しのデータとなる。撮影時にカメラの中でさまざまな表現を追い込めるので、その場の空気感を感じながら絵作りを楽しめる。前述したとおり、E-Pシリーズの高級感、持つ喜びを引き継ぎながらも、E-PLシリーズのように小型軽量でいつでも持ち運べるようなサイズ感。それでいて、PEN-Fの表現力をぎゅっと詰め込んでいる。「こういうカメラがほしかった!」と思わず言いたくなるようなバランスの良いカメラに仕上がっている。ぜひPEN E-P7の表現力を試してもらいたい。

31作例_P5310162.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/20秒 ISO200 露出補正-1 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)
32作例_P6050279.JPG
■撮影機材:OLYMPUS PEN E-P7 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
■撮影環境:f/1.8 1/25秒 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離17mm(35mm判換算34mm相当)

■写真家:コムロミホ
 福島県出身。文化服装学院で学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。ニコン、パナソニック、オリンパスのカタログ撮影も担当する。ルミックスフォトスクール講師、オリンパスデジタルカレッジ講師、エプソンセミナー講師、ライカやリコーペンタックス、をはじめ多くのメーカーで講師を務める。

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■更新
・2021年6月25日:製品発売に伴い、予約受付中の内容を差し替えました。

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