ニコン NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S レビュー|素早いAFとキレの良い高い解像力に脱帽!

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はじめに


 ニコンのZマウントユーザーが首を長くして待ち望んでいた、S-Lineのマイクロレンズ「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」が発売されました。S-Lineの冠に相応しい高い解像感と描写性能に加え、STMを採用した素早いAF性能、手ブレ補正効果の高いVR機構を搭載した、開放F値2.8の中望遠マイクロレンズのレビューを、ポートレートのスチールとムービーでお送りします。

隅々までしっかりとした鮮明で美しい描写


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値3) 1/320秒 ISO1250 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 S-Lineらしい解像感、描写性能は、シャッターを切ってすぐに実感できました。画面の隅々までクリアーでしっかりとした美しい描写で、ボケ味は色にじみのないストレートなグラデーションを描いています。特にボケの部分に雑味を感じる描写だと、主役以外の存在を薄くしたいポートレート撮影ではうるさい画になってしまいがちなのですが、本レンズは見て欲しいポイントに、見る人の目をすっと誘導してくれる画に仕上げてくれます。

 この高い光学性能を実現できたのは、Zマウントの口径の大きさとフランジバックの短さなのでしょう。後玉に大口径非球面レンズを配置することで、像面湾曲を効果的に補正することができ、前身ともいえるFマウントの「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」では1枚だったEDレンズは、本レンズでは3枚採用できており、その効果的な配置もあり軸上色収差の補正に成功しています。

ポートレート・ショート・ムービー


■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美
三脚・手持ち両方で撮影

 今回のムービーは、三脚と手持ちの両方で撮影しています。しっかりと写し止めたいところは三脚を使用し、手持ちのシーンでは、一緒に踊っているようなイメージでわざと揺らして撮影しています。

 残念なレンズですと、このムービーのように大きく揺らすとズレたようなブレが発生して、映像として気持ちの悪いムービーになってしまうことがあるのですが、本レンズは映像のクリアーさを保っているので、すっきりとした映像になってくれました。

 また、フォーカスはAFとMFの両方を使用していますが、ムービーの前半、モデルが踊りながらマネキンの周りをまわる上半身のシーンは、AFを使用しています。顔が見えているときは顔に、後ろ姿のときはその頭に、カメラが自動的にピントを合わせ替えていました。

素早く快適なオートフォーカス!


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値2.8) 1/320秒 ISO1250 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 AF性能は、とにかく素早くて快適の一言です!顔のアップ、全身と構図を変えてレンズの移動量が大きくなるようなシーンでも、新開発のSTM(ステッピングモーター)のお陰なのでしょうか、素早く静かに被写体にピントを合わせてくれます。

 作例のシーンでは、モデルの右目と左目と交互にピントを合わせてみて、セオリーではカメラに近い方の左目にピントを合わせるべきなのですが、このシーンでは光が当たっていて、マツゲのカールがきれいに見える角度になっている右目にピントを合わせたいと思い、右目ピントで撮影しました。ですので、撮影時は液晶画面をタッチして、右目、左目とピントを合わせ替えていたのですが、まったくストレスを感じることなく、素早いAFに助けられて快適な撮影ができました。

「有効F値」について


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値3) 1/320秒 ISO1250 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」の記事内でも解説しましたが、ニコンのマイクロレンズは撮影時のカメラの液晶やEXIFデータに有効F値を表示する、日本で唯一のメーカーです。どのメーカーもマクロレンズの構造は同じなのですが、ニコンだけ「マイクロレンズ」と称するのと同じように、F値表示も他メーカーと違います。

 この有効F値は、レンズが被写体に近付けば近付くほど、その値は大きく表示されます。つまり、絞り開放で撮影していても、被写体に近付くことによってEXIF上ではF3のように表示されるのです。

 これは、マイクロレンズは近接撮影時にはレンズがその鏡筒の中で伸びるため、無限遠のときよりも、撮像素子面に写る像に届く光の量が減少することになります。レンズ面で受ける光の量は同じですが、被写体に近付けば近付くほど、レンズは撮像素子面の像から離れるため、受けた光は拡散されて全体の明るさが暗くなるという現象が起きます。この光の減少を数値として表したのが、「有効F値」という訳です。

 今回の撮影もすべて絞り開放で行いましたが、EXIF上には有効F値が表示されるため、撮影データには絞り開放であることと、実際の明るさを表す有効F値の両方を記載しました。

徹底的に排除されたゴーストとフレア


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値2.8) 1/320秒 ISO2000 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 本レンズには「ナノクリスタルコート」と「アルネオコート」の、2種類の反射防止コーティングが採用されています。これにより、斜めからの光にも、垂直に入り込む光にも強いレンズ面となり、ゴーストとフレアを徹底的に抑えてくれます。逆光で撮影することの多いポートレート撮影には必須の最新コーティングです。

補正効果4.5段の高い手ブレ補正機構内蔵


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値3) 1/320秒 ISO2000 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 中望遠の明るい単焦点レンズとしてはもちろん、マイクロレンズなので0.29mまで被写体にぐっと近付くことができます。ポートレートではそこまで極端に被写体に近付くことはありませんが、マツゲや唇、ネイルなどにぐっと寄ったカットを撮影するのも面白いでしょう。

 通常、そのような近接撮影時には三脚を試用することが多いのですが、手ブレ補正効果4.5段の光学式VR機構はとても優秀で、薄暗い中でのアップのシーンでも、手持ちで手ブレを気にせず撮影できました。105mmの焦点距離で手持ちで撮影できるのは、なんとも贅沢な気持ちになれますね。

スペック上よりも軽く感じた!


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■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
■撮影環境:絞り開放(有効F値3) 1/320秒 ISO1250 WB:5000K
■ピクチャーコントロール:ポートレート
■モデル:大川成美

 本レンズは最大径約85mm、長さは140mmと数字で見るとそこそこの大きさなのですが、重さが約630gとこのサイズにしては軽量なため、撮影時に機動力が落ちることはありませんでした。「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」は約750gでしたが、当時はD850で使用していたので、Nikon Z 6IIで使用した本レンズが軽く感じるのは、合わせるカメラボディの軽さもあるのでしょうね。

 ストレートなデザインはカメラボディに馴染みやすく、鏡筒に施されたシーリングは、撮影時の操作はもちろんグリップの良さにも繋がっています。防塵・防滴性能と、レンズ面に汚れが付着しにくくなるフッ素コートを採用した防汚性能は、ポートレート以外でも被写体にぐっと近付けるマイクロレンズには、とてもありがたい性能です。

 今回は主にポートレート使用の中望遠レンズという観点からレビューしましたが、実は水族館での撮影もしていて、その性能をじっくりと堪能できました。すっきりとキレのあるクリアーな画は、さすがのS-Lineレンズの描写です。同時発売の「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」と本レンズ、どちらも欲しくなってしまうのは困ったものです。


■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。



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