ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。Vol.7|ライカQ2モノクローム

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はじめに


サルスベリの鮮やかなピンク色が青空に揺れている。
もうすぐ夏の終わり。

先日我が家に届いたライカQ2モノクローム。
デジタルカメラとしては世界で初めてモノクローム撮影専用の撮像素子を搭載している。さらには有効4730万画素の撮像素子、シャープな描写を可能にする大口径レンズ「ライカ ズミルックスf1.7/28mm ASPH.」を搭載しているフルサイズのコンパクトカメラ。簡単に言い変えると、ライカのモノクローム撮影専用のフルサイズコンパクトカメラだ。本体はマットなブラック。さらに、本体正面にはライカ伝統の「Leica」の赤いロゴを配さずに、モノクロームというコンセプトを強調している。

ライカ、モノクローム撮影専用、レンズが一体になっているカメラ。それを聞くだけで何だか心がうずうずする。早く撮りに行きたい。

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この連載「ライカとカレー。今日はどの駅で降りようか。」は、毎回山本まりこが異なるライカカメラとレンズを持って電車に乗り、気になる駅で降りて旅をする。そしてカレーを食べて帰ってくる、という内容の企画。早いもので、今回は連載の第7回目。

以前、ライカQ2で撮影し、高い機動力とその描写に感激した私は、ライカQ2モノクロームが発売されたと聞きぜひ撮影したいと思い続けてきた。さらに、ライカM10モノクロームで体感したライカのモノクロームの描写の美しさに惹かれていたので、ライカQ2の高い機動力と描写性能、そしてライカのモノクロームの描写の美しさ、そのどちらも共有したカメラであるライカQ2モノクロームで撮影できる日を待ち望んでいた。以前の記事はこちら。気になる方はぜひ読んで欲しい。


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ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。vol.3|ライカM10モノクローム+ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.


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ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。vol.4|LEICA Q2

AREA8.5


私の住む神奈川県の小さな海まち二宮町(にのみやまち)は、東海道五十三次の宿場町の大磯と小田原の真ん中にある。
東海道五十三次とは、江戸時代に整備された五街道の一つで東海道にある53の宿場を指し、または、日本橋から京都までの53の宿場町を繋げたものを言う。歌川広重の浮世絵木版画の連作はきっと見たことがあるだろう。ちなみに日本橋から京都までは492kmあるのだそう。品川が第1番目の宿場町で、大磯は8番目、小田原は9番目。その真ん中にある二宮町周辺をAREA8.5(エリアはってんご)とし、町の中にAREA8.5の壁画が描かれていたり、イベントなどが開催されたり、と盛り上がっている。

先日、二宮町の老舗の印刷会社フルサワ印刷さんと知り合ったとき、東海道五十三次が描かれた歌川広重の絵が表紙のノートをいただいた。1枚に印刷してあるプリントもいただいた。そのプリントは今の印刷機ではもう印刷できないのだそうだ。その中に、なんと、二宮の海岸あたりを描いたものがあった。

「これは二宮なのよ。」
と見せていただいた絵を見て、ゾクゾクと体と心が動いた。

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そこには、鶴が舞い、大きな富士山が描かれていた。
江戸時代、今から200年前は、二宮町にこんな景色が広がっていたのだろうか。

今回は、ライカQ2モノクロームとこの景色の中を歩いてみたいと思った。

旅の始まり


自宅を出ると、サルスベリの花の奥に月がうっすらと見えた。
昼間の月の儚げさはいつ見ても美しいなと思う。

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さあ、二宮駅に行こう。

二宮駅へ


本日は真夏、気温33℃。
二宮駅から、歩けるところまで歩いてみよう。
そして、帰りに電車に乗って帰って来よう。

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二宮駅に着くまでに思ったのは、カメラが変わると、撮りたいと思う被写体が変わってくるということ。特にライカQ2モノクロームは、モノクローム撮影専用カメラということもあって、視界と脳内で注目する被写体が確実に変わることを実感した。いつもは、お花や植物や空などを見ていることが多いけれど、このカメラで撮影していてふと気づくと、コンクリートや、鉄や、建造物を撮っている時間も多い。もう一人の自分の脳内を覗いているようだ。そして、いつも歩いている町の別の顔が見えてくるようだ。

ああ、なんて楽しいのだろう。

海へ


ライカQ2モノクロームは、フルサイズセンサー搭載のレンズ付きコンパクトカメラ。その身軽さは魅力だ。そして、やはりモノクロームの黒の引き締まり具合にグッとくる。JPEG設定で、コントラストやシャープネスの強弱は自由自在に設定できる。キリっとも、ふんわりも、自在だ。

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そして、カメラ内のクロップ機能を利用すれば、ズームが可能。搭載されているのは、28mmのズミルックスレンズ。デジタルズームで、35mm、50mm、75mmのズームが可能。単焦点レンズではあるけれど、ズームレンズのように利用できるのはとても便利だ。

よく行く袖ヶ浦(そでがうら)海岸(かいがん)に向かう海が見える坂の景色を撮影した。

■28mm
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■35mm
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■50mm
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■75mm
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28mmの広角側から、75mmに切り替えれば、背景をギュッと圧縮して撮ることが出来る。クロッピング撮影時の画像は、35mm、50mm、75mmの各レンズ相当の画角の設定でそれぞれの記録画素数は、4730万画素、3000万画素、1470万画素、660万画素。

撮影していて、ライカQ2モノクロームはとても軽快に撮影できるカメラだなと思った。例えば、MENUボタンを押す場合、1回押せばMENU1、2回押せばMENU2に画面が切り替わる。また、画面がタッチで操作できるのも便利だ。タッチでシャッターを切ることができ、タッチでMENU画面も操作でき、再生した写真は液晶画面上で指を使って拡大できる。スマホ感覚でスムーズに設定できて撮影できるのは爽快。それが、ライカのカメラで出来るところが嬉しい。

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東海道五十三次の香り


袖が浦海岸に降りると、見えてきた。
そう、東海道五十三次AREA8.5の壁画。

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漁師が地引網をしている壁画。モノクロなので補足すると、鮮やかなブルーがとても美しい絵だ。この袖が浦海岸では毎朝、漁師船市五郎(いちごろう)丸(まる)が出航する。日の出の頃、たくさんの漁師さんが集まり賑やかになる。観光地引網も行うことができる。私も以前一度地引網を体験したことがある。透明でぷりぷりのシラスや金色のアジやボラなどが獲れた。自宅に持ち帰り、みんなで捌いていただいたご飯は本当に美味しかった。

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東海道五十三次は昔の事だと思っていたけれど、でも、こうやって壁画を見ると、今もその香りを引き継いで意識を残していくことはとても素敵なことだと思った。

始めに書いたけれどこの日は真夏、気温33℃。
少し歩くだけで汗が流れる。日陰に入ってすうっと風が吹いたときの気持ち良さは格別。しばらく高架の下で風に吹かれながら海を眺めた。
モノクロは涼やかに見える効果もあるのだと思う。

モノクロの色


ライカQ2モノクロームは、モノクロ専用カメラ。モノクロとは、モノクローム(monochrome)の略で「一つの色」という意味。モノクロと言うと白黒を思い描いてしまいがちだけれど、一つの色という意味。このカメラには、ブルーやセピアやセレンの色がある。ブルーは少しブルーに、セピアは茶色に、セレンは少し紫がかった色になる。そして、色調は、強・弱と強さを選ぶことができる。というのは、ライカM10モノクロームで撮影したときに知った。そう、モノクロームは単色という意味。

ブルーを選んで、たくさん撮影した。

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小路を見つけて入ってみると、大きな木が聳え立っていた。タブの木。推定樹齢300年だそうだ。その下には、お稲荷さんも祀られていた。よく通る道だけれど、初めて気づいた。カメラを持つと、新しい出会いが本当に多い。新しいものに出会う度にカメラに出会って良かったと思う。

私はライカのこのブルーの色調が好きだ。薄っすら青い、決して青過ぎない、この色。特に好きなのは、青空を少しアンダーで写したとき。再生ボタンを押して写真を確認する時、モノクロだけれど、真っ青な青が撮れた、いつもそう思う。

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広重が描いた景色


歌川広重が描いた二宮の海岸あたりを訪れる。
絵には、相州梅澤左と書かれていて、現在の梅沢海岸辺りと考えられている。
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絵が描かれたのはこの辺りだろうか。

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富士山があるのは、このもう少し右側。
この辺りに、江戸時代は鶴が舞っていたのだろうか。
富士山までびっしり緑に覆われた景色の空に鶴が舞っているのを想像してみる。
昔の人々は、そんなのどかな景色を見ながら京都を目指したのだろうか。
歌川広重も、そんな景色を眺めて歩いたのだろうか。
何だかとても不思議な感じもする。そして、想像しているだけで楽しい。
200年という時間は短いようでとても長いのだなあと思う。

そんなことを考えながら、トーニングを変えて、撮影した。

■トーニング「セピア」
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■トーニング「ブルー」
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■トーニング「セレン」
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無農薬野菜のスパイスカレーを作る


歩数計を見ると、4.3kmと表示される。真夏の炎天下の中の4kmは予想以上にキツイ。なんだかちょっと頭がぼおっとしてくる。JRで一つ静岡側の国府津駅まで歩けたらいいなと思っていたけれど、半分くらいで危険を感じてその先を断念。ひとまず帰ることに。

でも、この連載、電車に乗って旅をして、カレーを食べて帰ってくると言う企画。
そのどちらもクリアしていない。
ぼおっとする頭をこらし、うーんと考えて思いついたのは、帰りがけに地元の野菜をたっぷり買い、二宮駅に寄り、自宅でスパイスカレーを作るという事。ちなみに私、数年前からスパイスカレーを本気で習い、今は自身が主宰するRoom5656という写真教室で自作レシピのスパイスカレーを作る料理教室のレッスンも開催している。いつか、この連載の中でも自分でスパイスカレーを作る回もあるだろうなと思っていたけれど、今回になることに。うん、そうしよう。

嬉しいことに、帰り道には無農薬野菜を販売しているカフェ「のうてんき」さんがある。のうてんきさんで、いきのいいぷりぷりの無農薬野菜をたんまり購入。二宮駅に寄り、半分フラフラになりながら帰宅。

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シャワーを浴びて少し生き返り、野菜を撮影。

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ライカQ2モノクロームには、マクロ撮影機能がある。レンズの一番ボディ寄りのマクロリングをMACRO側に回せば、マクロ撮影が可能になる。通常最短撮影距離は30cmだが、マクロモードに切り替えれば17cmまで寄ることが出来る。さらに、クロップ機能を併用して75mmで撮影すれば、かなりクローズアップして撮影することが出来る。

野菜は近隣で採れたぷりぷりで見事なものばかり。野菜たちが主役になるカレーを作ることに。ゴーヤ、黒ピーマン、赤オクラ、ナス、トマト、ニンニク、ショウガをたっぷりと、スパイスは、マスタードオイル、マスタードシード、ターメリック、レッドペッパー、ブラックペッパー、コリアンダー、ヒーング、お庭で育てているグリーンチリを入れた。ココナッツミルクと、ナンプラーとレモン汁で熱帯アジアのカレーに。家に帰ってから玉ねぎがないことに気づき呆然としたけれど、そうだナスをベースにしたカレーを作ろうと思いついた。ナスを皮ごと焼いてトロトロにし、ナスベースの夏のスパイスカレーが出来た。お庭で採れた梅のスパイスシロップソーダを添えて。空心菜もスパイスと一緒にさっと炒めた。

さあ、夏を食べよう。

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野菜は炒めすぎずに食感がシャキシャキ残る程度にした。
軽快に響く音と一緒に、夏が、口に体に広がった。
このカレー、とても美味しかったので料理教室のいつかのレシピにしたいと思う。そのくらい美味しくできました。うふふふふ。

お腹がいっぱいになり、体力消耗が激しかったこともあり、その後数時間動けなかった。
歩数計を見ると、8.5kmと表示されている。
真夏の炎天下、よく歩きました。

電車で


次の次の日、気温がぐっと下がり、まるで秋のような日になった。
あんなに暑かった日がまるで幻だと思うような涼しい風が吹いている。
朝、カメラを持ってJR二宮駅へ向かう。一駅静岡側の国府津駅で降り、二宮駅まで歩いてみることに。
電車はガラガラ。ボックス席でライカQ2モノクロームを撮ったり、流れる景色を撮ったり。

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気温は、28℃を示している。
5℃違うだけで、こんなにも体感が違うのかと思うくらい快適。海を見ながらずんずん歩いて、あっと言う間に二宮駅に着いた。8.1km。

道には、イチジクが大きな実を付けていたり、椿の実が大きく膨らんでいたりするのをみかけた。
秋が確実にすぐそこに来ている。

おわりに


この連載「ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。」も今回で7回目。たくさんのライカカメラと旅をしてきた。連載を読んで下さっている方に「正直なところ、どのライカのカメラが一番好きですか。」と聞かれることも多い。思い返してみれば、どのカメラも特徴があって好きだけれど、今回のライカQ2モノクロームは特に好きだと思った。あくまで個人的見解でしかないけれど、私には合う。

何が好きかと言えば、モノクローム撮影だけに特化していることの潔さ、そして、トーニングのブルーの色調の美しさ。そして、クロップ機能でいろいろな画角を気軽に撮ることが出来るのも嬉しい。モノクロームで撮ることだけを考えるという自分の心が一つ整理されることも心地いいし、写真の作品の幅が広がるように思えたことも大きな理由の一つ。

という訳で今のところ、私は、ライカQ2モノクロームが特に好きだ。

お庭では、サルスベリの鮮やかなピンク色の花が青空にゆらゆらと揺れている。
最近、ミンミンゼミの声が少し少なくなったように思う。

もうすぐ夏が終わる。
そして、秋が来る。
過ぎゆく夏と、やってくる秋を撮ろう。

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■撮影協力

観光地引網 市五郎丸
神奈川県中郡二宮町 袖が浦海岸
(事務所)二宮町二宮92-2-102
0463-68-2522
観光地引網 市五郎丸 (amebaownd.com)

のうてんき
〒259-0124 神奈川県中郡二宮町山西885-5
090-5568-9615
のうてんき ー オーガニック農業の情報発信基地

フルサワ印 刷(株)
神奈川県中郡 二宮町二 宮 904 番地 1
0463-71-0114
フルサワ印刷 (株) (f-print.co.jp)


■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。


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