キヤノン RF800mm・RF600mm比較レビュー|A☆50/Akira Igarashi

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はじめに

 2020年7月にキヤノン社より発売されたRF800mm F11 IS STMとRF600mm F11 IS STM。このレンズのお話を聞いた時、正直なところ発売せず賑やかしで終わるのではないかと考えていました。何しろ、長大な焦点距離があれど、絞り機構レスの開放F11というスペック。RFシステム誕生の際にキヤノン社の開発の方から「これからRFシステムの利点を活かした面白いレンズをどんどん作っていきたいと思います」とは聞いていましたが、まさかこんな面白すぎるスペックのレンズが本当に発売されたことにまず驚きました。

 そして、使ってみてさらに驚き。ヒコーキ撮影など長大な焦点距離を必要とする撮影においては、意外にもといっては失礼ですが、非常に使い勝手の良いレンズだということが理解できました。ここでは、RF800mm F11 IS STMとRF600mm F11 IS STMの2本を一緒にレビュー。ヒコーキ撮影における様々なシーンの撮影をおこないました。

外観と優れた携行性

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF800mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO200 F11 1/640sec 焦点距離800mm

 キヤノン社の超望遠単焦点レンズというと、白いバズーカ砲のようなレンズを思い浮かべる方も多いと思いますが、RF800mm F11 IS STMとRF600mm F11 IS STMはシンプルなブラックボディ。本当に800mmや600mmのレンズなの?というくらいコンパクトで軽いのが特徴です。コンパクトさの最大に秘密が沈胴式構造。撮影時にレンズを引き出すこの構造により、持ち運び時はコンパクトに収納することを可能としています。

 同じく単焦点600mmの焦点距離を持つRF600mm F4 IS L USM…いわゆる「ロクヨン」と呼ばれる白いバズーカレンズが同社にはありますが、カメラバッグにこちらを1本入れるスペースに、RF800mm F11 IS STMとRF600mm F11 IS STMの2本縦に並べて収納することも可能。それくらい、コンパクトに設計されたレンズなのです。

 また、RF600mm F4 IS L USMは重さが約3090g。それに対しRF800mm F11 IS STMは約1260g、RF600mm F11 IS STMは約930gですから、開放F値の違いはあれど、長大な焦点距離を持つ同じ単焦点レンズでもこれだけ重さに違いがあります。手持ち撮影の多いヒコーキ撮影においては、軽さこそ正義という場面も少なくありません。こうした翼上から雲が発生する、いわゆるベイパーシーンの撮影においては手持ちかつファインダーを覗きながら機体をずっと追いかけることも少なくないため、本体重量の軽さが大いに役立ちます。

信頼感のある画質

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO200 F11 1/640sec 焦点距離600mm

 RF800mm F11 IS STMは8群11枚、RF600mm F11 IS STMは7群10枚で構成されるこれらのレンズ。DOレンズにより各収差を補正し小型、軽量化にも寄与しています。単焦点レンズらしくヌケの良い描写。ディテールが重視されるヒコーキ撮影においても満足のいく解像感で、細かいパーツひとつひとつまで細かく描写してくれます。ただ、絞り開放固定となりますゆえ、中心部のシャープさに比べると周辺部はやや柔らかい感じに。条件によっては周辺光量落ちが目立つこともあるので、カメラ本体のレンズ補正にある「周辺光量補正」をONにするか、現像処理の際に補正しましょう。

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF800mm F11 IS STM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO100 F16 1/30sec 焦点距離1120mm

 レンズそのものの焦点距離でも長大な焦点距離となりますが、エクステンダーを装着しさらに焦点距離を伸ばすことも可能。1200mmや1600mmなど、超々望遠撮影もできますが、EXTENDER RF1.4xで開放F値がF16、EXTENDER RF2xで開放F値がF22と、なかなかお目にかかることの無い開放F値になります。画質落ちも1.4xの方ではそこまで感じることはありません。視程の良い日を選ぶなど条件の考慮が必要となりますが、2xの方も思ったより使えるなという印象を持ちました。

動画撮影にも嬉しい滑らかなAF

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■使用機材:キヤノン EOS R6 + RF800mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO100 F11 1/160sec 焦点距離800mm

 このレンズを使用する際、AF測距可能エリアは撮像面の横約40%と縦約60%の範囲になります。撮像面の端にAF測距可能エリアを置き、追従AFで…という撮影もあるにはありますが、工夫をすればこのAF測距可能エリアであっても不自由は少なく感じました。AFの合焦速度、精密さともに問題はなく快適。リードスクリュータイプのステッピングモーター搭載のSTM方式なので、動画撮影時には嬉しい滑らかなAFも実現しています。

流し撮りでも活躍するIS

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO100 F11 1/50sec 焦点距離600mm

 手持ち撮影が多く、超望遠撮影を多用するヒコーキ撮影においては手ブレ補正機構のスペックも気になりますが、RF800mm F11 IS STMは4段、RF600mm F11 IS STMは5段と十分なスペックを保持。EOS R5/R6に装備されたボディ内手ブレ補正(IBIS)との協調補正には対応していませんが、それでも普通に撮る分には不足を感じませんでした。むしろ、こうした流し撮りをする際は適度な補正効果の方が撮りやすい場合もあります。IBISとの協調補正は、組み合わせによってはかなり強力に補正効果を発揮するため、一眼レフから移行してきたユーザーは流し撮りの際に慣れが必要になるかもしれません。

それぞれのコスパ

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO200 F11 1/2000sec 焦点距離600mm

 このレンズの最大の魅力はコスパの良さに尽きます。同じくキヤノン社の超望遠単焦点レンズには、前述した通りRF600mm F4 IS L USMがありますが、こちらは2021年10月時点でのキタムラ価格が160万円前後。それに対し、RF800mm F11 IS STMは11万円前後、RF600mm F11 IS STMは9万円前後と、およそ15〜16倍程度の価格差があります。

 印刷して大きく引き伸ばすことが多い方、露出が厳しい中でも失敗できない撮影の続く方…つまり業務用途の撮影が多い方などは通称ロクヨンがオススメですが、SNSなどWEB上での作品発表が主流の方や日中の露出が稼げる時間のヒコーキ撮影が中心という方は、RF800mm F11 IS STMやRF600mm F11 IS STMもオススメです。開放F値3段分ということや絞り機構レス、AF測距可能エリアが狭いことなどは、この価格差を考えれば十分に相殺できるものだと考えます。

 もちろん、描写力など画質の差もありますが、正直なところこちらも15〜16倍の価格差から考えると素晴らしい性能のレンズだと感じます。10万円前後でこの焦点距離の画角、単焦点ならではの画質が手に入るのは素晴らしいこと。ロクヨンに比べて軽量、コンパクトなので、携行性や手持ちでブンブン振り回せるという点では、こちらが圧倒的に有利ですから。

まとめ

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■使用機材:キヤノン EOS R5 + RF800mm F11 IS STM
■撮影環境:ISO100 F11 1/1000sec 焦点距離800mm

 RF800mm F11 IS STMやRF600mm F11 IS STMをオススメしたいのは、100-500mmや100-400mmといったレンズに続く超望遠レンズをお探しの方。ヒコーキ撮影においては機体をさらにググっと引き寄せることができるので、新しい画角の新しい作品が生まれます。切り取り系…いわゆる迫力のあるヒコーキ写真や旋回シーン、月に機影が刺さるシーンなどの撮影にも、この焦点距離が威力を発揮。今まで焦点距離の短いレンズで撮影し、クロップやトリミングで対応していたという方も光学的な寄りで対応することができます。「F11という開放F値が…」「絞りが無いのが…」と心配される方もいらっしゃると思いますが、RFシステムのカメラはだいたい高感度性能も秀逸なので安心。ヒコーキ撮影においてこのような長大な焦点距離を用いた撮影をおこなう際はガッツリと絞り込むことが少ないので、この点についてもそこまで気にする必要は無いかと思います。

 そもそも、一眼レフのOVFではこの開放F値を持つレンズの開発は難しかったのではと推察します。ミラーレス一眼のRFシステムならではのコンパクトかつ軽量、魅力的な価格のレンズです。視程など撮影条件をしっかり選び、現像処理で光量落ちなど気になる部分を改善できるなら、コスパの良さをしっかりと体感できるレンズです。

■写真家:A☆50/Akira Igarashi
絶景ヒコーキ写真を求め全国を駆け巡る瞬撮系航空写真家。雑誌、WEB、TVなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどのオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。

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