カールツァイス ZEISS Loxia 2/35 レビュー|クラシカルな描写が美しいMFレンズ

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はじめに


 ソニーのフルサイズミラーレスカメラ用に設計されたZEISS Loxiaレンズのラインナップから、今回は「ZEISS Loxia 2/35」のレビューをお送りします。焦点距離35mm、開放F値はF2、レンズ構成はBiogon6群9枚のマニュアルフォーカスレンズのクラシカルな描写は、身近な日常をシネマティックに表現するのにぴったりでした。

ディストーションの少ない素直で自然な写り


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■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/1000秒 ISO125 WB:5000K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 まず撮影して驚いたのが、35mmの画角にしてはディストーションが少ないことです。レンズ構成はほぼ対称型のBiogon。そのお陰で歪曲収差が軽減されているのでしょうが、それでもこの四隅が誇張されない、素直で自然な写り方は感動でした。間違えて50mmのレンズを持って来てしまったかと思ったほどです。

 この写真はかなり日差しの強いなかで、モデルに太陽を背負ってもらい、思いっきり逆光で撮影しました。太陽が雲に隠れないタイミングを狙い、モデルの頭で太陽を少しだけ欠けさせるように構図を作っています。フレアーやゴーストが出やすい構図ですが、ゴーストは見当たらず、フレアーも軽減されています。オールドレンズのようなクラシカルな描写ではありますが、設計はデジタル用の最新型であることを強く感じました。

ポートレート・ショートムービー


■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり
■ジンバル使用

 本レンズの仕様は、焦点距離35mmのマニュアルフォーカスレンズ、絞り範囲はF2-F22、レンズ構成はBiogon6群9枚で特殊低分散ガラスレンズを1枚使用しています。最短撮影距離は0.3m、絞り羽根枚数は10枚、最大径62mm、全長66mm、重量340gです。

 フィルター径は52mmで、以前レビューした「ZEISS Loxia 2/50」を始めとするZEISS Loxiaシリーズのフィルター径は、現在ラインナップされているものは52mmで統一されています。これはフィルターワークを考えると、とても便利でした。特に動画撮影ではNDフィルターを日常的に使用しますので、ステップアップリングなどを付けずに、さっとフィルターを付け替えられる同径レンズは大変ありがたいです。

 今回はハイキーな映像を撮りたかったのもあって、NDフィルターは使用していませんが、コンパクトなボディは、ジンバルに載せながらローポジションで歩きながら撮影するシーンなどで重宝しました。

クラシカルな描写と色乗り


02_ZEISS Loxia 235作例.jpg
■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/250秒 ISO160 WB:5000K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 前述の通り、マニュアルフォーカスのレンズですのでピントは手動で合わせます。粘りのあるピントリングのトルクは筆者好みの感触で、α7Cの見やすい液晶画面も手伝って、引きの画でもピントは合わせやすかったです。

 ピント面はしっかりとした、切れ味のいいシャープな描写です。その上、ピントが合っているところからボケているところへのグラデーションはなめらかで癖がないので、ポートレートにピッタリでした。

 ディストーションが少ないので、モデルを構図の端に置いた撮影もでき、撮影の自由度が上がって楽しかったです。そして、色乗りと描写から感じるクラシカルさがとにかく筆者好み。広角レンズと望遠レンズのどちらが好みかといえば、実は望遠レンズ……の筆者なのですが、本レンズは画角の好みを感じさせないほど、その描写で魅了してくれました。

美しい丸ボケと癖のない素直なボケ味


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■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/250秒 ISO100 WB:5000K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 全体の描写は、雑味がなくストレート。オールドレンズっぽいクラシカルな描写でもあるのですが、最新型のレンズらしい癖のないボケ方をします。「ZEISS Loxia 2/50」の後ろボケは少し形を残すような立体感があったのですが、本レンズはそれよりも柔らかく、砂を濡らしてギュッと凝縮させたような、素直ながら湿度を感じるボケ味でした。

 画面全体の点光源の丸ボケは、すべてが丸く表現されており、雑味となってしまう模様も入っていません。モデルを主役として際立たせたいポートレートで、純粋な丸ボケは強力な脇役として活躍してくれます。驚いたのが、画面の隅の丸ボケまで綺麗な丸い形をしていること。贅沢な絞り羽根枚数10枚の恩恵ですね。

 ここで見て取れるのが、周辺部の像の流れがないことです。絞り開放で撮影していますので、ピントを合わせたモデルの瞳以外はアウトフォーカスとなってボケているので、像が流れているように見えるかも知れませんが、丸ボケを維持していることから上記のことが読み取れます。

嬉しい小型・軽量サイズ


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■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/1000秒 ISO125 WB:5200K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 四隅に直線やモデルの頭を配置するような構図は、ディストーションが強いと不自然な写真になってしまいますが、本レンズのようにディストーションが少ないと構図の自由度が上がります。

 また、ローアングルはもちろん、ハイアングルの撮影も容易に行えるのが、レンズが小さいことのメリットです。モデルの頭上にカメラを掲げるような撮影には、細心の注意が必要です。どんな万が一の事故も起こってはいけません。カメラボディをしっかりとグリップすることや、ストラップを手に巻きつけることなど、何重もの危険回避の手段を講じますが、軽くて小さいカメラとレンズの組み合わせは、事故回避の手助けにもなりますね。

細い線まで丁寧に描写!


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■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/250秒 ISO100 WB:5000K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 本レンズの特徴として、細い線の描写が丁寧だと感じました。石の柱やタイル状の石畳の模様、葉っぱの輪郭、スカートのドレープなど、グラデーションに埋もれてしまいそうなギリギリの色味も、綺麗に描いています。

 撮影時にはそんなに気にならないかも知れませんが、撮影後に写真を見返したりセレクトするときに、あって欲しいのがEXIF情報です。本レンズは電子接点を搭載していますので、自動的に記録されるのがとても便利です。また、このカメラとレンズの信号接点は特殊シーリングで保護されているのも、手厚い構造です。

創造力を盛り上げてくれる高品質レンズ


06ZEISS Loxia 235作例.jpg
■使用機材:ソニー α7C+カールツァイス ZEISS Loxia 2/35
■撮影環境:f/2 1/1000秒 ISO125 WB:5200K
■クリエイティブスタイル:ポートレート
■モデル:山上ひかり

 クラシカルな描写、素直で癖のないボケ味、丸くて美しい点光源ボケなど、本レンズでお勧めしたいポイントは沢山あるのですが、そのひとつに「操作するときにうっとりできる金属感」をプラスしたいです。

 金属の塊のような重量感と、キンと冷たい触り心地は、撮影するときにレンズに触る喜びを感じさせてくれます。撮るためだけの道具ではなく、気持ちと創造する力をも盛り上げてくれそうなこの金属感は、ぜひ一度手に取ってみていただきたいです。

 また、丁寧に施されたトルクの細かい溝、青地に白文字の誇らしげな「ZEISS」が彫り込まれたレンズフード、丸く盛り上がった前玉の美しさも、スペック上ではなく実物をご覧になれば、筆者がお勧めしている意味をおわかりいただけると思います。

 自分が頭の中に思い描くイメージをじっくりと表現するレンズとして、本レンズは活躍してくれることでしょう。


■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。


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