オールドレンズを手軽にはじめる最初の一本におすすめ!|ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8

坂井田富三

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はじめに

 今回のオールドレンズは「ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8」をピックアップしてみました。この「ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8」は初期型が1962年発売、前期型が1963年、後期型が1965年に発売になったレンズです。当時1964年に旭光学(ペンタックス)が発売した35mm一眼レフカメラ「ASAHI PENTAX SP」は全世界で400万台以上を売り上げており、そんなベストセラー機との組み合わせもあって、「Super Takumar 55mm F1.8」は中古市場の在庫も多く、非常にリーズナブルな価格で購入できるオールドレンズ代表格のようなレンズです。今回は、初期型・前期型・後期型から特徴のある後期型の「Super Takumar 55mm F1.8」を紹介いたします。

ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8 の魅力

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 「ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8」の魅力はなんといっても、市場価格がとてもお手頃な価格。初めてのオールドレンズにピッタリなのでないでしょうか。ちなみに筆者が持っている後期型は6,000円弱で購入したものになります。

 「Super Takumar 55mm F1.8」後期型の基本的なスペックは、
・焦点距離:55mm
・最短撮影距離:0.45m
・絞り開放:F1.8
・レンズ構成:5郡6枚
・絞り羽根枚数:6枚
・フィルター径:49mm
・マウント:M42マウント

 初期型と前期型、後期型の見分け方は、レンズ銘の中の製造番号の位置から判断する事ができます。Super-Takumar文字の前に製造番号があるのが初期型と前期型になり、後期型はAsahiの前に製造番号があります。

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製造番号がAsahiの前にあるので、このレンズは後期型というのが分かります。

 この「Super Takumar 55mm F1.8」後期型は、ちょっと特徴があるレンズで別名「アトムレンズ」と呼ばれています。このアトムレンズというのは放射性物質を含んだレンズの総称です。アトムレンズと呼ばれるものは「Super Takumar 55mm F1.8」後期型以外にも同時期にいろいろなメーカーから発売されていたレンズも存在します。

 使用されていた「酸化トリウム」は、レンズの屈折率の精度をあげる効果があるので描写力を向上させ、色収差を低減させた画像を得る事ができました。しかしアトムレンズにも欠点もあり、経年劣化によりレンズが黄ばんでしまうのです。レンズが黄色く変色してしまえば、撮る写真も黄色っぽい仕上がりになってしまいます。デジタルカメラで使用する分には、色温度設定で対応できますが、フィルムカメラで使用する場合は、撮る写真が黄色っぽいものになってしまいます。

 この「トリウム」は放射性物質なので、被ばくの恐れもあり使用されなくなった経緯があります。製造から50年以上経過しているレンズですが、身体には影響をおよばさない程度の微量な放射線を発していることは確かな事実のようです。気になる方は後期型の購入はさけて、前期型をチョイスする方がよいでしょう。

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 今回「Super Takumar 55mm F1.8」を使用して撮影するにあたっては、カメラはソニーα7R IIIに、焦点工房のマウントアダプター「K&F Concept KF-42E.P」(M42マウントレンズ → ソニーEマウント変換)マウントアダプターを使っています。このマウントアダプターは実売価格で4,000円を切るお手頃な価格で入手できるマウントアダプターです。

 「Super Takumar 55mm F1.8」自体が小さなレンズなので、マウントアダプターを装着してそれほど大げさな感じにはなりません。ソニー純正のFE50mmF1.8と同じ程度の大きさです。

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 現在のレンズに比べると小さくて重量感はしっかりとあります。アトムレンズなどと呼ばれてはいますが、とてもスタンダードなレンズなので写りに大きな個性を持っているレンズではありません。また、価格面では非常にリーズナブルに購入できるので、初めてのオールドレンズとして使いやすいレンズと言われ人気を得ています。

 ただ、発売から年数が経過しているので程度の良い中古も少なくなっているようです。程度の良いものが適正価格で見つける事ができたらゲットしておきたいですね。できれば、当時のかぶせ型のレンズキャップの付いたものを入手するとベストです。

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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF1.8 ISO800 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 「Super Takumar 55mm F1.8」は絞りを開放で撮れば、少しノスタルジーを感じるボケを表現でき、絞れば芯のあるシャープな画像を映し出すレンズです。

 オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、こちらの記事「マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?」をご参照下さい。

横浜・都内をスナップ

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■撮影機材:SONY α7RⅣ + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF1.8 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 お天気のいい日に、「Super Takumar 55mm F1.8」を持って横浜と都内を散策しながら撮影をしてみました。

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■撮影機材:SONY α7R IV + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF16 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 お天気の良い横浜山下公園からの大さん橋。絞りを絞って撮影しているのでオールドレンズといえども非常にシャープな画像になります。ホワイトバランスはAUTOで撮影しているので、レンズの状況(アトムレンズ特徴の黄ばみ)の影響が少しでている感じです。絞りを浅くして撮影すると、シーンによっては色収差が大きく発生する場合があります。画像を拡大すれば分かりますが、ベンチの白い部分や白い鉄柵の部分などで発生しているのが分かると思います。

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■撮影機材:SONY α7R IV + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/6400 絞りF1.8 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 順光で絞りを絞って撮影すると面白みは無くなりますが、オールドレンズの雰囲気は一切なくなりシャープな写りになります。

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■撮影機材:SONY α7R IV + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/250 絞りF16 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 逆に逆光で絞りを開けて撮影すると、オールドレンズらしく盛大にフレアーやゴーストが発生します。

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■撮影機材:SONY α7R IV + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/5000 絞りF1.8 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用
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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/8000 絞りF1.8 ISO200 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 フレアーやゴーストの出やすいレンズでは、意図的にこういった楽しみ方をするのも面白いですね。

 「Super Takumar 55mm F1.8」は、55mmの焦点距離で最短撮影距離も45cm程度と寄れるレンズなので、気になった被写体にぐっと寄って撮影できる魅力があります。

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■撮影機材:SONY α7R IV + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF1.8 ISO125 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用
14_ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8での作例.JPG
■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF1.8 ISO200 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

白黒撮影

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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF4 ISO200 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 今回は少し趣を替えて、カメラの設定を白黒モードにして撮影をしてみました。というのも、「Super Takumar 55mm F1.8」が発売になった頃は、カラーフィルムが少し一般的に普及し始めた頃で、まだまだ白黒フィルムがメインで使われていた頃です。その頃の白黒写真の仕上がりをイメージしてスナップ撮影をしてみました。絞りを開けて撮ると全体的にニュートラルな柔らかい印象の仕上がりになるので、カメラ側のコントラストを上げた設定で撮影をしています。

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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/3 絞りF16 ISO200 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 オールドレンズでもカメラボディの手ブレ補正が使用できるので、スナップ撮影での手持ちスローシャッター撮影でも心強い。

 実際に白黒モードで撮影して、撮ったデータを見直して思ったことは、少し奇麗に写りすぎるのかな?と感じました。ISO感度をあげて粒状感を出した方が、より古い時代に近い雰囲気を醸し出せると思います。

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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/400 絞りF16 ISO800 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用
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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF1.8 ISO800 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

 窓越しの逆光でも、絞りや露出補正で、味付けも大きく変わります。オールドレンズらしさを演出するには、絞りを開けて逆光のフレアーを活かすと白黒写真でも雰囲気を出すことができます。

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■撮影機材:SONY α7R III + ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/40 絞りF1.8 ISO800 焦点距離55mm
※マウントアダプター焦点工房使用

まとめ

 「ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8」はマウントアダプターも合わせて購入しても約1万円程度ですので、オールドレンズに興味を持った方、これからはじめてみたい方にはお手頃価格な魅力的な一本だと思います。大きな癖のあるレンズではないので、50年ほど経過したオールドレンズを使ってみたい方にも安心して使うことができると思います。購入する際にも、比較的中古在庫を多いレンズなので、品質を比較して予算に合わせて選ぶことも可能です。

■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

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