オリンパス OM-D E-M1 Mark III レビュー|野鳥撮影に最適な機能が満載!

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はじめに


 2020年の発売以来、その小型軽量性や機能性で人気のOMデジタルソリューションズ(オリンパス)のOM-D E-M1 Mark III。野鳥撮影においても、高速なAFや連写、そしてプロキャプチャーモードのような便利機能が搭載されたこともあって、フィールドで見かける機会が増えてきているように感じる。M.ZUIKOシリーズに、超望遠レンズが増えてきたことも一因だろう。もちろん、発売当初からのユーザーである筆者のもとでも活躍してくれている。

 今回は、実際に撮影してきた作例を見ていただきつつ、使いこなしがわかってきた今だからこそわかる魅力もご紹介しようと思う。機材選びに悩んでいる方はもちろん、すでにユーザーの方にも最後までお読みいただければ嬉しい。

野鳥撮影に適するM.ZUIKOレンズ選び


 野鳥撮影では、対象となる鳥との間に距離が開いていることも多いため、機材を使ってその距離を埋める必要がある。一般的には超望遠のイメージがある600mmや1000mm相当(35mm判換算)も、日常的に必要となってくる。それを踏まえてシステムを組むと良いと思うが、マイクロフォーサーズ規格のOM-D E-M1 Mark IIIなら、レンズ表記の2倍相当の望遠効果が得られるため、鳥を大きく写したい!と思った時に有利なシステムだ。結果的に、システムを軽量に組むことができる。

 以前の記事で詳しく書いたように、超望遠レンズを使うことは、野鳥へ与えるストレスを軽減することにも繋がるし、結果的に撮影チャンスも増える。野鳥撮影を始めたい!と思われた方には鳥望遠レンズの導入をおすすめしたい。

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 現在のM.ZUIKOのうち、筆者が野鳥撮影に向くと考えるレンズを並べてみた。左からおすすめ順に、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS。これに、1.4倍または2倍のテレコンバーターを加えれば、かなりの広い幅をカバー可能。あとはご自身の体力やスタイル(そして予算)を基に選んでいただきたい。

最大8段分の手ぶれ補正


 さて、システムを組んだら早速フィールドへ出よう。OM-D E-M1 Mark IIIで最大の特徴の一つが、強力な手ぶれ補正。一部のPROレンズとの組み合わせでは、その補正幅は最大8段分になる。合わせて、小型軽量なシステムであることも重要なポイント。おかげで、三脚によるブレ防止は必須ではなくなり、身軽な探索を可能としてくれる。生まれた余裕で双眼鏡などの観察器具を充実させてもいいし、バードウォッチング特有の「探す楽しみ」を損なわないまま、クオリティのある撮影を楽しめる、というわけだ。

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ノビタキ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 320 F5.6 1/320 絞り優先 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L 内蔵テレコン使用

 上の写真は、秋の渡り時期に見つけたノビタキ。草の合間からそっと覗き込むように撮影したことで、鳥を驚かせずに撮影できた。手持ちだと、限られたアングルからしか対象を視認できない時も撮影が容易だ。

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シメ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 640 F5.6 1/1000 絞り優先 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L 内蔵テレコン使用

 こちらは関東の平野部で冬鳥のシメ。この冬最初の出会いだった。季節ごとの出会いを期待して歩くことも野鳥観察の楽しみの一つだが、軽量な撮影システムであれば観察と撮影を両立しやすい。

AF性能を引き出す設定


 OM-D E-M1 Mark IIIには、OM-D E-M1Xのような鳥認識AFは搭載されていないものの、高速・高精度なAF機能が備わっているので、野鳥撮影でも十分に活躍してくれる。

 原則として、開けた場所で動く鳥を追う際はC-AFと広めのAFターゲット設定にし、不規則な動きにも対応できるようにする。逆に、林内で枝などに止まっている鳥を撮影する際は、周囲の障害物に合焦しないようにスモールターゲットというように、環境や鳥の行動によって使い分ける。OM-D E-M1 Mark IIIでは、カスタム設定ダイヤルや、ファンクションレバーから登録したAF設定を素早く呼び出すことが可能なので活用したい。

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タゲリ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 400 F5.6 1/3200 マニュアル 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L 内蔵テレコン使用

 上のタゲリは、田んぼの上を飛ぶ様子を、展望台から見下ろして撮影した。鳥が画面内で小さめなので、AFターゲットは気持ち小さめの3×3を使用した。

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コサギ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 800 F4.5 1/2000 マニュアル 焦点距離280mm(35mm判換算560mm相当) 連写L

 こちらのコサギは、近かったのでズームを引きながら撮影している。鳥が画面内で大きく、カメラが迷う心配がないと判断し、AFターゲットは広めの5×5を使用した。

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カワセミ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 320 F5.6 1/250 マニュアル 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L 内蔵テレコン使用

 このカワセミのように、鳥が静止していて、周囲にカメラが迷いそうな小枝がある時は、スモールターゲットを使用すると良い。

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カイツブリ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 320 F5.6 1/250 マニュアル 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L 内蔵テレコン使用

 さらに、デフォルトのターゲット設定だけでなく、「カスタムターゲットモード」を使用することで、任意の縦横比でAFターゲットを設定することもできる。例えば上のカイツブリは、縦1×横3にカスタマイズしたAF設定で撮影しており、水面に合焦するリスクを排除しつつ、鳥の泳ぐ動作にも対応できるようにした。大きさ、動き、環境など、毎度大きく状況が変化する野鳥だけに、自身で自由に設定できるメリットは大きく、とても重宝している。

 もうひとつ、「C-AFの追従感度」の設定も可能だが、筆者は常時+2とし、俊敏な鳥の動きにも対応できるようにしている。安定的にフレーミングできない場合には、設定したAFターゲットから外れた瞬間にピントが外れてしまうが、そこは練習と経験でクリアしたいところ。AFターゲットと同様、色々と試して自身に合う設定を見つけて欲しい。

アングルの自由度


 筆者はよく、野鳥の視点と、カメラの高さを合わせて撮影する。その際は、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISといった軽量なレンズが扱いやすい。

 水面を泳ぐカモ類を撮影する時、カメラ位置をギリギリまで下げると、背景に奥行き感と大きなボケを生むことができ、画面を整理しやすくなる。その際、多少無理な姿勢になっても、OM-D E-M1 Mark IIIの手ぶれ補正を使えば、安定した画面で鳥を追うことが可能だ。

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オナガガモ
■撮影機材:OM-D E-M1MarkIII + M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:ISO 400 F4.0 1/3200 マニュアル 焦点距離300mm(35mm判換算600mm相当) 連写L

 上の写真は、羽繕い中のオナガガモ。バリアングル液晶を上から覗くようにして撮影した。連写を活用して、思った表情の1枚を撮影できた。使用したM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROは軽量なので、微妙な高さ調整も容易。

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カルガモ
■撮影機材:OM-D E-M1MarkIII + M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
■撮影環境:ISO 400 F6.3 1/1000 マニュアル 焦点距離328mm(35mm判換算656mm相当) 連写L

 水浴びの後に羽ばたくカルガモ。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISも軽量なのは300mm F4.0と同様だが、ズームなので細かい画角調整も可能。野鳥撮影では、ズームは「引くもの」と考えるのがよく、例えばこのシーンであれば、水浴び中は400mm(800mm相当:35mm判換算)で撮影し、羽ばたく直前に、羽が切れないところまでズームを引いて対応した。

高速連写性能


 OM-D E-M1 Mark IIIの連写は、連写H、静音連写H、連写L、静音連写Lから選択可能。露出・ピントが1コマ目で固定となる「連写H、静音連写H」では、それぞれ最大15コマ/秒、60コマ/秒の高速撮影が可能だ。連写中もAE・AF追従するのは「連写L、静音連写L」の2モードで、それぞれ最大10コマ/秒、18コマ/秒の高速撮影が可能だ。

 野鳥撮影では、AFが追従する「連写L、静音連写L」のいずれかが使い易い。静音連写は、電子シャッターのことで、文字どおり音を立てずに撮影可能。また、シャッターブレも生じないので、基本的には「静音連写L」を使い、ローリングシャッター現象による歪みが気になるようなシーンでは、通常の「連写L」を選ぶ、という風に使い分けると良いだろう。

 実際の作品作りにおいては、連写した中から翼の開き具合、背景の良い1コマを選ぶことになるが、その際には高速連写が役に立つ。例えば、比較的羽ばたくのが遅い、ナベヅルのような大型の鳥の飛翔を撮影した時でも、18コマ/秒で撮影すると、わずか0.5秒(9コマ分)の間に、これほど大きく翼の形が変化することがわかる。

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ナベヅル
■撮影機材:OM-D E-M1MarkIII + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 400 F4.5 1/4000 マニュアル 焦点距離500mm(35mm判換算1000mm相当) 静音連写L

ナツベル連射.jpg

プロキャプチャーモード


 プロキャプチャーモードとは、OM-Dに特有の「時間を遡る」機能のことだ。使い方は、シャッターを半押しした時点から仮撮影が始まり、全押しすると、直前の最大35コマ分、遡ってSDカードに記録されるといった具合だ。

 連写速度は10~18コマ/秒のプロキャプチャーLモード(AE・AF追従)、または15~60コマ/秒のプロキャプチャーHモード(AE・AF固定)から選ぶことができる。例えば、18コマ/秒に設定した場合には、約2秒遡れる計算。60コマ/秒の場合は、約0.58秒遡れる計算だ。連写速度が多いほど、鳥の動きをより細かく記録できるのは通常の連写モードと同じだが、遡れる時間は短くなる。初めは慣れが必要だが、特に鳥の飛び出す場面を記録するのに有効なモードなので、ぜひ使えるようになっておきたい。

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25コマ前

OM-D E-M1 Mark IIIレビュー作例カワセミ連射2.jpg16コマ前

OM-D E-M1 Mark IIIレビュー作例カワセミ連射3.jpg11コマ前

OM-D E-M1 Mark IIIレビュー作例カワセミ連射4.jpg0コマ前(シャッター全押し時)

カワセミ
■撮影機材:OM-D E-M1MarkIII + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 800 F5.6 1/4000 マニュアル 焦点距離280mm(35mm判換算560mm相当) プロキャプチャーHモード(30コマ/秒)
(4コマ共通)

 上の例では、カワセミの飛び出すシーンを撮影するため、30コマ/秒に連写速度を設定し、約1秒遡れるようにした。シャッタースピードは1/4000となるよう、ISO感度と絞りを設定してシャッター半押しで待ち、飛び去ったと認識してから全押しした。SDカードには、全押し前の35コマが記録されている。プロキャプチャーモードを使うことで、旧来難しかったこの瞬間を「狙って」撮影できるようになる。

野鳥撮影×ライブND機能


 OM-D E-M1Xではじめて実装され、OM-D E-M1 Mark IIIにも引き継がれた機能の一つに「ライブND」機能がある。コンピューテショナルな処理によって、物理的なNDフィルターを使わずとも、スローシャッターを使ったような作品を撮影できる画期的な機能だ。風景写真で活躍しそうな機能だが、シーンによっては野鳥撮影にも応用できる。例えば、水際に佇むサギ類を、川面の流れを滑らかに写したい場面で使用してみた。

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ダイサギ
■撮影機材:OM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:ISO 100 F4.5 1/1.3 シャッター優先 焦点距離100mm(35mm判換算200mm相当) 静音単写 ライブND(ND16)

 この時は、M.ZUIKOレンズ群の中でも最も強力な手ぶれ補正効果を持つ、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROを組み合わせることで、1.3秒での手持ち撮影を試みた。通常このような撮影を行うためには、風に負けないがっしりした三脚と、NDフィルターが必要になるところだが、OM SYSTEMなら撮りたいと思った時に、機能を呼び出すだけでそれが実現するのだ。

終わりに


 いかがだっただろうか。ご覧いただいた作品に写る鳥たちのバリエーションから、OM-D E-M1 Mark IIIのカバーする範囲の広さを感じていただければと思う。

 機能が多岐に渡るOM-D E-M1 Mark IIIだが、せっかくのチャンスを生かすためにも、機材の特性をよく知ることが重要。既存のユーザーにとってもなにかヒントがあれば嬉しく思う。


■写真家:菅原貴徳
1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、海洋学や鳥の生態を学んだ後、写真家に。野鳥への接し方を学ぶ講座を開くほか、鳥が暮らす景色を探して、国内外を旅するのがライフワーク。著書に最新刊『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)ほか、『SNAP!BIRDS!』(日本写真企画)などがある。日本自然科学写真協会会員。 オリンパスカレッジ講師。



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