#05 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル

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はじめに


みなさん、こんにちは。フォトグラファーのコハラタケルです。「なんでもないただの道が好き 街撮り講座」5回目の記事です! 今回も背景の色を意識した撮影方法の話で前回の記事と繋がるような記事となっております。合わせて読むとわかりやすいと思いますので、前回の記事がまだの方はそちらの記事を読んでから今回の記事を読んでいただると嬉しいです。

人がいない段階で目立つ色を把握しておく


前回の「#04 なんでもないただの道が好き 街撮り講座」では背景色を淡色にすることでモデル(主題)を目立たせるという方法を取りましたが、今回は逆の方法です。

背景色のなかにひとつだけ違う色、もしくは目立つ色を入れることで視線を誘導させる方法です。

例えば、こちらの写真。全体的に緑・白・グレーで構成されている色合いのなかに1箇所だけ赤色が入っています。

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■使用機材:富士フイルム X-Pro3 + XF23mmF1.4 R
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO160

この背景だと人がいない状態でも中央部分に視線を誘導させることが可能です。とくに赤色は街撮りにおいて重要な色だと僕は考えています。というのも皆さんご存知の通り赤色は危険色のため、自然と視線が向かう場所です。

自分が撮影しようと思っている場所で赤色がどの位置、どれぐらいの面積で入っているのかは常に確認する必要があります。そうしないと本当はモデルを見て欲しいのに別の赤色部分に視線が引っ張られてしまい、自分が意図していない写真に仕上がる可能性があります。

人は存在感が強く、適当に撮っても目立つ存在である


そして、もうひとつ覚えておいて欲しいことがあります。それは、そもそも人は存在感が強いということです。

人は背景色や危険色を意識しなくとも視線を誘導させることが可能なのですが、できれば僕は人物がいない背景だけの状態でも、どこに視線が集まるのか確認しておくべきだと考えています。

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■使用機材:富士フイルム X-Pro3 + XF23mmF1.4 R
■撮影環境:F6.4 1/320秒 ISO160
■モデル:五味未知子

例えば、こちらの写真なのですが、モデルの周辺にはたくさんの通行人がいます。背景の色の整理もされておらず、モデルの顔まわりにはのぼり旗や歩道橋の手すり部分が被っていたりなどごちゃごちゃしていますよね。それでもほとんどの人が一番最初に視線を向かわせるのは中央にいるモデルだと思います。

街撮り写真では「モデルさんの表情は良いのだけれど、背景は考えて撮っていないんだな」というものを見ることがあります。

これらの写真がダメというわけではなく、重要なのはコントロールできているかどうかです。日本の街撮りでは電線・看板・自動販売機など、背景の情報量が多くなる場合が多く、何も考えずに撮ると、先ほど見せたようなまとまりがない写真になってしまいます。

この写真においても通行人の流れを見て、せめてモデルさんの顔まわりに通行人がいないタイミングで撮る、もしくは歩道橋の手すりが被らない位置、そうですね……今、見返すとカメラマン側から向かって左側の壁を背景にしていればよかったですね。そうすればモデルの顔まわりの情報も少なく、整理された写真に見えていたと思います。

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背景を整理 → 人物を配置


最初の写真に話を戻します。

何度も言いますが、日本の街撮りでは背景の情報が多くなりがちです。そういう写真も良いのですが、整理された写真も撮れるようになっておくと写真にバリエーションをつけることができます。

なんとなくではなく、理解した上で人物を配置させる背景(場所)を考える。そうすることで明確に撮影者の意図を伝えることができる写真になります。最終的に撮影した写真がこちらです。あなたの視線はどこに集まっているでしょうか?

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■使用機材:富士フイルム X-Pro3 + XF23mmF1.4 R
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO160
■モデル:五味未知子

別のロケーションでも見てみましょう。

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■使用機材:富士フイルム X-Pro3 + XF23mmF1.4 R
■撮影環境:F6.4 1/250秒 ISO160

こちらも同じパターンですね。緑・白・グレーで構成されているなかに赤色が入っています。人物がいなくとも中央上部に視線が向かいますね。モデルを配置する場合も背景の段階で視線が向かいやすい場所の近くに立ってもらいます。

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■使用機材:富士フイルム X-Pro3 + XF23mmF1.4 R
■撮影環境:F6.4 1/250秒 ISO160
■モデル:五味未知子

1枚の写真に複数の要素を入れる


僕は大前提として写真は記録だと思っているため、世にある写真に良いも悪いもないと思っているのですが、技術的な部分での良し悪しはあります。

最初に見せたこちらの写真ですが、「#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座」で紹介した反射光も使っています。影に注目してください。

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太陽からの光に関しては建物側から道路側に向かっているのに、モデルの顔にも光が当たっています。普通に撮ればモデルの顔には光が当たらない状況なのですが、反射光を使ってモデルにも光を当てています。さらに四隅に隙間を作らないことも意識して撮影しました。

実は最初のモデルがいない背景写真のときは左上に隙間ができています。

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「え、たったこれだけで?」と思う方もいるかもしれませんが、このようなちょっとした隙間、とくに四隅をどのように仕上げるのかというのは重要です。写真に限らず、隙間や四隅って視線が向かったり気になったりしませんか?


・色の構成を考える

・隙間を作らない

・反射光を使う


このようにひとつの写真のなかにポイントとなる要素を複数入れると写真の力強さが増すと僕は考えています。力強さが増すというのは初心者の方とはちょっと違うなと思わせる部分です。それは言葉にしても明白で、例えば……

「三分割構図を意識して撮りました!」

「三分割構図と色の配色、四隅を埋めることで写真の中央部分にいる被写体へ視線が向かいやすいように調整しました」

後者の写真のほうが「おっ」と思わせてくれるような写真なのではないかと想像できませんか。もちろん実際に写真を見ないとわからないこともありますし、前者の写真が素晴らしい場合もありますが、僕の経験上、複数の要素を入れて撮れる場所というのは限られていて、1度の撮影で何度も出会えるようなものではありません。

まとめ


写真教室やフォトウォークでモデルを立たせてから背景を考えている人を見かけます。慣れてくればそれでも良いのですが「まずは背景を考える、次に人物の配置を考える」というように慣れていないうちはひとつひとつをクリアしていくことがオススメです。たまには街にひとりで出かけ、「ここにモデルさんが立ってくれたら絵になるかも!」と想像しながらシャッターを切ってみてください。

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■モデル:五味未知子

■写真家:コハラタケル
1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。ライター時代に写真の勉強を始め、その後フォトグラファーに転身。企業案件の撮影ほか、セミナー講師や月額制noteサークルを運営している。ハッシュタグ#なんでもないただの道が好き の発案者。


コハラタケルさんの連載記事はこちら


#01 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://shasha.kitamura.jp/article/483346238.html

#02 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://shasha.kitamura.jp/article/483447191.html

#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://shasha.kitamura.jp/article/484139215.html

#04 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://shasha.kitamura.jp/article/484640119.html



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