スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.2|渋谷

渋谷4_富久浩二さんが撮影したスナップ.jpg

はじめに


 渋谷と言えば途切れることなく人が往来し終始にぎわっているイメージがあるが、他の街と同様に朝だけは静かに撮る事ができる。今回紹介する半分位の場所は既にかたちを変えてしまい同じ様に撮影する事は出来ないが、その時に何を感じて、どのような工夫をして撮影しているか紹介するのでスナップを撮る際の参考にして欲しい。また、今を撮り続ける大切さをお伝え出来れば嬉しく思う。

朝日差し込む丸井前の交差点


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■撮影機材:ソニー α7 II + コシナ フォクトレンダー ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical III E-mount

 交差点のビルの隙間から朝日が細く真っすぐに伸びていて、自転車でも通り過ぎればいいなと思って待っていたところ、丁度そこにスケボー青年がやってきた。こんな場面をカッコよく撮るコツは、まず明るい部分に極力露出を合わせて全体を暗くする。人の位置はもちろん大事だが、この写真は太陽の光が入り込んでいるので、人影はそれ以上に大事にしたい。速く動く人をこの位置で写し止めるのは難しい様に思えるが、人が歩いていたり走っていたりする時は、数秒前からその人とリズムを合わせてシャッターを切ることで丁度良いところで撮ることが出来る。もしリズムが取りづらい時は、数枚連写してその中から影のかたちが良いものを選ぶことも出来る。全体的な構図で見ると、空の明るい部分はあえて切っていて画面下側に集中できる様にしている。

スクランブル交差点


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■撮影機材:ソニー α7 II + コシナ フォクトレンダー ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical III E-mount

 スクランブル交差点と言えば有名な撮影ポイントだが、これが意外と難しく私もこれだと言った写真が少なかったりするが、唯一これかなって思う1枚を紹介したい。この赤いフードの人は最初からこの場所に居たわけではなく、後ろからやってきて私を追い越し前で止まった。すれ違った瞬間赤いフードに縦の白いラインが目に入り、交差点と組み合わせるこの構図が思い浮かんだ。建物だけの時は基本真っすぐな構図で撮ることが多いのだが、この写真では人を入れている事と交差点の広がりを引き立たせる為少し斜めにしている。あと、広角の時は左右もだが、特に下が暗くなるような構図にして主題が引き立つようにしている。

人が行き交う丸井前の交差点


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■撮影機材:ソニー α7 II + コシナ フォクトレンダー ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical III E-mount

 太陽の位置が低い時間帯は逆光で撮れる場所を選ぶと良い。スクランブル交差点周辺は高い建物に囲まれ、太陽が入った構図で撮影するのは難しいので、少し離れた太陽の光が差し込む交差点へ移動。この場面では駆けて行く人を主役にして撮影した。主役と言っても真ん中で撮らず、躍動感を出す為にあえて右端でジャンプしている瞬間を狙った。交差点の線を右側に広めに撮る事で全体的なバランスをとっている。また、超広角レンズを使って写真を撮るときは、レンズ毎に光芒の癖があるのでどの絞り値で光芒が綺麗になるのか知っておくことも大切だ。

ハチ公後ろ


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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 この日はハチ公前に昔からあった緑の車両が秋田県の大館へ引っ越しする当日で、警備員さん二人が車両端でジェスチャーでやり取りをしていた。銅像などを撮るときは、その街の景色と一緒に正面から撮るのが普通だと思うが、私は良く銅像の背中から撮る事が多い。何年もハチ公が見ていた風景と一緒に撮ると、その中に物語のある情景がでてくれる。カメラもハチ公の目線の近くを意識し高めにして、警備員さんのしぐさがかわいい瞬間を狙った。緑の電車の最終日にふさわしい写真になったと思う。何かがなくなる日や記念の日、こういった視点の写真があると普通の記念ではない大切な写真になってくれる。

JR南口近くの青い壁


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■撮影機材:ソニー α7 II + コシナ フォクトレンダー ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical III E-mount

 渋谷の長くなかなか終わらない再開発だが、少しでも和んでもらおうと工事現場の壁も工夫を凝らしアートな壁があったりする。真正面から撮っても面白い場所だったが、ここはひと工夫して隣のビルのステンレス看板の反射を利用してみる事にした。普通の綺麗な写り込みだとここまで面白くならないが、ステンレスにヘアライン処理がされているとこんな模様になって特別な写真になってくれる。人が現れてからシャッターを切っても間に合わなかったので、左側を覗き込み人が出てくるのを見計らって撮影を行った。また、おまじないのようでもあるが、人が入り込むスナップを撮影する時、“この瞬間!”って思いながらシャッター押すとそれだけで一日何度もイメージ通りの写真が撮れた事がある。万人に合った方法ではないかもしれないが、面白がって頂ける方は是非試して欲しい。

東急東横線の高架横


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■撮影機材:ソニー α7 + Minolta MC TELE ROKKOR-PF 58mm f1.4

 これは8年前、場所は埼京線のホームから山手線への連絡通路の小さな窓から線路横の人通りの少ない小道を撮影。普段だったら殺風景な見向きもしない場所だが、雪となるとこんなシンプルで色の少ない世界となり被写体を引き立ててくれる。この写真の構図で考えていたことは、まず画面全体を見渡した時に足跡の黒い部分が多くあるところを起点にして人を待つことにした。何人かが通る中で運よく赤い傘の人が現れたので、位置と足の開きのタイミングをみてシャッターを切った。雪の粒は小さくなってしまうが、絞って傘と、沢山の足跡の両方にピントが合うようにしていたと思う。

 実はこの写真は、最初からここで撮影する予定だったわけではなくスクランブル交差点の雪を撮りに行く途中で撮影したものである。こういった道中も気に掛け、カメラを出したまま目的地に向かうことで撮れる写真がある。スナップは駅に着いたらそこから始まると思うようにしてみよう。
※8年前なのでソールライターを知らない時でした(笑)

雪の日のハチ公前


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■撮影機材:ソニー α7 + Minolta MC TELE ROKKOR-PF 58mm f1.4

 これは朝7時頃、大粒の雪を曇ったガラス越しに撮影した写真。この時、目の前は汚れて曇ったガラスがあり、絞ると写り込んでしまうので、明るいレンズを取り出し絞りを開けて大粒の雪にピントを合わせることにした。通りがかる人も距離があるので、ボケ過ぎず傘をさした人のシルエットをはっきり写せそうと判断。右に濃い緑の電車、そして左に桜の木の影があり、その真ん中の明るい部分に傘をさして歩く人を待ち、日の丸構図で写しとった。雪は弱くなっていたが、まだ路面は濡れていて、女性の影が手前側に全身入り込んでくれたのはラッキーだった。スナップを撮っていると画面の中に予想以上の出来事が入り込むことがあり、それが面白いところである。私のお気に入りの写真の半分位はそんな要素がある。

渋谷のどこか


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■撮影機材:ソニー NEX-5R + LAOWA 9mm F2.8 ZERO-D
ミニチュアモード

 こういった面白い上下左右の映り込みは、普通に車道や通路を見ていては、なかなか見つけることが出来ない。私の場合は気に入った場所を一通り撮り終わった後に、どこか反射するものはないのか探す癖をつけているので、こんな場所を見つけられる事もある。一見すると写り込みが期待出来ないような曇ったステンレスも、近づいてみるとヘアライン処理がされていることがあり、普通ではない面白い絵になるので、レンズを近づけて反射するか試してみよう。鏡やガラスでもそうだが、反射がL型になっていてそのL型の角にレンズをつけると左側と下側の反射が得られるような所は特に面白い写真が撮れるので意識して探してみよう。

渋谷のどこかの交差点


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■撮影機材:ソニー α7 II + コシナ フォクトレンダー ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical III E-mount

 12mmでシンプルかつインパクトのある写真を撮影。超広角レンズは普通のレンズと比べてインパクトのある写真を撮りやすいが、なにもかも映り込んでしまうので、シンプルにしようと思うと一気に難しくなる。この場面では道路のタイヤ痕と自転車の車輪を主な被写体に選んでみた。その被写体を引き立てる為、ごちゃごちゃしている道路の奥の景色が入り込まないようにカメラを高い位置に構え、見下ろすように撮影している。自転車に乗っている人は画角の端の方に入ってしまうと一気に上半身だけ伸びてしまうので、それを嫌って腰から下だけを捉えた。人の足と影は伸びても気にならないのでそこは気にせず構図に取り込める。赤い部分の実際の色は淡いオレンジだが、コントラストを上げ赤く激しい感じに仕上げている。

雨の日のハチ公前


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■撮影機材:ソニー RX100IV

 雨の日の暗い渋谷では大型ビジョンがまぶしい光を放ち、濡れた地面の反射も格別だった。この場面では1インチセンサーのコンパクトデジタルカメラを使っていて、人にピントを持っていくとボケ、立体感が少なくなるので、あえて電車の壁の雨粒にピントを合わせてみた。傘の女性は人を待っていて、やっと来た人に顔を向け、顎が上がって傘の縁にある模様と被らなくなったので、その瞬間を狙った。ボケていて表情が見えるわけではないが、気持ちまで見えるような温かい写真になった気がする。 

あとがき


 渋谷のスナップはどうだっただろうか。ここ数年大きなビルも沢山建ち始めたが、スクランブル交差点側はまだ昔の雰囲気が残っているので、新旧どちらの街並みも撮る事ができる。渋谷の交差点は大きく広いところが多く、広角レンズで構図を調整し、意図する位置にさりげなく人を入れる事が出来れば魅力的な写真になると思う。また、人気の少ない早朝や雨の夜、雪の降る日は印象的な写真がどこよりも沢山撮れる場所だと感じる。これからもどんどん変わっていく渋谷で自分なりの特別な場所を見つけに出かけてみよう。


■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。


「スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。」の連載記事はこちら


■スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.1|新宿
https://shasha.kitamura.jp/article/483884728.html


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