富士フイルム XF50mmF1.0 R WR|圧倒的なボケと立体感、主役が引き立つ魅惑のレンズ

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はじめに


 2020年9月に発売された富士フイルムの単焦点レンズ「XF50mmF1.0 R WR」。焦点距離50mm(35mm判換算76mm相当)の中望遠レンズであり、なんと言っても富士フイルムのXFレンズで最も明るいF1.0という、圧倒的な開放F値の小ささが最大の特徴だ。今回はそんなXF50mmF1.0 R WRをポートレート撮影を通してレビューしていきたいと思う。

ボケとシャープさが織り成す立体感


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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.0 1/4000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

 このレンズで真っ先に語るべきが「ボケ」になるだろう。一般的な大口径レンズが見せるなだらかなボケとは一線を画すもので、ピント面だけを周りから切り取ったかのような、被写体が浮かび上がるボケ表現を作例からも感じていただけるはずだ。被写体の背景となる後ろボケだけではなく大きな前ボケも重要となるが、どちらもこの上ない描写である。

 そして、そのボケと相対するピント面のシャープさが、このレンズ特有の立体感ある写りを生み出している。主役となる被写体をキリっと写し出すことでボケとのギャップが強まり、より視線誘導される印象的な画を撮影することができた。肉眼で見るのとはひと味違う、「写真」ならではの醍醐味みたいなものを感じていただけるだろう。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.1 1/8000秒 ISO160
■モデル:りな

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.4 1/8000秒 ISO160
■モデル:りな

 また、被写体に寄ってボケさせるだけではなく、程よく距離を取って背景を写し込みつつもボケさせる、という部分においてこのレンズは非常に魅力的だ。どんなレンズでも寄ればそれなりのボケ感を出すことはできるが、被写体から離れてここまで気持ちよくボケを楽しめるレンズはそう多くない。

 背景を入れるとストーリー性を感じられる作品になる一方で、モデルさんを引き立てるにはある程度背景がボケてほしい。そのバランスが非常に気持ちよく、周りの空気感を閉じ込める描写は群を抜いて優れていると感じた。中望遠らしいクローズアップで前後のボケを活かす王道の撮り方はもちろん良いのだが、あえて距離を取って全体の空間を入れ込んで、その上で主役にピントを合わせた時に物凄く良い写真が撮れる、というのがXF50mmF1.0 R WRの真の魅力ではないだろうか。

極薄の被写界深度


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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.6 1/8000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

 前述したこのレンズ特有の大きなボケを楽しむ際に気を付けないといけないのが被写界深度だ。被写体と背景が分離したかのようなボケ量に、XF50mmF1.0 R WRを使った人は誰もが感動を覚えることだろう。一方で、それだけのボケを生み出せる絞り開放付近では被写界深度が極めて浅く、ピント合わせがシビアになる点は覚えておいてほしい。

 私は基本マニュアルフォーカスで撮影するスタイルのため、このレンズではいつも以上にピント合わせに慎重になった。普段通りのリズムで撮影していると、後々確認した時にピントを外していることも多々あったくらいだ。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.0 1/8000秒 ISO160
■モデル:りな

 それでも、しっかり落ち着いてフォーカスしてバチっとピントが合った時の何とも言えない魅惑的な写りは本当に引き込まれるものがある。レンズ任せにせず1枚1枚と向き合う撮り手の意識が重要で、このレンズの魅力を最大限引き出すのは撮影者の意識も変えていかないといけない、そんなような印象も抱かせてくれるレンズであった。

 もちろんF1.0でオートフォーカスが使えるというのがXF50mmF1.0 R WRの特徴でもある。実際にAFでも撮影してみたが、実用上問題はないと感じるレベルの精度であった。ただ、AFであってもピントが思ったところに来ているか撮影後にしっかり確認した方がいいだろう。それほど被写界深度が浅いと思ってくれた方がよさそうだ。

F1.0で夜撮りも楽しく


 開放F1.0のこのレンズが真価を発揮するのが夕暮れから夜の撮影だ。XFレンズで最も明るいXF50mmF1.0 R WRなら、日が落ちてきてもISO感度を極端に上げることなくシャッタースピードを確保できるため、ほぼ日中と変わらない感覚で撮影を進めることができた。

 この写真も日が傾いたマジックアワーの時間帯に撮影しているが、これがF2くらいのレンズだともう暗く感じてしまう。対してXF50mmF1.0 R WRなら十分な明るさが確保できるため夕暮れでも撮影はスムーズだし、編集の際にもあまり調整することはなかった。わずかな光が当たった顔のディテールもしっかりと捉えられているし、意外と空が白飛びしやすいこの時間帯でもきちんと色味が出ており、レンズの光学特性の優秀さがはっきりと表現された1枚になったのではないだろうか。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.0 1/1000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

 逆に天気の良い日中に絞り開放で撮影しようとすると、シャッタースピードが1/8000秒など振り切れてしまう点には注意してほしい。高速シャッターが切れないと露出オーバーになってしまうこともあるため、日中もF1.0で撮影したい場合はNDフィルターを持っておくと安心だろう(フィルター径は77mm)。

 夜の撮影でも手持ちでかつフラッシュ不要で、ここまでハッキリくっきりと撮れてしまうのがこのレンズの魅力だ。ISO感度もそこまで上げていないためノイズ感も一切なく、美しく背景がボケて被写体が驚くほど浮かび上がった1枚を撮影することができた。普通のレンズではなかなかこんな表現はできないはずだ。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.0 1/500秒 ISO400
■モデル:溝畑 幸希

個人的に必須な防塵防滴


 XF50mmF1.0 R WRは防塵・防滴・-10℃の耐低温構造を採用。個人的にポートレートで使うレンズにはこれらが必須だと考えている。雨が降っていようが雪が降り積もろうが砂浜だろうが、お構いなしに撮影を行うポートレート撮影は機材に対してかなり過酷な環境になる。ましてやモデルさんと意思疎通しながら複数のカメラをリズム良く使い分けていると、どうしても機材の扱いが雑になる瞬間もあるし、良い写真を撮るために迷わず砂浜に寝転がることだってあるのだ。

 今回の撮影でもレンズに砂が被ってしまうシーンはあったが、特に不具合なく使い続けることができた。下の写真もこのレンズの良さが良く出ているが、顔にピントを合わせた時に背景の砂浜がこの近距離でここまでボケているのは開放F1.0だからこそなせる業だと感じる。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.0 1/2000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

 F1.0でオートフォーカスが使えて防塵防滴で、となるとさすがにレンズのサイズは大きく(最大径87mm×長さ103.5mm)、普段メインで使っているXF23mmF1.4 R(約300g)と比べるとズシっとした重さはある(約845g)。ただ、日頃から様々な大口径レンズを使っている身からすると特別重さやサイズが気になることはなく、ましてやこのレンズでしか撮れない画があると思えば容易に許容できる範囲だと感じた。

さいごに


 被写界深度の浅さ、ひいてはピント合わせのシビアさから正直癖のあるレンズであることは間違いないが、それでもポートレートを撮影する人には非常に魅力的なレンズに仕上がっていると感じた。開放F1.0のこのレンズにしか出せない写りが確かにそこにはあった。特に夜撮りで雰囲気良くポートレート撮影をしたいと思っている人にはぜひ試してもらいたい。他のXFレンズにはない、今まで見たことのない印象をきっと感じてもらえるはずだ。

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■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F2.2 1/8000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

10 作例.jpg
■撮影機材:富士フイルム X-Pro3 + XF50mmF1.0 R WR
■撮影環境:F1.6 1/4000秒 ISO160
■モデル:じきまる。

■撮影協力
じきまる。:@jikimaru_
りな:@gyoza_love3
溝畑 幸希:@batako_yuki

■写真家:高橋伸哉
スナップからポートレートまで幅広く撮影。単著「写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか?」などを出版。オンラインサロン「写真喫茶エス」などを運営。写真教室も定期的に開催しており常に満員となる人気。



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