OM SYSTEM OM-1×菅原貴徳|野鳥撮影における実力を徹底レビュー!

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はじめに


 「お!これはとてもいいかも…」。はじめてOM-1で撮影したときに、真っ先に浮かんだ感想だ。これまでのOM-Dは、携行性と、雨風粉塵への耐性、手振れ補正など、野鳥撮影に欠かせない「機動力」が一番の特徴だった。新たに「OM SYSTEM」となり、AFや連写、ファインダー、動画…と、挙げきれないほど多方向にわたり性能が進化したOM-1。ここでは実際に撮影した写真を元に、その実力をご覧いただきたい。

バランスの良い外観


 昨年の今頃、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROという野鳥撮影に適したレンズが手に入って、主にOM-D E-M1Xとの組み合わせで愛用してきた。グリップ感がよく、とてもバランスが良かったからだ。一方で、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS やM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROのような軽量レンズには、OM-D E-M1 Mark IIIの小型ボディを組み合わせることが多かった。

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OM-1に縦位置グリップ(HLD-10)を装着した製品画像。OM-1(商品)に同梱されているボディキャップとは違います

 OM-1は、縦位置グリップ非一体型の、OM-D E-M1 Mark IIIによく似たサイズ感となっている。しかし、グリップの形状や深さ、シャッター周りの配置はOM-D E-M1Xのそれに近い。別売の縦位置グリップ(HLD-10)も同様の形状で、重量級のレンズと組み合わせても、とても良好なホールド感。縦位置グリップの脱着で、一台で二役、レンズによる使い分けができる。

難しい条件でも鳥をキャッチする、進化したAI被写体認識AF


 筆者にとって、もっとも大きな恩恵を感じているのはAFの進化だ。OM-D E-M1Xでも搭載されていた「鳥認識AF」とはもはや別物と言っていいほどで、ちょっといじわるな状況を試しても、ちゃんと撮れている。いつしかそんな邪念はなくなり、もっと挑戦的な姿勢で、これまで難しかったシーンへもレンズを向け、撮影を試みるようになっていった。

 なにが変わり、そして優れているのか整理しておこう。まず、検出能力がとても良い。順光はもちろんとして、逆光や、背景がギラギラした状況でも鳥のサイズや形、そして瞳の位置をよく捉えてくれる。そして、検出された枠がAFに反映されるまでが格段に速い。故に飛翔にも十分対応できる。また、C-AF時も使えるようになったことも、使い勝手の向上に一役買っている。

 検出力が向上したことと、AFターゲット枠一つ一つの面積が小さくなったことで、AFターゲットを広くしたままでも、障害物を自動で避けられるようになった。そのため、多くの場合でオールターゲットないし広めの枠を選択したまま、鳥を画面にさえおさめればよい、ということになる。

 従来であれば、筆者は止まっている鳥の撮影ではシングルAF(S-AF)と小さなターゲット、動いている鳥に対してはコンテニュアスAF(C-AF)と広めのグループターゲットを使い、都度切り替えていたのだが、上記のような使い勝手の向上で、AF設定を変える頻度が格段に減った。

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ツグミ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14
■撮影環境:ISO 400 F5.6 1/250 絞り優先 焦点距離420mm(35mm判換算:840mm相当) 静音連写L C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 上は、夕方に太陽が入る画角で撮影したツグミ。足元が枯れ葉だったので、撮影位置を変えるために動くと、音で驚いてしまう恐れがあった。そのままの位置から、手持ち撮影で太陽の入り方を微調整して撮影した。

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 そして、こちらが撮影中のファインダーのキャプチャ映像から切り抜いた一コマ。注目して欲しいのは、
・オールターゲット・C-AFでフォーカスしている点
・背景に太陽が入るいじわるな条件でも、フォーカスが背景に抜けていない点
・鳥の体と瞳のサイズ・位置を検出しており、枝葉にフォーカスが迷わない点
そして、このキャプチャからはわからないが、上記の一連が非常に素早く、一瞬のうちに完結している点だ。

 なお、初期設定では鳥の体と、瞳の2つの枠が表示されるが、瞳の方は非表示にすることも可能。使ううちに、カメラに任せて良いことに気がつくので、いずれ非表示にして問題ないだろう。

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カシラダカ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 320 F5.6 1/400 絞り優先 焦点距離500mm(35mm判換算:1000mm相当) 静音連写L C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 また、このように鳥の全身が見えていない場合や、背景に紛れそうな色調でも、「瞳」を見つけてフォーカスしてくれるので安心だ。その際、特段AFターゲットのエリアを狭める必要もないので、ちょこまかと動き回る小鳥にも容易に対応できる。

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 ファインダーのキャプチャ。藪から顔を出したアオジをファインダーで捉えると、周りの草木と鳥をしっかりと見分けて合焦した。これくらいの距離だと、「瞳」ではなく「頭」を検出しフォーカスする。

OM-1×飛翔撮影


 AI被写体認識AFは、飛翔撮影でも有効だ。

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 こちらは、チョウゲンボウの飛翔を撮影中のファインダーの一コマ。瞳(頭)の検出枠以外、全ての表示をONにしているので、たくさんのパラメータ・アイコンが表示されている。鳥の羽ばたきに合わせて、絶えず白枠の大きさが変わるのだが、シーンによってはやや目障りに感じるかもしれない。その分、しっかりと鳥の動きを捉えているということではあるのだが。

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オナガガモ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 400 F4.5 1/2000 絞り優先 焦点距離400mm(35mm判換算:800mm相当) SH2連写 C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 目の前を飛ぶオナガガモを追い写した。一瞬だが、翼でも体でもなく、ばっちりと眼に合焦していることに注目して欲しい。上のツグミやカシラダカの作例と同じAF設定のまま撮影した。これだけ異なるシーンを、AF設定の切り替えなく撮影できるのは本当に便利だ。

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ハマシギ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 400 F4.5 1/3200 マニュアル 焦点距離400mm(35mm判換算:800mm相当) SH2連写  C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 こちらは白昼のギラギラした光線の中、波打ち際に降り立つハマシギ。従来であれば背景に合焦しそうな状況だが、問題なく鳥にフォーカスしてくれた。

 飛翔撮影時の利便性においては、ファインダーや連写機能の進化も無縁ではない。ファインダー解像度は新たに576万ドットへと増強され、これはOM-D E-M1Xの2.4倍の画素数にあたる。フレームレート向上、表示遅延の改善も相まって、素早い鳥の動きも鮮やか、滑らかな像で追えるようになった。

 そして、連写機能の新たなトピックとしては、「SH連写」の搭載がある。いわゆるブラックアウトフリー連写だ。連写中もファインダー像が途切れないので、急な旋回も見逃さなくなる。このとき、AF/AE追従で50コマ/秒または25コマ/秒の超高速連写(SH2連写)が可能だ。なお、AF/AE固定時には連写速度は最大120コマ/秒まで選択可能になる(SH1連写)。プロキャプチャーモードも同様で、AF/AE追従時は最大50コマ/秒、固定時は120コマ/秒まで選択可能。上記はいずれも電子シャッターを使用する連写機能だが、OM-1は従来見られたような、ローリングシャッター現象に由来する被写体の歪みが最小限に抑えられている。

 実際、これまで背景や鳥の動きの速さによって電子・メカシャッターを頻繁に切り替えていた筆者も、OM-1を使い始めてからは全ての撮影を電子シャッターでこなすようになった。電子シャッターはカメラの耐久性にも貢献するし、鳥が嫌う破裂音も出ない。安心して使えるようになったことを歓迎している。

画質の進化を実感


 結論から言えば、OM-1の画質は素晴らしいと思う。従来機よりさらに高い次元で、M.ZUIKOレンズの解像力を、OM-1の優れたAFと画質が引き出してくれている。高感度域については後述するとして、実はOM-1の画質の進化をもっとも実感しているのは、ISO200から2000あたりの、日常的に使う域。解像度、諧調の再現、きめ細やかさなど大きく変わっていて、つい、細部を拡大してみたくなる。従来機と画素数が変わらないことを忘れてしまうほどだ。作例については、他の項目で紹介したものを参照されたい。

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オオハクチョウ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:ISO 6400 F2.8 1/640 マニュアル 焦点距離125mm(35mm判換算:250mm相当) SH2連写  C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 高感度については、従来のE-M1 MarkIIIから2段ほどの画質向上を感じる。野鳥撮影においては、高感度が使えるということは、撮影可能時間帯を広げることとイコール。上のオオハクチョウは、日没後にねぐらに戻るシーン。空が美しいながらも暗い条件だが、思い切って高感度に振って撮影してみた。美しいグラデーションが表現できていると感じるが、いかがだろうか。

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アオジ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
■撮影環境:ISO 5000 F6.3 1/1250 絞り優先 焦点距離400mm(35mm判換算:800mm相当) 静音連写  C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 また、PROレンズ群との相性がいいのはもちろんなのだが、ISO感度にして1から2段分、画質が良くなったことや、ディティールが立つ絵作りになったこともあり、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISとの組み合わせで撮れる絵もよくなっている。上のアオジは、暗い雨の日に撮影したもの。地面に落ちた種子を探し、絶えず動いている鳥なので、思い切ってISO感度を上げ、被写体ブレを抑えた。軽快な撮影を楽しみたいユーザーにとって朗報だ。

 なお、執筆時点ではまだ試せていないのだが、純正現像ソフト OLYMPUS Workspaceのアップデートにより、AIを使用した高感度画像データのノイズ軽減処理が可能になるとのこと。こちらも楽しみだ。

コンピューテーショナルフォトが広げる表現


 コンピューテーショナルフォトとは、デジタルな処理によって写真表現を広げる機能のことで、深度合成、ハイレゾショット、そしてライブNDがそれに当たる。いずれも、OM-Dの頃からあった機能ではあるのだが、OM-1では新エンジンが搭載されたことで、処理速度が上がるなど機能が拡張されている。

 ここでは、早速使う機会のあったライブNDを紹介したい。早春の川沿いを散策していると、岩の上で休むカワガラスの姿があった。カワガラスは茶色い鳥で、水の流れも全体に暗い状況。そのままシャッターを切ったのでは、カワガラスが映えない。そこで、水面をスローシャッターで流し、背景に白味を足すことを思いついた。そこで使用したのがライブND。従来はND32相当、すなわち5段分の効果までが使用可能だったが、OM-1ではND64相当、6段分もの効果が使えるようになった。

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カワガラス
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 100 F11 1/30 シャッター優先 焦点距離400mm(35mm判換算:800mm相当) 静音連写L ライブND64 C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 撮影できたのがこちら。晴天の日中だが、NDフィルターの効果を得たことで、川面を流して表現することに成功した。

 そして、1/30というスローシャッターでも、カメラ単体で最大7段の5軸手ぶれ補正により手持ち撮影ができることも忘れてはいけない。ライブNDと手ぶれ補正の両輪があってこそ、思いついたときにこのような撮影を実行でき、これも機動力のひとつの形と言えよう。

そのほか


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カワアイサ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
■撮影環境:ISO 800 F5.6 1/800 絞り優先 焦点距離500mm(35mm判換算:1000mm相当) 静音連写L C-AF / AI被写体認識AF(鳥) 手持ち撮影

 OM-Dの代名詞であった防塵防滴性能は、もちろんOM SYSTEMになっても引き継がれている。いきなり雨が降ってきても、機材の心配なくそのまま撮影を続けることができる。雨具などギアを充実させて、様々な環境下での撮影を楽しんでもらいたい。

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ツグミ
■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + パナソニック LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 ASPH./POWER O.I.S.
■撮影環境:ISO 1000 F6.3 1/800 絞り優先 焦点距離400mm(35mm判換算:800mm相当) 静音連写L C-AF / AI被写体認識AF(鳥)

 もちろん、マイクロフォーサーズ規格のレンズであれば、他社製レンズも装着可能。上の写真はOM-1にパナソニック LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 ASPH./POWER O.I.S.を装着して撮影したもの。OM-1のAI被写体認識AFは有効だった。連写周りを中心に一部機能が制限される点は注意が必要だが、同規格の望遠レンズをすでに持っているユーザーにとっても、OM-1は魅力的な選択肢となるだろう。

おわりに


 いかがだっただろうか。正直なところ、OM-1は進化項目が多すぎて、ここでは示し切れないほど。使い込んでいくうちに、さらに気づくポイントもあるはず。筆者の立場としては、せっかく出会えた鳥たちだから、綺麗に、そして思い通りに写せたら嬉しい。そんな喜びを、快適に実現してくれるOM-1。あらゆる層のニーズに応えること間違いなしだ。


■写真家:菅原貴徳
1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、海洋学や鳥の生態を学んだ後、写真家に。野鳥への接し方を学ぶ講座を開くほか、鳥が暮らす景色を探して、国内外を旅するのがライフワーク。著書に最新刊『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)ほか、『SNAP!BIRDS!』(日本写真企画)などがある。日本自然科学写真協会会員。



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