続・これから始める星景写真 vol.1|星景写真の人気の被写体「天の川」編

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はじめに


 星景写真家・写真講師の北山輝泰です。全3回でお届けしました「これから始める星景写真」はご覧いただけましたでしょうか。これまでは、星景写真に挑戦したい方向けに、機材の選び方や実際の撮影までについてご紹介してきましたが、「続・これから始める星景写真」では、星景写真の被写体である「星空」にフォーカスして、星景写真の世界をより楽しんでいただける知識をお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

星景写真の代表的な被写体「天の川」


 星景写真で最も人気のある被写体は間違いなく「天の川」でしょう。天の川は1年中撮影することができますが、特に人気なのは「夏の天の川」と呼ばれる天の川銀河の中心部分です。なぜ夏なのかというと、地球は約365日かけて太陽の周りを公転していますが、日本から天の川銀河の中心方向が見やすくなる季節が夏になるからです。

 銀河の中心はたくさんの星が密集しており、その写りの華やかさから、撮影できる季節が来るたびについ撮ってしまう被写体です。11月~1月下旬までの冬の期間を除き、長い間撮影できる被写体でもあることから、星景写真の代表的な被写体と言われています。(以下、夏の天の川を”天の川”と略して話を進めていきます)

天の川の星景写真の特徴


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■撮影機材:ソニー α7 III + FE 20mm F1.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.2 15秒 WB オート 焦点距離20mm

 天の川が写った星景写真を見てみましょう。まず目につくのが、地平線付近のまるで雲のように写っている部分かと思います。その白っぽい領域は「バルジ」と呼ばれ、無数の星が密集していることで雲のように見えています。それと隣り合っている部分が、星が発するガスや、宇宙空間をただよう塵から成る「暗黒星雲」です。このあたりが天の川のハイライトとなる部分で、夜空が暗い場所に行けばいくほど存在がはっきりしてきます。ちなみに、実際の天の川は円盤状になっていますが、私たちは横から天の川を見ている位置関係になるため、撮影するとアーチ状になっています。

天の川を撮影するタイミング


 天の川は夏に撮るべきと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。大事なことは「どのような形の天の川を撮影したいか」を考えてから、撮影するタイミングを決めることです。天の川も他の星々と同じように、東の地平線から昇り、南へ移動し、西の地平線へと沈んでいきます。この一連の動きを理解し、どのような天の川を撮影したいかを決めることがスタートになります。

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 まだ天の川撮影をしたことがない方は、まず(1)の地平線から昇ってきた天の川を撮影するのが良いでしょう。おそらく、夜間のカメラ操作に慣れていない場合は、横構図で撮影する頻度が多いかと思います。その時、バランスが良い構図になるのが(1)だからです。慣れてきたら縦構図が主体となる(2)の天の川、最後に(3)という順番に撮影していくのが良いでしょう。

地平線から昇る天の川を撮影する


 地平線から昇る天の川もまた、撮影できるタイミングが複数あります。一番最初に撮影できる時期はおよそ2月上旬で、この頃は夜明け前に撮影することができます。そのタイミングは1ヶ月ごとに少しずつずれていき、7月上旬ごろの日没後の撮影がラストチャンスとなってきます。天の川は月明かりの影響を受けると存在感が薄れてしまうため、撮影する時間に明るい月がない日を選ぶことになります。そのことを踏まえると、1ヶ月のうち、おおよそ10日前後しか撮影チャンスはありません。当然平日も含まれますので、休日にしか撮影に行けない場合は、2~3回ほどしか撮影チャンスがなく、天気まで考慮するとチャンスはごくわずかとなります。

 また、天の川が昇ってくる方角は東南から南になります。そのため、風景と一緒に撮影をする場合は、この方角に構図のアクセントになる被写体があることが重要になります。ロケーションハンティングをする際には、空が暗いところを探すだけでなく、方角も意識して行うようにしましょう。暗いところを移動することが困難な場合は、東南が開けている海岸線や展望台を探してみましょう。

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■撮影機材:ソニー α7 + FE 20mm F1.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.2 15秒 WB 蛍光灯 焦点距離20mm


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■撮影機材:ソニー α7 III + FE 20mm F1.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.0 15秒 WB 蛍光灯 焦点距離20mm

 (1)の天の川を撮影する上で私が一番好きなタイミングは、2月下旬から3月下旬にかけてです。この頃は日出前の時間に天の川が昇ってくるため、薄明の美しいグラデーションとともに撮影することができます。空が明るくなりすぎると天の川の存在も薄くなってしまうため、ベストタイミングはごくわずかです。薄明が始まる時間は地域毎に異なりますので、予めその時間を調べておき、余裕を持って撮影を始めるようにしましょう。

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■撮影機材:ソニー α7 III + FE 16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:ISO12800 F2.8 5秒 WB 蛍光灯 焦点距離16mm

天の川をより綺麗に撮影するためには


 天の川を撮影する環境は空が暗い場所になるため、必然的にシャッタースピードも長くなります。カメラの小さな画面では気づきにくいですが、拡大してみると星が流れて線になっているのがわかるでしょう。天の川は無数の星の集まりで構成されているため、シャッタースピードが長くなることによって星が線になってしまうと、天の川の存在もぼんやりとしたものになってしまいます。そのため、できれば赤道儀などを用いて星を点で撮影するか、なるべくF値が明るいレンズを手に入れて、速いシャッタースピードで出来る限り星を点で撮影することが重要になります。赤道儀についてはコチラ(ビクセン 星空雲台ポラリエU レビュー|北山輝泰)に詳しくまとめてありますのでご参照ください。

 また、天の川を綺麗に撮影する上では、カメラの設定も重要になります。特に色温度は見た目の色合いだけでなく、天の川の存在感にも影響してきます。星景写真でおすすめな色温度は「蛍光灯」や「電球」などの少し青味が強い色温度ですが、天の川を少しでも濃く撮影したい場合は「曇天」や「太陽光」などの赤みが強い色温度を選択するのも手です。もちろん全体的な空の色合いも変わってくるため、これらの色温度を選びつつ、カメラ内で色温度の微調整を行いながら撮影するのがいいでしょう。

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 さらに、コントラストや彩度を調整できるカメラの場合は、それぞれを少しプラスの方向に設定することで、わずかに天の川を濃く撮影することもできるためぜひ試していただければと思います。

天の川の星景写真をレタッチする


 一度でも天の川の星景写真を撮影すると、より濃い天の川を撮影したいという目標が生まれると思います。実際、SNSには美しい天の川の星景写真がたくさんあがっていますので、それらを見た方は強くそう思うことでしょう。しかしながら、そこで見るような濃い天の川を撮影のみで表現するのはほぼ不可能で、撮影後のデータに何かしらの画像処理を施しているのが現状です。そのため、天の川の星景写真を撮影する際には、必ずRAWデータでも撮影しておくようにしましょう。

 RAWデータを処理することを「RAW現像」と呼びますが、カメラメーカー純正のRAW現像ソフトもあれば、それ以外のソフトも多数あります。ソフトは使い勝手で選んでいただいても構いませんが、それぞれのソフトでできることできないことがありますので、体験版などをうまく使いながらご自身が使いやすいと思うソフトを導入するようにしましょう。

 私はAdobe Photoshopのプラグインである「Camera RAW」を用いてRAW現像を行うことが多いのですが、これには天の川を簡単に濃くすることができる便利なパラメーターがあります。それは「明瞭度」と「かすみの除去」です。

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 この2つは基本的に写真のコントラストを補正するパラメーターになりますが、コントラストを補正するのと同時に境界線のシャープネスも補正してくれますので、簡単に天の川の存在感を強調させることができます。CameraRAWは、パラメーターの変動に合わせてリアルタイムでレタッチ結果が反映されますので、ご自身の好みに合わせてパラメーターを操作してみましょう。RAW現像のより詳しい手順については、また別記事でご紹介したいと思います。

まとめ


 今回は星景写真の代表的な被写体である天の川をご紹介しました。天の川撮影となると、それなりに空が暗いところに行かないといけませんが、写った時の感動は一入ですので、ぜひ一度は遠征をして撮影に挑戦していただければと思います。それでは次回の更新をお楽しみに。ご覧いただきありがとうございました。


■写真家:北山輝泰
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。


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