続・これから始める星景写真 vol.2|惑星を題材に星景写真を撮影する

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はじめに


 星景写真家・写真講師の北山輝泰です。前回より始まりました中級編ですが、vol.1では星景写真の人気の被写体である天の川にフォーカスし、星景写真の被写体として撮影する際のポイントについてご紹介させていただきました。まだご覧いただいていない方はぜひチェックしてくださいね。

 さて、今回のvol.2では、私たちにとって身近な天体の一つである「惑星」に注目したいと思います。惑星は、私たちが住む地球を含めて8つありますが、今回は金星、火星、木星、土星の4つをピックアップし、星景写真的な視点で撮影する際のポイントについてご紹介したいと思います。

▼続・これから始める星景写真 vol.1|星景写真の人気の被写体「天の川」編
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星景写真の被写体としての「惑星」


 私たちが見上げる星々は、主に「恒星」と呼ばれるもので、自らのエネルギーを放出することで明るく輝いています。青白く輝く星は、星の年齢としては若く、たくさんのエネルギーを持っているのに対し、オレンジ色に輝く星は年老いた星で、例えばオリオン座のベテルギウスは、まもなく超新星爆発をし、一生を終えるとも言われています。

 北半球で見られる星は、東の方角より昇り、南の空へと南中した後、西へ沈む規則的な運動をしており、これを「星の日周運動」と言います。地球は自転をしていますので、一晩で見られる星は時間と共に入れ替わります。さらに、公転運動を加味すると、一年をかけて様々な星々を入れ替わり見ることができます。自転も公転も速度は一定ですので、例えば、ある日のある時間に見上げた星空を翌年にもう一度見たいと思ったら、同じ日時に空を見上げれば、まったく同じ星空を見ることができます。厳密なことを言えば、恒星自身も固有の動きをしているため、位置は少しずつ変わっていますが、地球との距離がとても離れているため、数十年という単位ではほとんど同じ位置に見えます。

 前置きが長くなりましたが、本題の惑星に話を戻しましょう。惑星は太陽の光を反射しており、その光が地球に届くことで、明るく輝いて見ることができます。惑星はそれぞれ違ったスピードで太陽の周りを公転しているため、地球から見た時には毎晩位置が少しずつ変わります。そのため、私たちが夜空を見上げた時に位置が変わって惑わされるところから、惑わす星=惑星と言われています。ちなみに、太陽に最も近い水星は、約88日で太陽の周りを一周しますが、最も遠い海王星は、一周するのに約165年もかかります。

 一晩ごとに少しずつ位置が変わるということはつまり、星景写真の被写体として惑星を撮影する場合、同じ位置関係で写真を撮ろうと思ってもできないということになります。ここに惑星の星景写真の面白さがあります。再撮ができない一期一会の貴重な出会いとなる瞬間を、どのような風景と絡めて撮影するかを考え、準備をし、撮影に臨む一連の流れは、いつもの撮影とはまた違うドキドキ感を味合わせてくれます。さて、惑星がテーマの星景写真を撮影する上では、それぞれの惑星の特徴を知る必要があります。今回は、惑星ごとにポイントをまとめてみましたのでご覧ください。

(1)金星


 金星は太陽と地球の間を周る内惑星のうちの一つです。地球に一番近い惑星のため、他の惑星と比べても一際明るく輝くのが特徴です。サイズ、質量とも地球に似ていることから、昔は兄弟惑星などとも呼ばれていましたが、地表面が非常に高温であることや、硫酸の雨が降るなど、地球とはかけ離れた過酷な環境であるため住むことはできません。内惑星である金星は、日没後の西の空や、日出前の東の空で見ることができます。「明けの明星」「宵の明星」という言葉をご存知の方も多いかもしれませんが、これは金星のことを指します。太陽から最も離れているタイミング(最大離角)の時が、比較的見つけやすいですが、今は簡単に惑星の出入りの情報をネットで収集することができますので、その年ごとの金星が見えやすい期間や時間などを予めチェックしておきましょう。

 星景写真における金星ならではの作品表現としては、その明るさを利用してできる「ヴィーナスロード」があります。ヴィーナスとはローマ神話に登場する愛と美の女神のことですが、水平線から昇る、もしくは沈むタイミングに、水面に金星の明かりで一筋の道ができ、それをヴィーナスロードと呼びます。このような光の筋は、それなりの明るさがある天体でしか撮ることができず、代表的なものは月ですが、金星ほどの明るさがあれば同様の作品を撮ることは可能です。今年は2月~3月の明け方の空に金星が昇り、そのそばに天の川があるという位置関係でしたので、印象的な作品を撮影することができました。次回は2027年に撮影チャンスが巡ってきます。

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■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 14mm F1.8 GM
■撮影環境:ISO3200 F1.8 10秒 WB蛍光灯 焦点距離14mm

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(2)火星


 次にご紹介するのは火星です。太陽から見て、地球の外側を周る惑星を外惑星と言いますが、その中では最も地球に近い惑星になります。映画「オデッセイ」をご覧になった方は、火星で暮らすことがいかに困難かをご存知かもしれませんが、地球と類似している点などもあり、多くの国が火星探査に積極的に力を入れています。

 地球が円に近い軌道で公転しているのに対し、火星は楕円軌道であるため、一定の周期で地球と近づいたり離れたりを繰り返しています。その周期は約2年2ヶ月ですが、15年~17年に一度地球との距離がとても近くなる「大接近」の年が訪れます。この時は、一番離れている時と比較して、見た目の大きさも約2倍大きく見え、明るさも約4倍明るく見えるなど、大きな違いがあります。ちなみに、次回大接近をするのは2035年の9月です。

 火星を星景写真の被写体として撮影する際のポイントですが、地球に接近し見た目にも赤く明るく見えるタイミングが写真写りも華やかになります。今年は12月1日に最も地球に接近しますが、この時はおおよそ-1.8等級という明るさで、冬の明るい星々にも負けずに輝く姿を撮影することができます。オリオン座や牡牛座といった冬の代表格とも言える星座のすぐそばにいますので、誰でも簡単に見つけることができるでしょう。

 また、火星の色にも注目しましょう。火星は英語でマーズと言いますが、これはローマの神話に登場する戦の神マルスからきています。血の赤と火星の赤い色を比べてそう呼ばれるようになったのでしょう。冒頭申し上げたように、星には様々な色があります。例えば、赤く輝く火星に対し、青白く輝く星を一緒に写し込んでも面白いかもしれませんし、似たような色の星を写して明るさの違いを表現してみても面白いかもしれません。もちろん、星ではなく地上物の色に注目して撮影するのも面白いでしょう。

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?■撮影機材:ソニー α7 III + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.8 15秒 WB蛍光灯 焦点距離36mm

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(3)木星


 3つ目は、太陽系の惑星の中でも最も大きい木星です。他の惑星と違い、木星に大地と呼べるものはなく、メタンや硫化水素等のガスで構成されています。また、アンモニアのガスが大気として木星を覆っており、それらが木星の早い自転周期(1周およそ10時間)の影響で生み出される強風で動くことで、あの独特で美しい縞模様が作り出されています。

 木星で有名なのが、ガリレオ衛星です。衛星とはある天体の周りを周回する別の天体のことですが、木星にはおよそ70以上の衛星があると言われており、中でもガリレオ・ガリレイが発見した「イオ」「ガニメデ」「エウロパ」「カリスト」の4つが有名です。35mm判換算で100mm程度のレンズで撮影すれば、これら衛星の存在をしっかりと確認することができますので、星景写真の中でも木星らしさを出した作品を撮ることができます。

 1つ目のポイントは、衛星の見え方は1日ごとに変わるということです。日によっては木星の後ろ側に衛星が隠れてしまい、4つの衛星を見ることができない日もありますので、天文シミュレーターや天文専門書で、事前に衛星の位置関係を調べておくのが良いでしょう。

 2つ目のポイントは、木星が地平線(または水平線)から昇るタイミングか沈むタイミングを狙って撮影することです。一般的な広角で撮影する星景写真とは違い、標準から中望遠で撮影する場合は夜空のほんの一部分しか撮影することができません。風景と一緒に撮影しようとすると、地上付近にある星しか撮影できないことになりますので、空高くに木星がある状態では一緒に撮影することが不可能になります。木星が地上近くにあるタイミングを調べる際にも天文シミュレーターが役に立ちます。

 このように、広角レンズで撮影する場合に比べ、標準から中望遠レンズでの星景撮影は事前の準備や、スムーズな撮影ができる技術がより一層求められます。そのため、まずは一般的な星景写真撮影が滞りなくできるようになってから挑戦するのが良いでしょう。

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?■撮影機材:ソニー α7S III + FE 85mm F1.8
■撮影環境:ISO3200 F1.8 4秒 WB蛍光灯 焦点距離85mm

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(4)土星


 最後にご紹介するのは土星です。土星でまず最初に思い浮かぶのが、あの特徴的なリングでしょう。これは無数の氷や岩の粒が、自身の遠心力と土星の引力とで均衡状態となり漂っているものです。一般的に市販されている天体望遠鏡でも小さいながらリングを見ることができるため、惑星の中でも一番人気と言えるでしょう。

 土星のリングを撮影しようとすると、最低でも35mm判換算で1000mm以上の望遠レンズが必要になるため、風景と絡めて撮影することは困難です。また、土星自体の明るさも約0等級と秀でた明るさとは言いにくいため、星景写真の観点では特徴を捉えにくいのが正直なところです。そのため、土星自体をテーマに撮るというよりも、周辺の星々との並びを意識して撮影していくのがおすすめです。

 セットで撮影すると映えるのはやはり天の川でしょう。今年は天の川近くのやぎ座に土星がいるため、20mm~24mm程度の広角レンズがあれば、天の川銀河中心と一緒に撮影することができます。その時、ソフトフィルターで星を滲ませてあげることで、より土星の存在感を強めて撮影できるためおすすめです。

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■撮影機材:ソニー α7S III + FE 20mm F1.8 G
■撮影環境:ISO6400 F1.8 10秒 WB蛍光灯 焦点距離20mm

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他の天体との接近を捉える


 ここまではそれぞれの惑星ごとの撮影ポイントについてご紹介しましたが、惑星同士が接近するタイミングもまた貴重なシャッターチャンスです。2020年の12月末に、木星と土星が大接近するという天文現象がありましたが、この時は肉眼ではほぼ重なっているように見えるくらいまで接近し、大変話題となりました。条件の良い惑星同士の接近は、国立天文台のページなどで調べることができますが、細かく調べていきたいという方は天文シミュレーターが必要になります。

 前回の木星と土星の大接近ほど話題になるものはしばらくありませんが、今年は惑星の並びが非常に美しい年です。特に6月上旬~8月上旬にかけては、深夜から明け方にかけて多くの惑星が直列する様子を見ることができます。明け方の薄明のグラデーションとともに撮影することができれば、一際美しい印象的な作品を撮ることができるでしょう。

 また、惑星と細い月が接近する瞬間も見逃してはなりません。細い月というのは、新月前後3日間くらいまでの月のことで、日没後の西の空や、明け方の東の空で見ることができます。月の撮影についてはまた改めてご紹介したいと思いますので、ぜひそちらの記事も楽しみにしていただければと思います。

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■撮影機材:ソニー α7 IV + TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:ISO2500 F2.8 3.2秒 WB蛍光灯 焦点距離41mm

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■撮影機材:ソニー α7 IV + TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:ISO3200 F2.8 2.5秒 WB蛍光灯 焦点距離75mm
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まとめ


 中級編 vol.2はいかがでしたでしょうか。今回は、星景写真の被写体として惑星を撮影する際のポイントについてご紹介させていただきました。今回ご紹介をした惑星は、どれも明るいため、市街地でも簡単に見つけることができます。自然風景だけでないあらゆる風景と絡めて撮れる可能性がありますので、ぜひ身の回りの風景から撮影してみてはいかがでしょうか。それではまたの更新をお楽しみに!


■写真家:北山輝泰
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。


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■続・これから始める星景写真 vol.1|星景写真の人気の被写体「天の川」編
https://shasha.kitamura.jp/article/485827135.html


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