春になるとハクモクレン、シモクレン、コブシなどが花を咲かせます。これらモクレン科モクレン属の花々は学名の読み方でマグノリアとも呼ばれています。春先になると枝先に花芽が膨らみ、次々に大きな花が咲いて、木全体を覆い尽くします。開花期は3~4月で、ソメイヨシノよりも少し前に咲くイメージでしょうか。花の美しさもさることながら、樹形も整っているので、観賞用として公園や庭木に植樹されています。また、コブシは日本に自然分布し、早春の山地で白い花が目を引きます。花びらは大きく、厚みがあり、真上に向かって花を広げます。そのため、花を横から見るか下から見上げることがほとんどです。木の花を撮る時は枝の処理に注意しながらフレーミングを行っていきましょう。
青空とハクモクレン。澄んだ空に花の白さが冴えています。青空を撮る時は順光がおすすめです。太陽に近い逆光は水色に見えますが、太陽と反対側になる順光は青色が濃く写ります。実際に青空全体を見ると、どこが最も濃いかがわかるので、花だけではなく、背景となる空の状態も観察しましょう。順光の空にはPLフィルターが効果を発揮するので、程よく効果をかければ、青空と白い雲のコントラストが際立ちます。また、広角レンズで見上げることで木が伸び上がる姿を表現することができます。左右対称型になるようなポジションを選び、雲のバランスも考えてフレーミングしました。
こちらはコブシの花です。コブシとハクモクレンはどちらも白くて似ていますが、コブシは広がって咲くのに対し、ハクモクレンは閉じ気味です。また、コブシの花びらは6枚ですが、ハクモクレンの6枚の花びらと3枚の萼片も含めて9枚に見えます。ハクモクレンに比べるとコブシの方がすっきりした印象ですね。この日は晴れていましたが、枝に遮られて木漏れ日がところどころに射しています。直射日光が当たると光がベタっとして見えるので、これくらい影になっているほうが私の好みです。しかし、影になった部分が濁らないように、+2EV補正をかけて、白さが感じられるように露出を決めています。
木の花は枝の処理がポイントになります。黒い直線は目立つため、背景になるべく枝や幹が入らないようにしたいものです。そこで、主役にはいちばん外側に咲いている花を選びましょう。しかし、背景に花の色が欲しいとなると、少なからず枝が写り込むので、大きくぼかす必要があります。背景をぼかす4つの要素である「望遠を使う」「絞りを開ける」「花に近づく」「主役と背景が離れた場所を選ぶ」を全て取り入れました。ボケていても黒い直線は目立ってしまうので、枝の面積は極力抑え、画面全体を淡い色で統一させるといいでしょう。
枝が入らないようにするためにいちばん先端の花を選んでいます。主役の花には光が当たり、背景の木々は逆光で影になっていたので、主役に露出を合わせると、明暗差から背景は黒く写りました。しかし、背景が平面的な黒一色では寂しいので、輝きを感じる丸いボケを入れています。このボケの正体は木々の木漏れ日の部分で、花とうまく重なるように上下左右に細かく動いて、ポジションを選びました。ハクモクレンは白いのでプラス補正が必要と思いきや、背景が黒いので、白と黒の面積を足すと約半々になります。そのため、補正なしで適正露出となりました。
モクレンで前ボケを作るのはなかなか苦労します。桜のように花の重なりが少ないので、前ボケを入れたとしても部分的になりがちで、前ボケの面積を広く作りにくいのです。できれば2、3輪の花の並びを前ボケにしてボケの面積を出したいですね。それと、花自体に厚みがあって、手前側が影になりやすいのです。前ボケは明るく柔らかに表現したいので、暗い色は避けたいもの。主役が白く飛ばない程度に、露出を明るめに仕上げるといいでしょう。ここでも+2.7EVの補正をかけて、かなりハイキーに写しています。
夕暮れの光を浴びた様子を表現するために、露出をかなりアンダーにしています。ハイライトを強調したいので、−1.7EVの補正をかけていますが、ただ暗くすればローキーの写真になるわけではありません。光の当たったところと、当たってないところという明暗差が必要になってきます。露出はハイライト部が見た目に近い明るさになるように調整して、ここではその結果が−1.7EVでした。光が当たってない部分や背景はハイライト部との明暗差から暗くなるので、暗い中に明るい部分だけが目立ちます。明暗差のない部分でただ暗く写すと、露出アンダーの失敗写真になるので、光の見極めはとても大切です。
東京の新宿御苑には各所にハクモクレンの木が植えられています。中でもこの古木は江戸時代に植栽され、都内随一の巨樹と言われています。木を離れた位置から見るのも良いですが、内側に回り込んでみると、頭上に広がる枝いっぱいに花が咲き、圧巻のひとことです。ポイントは左右の幹で、この2本を左右対称に置いてバランスをとっています。また、広角レンズで狙うことで遠近感が生まれ、左右は低い位置の花を、中央は高い位置の花が入るようにフレーミングしました。すると、見る人の視線が自然と中央へ向けられます。
広角レンズで低い位置の花に迫り、見上げました。すると、主役はアップで写せますが、画角が広いので周囲の木々が写り込み、花の賑わいを感じます。広角は遠近感もつくので、主役は大きく、周囲は小さくというメリハリも出ますね。主役の花と周囲の花が重ならないように注意してフレーミングしました。太陽側の空を見上げているので自然と逆光になるため、手前側が暗くなります。逆光の空は白っぽく写るうえ、手前側が影になって暗く写らないようにしたいので、+2,7EVという大幅な補正をかけています。明るい雰囲気が春らしく爽やかです。
春になると桜の開花が気になりますが、それよりひと足早く咲くモクレンもまた素敵な花ですよね。ハクモクレンやシモクレンは公園などでよく見かけますし、マグノリアを集めた植物園もあります。花びらに厚みがあるので、曇った日はどことなく色が濁って見えますので、晴れた日や薄曇りの日がおすすめです。特に、青空との組み合わせは最高です。光の違いでバリエーションが作れますので、順光、逆光、柔らかな光、夕暮れの光など、シーンを変えて楽しんでみてください。
■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。
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今回ご紹介するのはキヤノン独自のコーティングによって生まれる、独特でとろけるようなボケ味が魅力のRFレンズ「RF85mm F1.2 L USM DS」です。
全長は117.3mm、重量は約1.195g。同一の開放F値と焦点距離の「RF85mm F1.2 L USM」とはサイズも形状も同じで、違いはボディに刻印された「DEFOCUS SMOOTHING」という表記のみです。この「DEFOCUS SMOOTHING(DS)」コーティングというのがキヤノン独自の特殊な蒸着技術の名称で、レンズの中心部から周辺に向けて徐々に透過率を下げながら光を遮ることで、通常のレンズ描写と比べてボケの輪郭がやわらかく、なめらかになるという特徴を持っています。
最短撮影距離は0.85m。82mmのフィルター径を持つ開放F1.2の大口径単焦点レンズのボケ味というだけでもため息が出るほどの美しさですが、このDSコーティングによって、ピント面のシャープさとボケのやわらかさが絶妙なバランスで成立しています。防塵防滴性能を有していますが手ブレ補正機構は搭載していないため、ボディ内手ブレ補正を搭載したカメラと組み合わせるのがオススメです。
「RF85mm F1.2 L USM DS」はDSコーティングによってレンズ周辺部の透過率が下がるため、絞り開放時の露出は約1.3段分暗くなります。同じ焦点距離と開放F値を有する「RF85mm F1.2L USM」と同一条件で撮影するとその違いは一目瞭然です。
▼RF85mm F1.2 L USM (F1.2 1/250秒)
▼RF85mm F1.2 L USM DS (F1.2 1/250秒)
▼RF85mm F1.2 L USM DS (F1.2 1/125秒)
手ブレ補正機構が搭載されていないので、撮影条件によってはこの1.3段分の差が響く場面もあるかもしれませんが、開放F1.2という明るい絞りから生まれる大きなボケを楽しむ分にはさほど気にすることはないでしょう。
85mmという焦点距離で活躍する撮影シーンというと、やはりポートレートをイメージすると思います。特にDSコーティングによる滲むようなボケが醸し出すやわらかな空気感と、最新の工学設計によって生み出される高解像度な描写の組み合わせは、人物撮影において他のレンズとは一線を画す世界観を創り出してくれることでしょう。デュアルピクセルCMOS AFとレンズ制御の最適化によって高精度なAFを実現していることから、スナップシーンでの活躍も大いに期待できます。
目の前のシーンに合わせて撮りたいフレーミングを探して被写体との距離を測るのも、スナップ写真の面白さのひとつです。前述した通り、「RF85mm F1.2 L USM DS」の最短撮影距離は0.85mとそこまで寄れませんが、寄ったり引いたりを繰り返して自分の好きな被写体との距離感を見つけるのも楽しいと思います。
DSコーティングによって生み出されるボケ味は絞りを開けるほどボケの輪郭がやわらかくなることで、メインの被写体の存在感がより引き立ちます。屋外で撮影した場合の木漏れ日の玉ボケなどはため息が出るほど美しいです。同時に中望遠域の圧縮効果を生かした前ボケはよりボケが大きくなるため、DSの特徴であるボケの輪郭のやわらかさを最大限生かすことができると思います。
今回「RF85mm F1.2 L USM DS」を使って一番心が躍ったのは海を撮影した時でした。海というある意味ひとつの被写体が見せる画面手前から奥までの表情の変化を、なめらかな描写によって一枚の写真の中で再現できたことで、このレンズの良さを最大限感じられたように思います。
キヤノン独自の「DEFOCUS SMOOTHING(DS)」コーティングによって独自の世界観を持つRFレンズ「RF85mm F1.2 L USM DS」はポートレートに留まらず、さまざまなシーンで活躍してくれるレンズです。従来の「RF85mm F1.2 L USM」と比較すると若干価格が高価な点と1.3段分の光量落ちという特性を踏まえても、他のレンズにはないシャープな描写となめらかなボケ味のマリアージュは非常に魅力的といえます。この感動をぜひ一度味わってもらいたいと思います。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。
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コロナ中に初めて訪れた、しまなみ海道から尾道にかけての情景に魅了されて3年間通い続けました。島々の美しい風景や、おせっかいなほどに優しい瀬戸内の人々、そしてそこに伸び伸びと生活する猫の姿を硬質なモノクロで表現。カメラはライカM11にアポ・ズミクロン 35mmと50mm。プリント作品はアトリエマツダイラによるピエゾグラフィー。今回の展示に合わせて、MONO GRAPHY BOOKSより写真集「猫のよう」を出版。展示会場やMONO GRAPHY店頭、オンラインSHOP(https://www.monography.shop)にて販売。
しまなみ海道がつなぐ島々は美しく、青のグラデーションがどこまでも続いていく
海道を抜けて、尾道へと辿り着いた道中さまざまな人に出会った
瀬戸内には、おせっかいなほど親切な人がたくさんいる
島一周案内してくれたり、家でお茶をご馳走になったり、一緒にお酒を飲んだり
旅人である私を心から歓迎してくれた
その何気ない会話に、人の暖かさを感じながらシャッターを切ったそして、尾道の「猫の細道」に住む猫たちは
通りすがりの人たちに声をかけてもらい、撫でてもらい、とても幸せそうに暮らしている
その猫たちと、瀬戸内を旅する私を重ねて一つの作品にまとめることにした尾道の坂の町を歩いていると、いろんな感情が湧いてきた
訪れる度に迎え入れてくれる人の温かさを感じる一方で
古家が自然へと移り変わっていく儚さに、人生の移り変わりを感じるようになった変わらないように見えても変化し続ける日々
その一瞬を大切にしたいからこそ、シャッターを切っていきたい
■会場:Roonee 247 fine arts
■住所:東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビルB館4F
地図はこちら
・JR総武線 馬喰町駅下車 徒歩3分
・都営地下鉄新宿線 馬喰横山駅下車 徒歩3分
・都営地下鉄浅草線 東日本橋駅下車 徒歩8分
・東京メトロ日比谷線 小伝馬町駅下車 徒歩4分
■日時:2024年4月2日(火)~ 4月14日(日)※月曜休廊
■時間:12:00~19:00 ※最終日16:00迄
■費用:入場無料
■Roonee 247 fine arts HP:https://www.roonee.jp/exhibition/room1-2/20240315162626
福島県出身。
スタイリストになることを夢見て、文化服装学院でファッションを学ぶ。
撮影現場に携わっている中、カメラに興味を持ち始める。
その後、カメラアシスタントを経て、現在は広告や雑誌で撮影。カメラに関する記事の執筆や講師も行う。
またライフワークでさまざまな街へ旅しながら、ストリートスナップを撮り歩いている。
そして、2020年にはカメラや写真が好きな人が集まるスペースとして、写真集専門の本屋兼ギャラリー「MONO GRAPHY Camera & Art」を東京都中央区日本橋小伝馬町にオープン。
X:https://twitter.com/comuromiho
Instagram:https://www.instagram.com/comuromiho.gallery/
Youtube「写真家夫婦上田家」:https://www.youtube.com/@uedake
Youtube「カメラのコムロ」:https://www.youtube.com/@user-xo2ro5pe9r
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以前公開したEOS R7+RF800mm F11 IS STMの記事を執筆している最中に、キヤノンから突然RF200-800mm F6.3-9 IS USMが発表され「またえらいタイミングやな…」と当時感じました。
ありがたいことに発表後すぐにRF200-800mm F6.3-9 IS USMを使う機会をいただき、予想外に早く体験をすることができました。ここではEOS R7とともにEOS R6 Mark IIも使ってのレポートをしていこうと思います。
以前から私はRF800mm F11 IS STMを使用しており、画質に関しては価格を考えれば十分満足をしていると前回の記事でも書きました。なのでRF200-800mm F6.3-9 IS USMを使う前からRF800mm F11 IS STMよりも「悪くなるわけがない」と思っていました。結果的には予想通りで、かなり厳密に精査しないとほとんど違いが判らないというのが正直な感想です。
さて、EOS R7にRF200-800mm F6.3-9 IS USMを付けた時に、正直言って「重い」と感じました。これはRF800mm F11 IS STMに比べ790gも重いので仕方がないことです。とは言え手持ちが可能な大きさなので、やや重いと感じながらも機動性は優れていると感じます。
カメラに装着した時の見た目も悪くありません。「写りが重要」とは言いますが、それでも見映えが良いに越したことはありませんよね。Lレンズではないので赤いラインは入っていませんが、白レンズということでちょっぴり「リッチ感」を味わうことができるのは嬉しいポイントです。
これを読んでいるみなさんが気になるのは、見た目よりも800mm側での開放値(F9)でもきれいな描写が得られるだろうか、Lレンズではないがどれほどの描写が得られるのか、という点ですよね。それに関してはぜひ作例を見ていただけたらと思います。
EOS R7+RF200-800mm F6.3-9 IS USMはやはり私のような爺には「重い」し、手ブレ補正が5.5段分あるものの常時手持ちではちとつらくなります。撮影時は中型もしくは小型の三脚があるといいですね。一脚でもいいのですがカメラを置きたいときには不便なので、どちらを選ぶかはご自身で選択していただきたい。私は手持ち撮影を中心にしているので、使わない時は肩にかけて臨戦態勢で挑むようにして疲れを軽減させていました。
さてファインダーの見え味は「普通」で、撮影された写真も腰を抜かすほどの驚きはなかったのですが、逆にがっかり感もありませんでした。こう書くと「残念」な感じを受けるかもしれませんが、決してそうではありません。私から見ると及第点以上の性能でした。
続いてEOS R7での撮影フィーリングですが、直線的に飛ぶタカ類などは問題がないし、小鳥のとまりでも難なくファインダーに入れられます。しかし、ある撮影シーンで予想外の問題に直面することになりました。それはカツオドリ。大きな鳥ですが飛翔速度を自在に変えるし、いきなりの急降下で水中に突き刺さるアグレッシブな動きにファインダーからすぐ外れてしまうのです。これには本当に手を焼きました。それどころか「こんなにも俺って腕が落ちたか?」とマジでへこんでしまいました…
打ちひしがれながら、ザックを見ると予備で持ってきたEOS R5がふと目に入りました。なんとなく切り替えて撮影を始めると…ファインダーから見える景色が違う!ファインダーが広くとても見やすい。これがAPS-C機とフルサイズ機の違いなのか。
では何が違うのか?一番はテレ端800mmがAPS-C機だと1.6倍の1280mm相当の画角になる=画角がかなり狭いので被写体をファインダーに収めるのが難しく、アクティブかつアグレッシブに動かれるとカメラ側のAF追従性能が優れていても追うのが不可能になるという訳です。
EOS R5はフルサイズなのでファインダーが大きく隅々まではっきりと見えるし、なめらかに感じます。ではEOS R7を使った時にはズーム域を500~600mmにすれば同じじゃないかと思うかもしれませんが、テレ側が800mmまであるものをわざわざそんな使い方をするなら名機のRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを使えばいいですよね。
以上のことから、このレンズはフルサイズ機との相性がずば抜けて良いと感じました。
また、エクステンダーを装着する手間を省きたい場合、フルサイズ機ならボタン一つで1.6倍クロップを使う事もできます(画素数が減るマイナスはありますが)。ここで少し考えていただきたい。「あなたはすべての写真をA4以上に伸ばしてプリントをしますか?」という事。SNSにアップするだけならば1.6倍にしたものをさらにトリミングしてもまだ余裕があるという事実。エクステンダーを装着するわずかな時間でチャンスを逃すならボタン一つで拡大できる方がいいと思いませんか?私はまず1.6倍クロップで撮影した後、余裕があればエクステンダーを装着するようにしています。
さて話を戻して、カメラとレンズの相性というか特徴が違うという事がわかったおかげで、自分の腕が落ちていないと自信を取り戻すことができました。
キヤノンからCP+2024のステージでRF200-800mm F6.3-9 IS USMを使った作品を出してほしいとの依頼が舞い込んだので、せっかくなのでぜひ試してみたかったカメラを借りることにしました。それがEOS R6 Mark II。EOS R5との相性がいいことは実感できたので「AF精度が素晴らしい」と噂のEOS R6 Mark IIで試してみることにしました。
北海道のタンチョウと韓国南部のクロハゲワシを撮ろうと決めたものの、やはり手元に届けば早く使いたいのが人の性というもの。しかし残念なことは年々地元で野鳥の数が減り撮影が難しいため、今回はお隣三重県の海岸部へ。やはりこのフィールドも以前よりは鳥の数が減っているものの、それでもテスト撮影をできる環境でほっとしました。
EOS R6 Mark IIは一度捉えた被写体を追い続けるトラッキング性能が飛躍的に向上しており、1点AFや領域拡大AFでも一度捉えるとほぼ外すことなく追いかけてくれました。フルサイズの広く見やすいファインダーは、800mmを手持ちでアクティブに撮影するには無敵と言っていいと思います。
このレンズはテレ端での開放F値が「9」で暗いと思われがちですが、現代のミラーレス機なら足かせにはならないと今までも書いてきた通り。F9ながらAF合焦スピードが速くノンストレスで800mmを使うことができました。
他にもいいなぁと感じたのは、電子シャッター使用で秒間40コマ連写をした時!サーボAF連写をした時にがっつりとピントを合わせたまま追い続けてくれました。また、電子シャッターでのローリングシャッター歪みがEOS R7に比べてひどくないので、飛翔時の翼の歪みも許容範囲に感じられました。
テレ端で開放F9なのでボケに関しては気になるところですが、やはり800mmという超望遠のおかげでほどほどに自然なボケ味を出してくれました。EOS R6 Mark IIとRF200-800mm F6.3-9 IS USMの組み合わせは、「使えるセットを超えて無敵の超望遠セット」だと実感しました。
800mmからさらにアップにしたいと思う人がいるのか?…それがいるのでここではその点にも触れておきたいと思います。
まず開放F値は1.4倍エクステンダー使用時は1段暗くなり、2倍エクステンダー使用時は2段暗くなります。そのため速いシャッタースピードを得るためにはISO感度を上げることになります。明るい環境であれば全く問題ありませんが、暗くなる分AF速度が落ちるのは仕方ないことなので納得しましょう。ただAFの正確さは確かなのでご安心ください。
そして超超望遠にすることで最も手強い敵は「陽炎」だと頭に叩き込んでください。遠くの鳥をアップで狙う場合、早朝や夕方、曇りなど陽炎の影響が出ない、もしくは少ない時の使用が絶対条件になります。陽炎がひどい状態で撮影して「画像がシャープじゃないからエクステンダーは使えない!」という方が多いので、ここをしっかりと理解していただきたい。
200mm~800mmというとんでもないズーム域でありながら高画質な描写を得られるのは素晴らしいですが、レンズに「撮影距離範囲切り換えスイッチ」がないことが個人的には残念なポイントでした。
野鳥の飛翔撮影では基本的に最短から∞までのエリアを使うことがなく「一定の範囲」で撮影することがほとんどです。そのため例えばFULL、3m~5m、5m~∞があるとした場合、飛翔する鳥は3m以内に入ることは滅多にないため5m~∞を選択します。そうすることで、フォーカスが外れた際にも5mよりも近距離にAFが動作することがなく、被写体を再捕捉するスピードが上がります。普段から使い慣れたスイッチがないのがちょっと寂しいですね。
もう一つ、今まで標準装備されていた「手ブレ補正モード選択スイッチ」もありません。価格を抑えるためならこれも致し方ないと納得しましょう。
ちなみに手ブレ補正モードの違いは以下のようになります。
MODE 1:全ての方向の手ブレを補正するので主に静止した被写体の撮影に適している。
MODE 2:水平、または垂直にカメラを振ったとき、振った方向と直交する手ブレのみを補正する。動く被写体の撮影に適している。
MODE 3:露光中はMODE 2と同じように手ブレを補正する。露光中のみ手ブレを補正するため、不規則に動く被写体の撮影に適している。
200mm~800mmまでの幅広い焦点距離をカバーしたことで、ズームリングをワイド端からテレ端まで一気に回すのが難しくなっています。そこで自分がワイド側、テレ側どちらを中心に撮影するか考えて200~400mm、400~800mmに分けて使えると考えればズームリングを回す時にストレスは感じないでしょう。なので、1本でも2本のズームレンズだと理解すれば納得ができると思います。まぁ物は考えようという事で(笑)。
今回のRF200-800mm F6.3-9 IS USMと既存の望遠レンズを候補とした時に、高画質に野鳥撮影を楽しみたいのであれば以下のセットがおすすめだと感じました。
APS-C機ならば…EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
フルサイズ機ならば…EOS R6 Mark II + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
ちなみに予算に余裕がある場合で、より高画素を希望される方はEOS R5。堅牢でローリングシャッター歪みのないEOS R3もいいと思います。究極の写りを求めるならばRF800mm F5.6 L IS USMやRF1200mm F8 L IS USMなどの単焦点レンズも選択肢にありますね(なかなか手が出せる価格ではありませんが…)。今回紹介したRF200-800mm F6.3-9 IS USMはフルサイズ機で野鳥撮影するならぜひ一度使ってみてほしいレンズです。
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員
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富士フイルム株式会社より2月22日に日本国内向けに公開された、House of Photography in Metaverse(通称HoP)。
Webメタバース技術を用いて、様々なコンテンツやサービスが展開されています。
今回は、そんな仮想空間で繰り広げられるHoPのリアルをご紹介したいと思います
■利用の推奨環境
Windows10/Windows11/MacOS(11.7.3以上)
【ブラウザ】Google Chrome 最新版
【CPU】Intel Core i5 第10世代以上/メモリ: 8GB以上
※スマートフォン・タブレットでも利用できますが、端末の性能により動作が不安定になる場合がありますので、パソコンでのご利用を推奨します。
※当記事の掲載内容は掲載時点(2024年3月)の仕様に基づいています。
HoPへのログインはとても簡単です。まず、下記リンクにアクセスします。
https://houseofphotography-jp.fujifilm.com/
画像上のホーム画面が表示されたら「ENTER」をクリックします。
ゲストとしてHoP空間に入ることも可能ですが、体験できる内容が変わってきます。スタンダードメンバー(登録無料)はアバター同士のコミュニケーション機能が充実していたり、フジフイルムモールやFUJIFILM Prints&Giftsでのお買い物に使えるクーポンやポイントの特典があったりします。
X&GFX SHOWROOMではコンシェルジュのアバターとカメラ談義をしたり、ビデオ通話(※) による機材購入や修理の相談ができるのも魅力です。
※ビデオ通話は、X&GFX SHOWROOMに設置された専用リンクからお申し込み頂けます。
FUJIFILMメンバーズのアカウントをお持ちの方はログイン画面でメールアドレスとパスワードを入力してログインすることができます。
初めての登録の場合は『無料で会員登録する』から登録とログインへ進みます。
登録が終わったら、自分の代わりにHoP空間上で表示させる好きなキャラクター(アバター)を選びます。
仮想空間では、このアバター同士が会話を楽しんだり感情表現をしたり、現実世界と同じように、さまざまなユーザーと交流ができます。
各種登録を完了後、利用規約及びプライバシーポリシーに同意したらチェックを入れ、「ルームに入る」をクリックします。
いよいよHoP空間に飛び込みます!!
移動中は上記のHoP外観ビジュアルや、ワープ画面が表示されます。通信状況等により表示時間が変動する場合があります。
どんな世界が広がっているのかワクワクドキドキです!!
ホールを中心として、その周りには様々なブースや空間への入り口が点在しています。
ギャラリーやコミュニティエリア、ショールームへは、それぞれの入り口の中央にカーソルを合わせ、クリックして移動します。
HoP空間に入ると、先ずエントランスホールの入り口からスタートします。
アバターの基本操作はPCの場合、キーボードの前進後退と左右移動が「W・A・S・D」のキーで、左右回転が「Q・E」のキーを用いて行うとスムーズな操作が可能です。
タブレット端末等での移動操作は画面に表示される十字キーを使用します。
絵文字による感情表現が出来たり、画面上にある「その他」の「詳細設定」からアバターを操作しやすいように自分でカスタマイズすることも可能です。
instaxコーナーも関連情報が満載です。
FUJIFILM Prints&Giftsコーナーでは写真関連グッズが沢山紹介されています。
それぞれ展示品や商品名の部分にカーソルを合わせ「open link」のピンク色で表示される部分をクリックすると、関連したリンクに飛ぶことができ、実際に購入することも可能となっています。
X&GFX SHOWROOMは、専属のコンシェルジュも滞在する本格的なショールームです。最新のカメラやレンズの展示をはじめ、プロモーション動画も配信しています。
スタンダードメンバーはコンシェルジュと会話したり、専用のリンクからビデオ通話による機材購入や修理の相談に申し込むことができます。
店舗まで出掛けることなく、親身に対応して頂けるのが魅力です。
COMMUNITY AREAでは、バーカウンターやフリースペースのほか、音声が外部に漏れないラウンジなどがあります。
待ち合わせや雑談、打ち合わせ、イベント開催など、その使用用途は様々です。
COMMUNITY AREAには壮大な宇宙を連想させるCOSMO AREAも存在しています。開放感ある神秘的な空間が広がっています。
ARENAでは様々なイベントが開催されています。
詳細は下記のリンクをご確認下さい。
https://houseofphotography-jp.fujifilm.com/contents/community/
メタバース空間のギャラリーってどんな感じなの?とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。早速実際の展示の様子をご紹介します。
HoPには「CLASSIC GALLERY」と「PANORAMA GALLERY」の2つのギャラリーがあります。
こちらは、先日までCLASSIC GALLERYで開催されていたオープニング展示「HoPアンバザダー X&GFXシリーズ写真展」から。
アバター視点で見た私の展示作品です。リアルのギャラリーでの体験のように、作品に近づいたり、離れたりして鑑賞を楽しんだりできます。
そして会期中24時間訪れることができるのはメタバースならでは。
もっと詳細に作品をご覧になりたい場合は作品を右クリックすることにより、拡大表示され、さらに画面上の「□」ボタンをクリックすると全画面表示にも対応しています。
元画像と比較してもHoP空間上の展示のクオリティーはリアルで高精細を保っています。
まだ始まったばかりのHoPの世界・・・
今後、このプラットホームを通じて「写真」というキーワードを軸に、概念や時空を越えて、様々な人々が関りをもつことができるでしょう。
写真の未来像を模索しながら、それぞれの分野の新たな可能性を信じ、わたしも新しいことにチャレンジして行ければと思っています。
HoPでこちらのアバターを見かけた際はお気軽にお声がけください!
今回は無限の可能性を秘めた、富士フイルムHoPメタバースの世界を沢山の画像を用いてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
既存のオンライン会議等との差異を実感するためには、積極的にアバター同士でコミュニケーションを図ってこそ存分にその醍醐味を感じて頂けるのではないかと思います。
HoPにはトークイベントやギャラリー在廊、ミーティング等で様々なジャンルの写真家も訪れます。一方向に配信されるトークを聴くだけでなく、この空間ではタイミングが合えば、写真談議に花が咲いたり、撮影のお悩み相談なんかも気軽に聞いてもらえるのではないでしょうか?
HoPギャラリーでの展示などの見え具合も現物で解説しました。メタバースでの作品展示は、様々なジャンルの発表の場としての活用や、異業種コラボ等の展開が予想されており、是非ご参考にしていただければ幸いです。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師
■プロ写真家、ある日の撮影から作品カット採用まで。東北ロケドキュメンタリー
カメラの扱い、ボツ写真の葛藤、、奇跡の1枚、、ストーリーまで物語る作品の構成、普段明かされない、高橋忠照さんの等身大の撮影秘話をお届けするドキュメンタリー風トークショー。
開催日時:2024年3月31日(日) 14:00〜15:00
開場時間:13:50~
受講資格:House of Photography in Metaverse(メタバース)でご参加いただける方
※お申し込みにはアカデミーX会員登録が必要になります
受講料:無料
お申込み:以下の富士フイルム特設ページからお願いします
https://houseofphotography-jp.fujifilm.com/contents/community/community-1234/
https://academyx-jp.fujifilm.com/pages/programs/673
※参加定員に達し次第、申し込みを締め切らせていただきます。ご承知おきください。
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今回紹介するレンズは、タムロンの初代「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」の後継モデルとして2023年10月に発売された、タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)」です。
第2世代の「G2」モデルになり、小型軽量なサイズを維持しながらも手ブレ補正機能VCが搭載され、より使い勝手の良いモデルに進化しています。進化した魅力とその実力、実際の写りを紹介します。
タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は、初代モデルの小型軽量のサイズを維持しながら、手ブレ補正VC機能を搭載しオートフォーカスでの最短撮影距離を従来モデルよりワイド側で短くした事で、非常に使い勝手が良くなりました。
ソニー純正の「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」とスペック的には競合するレンズになりますが、「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は望遠側の焦点距離を20mm短くして小型化されており、販売価格もソニー純正の「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の半分以下で購入できる、非常にコストパフォーマンスの高いレンズです。
実際にソニー純正レンズ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と並べて比較してみると、大きさの差は歴然です。レンズの全長が短いので、カメラにレンズを装着したままカメラバッグに入れる事も容易な感じです。
70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065) |
70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056) |
FE 70-200mm F2.8 GM OSS II | |
焦点距離 | 70-180mm | 70-180mm | 70-200mm |
レンズ構成 | 15群20枚 | 14群19枚 | 14群17枚 |
開放絞り | 2.8 | 2.8 | 2.8/td> |
最小絞り | 22 | 22 | 22 |
フィルター径 | 67mm | 67mm | 77mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 9枚 | 11枚 |
最近接距離 | 0.3m (WIDE) 0.85m (TELE) |
0.85m(全域) ※MF時0.27m(WIDE) |
0.4m (WIDE) 0.82m (TELE) |
手ブレ補正 | 有 | 無 | 有 |
全長×最大 | 156.5×83mm | 149×81mm | 200×88mm |
重量 | 約855g | 約810g | 約1045g(三脚座別) |
発売 | 2023年10月 | 2020年5月 | 2021年11月 |
タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は、旧型では少々使いにくかった最短撮影距離が改良されており、この点において非常に使いやすくなったと言えます。
旧型ではマニュアルフォーカス時に限りワイド側で0.27mと短くなるのですが、オートフォーカス時は0.85mの最短撮影距離となり、オートフォーカスしか使わないユーザーにとっては少し扱いづらい点がありました。ですが今回のG2は、ワイド側での最短撮影距離が0.3mとなり、オートフォーカス使用時でも寄れるレンズとなったことで使い勝手が向上しています。
また旧型に対して「手ブレ補正機構VC」が搭載された事によりレンズ構成は変更されているものの、フィルター径は従来と同じ67mmです。タムロンの多くのレンズがフィルター径67mmに統一されているので、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインアップ全体で高い利便性を発揮します。
タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして、「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。
パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。レンズを使いやすいように設定することで、撮影がもっと楽しく、もっとクリエイティブになります。
「TAMRON Lens Utility」で設定できる各種機能は、A-Bフォーカス・フォーカスプリセット・フォーカスリミッター・フォーカスリング設定・AF/MF切り替え・フォーカス/絞り リング機能切り替え・カメラボディ機能割り当てなど様々な設定が可能です。
タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」を持って、東京浅草周辺をスナップ撮影してみました。中望遠から望遠系のレンズの為、気に入った被写体を切りとっての撮影になりますが、絞り開放F2.8と望遠の効果を楽しんで撮影をしてみました。
下の写真は、大勢の観光客で賑わう浅草の仲見世通りですが、小型軽量のメリットを活かして頭上高くカメラを持って一番奥にピントを合わせ、圧縮効果と前ボケを活かして奥行き感と賑わい感を演出してみました。
下の写真は、像の周りには網状のフェンスがあるのですが、望遠レンズ+明るい開放F値の効果でフェンスの影響をかなり抑えて撮影する事ができています。
大きなボケの演出はテレ側の180mmは勿論のことワイド側の70mmでもボケ効果は大きく、メインとなる被写体を引き立ててくれます。
次にタムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」を持ってお祭りの撮影をしてみました。お祭りの撮影では、機動力のあるズームレンズがとても便利です。広角から標準域が無いのでややアップの撮影にはなってしまいますが、望遠を使って前後のボケを活かして奥行き感のある写真になるよう狙ってみました。
下の写真は、お祭りの最中に買って食べたお団子ですが、左手に持ったお団子を右手だけで持ったカメラで簡単に撮影できるのもタムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」の最短撮影距離が0.3mと短くなった事で可能になったのと、このクラスのレンズとしては軽いレンズのおかげです。
明るいF値と「手ブレ補正機構VC」の効果もあり、タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は暗くなってきた夕方から夜の撮影でも、スローシャッターでの手持ち撮影もブレずに撮影する事ができ、非常に使い勝手がよく安定した撮影をこなすことができました。
かなり暗い中での撮影も、ある程度ISO感度を上げれば明るいF値の効果もあり、手持ちでの撮影も柔軟に対応でき、動きのあるお祭り撮影での機動力も大幅に上昇しました。
一日中タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」を装着したカメラを持ち歩いていましたが、このクラスのレンズとしては軽量なので疲れも少なく非常に助かりました。
タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は、望遠側の焦点距離を180mmにする事でレンズの小型軽量化を図り、普段使いしやすいレンズになっています。実際に焦点距離200mmとの画角差は1.12度ほどの差なので、実際に撮影してみても物足りないような事は感じませんでした。大きなボケ効果を得られるこのクラスのレンズとして、純正レンズの半額以下で購入できるコストパフォーマンスの高さはとても魅力的なポイントです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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みなさんこんにちは、フォトグラファーの鎌田風花です。春の訪れを、日々の暮らしの中に感じられるようになってきました。花撮影が大好きな人にとって、たくさん咲き始める春は待ち望んでいた季節ですよね。すでに各地へ花を撮りに出掛けている方も多いと思います。今回は写真で印象的に切り取るコツを、春の花ごとに紹介したいと思います。
花の撮り方を解説する前に、少しお話ししたいことがあります。
目の前の花を撮ろうと思った時に、漠然と撮影してもありきたりな感じになってしまう、どう切り取れば魅力的に写すことができるのかピンと来ない…という経験はありませんか?私はその経験を何度も繰り返して、今は花を撮ることが大好きになりました。いくつか撮影する時に気をつけていることがあります。
人と同じで、花もそれぞれに魅力があります。例えばカモミールは春になると花畑や寄せ植えなどでよく見かける花ですが、花びらが均一に並んでいる様子が可愛いです。その可愛さを伝えたいので花びらが綺麗に見えるよう俯瞰で撮影しました。まずは花が魅力的に写る向きや角度を探してみてください。
他の花よりも背が高く目立っていました。他にも色が異なる、他の花と違う方向を向いて咲いているなど、よく観察すると同じ花が咲いている中に違う特性を持つ花がある場合があります。花や花畑をじっくりと観察することが大切です。ネモフィラは地面低く咲いているので、この時私はしゃがみ込んで地面スレスレでカメラを構え、できるだけ花と同じ目線になるようにしていました。
◎桜撮影のポイントは、露出設定と望遠レンズでふんわり撮影
桜は明るめに撮影したいところですが、ソメイヨシノのような淡い色の桜はハイキーに撮影してしまうと白飛びしてディテールが失われてしまいます。撮影環境によって適正露出は変わるので、都度設定しつつ露出に注意してください。
花がたくさん付く木は望遠で少し遠くの花を狙ってみましょう。綺麗な前ボケが生まれ、ふんわりとした雰囲気で主役を際立たせてくれます。また、前ボケがあることで、うるさくなってしまう濃い色の枝が隠れすっきりとした印象にもなります。
地面に落ちた桜もこうして手のひらに乗せて撮るなど、いろんなバリエーションで切り取ることができます。
ちなみに…望遠レンズをおすすめしましたが広角で撮る桜も迫力が出て臨場感が生まれます。しゃがんで空を見上げる様にカメラを構えました。全てを桜にすると圧迫感が出てしまうので少し余白を取っています。
◎ポピー撮影のポイントは、花の見極めと天候に合わせてイメージを決めること
カラフルなポピーは晴れた日との相性が良く、ポップで可愛い印象になります。色を際立たせたい時は順光で、立体感を出したい時は逆光気味で撮影してみましょう。踊るように伸びる茎が特徴的なのでポピーと同じ目線で撮影してみました。F値は開放で、自然と花に目が行くよう適度にボカしました。
ポピーは特に主役になりそうな花を見つけることを優先しています。見つけるポイントとしては上述した通り。この写真では白や黄色が多い中、赤系のポピーが一輪混ざっていたので主役にしました。見つけたら、その花が美しく見える位置や光の当たり方を調整します。
花の真ん中にあるしべの影が美しいと感じたので寄って撮影しました。F1.8のボケ感が背景をすっきりとさせ、少し癖のあるポピーの蕾や茎の存在感を抑えています。
曇りの日は花に寄って撮影するのがおすすめです。広く写すと曇りのどんより感やのっぺりとした印象が強くなってしまうことが多いですが、曇りの日の撮影のメリットもあります。白飛びを抑えられる、優しくふんわりとした雰囲気で撮ることができる、この2点は晴れた日よりも表現しやすいです。
この写真では思い切り花に寄って、花びらの透け感やしずくの瑞々しさを表現しました。ポピーは色がはっきりしているものも多く曇りでも撮りやすいので、諦めずチャレンジしてみてください。
◎ネモフィラ撮影のポイントは、寄り引きで魅力を引き立たせる
可憐なネモフィラをふんわり柔らかなイメージで表現するため、ソフトフィルター(KenkoホワイトミストNo.1)を使用しています。奥の花にピントを合わせ、柔らかな前ボケが作れるようにF値は開放です。ソフトフィルターを使っていて、かつ逆光気味なので背景が白いとネモフィラの存在感が少々薄くなってしまいます。そのため、背景は同色にならないように色の濃い場所を探して画角を調整しています。
ひとつ前の寄り写真とは異なり、引いてネモフィラが群生している様子を撮りました。その花がどんな風に咲いているのかなど、引いて撮ると場所の雰囲気が伝わりやすく、寄って撮ると花の質感が伝わりやすいです。被写体との距離感によって写真のイメージは大きく変わるので、撮りたいイメージに合わせて寄り引きすると良いかなと思います。
さらに引いて、大きな木の下で家族写真を撮らせて頂きました。物語のワンシーンのような風景をイメージし、主役が引き立つようローポジションでネモフィラをボカしています。被写体が小さく、オートフォーカスではピントが合っているか不安な場合はマニュアルで合わせるようにしています。
ボケ感はレンズの焦点距離、F値、カメラや被写体との距離感などで変化していきます。
140mm(35mm換算で210mm)で撮影していますが、F6.3でも被写体と背景の距離が遠いので綺麗にボカすことができます。距離感を意識して撮影をしてみてください。
花を撮る角度、光、寄り引き、様々な要素が合わさって一枚の写真が生まれます。ここで紹介した花撮影はほんの一例にすぎませんが、撮影するにあたり何か参考になるものがあると幸いです。晴れた日はもちろん撮影日和ですが、私は曇りだからと撮影を諦めず、曇りだから撮影できる写真を撮るようにしています。
草花が一気に芽吹き、彩りが溢れる季節。素敵な春の写真ライフを過ごしてくださいね。
■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年)
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※本ページの更新タイミングによって表示価格はキタムラECサイト(https://shop.kitamura.jp/)と異なる場合があります。その場合はキタムラECサイトの表示価格が正となりますのでご了承ください。
]]>チルト式モニターに回帰しスチール撮影重視となった高性能APS-Cサイズミラーレス。4020万画素センサーを搭載し高画質な写真撮影を楽しめるとともに、3つのダイヤルを活用した操作性も特徴的なカメラです。
ニコンFM2にインスパイアされたヘリテージデザインが特徴的なフルサイズ機。フィルムカメラライクなお洒落な見た目が所有欲を満たすとともに、Z 9やZ 8譲りの性能によってどんな被写体も逃さず撮影できます。
OM SYSTEMのフラッグシップ機がMark IIへとモデルチェンジ。世界最高8.5段の強力なボディー内5軸手ぶれ補正を備え、超望遠からマクロ領域まで快適な手持ち撮影が楽しめます。進化したAI被写体認識AFや新機能のライブGNDによって印象的な撮影が可能です。
動画撮影をしたい方におすすめなソニーの「VLOGCAM」シリーズ。その中でもレンズ交換式で多様な表現を可能にしたのがこのZV-E10。優れたオートフォーカスと高性能な内蔵マイク、強力な電子式手ブレ補正によって快適なVlog撮影を可能とします。
Vlogをはじめ動画撮影に最適化されたデザインを持つ、Zシリーズ最小・最軽量のAPS-Cミラーレス。動画に最適な色味に調整されたピクチャーコントロールなど、動画の表現力を高める機能が満載です。
コンパクトなボディに最上級の機能を詰め込んだマイクロフォーサーズ機のフラッグシップモデル。ハイレゾショットやライブND、ライブコンポジットなど表現の幅を広げる機能と、優れた手ブレ補正&防塵防滴性能が魅力の機種です。
小さくて軽いカメラがいいけど、撮影の性能は妥協したくないという人におすすめなAPS-Cサイズミラーレス。最高約23コマ/秒の高速連写や、EOS R3のAF技術を継承する人物・動物・乗り物の被写体検出を備え、動きものも快適に撮影できます。
表現力豊かなニコンZシリーズを気軽に持ち歩きたい、でも本格的なセンターファインダースタイルで撮影を楽しみたい、という人にぴったりなAPS-Cサイズミラーレスカメラ。望遠レンズがセットになったダブルズームキットは子どもやペットの撮影にも最適です。
EOS Rシリーズのエントリーモデルとして、初めてミラーレスカメラを手にする人におすすめなEOS R50。上位機種譲りのAF性能を持ち、エントリー機種とは思えないほど高性能な被写体認検出&追尾を実現しています。
世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスとして登場したα7Cの後継機。コンパクトなボディに最新機能を詰め込み、見た目以上の頼もしい性能を実現しています。フルサイズ機を常に持ち歩きたい、性能も妥協したくないというユーザーにおすすめです。
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2024年3月22日(金)~3月28日(木)の期間、新宿 北村写真機店 6F Space Lucidaにて『第20回 秋山庄太郎「花」写真コンテスト入賞作品展』を開催する。
本写真展はその名の通り「花」を撮影した写真のみがエントリーでき、今年で20回目を迎える由緒あるコンテストの入賞作品展だ。毎年、全国各地から多くの作品が応募されており、展示されている入賞作品はどれも優雅で撮影者が”美”を追求し熾烈な競争を制したハイレベルな作品だ。
なぜ本コンテストの入賞者がこれほどまでに”美しさ”を追求した作品を撮ることができるのか?
その背景には花写真ブームの先駆け的存在であり、元祖花写真家ともいうべき故 秋山庄太郎 氏(1920-2003)の熱い思いが詰まっているからであろう。今回の特集では秋山 氏の経歴や思い、開催している写真展の見どころをご紹介しよう。
秋山庄太郎 氏といえば紫綬褒章や旭日小綬章の受章をはじめ、日本写真家協会、日本広告写真家協会、二科会写真部の創立会員。日本写真芸術専門学校校長、日本写真協会副会長、全日本写真連盟総本部顧問などを務め、今日の写真文化の礎を築いてきた巨匠だ。
― 秋山庄太郎
1920年、東京・神田に生まれる。早稲田大学卒業。映画雑誌社写真部勤務等を経て、フリーランス。昭和を代表する女優・原節子をはじめ数多くの女性ポートレートを手がけ活躍。
1960年代後半から「花」をライフワークとして取り組んだ。2002年、本コンテスト創始。2003年、東京・銀座の写真賞選考会場で急逝。享年82。
もともとは女性ポートレート撮影を中心に活動し「讃婦人科」の異名をとっていた。撮影が始まる前から被写体と和やかに会話し、最も良い表情を引き出しながら撮影することで知られる。当時の週刊誌や月刊誌では引っ張りだこで一時は20誌もの連載を掛け持っていたほどである。
秋山 氏はポートレートの仕事の傍ら「花」の撮影をライフワークにしていた。自身が生花店へ足を運び、たとえ同じ種類の花だとしてもフォトジェニックなものを1本1本を丁寧に吟味した。ポートレートを撮るときと同じく”最も美しく見えるアングル”を探求し続けたという。
自身の作品づくりや撮影をしていく一方、さまざまな写真団体への協力を惜しまず、写真コンテストの審査や指導など写真愛好家の育成も熱心に行うなかで秋山 氏はこんな言葉を残している。
これは依頼仕事での撮影で時間など何かと制約を抱えたプロに対して、アマチュアのほうがこだわりを追求できる姿を見て、自身を含めプロへ警鐘を鳴らす言葉となり、同時にアマチュアにとってはひとすじの光明になった。
その後2002年に運営協力していた町田市フォトサロン開館3周年記念にあわせて、写真芸術の振興や社会福祉支援を目的に本コンテストを創始。「花」をテーマとして上記の思いからプロ・アマを不問の全国公募と設定した。
なお本コンテスト発足当初は入賞・入選作品を病院のラウンジや新生児室、高齢者介護施設などへの巡回展示や貸出からスタートし、現在はグランプリ及び特選の計10作品と秋山庄太郎作品(各1点)を2か所の福祉施設等に寄贈している。
本写真展では入賞の全100作品のうち、グランプリ・特選・準特選の計50作品が展示されている。秋山庄太郎写真芸術館主任学芸員 齋藤智志氏にコンテストの印象や今回受賞した作品について伺った。
「年代的にはシニア世代やベテランの実力が光る作品が多く見られました。その一方で、若い世代の応募や受賞も増えました。今回、準特選以上は10代2名・20代3名、入選は10代4名・20代2名が受賞しています」
こちらの写真は今回のコンテストで栄えあるグランプリを受賞した『或る大地』だ。齋藤 氏に本作品がグランプリに輝いたポイントを解説いただいた。
「審査委員会の講評では、花びらを大地に見立てたダイナミックな意欲作であり、今までにない個性的な表現が感じられると評価されています。撮影者の研ぎ澄まされた観察眼と多彩な発想を表現する高い技術力のある作品が多く見られるなか、特に優れた作品として受賞となりました」
秋山 氏が2003年に急逝後も秋山庄太郎写真芸術館をはじめ、秋山 氏の写真芸術に理解ある団体や組織が引継ぎ、年1回を目安に開催してきた。多くの方が「花」と向き合い、”美”を追い求めたことで多様な個性を持つ作品が受賞するなど回を重ねるごとにレベルアップしている。
秋山 氏は生前、本コンテストについて「応募作品のレベルが高く、日本で有数の写真コンテストになるだろう」と語っていたそうだ。
その言葉通り、花写真の世界がますます広がりを見せていることが体感できる展覧会となっている。どなたでも無料で入場できるのでぜひご覧いただきたい。
新宿 北村写真機店の写真展情報ページはこちら
]]>春になるとたくさんの花が咲き始めて、心ウキウキワクワクしますね。
陽射しも暖かく柔らかくなって、花を撮影するには最高に楽しい季節です!
ぜひその楽しい心のままマクロレンズを一本持って、近くの公園やお花畑に撮影に行きましょう!
きっと春らしい明るく楽しい花写真が撮れますよ!
黄色いチューリップが並んでいるお花畑を低いアングルから写しました。
その奥に咲いている赤いチューリップがボケて赤色のグラデーションになり、パステルカラーの春らしい作品に仕上がりました。
花撮影で大事なことはいろいろありますが、その一つがアングル。
自分の目線と花の高さが同じになるようにカメラを構えて撮影します。
この作品の場合はさらに低く、チューリップを下から覗くようなアングルで撮影しています。
そうすると普段見ているのとはまた違った見え方がして、面白い発見がありますよ。
低い体勢で撮るのは大変ですが、最近のデジカメならチルト式やバリアングル式の背面液晶の使用で、角度を変えて撮ることができますのでうまく活用して撮影してください。
このような作品の場合は露出に注意が必要です。
黄色や白のチューリップはそのまま撮ると暗くなってしまって、色が濁った汚い印象になりがちです。
そこで露出を多めにプラスして明る目に撮影することできれいな花の色が表現でき、春らしいポップなイメージに仕上がります。
さらに花を少し斜めに配置して、爽やかな風に吹かれて楽しげな動きが感じられるように表現しました。
群生の中の一輪をクローズアップしました。
手前に咲く花を大きな前ボケにしてふんわりやわらかな雰囲気を出しています。
このときに大事なのは、絞り値。
絞りを絞ってしまうと、ふわっとした前ボケになりません。
絞りを開放(F値の一番小さな数字)にすることで、大きくやわらかなボケが得られます。
チューリップの左下の光っているように見える部分は、陽射しが当たって明るくなった手前の花が大きくボケて、光がボワッと拡散したような効果になったものです。
撮影日和なのは晴れた日だけとは限りません。
雨の日はどうしても出かけるのが億劫になりがちですが、思いきって出かけてみると、雨の日にしか撮れない雨ならではの風景に出合えますよ。
花びらの上に乗った雫。
よく見ると雫の中に、後ろにある赤い花が写り込んでいます。
こんな時はどこにピントを合わせますか?
これが正解という決まりがあるわけではありませんが、ぜひ雫の中の花にピントを合わせてあげましょう!
雫に閉じ込められた花。。。なんだかいろいろな物語が浮かんできそうですね。
そんなイメージを膨らませながら撮影するのも楽しいものです。
もし撮影中に映り込んでいるものがはっきりわからなかったり、何も映り込んでいなかったときは、雫のフチにピントを合わせて、雫の丸い形を強調してあげましょう。
真上からチューリップの中を覗いて、シベを主役にしました。
横から見たときの可愛らしさとは裏腹に、ちょっと不思議で不気味な感じすらしますよね。
シベだけをクローズアップしてもいいのですが、少し開きかけの花を選ぶとこのように花びらが前ボケとなってさらに不思議な雰囲気になってくれます。
なんだか中心に向かってぐるぐる回転しているようにも見えますね。吸い込まれそう。。。
最初にアングルのお話をしましたが、横からだけでなく、上から、下から、斜めから、いろいろな角度から観察してみましょう。
そうすることでそれまで気づかなかった、思いがけない姿を見つけることができますよ!
マクロでの撮影となれば、やはり思いきったクローズアップ撮影を楽しみたいもの。
その時のコツは、形や色など、その花の面白いと感じる部分を見つけること。
特に変わったものである必要はありません。
自分がなんだか心に惹かれると感じる部分があれば、思いきってクローズアップして切り取りましょう。
マクロレンズでクローズアップすると、被写界深度(ピントが合ったように見える範囲)が極端に狭くなり、代わりに大きく柔らかなボケが得られます。
この大きなボケの表現が、クローズアップ撮影の最大の楽しみと言っても過言ではありません!
ここではチューリップの花びらに注目しました。
ひらひらと波打つような花びらのフチに心惹かれ、余計なものを画面から排除して花びらのラインと色のグラデーションだけで構成しています。
絞り開放にすることでボケを大きくし、花びらのリアルな質感を失わせています。そうすることでふんわりやわらかく幻想的な表現になるのです。
マクロレンズは近づいてクローズアップするもの、とは限りません。
普通の単焦点レンズと同じように遠くを撮ることもできるのです(意外とこのことを知らなくてビックリ!って方もいらっしゃるんです)。
広々としたネモフィラ畑の奥にぴょこんと飛び出した一輪のチューリップを主役にしました。
手前に咲くネモフィラを大きくボカすことで、主役のチューリップに視線を集めています。
チューリップが咲いている場所まではちょっと距離が離れていて、マクロレンズだけではあまり大きく写すことができませんでした。
そこで、マクロレンズに加えて2倍のテレコンバーターを併用しています。
テレコンバーターはレンズの焦点距離を伸ばしてくれるものです。
富士のXシリーズには1.4倍と2倍のテレコンバーターが発売されています。
ただし、テレコンバーターが使用できるレンズは限られていて、どんなレンズにも使えるものではありません。
XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroは嬉しいことにテレコンバーターにも対応しているので、このように望遠レンズの代わりとしても使うことができるのです。
群生の中に、小さな一輪のチューリップを見つけました。
まるで大人たちの陰に隠れてそっとこちらを覗き見しているちびっ子のようです。
ここでも低いポジションから撮影しています。
手前に咲いている花よりも更にポジションを低くし、花の下から撮影しています。
花の下には直線的な茎がたくさんあるので、そのまま撮ってしまうと画面が煩雑になりがち。そうすると、この小さなかわいいチューリップの印象が弱まってしまいます。
そこで、手前に咲く花を前ボケに使って、主役のちびっ子に視線を集めました。
画面いっぱいに大きな前ボケを入れたことでふんわりやわらかな描写になり、優しいイメージの作品に仕上がったと思います。
晴れた日のチューリップ畑にて逆光から撮影しています。
逆光とは、自分の正面から太陽に照らされている状況です。
逆に自分の背後に太陽がある場合は、順光となります。
花を撮影するときは逆光で狙うと、花びらを透けて通る透過光が花を美しく見せてくれます。
順光では花の正面から直接光が当たるため、コントラストが上がって汚い影も出てしまい、やわらかな表現を狙う場合にはあまり向いていません。
ふと見ると逆光から透過した光が、ハートを逆さまにしたような形を花びらに描いてくれていました。
その形ができるだけわかるように少し暗めの露出で撮影しています。
開放絞りを選び背景をシンプルにすることで、映り込んだ逆ハートに視線が集まるよう意識しました。
チューリップと聞くと真っ先にワイングラスのような、あの形を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか、
花びらのカーブも美しいし、かわいいし、、そんな姿をしっかり撮っておきたいですよね。
でもそこで終わらないで、ぜひ別のアングルや角度をあれこれ探って、いろいろなポジションから撮影してみてください。
きっと、いままで気づかなかった思いがけない花の姿が発見できますよ。
ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながら、ぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね。
■富士フイルム アカデミーX オンライン講座のお知らせ
花撮影の表現を深めよう!~マクロの表現をマスター~
2024年4月4日(木)19:00-21:00 開催
遠くへ出かけることはできなくてもマクロレンズが一本あれば近所の散歩のついでや玄関先の鉢植えなどで、気軽に花撮影を楽しむことができます。
そんな花マクロ撮影のちょっとしたコツをお教えします!
詳細・お申し込みはこちら
https://academyx-jp.fujifilm.com/pages/programs/651
■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。
各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。
・写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)
・写真集「花色の息吹」(風景写真出版)
・日本風景写真家協会(JSPA)会員
・一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
・フォトマスターEX(総合)
・カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部 講師
・富士フイルムアカデミーX 講師
・OM SYSTEMゼミ 講師
・クニさんの花マクロ写真塾 主宰
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デジタルカメラ全盛の現在、多くの方が写真と聞いてすぐに思い浮かべるのはデジタルデータとしての画像だろう。撮影はもちろんデジタルカメラで行い、すぐに背面のモニターで確認して気に入らなければ即座に削除、再度撮影を行うこともできる。そして撮影画像はパソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスに転送してしまえば(殊更に画像処理を行う必要がなければ)、すぐさまインターネットを利用して第三者に送信することができる。数百、数千キロ離れた相手にだってほぼ瞬時に送ることができてしまうのだ。もはや、あえていう必要がないほど当たり前に便利なものなのである。
しかし、この便利なデジタル時代にも関わらず、あえてちょっと面倒な写真を楽しもうという人々がいる。そう、アナログな写真の代表格「フィルム撮影での写真」を好む人々だ。デジタルカメラというこれ以上ないほどに便利なカメラがあるにも関わらず、あえて古いフィルムカメラを使用し、もはや手に入れられるお店さえ限られてしまっているフィルムをわざわざ購入し撮影を行う。普通の人からするとちょっと奇特な趣味のようにさえ見えてしまいかねない(失礼!)。
と、ここまで言ってしまうのは言い過ぎかもしれないが、やはりフィルム撮影を行うにはデジタル撮影にはない、ある種の不便さを受け入れる覚悟や約束事などを理解する必要があることは確かだ。しかしそれらのデメリットを承知のうえでも、なぜかフィルムならではの、独特な描写に魅せられてしまうのである。
そこで今回はフィルム撮影についてのちょっとしたアドバイスと、フィルム現像を行うにあたってのおすすめ方法などついてお話ししよう。良い機会なのでフィルム撮影の基本的なところも出来るだけわかりやすく解説したいと思う。日頃からフィルム撮影を楽しんでいる人も、フィルムでの撮影に興味はあるものの、なかなか手を出す勇気が出ないという人も参考としていただければ幸いだ。
現在、新品で手にすることができるフィルムカメラは非常に種類が限られる。大手カメラメーカーの多くはすでにフィルムカメラの製造販売を終了しており、一部の海外製カメラであれば手に入れるものもあるといった状態だ。ただし新品のフィルムカメラは貴重性からとても高価なものが多く、おいそれと誰でも購入できる製品とはいえない。したがってこれからフィルム撮影を楽しむには、自ずと中古市場でカメラを探すこととなる。そこでここでは、中古販売で手に入れられるカメラのなかから比較的扱いやすいカメラを種類別にピックアップしよう。
■オートフォーカス&自動露出コンパクトカメラ
フィルムカメラとして幅広いユーザーに使用されていたものだけに、現在中古市場においても種類、品数ともにとても多く存在している。ピント合わせ・露出も自動であるのでフィルムカメラ初心者でも迷うことなく使用できるだろう。ほとんどの製品でフィルムの装填および巻き取りがモーターで自動化されている。高倍率なズームレンズが搭載されているものもあるので日常的な撮影にも便利。中古価格も手頃だが、コレクションとしての対象となるカメラではないので、前ユーザーの扱い方により個体による程度の差が大きい。購入時には外観も含めて製品の状態を確認しよう。なお販売終了から時間が経っている製品が多く、現在では故障しても修理することはほぼ不可能なので、故障した場合は程度の良い品を探し買い替えるのが現実的だ。
■マニュアルフォーカス&自動露出コンパクトカメラ
オートフォーカスカメラが登場する以前、手動でピントを合わせるマニュアルフォーカスが一般的だった頃のコンパクトカメラ。主にファインダー像とファインダー内の中央部に表示された像(の一部)とのずれを、ピントリング(もしくはレバー)を操作して重ねることでピント合わせを行う二重像合致式を採用している製品が多い。個体差によるファインダーの状態に左右されるが、像をある程度クリアに見ることができる製品であればマニュアルフォーカスでのピント合わせはさほど難しくはない。この頃のカメラの多くでEEと呼ばれる単純なプログラム露出制御方式を採用しているが、(壊れていなければ)ほとんどの撮影シーンで適切な露光がなされるので撮影自体は難しくない。なお年代的に金属外装の製品が多いことから、クラシカルな印象のカメラとしての人気もある。ただしこの頃に電源として採用されていた水銀電池はすでに製造終了しているので、互換品(変換アダプター)を探すか、すでに現代の電池に対応するように改造されている個体を探す必要があるので注意が必要。
■オートフォーカス&自動露出一眼レフカメラ
レンズ交換式の一眼レフカメラ。撮影する被写体に合わせて広角や望遠、マクロなど自在にレンズを選べるので本格的な撮影が可能。ただしカメラとしては大きめかつ重量も重めとなる。曲線を多用したプラスチック外装デザインはこの時代以降のカメラの特徴となった。新品・中古ともに現在でも同じ規格のレンズが多く販売されているので選択肢が豊富。露出制御は絞り優先・シャッター優先・プログラムの自動露出を自在に選ぶことができ、マニュアル露出での撮影も可能。ストロボなどアクセサリーも豊富なのでシステムカメラとしての楽しみもある。ただしそもそもの販売価格が高めであるため、機種によってはカメラ・レンズともに中古であってもそれなりの価格となる。発売時期および個体の程度により価格の差が大きいので、自身の求める性能と個体の程度をよく吟味して選ぶようにしたい。
■マニュアルフォーカス&自動露出もしくはマニュアル露出専用一眼レフカメラ
まだマニュアルフォーカスが主流だった頃の一眼レフカメラ。レンズから入った光をカメラ内部のミラーとプリズムを通して直接ファインダーで見るので、自らの手でレンズのピントリングを回すことにより像がぼけたりピントがクリアに合ったりする様が写真を撮ることの楽しさのひとつと捉えることもできる。オートフォーカスカメラと比べてファインダー像が比較的大きく見える点も魅力のひとつだ。露出制御は自動式となるAEを搭載したものが多いが、機種によってはマニュアル露出専用機もある。またシャッターの機構にも電子式と機械式のものがあるが、50年前後経過した製品だと電子式シャッターは不具合が出やすく修理も難しいので、あえて機械式シャッターのカメラを選択するという考え方もある。交換レンズはすでに古い規格となっているが、中古市場にはまだ多くの対応製品が存在しているので、程度の良いものに出会うことができればきっとまだ十分に撮影に耐えることもできるはずだ。ただし古いレンズはカビや曇りが出やすいので選ぶ時はしっかりと確認しよう。
中古のカメラを選ぶ際に大切なのは、まず自分はどのような撮影スタイルであるかをきちんと認識することだ。日常的にカメラを持ち歩き視野に入った光景を即座に撮影するスナップスタイルであれば、持ち歩くのに便利なコンパクトカメラや小型の一眼レフカメラが向いており、狙った被写体を望遠レンズや広角レンズを駆使して確実に撮影したいのであればオートフォーカスに対応したシステムの一眼レフカメラが向いている。
またカメラ自体の見た目も選択するうえで大切なファクターでもあることから、クラシカルなデザインのカメラが好みであれば、製造年が古い金属外装のカメラを選ぶという選択肢もある。特に発売から40年以上経つマニュアル一眼レフカメラは、金属でできた堅牢さと一見無骨とも思えるデザインが現在人気となっており、フィルムでの撮影を楽しもうとする人々にとても人気となっている。
ただし古い年式のカメラはそれだけで故障の可能性も高まるので、カメラを選ぶ際には見た目とともに機械としての程度もしっかりと確認しよう。電子式のカメラの場合は、店頭で店員に電池を入れてもらいシャッターや露出計、オートフォーカスやフィルムを送るモーターなどが正常に動作することを確認するようにしたい。
撮影に使用するフィルムにはいくつか種類が存在する。まずフィルムサイズの違いだが、一般的なフィルムカメラで使用するものは幅35mmの135フィルムと呼ばれるものだ。これ以外には大判カメラで使用する4×5インチのシートフィルム、中判カメラで使用する120フィルムなどがあるが、これらは主に業務用や写真作品制作などに用いることが多いので、特別な断りがなければ通常はフィルムカメラと呼ぶ場合は135フィルムを用いるカメラのことと判断しても構わないだろう。
またフィルムの種類だが、撮影した像がそのままフィルム上に再現される「リバーサルフィルム(ポジフィルム)」、像の明暗および色相が反転されて再現される「ネガフィルム」がある。ポジフィルムは主にスライド上映用や印刷物の原版として使用されることが多く、やはり業務用としての意味合いが大きい。一方、ネガフィルムはプリントすることが前提のフィルムであり、一般的に家庭などで使用するフィルムはこのネガフィルムのことを指す。
撮影したネガフィルムを現像し6コマごとに切断し保存スリーブに入れたもの。ひとコマあたりおよそ24×36mmの画像となり、これが一本のフィルムに24コマ、もしくは36コマ記録される(フィルムの余剰分として1~3コマほど多く記録される場合もある)。これを写真原版として写真プリントを作成する。プリントはこのネガフィルムに光を透過させて、その光を印画紙に投影することで像を焼き付け、現像処理を施し定着させる。明暗が反転されているのは、光を透過させた際にネガの暗い部分は光を透過せず、透明な部分は光を多く透過させることで印画紙に投影する光の量を確定し、感光させるためであり、またカラーフィルムにおいてネガ上の色相が反転しているのは、その反対色が印画紙上に再現される仕組みとなっているからだ。
デジタルカメラが主流となった現在、手に入れることができるフィルムには限りがある。以前は描写の違いやISO感度の違いに合わせて、さまざまな種類のフィルムが販売されていたが、世界的な需要の低下に伴い大手フィルムメーカーでも販売する種類が大きく削減されている。その状況のなかでも比較的手に入れやすい製品として、まずここではコダック社製のものと富士フイルム社製のカラーネガフィルム製品を紹介する。
■コダック COLORPLUS 200 135-36 カラーネガフィルム36枚撮り ISO200
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/0086806031479
■コダック コダック UltraMAX400 36EX UltraMAX400 36枚撮り ISO400
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/0086806034067
■フジフイルム フジカラー 100 S 36枚撮り ISO100
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/4547410089011
■フジフイルム フジカラー SUPERIA PREMIUM 400 36枚撮り ISO400
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/4547410089868
もうひとつ、白黒フィルムとしてイルフォードのXP2という製品も合わせて紹介しておこう。通常の白黒フィルムはモノクロ専用の現像液を使用する必要があるが、XP2というフィルムは、カラーネガフィルムと同じ現像方法で白黒ネガを得ることができるフィルムだ。
■イルフォード モノクロフィルム XP2 SUPER 400 135 35mm 36枚撮りISO400
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/0019498839573
これら紹介したフィルムはいずれもカメラのキタムラで購入・現像できる製品だ。ただ店舗によっては製品を取り扱っていなかったり、店頭でのフィルム現像ではなく預かりでの現像処理となる場合もあるので、事前に各店舗に確認するようにしたい。
こちらが35mmサイズの135フィルム。正確には金属製のパトローネと呼ばれる外殻の中に、35mm幅のフィルムが心棒に巻かれた状態で収められている。フィルムには36枚撮り用と24枚撮り用があり、収められているフィルムの長さが違う。36枚撮り用ではおよそ1.5mのフィルムがパトローネの中に収められており、これをカメラに装填して、一コマずつ巻き取りながら撮影を行う。なおフィルムはパトローネ内に入っている状態であれば、明るい場所で外箱から取り出しても感光しない。
カメラにオートフォーカス機能が搭載され、カメラの自動化が進んだ頃から、フィルムの装填も自動化されるようになったが、ここではまだ自動機能の搭載が一般的ではなかった頃のカメラの操作方法について解説する。
まずカメラにフィルムを装填するには、カメラの裏蓋を開いてフィルム室にパトローネをセットし、巻き戻しノブを押し下げて固定する。そのうえでフィルムの先端を引っ張って巻き上げレバーと連動する巻き取り軸の隙間に真っ直ぐ差し込み、ゆっくりと巻き上げレバーを操作してシャッターがチャージされるまでフィルムを巻き取る。このとき巻き取り軸からフィルム先端が外れないように、指で押さえながら巻き上げると失敗しない。その後フィルムの上下にあるパーフォレーション穴にスプロケット(ガイド回転軸)の歯車が噛み合っていることを確認したうえでカメラ裏蓋をしっかりと閉める。最後に軽くフィルム巻き戻しノブを回してフィルムのたるみを取ったうえで、フィルムカウンターが1を指すまで空シャッターを数回行ったらフィルムの装填は完了だ。なおフィルムを巻き上げるのに合わせて巻き戻しレバーも回転していれば、正常にフィルムが送られている確認となる。
フィルムカメラはデジタルカメラと違い、いちどフィルムを装填すると基本的には最後まで撮影してからでないとISO感度や色味の特徴などが異なるフィルムに変更することはできない(それでも変更したければ使用途中であってもフィルムを巻き取ったうえでフィルムを交換するしかない)。また現在装填しているフィルムの種類を確認する術もない。そのため一眼レフの裏蓋にフィルム外箱の蓋部分を切り取り差し込むためのメモホルダーが設けられている機種もあるので活用しよう。
フィルムには個々の製品固有のISO感度が設定され製造されている。ISO感度は外箱やパトローネに数値が書かれているので、フィルムを装填したら必ずカメラのISO感度設定ダイヤルをその数値に合わせよう。なお古いカメラではフィルムの感度がASAと表記されているものがあるが、これはフィルム感度の規格名がASAから後にISOに変更されたことによる表記の違いなので、カメラがASA表記になっていてもフィルムに記載されているISO感度の数字を設定すれば問題ない。
カメラの露出モードをオートもしくはマニュアルに合わせる。カメラによってはモード切り替えがメインスイッチと連動しているものと別スイッチとなっているものがあるので注意が必要。なお機械式シャッターのカメラの電源スイッチは露出計用のものなので、オフになっていてもシャッターは動作する。
露出モードが絞り優先オートであれば使用する絞り値に、シャッター優先オートであれば使用するシャッタースピードにカメラをセットする。なおマニュアル撮影では絞り・シャッタースピード共に任意の数値にそれぞれセットできる。プログラムモードではカメラが絞りとシャッタースピードの両方の値を自動で決定するので、撮影者はこれらを設定する必要はない。
オートモードでカメラが導き出したシャッタースピード(もしくは絞り値)はファインダー内のインジケーターに針やLEDで表示される。マニュアル露出モードでは針やLEDがプラスとマイナスの中間を指すように絞りとシャッタースピードの組み合わせを設定することで、露出を調整する。
カメラのオートモードが決定した露出は、撮影する被写体や光の状況によって適正露出とはならない場合がある。その際は状況に応じて露出補正を行う必要がある。たとえば、逆光のなかで人物などを撮影する場合は、周囲の明るさを基準にカメラが露出を合わせてしまうため人物が暗く写ってしまうことがある。そのような時は露出補正でプラス0.7~1.3EV程度に合わせることで、人物を適正露出とすることができる。
最後にファインダーで構図を整え、ピントを正確に合わせたうえで静かにレリーズボタンを押してシャッターを切る。フィルムカメラでの撮影はデジタルカメラとは異なり撮影後すぐには画像を確認することができないので、より慎重な撮影を心がけたい。
フィルム全コマを撮影し終わった時点で、巻き上げレバーは操作をしてもそれ以上巻き上げられなくなる。撮影済みフィルムは取り出す前に必ず巻き戻して再びパトローネに収納する必要がある。まず巻き戻しロックを解除したうえで、巻き戻しクランクを回しパトローネ内の芯棒に巻き戻す。フィルムをすべて巻き戻すことができたら、巻き戻しクランクにかかっていたテンションが一気に無くなるので、巻き戻しノブを上に引き上げ裏蓋を開けてカメラ内のフィルムパトローネを取り出そう。
フィルムカメラでの撮影においても基本的な撮影方法や露出の決定手順はデジタルカメラで行うものと変わりはない。ただしフィルムの装填や撮影完了後のフィルムの取り出しなどデジタルカメラにはない作法は欠かせないので、これから初めてのフィルム撮影を行うという人は、慣れるまで十分に注意を払う必要がある。誤ってフィルムをパトローネに巻き戻す前に裏蓋を開いてしまうと、それまで撮影したフィルムは光ですべて感光してダメになってしまうので、くれぐれも気をつけていただきたい。
撮影済みのフィルムはそのままでは写真として目にすることはできないため、現像という処理が必要だ。フィルムの現像には専用の器具と特殊な薬品を使用して行う。専門の知識と経験があれば自ら行うことも可能だが、手間暇やコスト、仕上がりのクオリティのことを考えると特別な理由がない限り、通常は写真店に依頼することになる。
ここでは一般的なネガフィルムの現像について解説しよう。撮影済みフィルムを処理して写真として仕上げるには、いくつかの過程がある。まずはフィルム現像を写真店に依頼することから始まる。フィルム現像が完了するとネガと呼ばれる写真原版になるので、これを元に写真プリントを依頼する。以前はフィルム現像と同時にすべての写真をプリントする同時プリントというサービスが一般的であったが、フィルムでの撮影が特別なものとなったこととプリントの料金自体が値上がりしたことから、ここ数年ではフィルム現像のみを先に行い、その後に必要な写真のみをプリントすることが多くなった。
写真プリントを行う代わりに、ネガから直接デジタル画像を作成する方法もある。これはフィルム現像を行い、仕上がったネガをスキャナーで読み込みデジタル画像とすることで、ネガフィルムで撮影した写真でもパソコンやスマートフォンで表示できるようにする方法だ。これならばデジタルカメラで撮影した画像と同じようにスマートフォンやパソコン上で利用することができるようになる。
フィルムで撮影した写真をデジタルデータとしてスマートフォンに転送保存できるサービスは、ひとり一台スマートフォンを携えている現代において、まさにアナログ写真とデジタル写真を橋渡ししてくれる便利なサービスだ。特にスマートフォンに搭載されたカメラがとても高画質化している状況では、あえて画質が低めで色味も偏りがちなネガフィルムでの写真を「エモさ」として楽しめるユニークな方法といえる。
ここからはカメラのキタムラが提供するフィルム現像メニューにある「スマホ転送セット」サービスについて、画像のダウンロード手順も交え説明しよう。
■カメラのキタムラフィルム現像メニュー
https://www.kitamura-print.com/column/special/film/utsurundesu/
「スマホ転送セット」はネガフィルムを現像すると同時にデジタルデータ化を行い、これをスマートフォンでダウンロード保存することができるサービスだ。キタムラ店頭に撮影済みフィルムを持ち込み、「フィルム現像とスマホ転送セットで」と依頼するだけで、最短60分でフィルム現像とデータ化まで仕上げてくれる。データはスマートフォンで専用webサイトからダウンロードするだけのシンプルさだ。
キタムラ店頭に撮影済みネガフィルムを持ち込み「スマホ転送セット」を依頼。指定された仕上がり完了時刻以降に店頭を訪れると、現像されたネガと画像データのダウンロード用情報を記した案内が渡される。画像のダウンロードは案内に記載されたQRコードをスマートフォンのカメラで読み取り、専用Webページにアクセスして行う。(注:こちらの書面画像はサンプルなのでQRコードは読み取れないように加工してある)
専用Webページにアクセスすると、現像と同時にデジタルデータ化された画像が一覧となって表示される。このなかからスマートフォンにダウンロードしたい画像をタップする。
選択した画像が拡大されるので「ダウンロード」ボタンを押す。
表示された画像をスマートフォンの機能(画像の長押しなど)で保存メニューを表示させる。
表示されたメニューから保存を選択してスマートフォン内のストレージに保存する。この手順は画像を1枚ずつ保存する方法。
画像を複数まとめてダウンロードするには、「moovin studio」という無料アプリを利用する。まずはアプリストアから「moovin studio」をスマートフォンにダウンロードしてインストールする。
インストールした「moovin studio」アプリを立ち上げて、現像仕上がり時に渡されたダウンロード専用QRコードを読み込むことで、アプリ上に画像データの一覧が表示される。すべての画像もしくは任意の画像を選択して「選択した写真をカメラロールに保存」ボタンを押す。
画像データのサイズ選択画面から「スマホ最適サイズをダウンロード」もしくは「高解像度データをダウンロード」のどちらかを選択してタップする。
スマートフォン内にダウンロードが完了すると「写真がカメラロールに保存されました」画面が表示されるので「閉じる」ボタンをタップした後にアプリを終了する。
正常にダウンロードした写真が保存されていれば、スマートフォンのカメラロールから確認できる。保存された写真はメールやメッセンジャーに添付して送信したりSNSの投稿にも使用できる。
なおmoovin studioアプリでのダウンロード時には、低解像度もしくは高解像度のどちらのサイズで保存するかを選択する。ただし低解像度では画像サイズがかなり小さくなるので、高解像度でダウンロードし保存することをお勧めする。ただ高解像度といっても、実際は200万画素程度のデータなのでプリントする場合はL判~2L判程度までが適している。なおスマホ転送サービスには約1300万画素の「高画質データオプション(追加有料)」も用意されている。これを利用するとA4サイズ程度までのプリントにも対応できるデータをダウンロードすることができる(店頭にて現像依頼時に申し込みが必要)。
スマホ転送サービスでデジタル化されたデータはスマートフォンに保存されるが、対応するクラウドサービス(iCloudなど)と連携することで、インターネット経由でパソコンに転送することもできる。iPhoneに搭載されたAirDropなど「ピアツーピア方式」の転送機能でも送ることができるので、保存後は写真データとして自在に利用することも可能だ。このようにスマートフォンで手軽に写真データを利用できるのはとても便利だ。さらに、気にいった写真が見つかれば、写真原版であるネガを店頭にもちこみ、そこから写真に大きく引き伸ばせばより優れた描写の大伸ばしプリントを作成することもできる。そのためにも現像したネガは、データがあるからと捨てたりせず、必ず大切に保存しておこう。
古いフィルムカメラを使用して各種フィルムにて撮影した作例。撮影後はキタムラの「スマホ転送セット」を利用して現像・スマートフォンにデータを転送したのちにクラウド経由でパソコンに取り込んでいる。画像の状況にあわせて必要に応じてAdobe Photoshopにて明るさ色味等を調整してある。フィルムは現在販売されている「Kodak ColorPlus 200」「イルフォード モノクロフィルム XP2 400」に加えて、すでに販売終了している「KONIKA CENTURIA SUPER 200」「Kodak Kodacolor Gold 400 GC」「FUJICOLOR SUPER HG 1600」も使用している。これらのフィルムは筆者が長年ストックしていた消費期限切れとなった古いフィルムなので、カラーバランスが偏っていたり粒子が荒いものも含まれているが、それらもフィルム撮影における意外性と捉えて撮影した。ネガフィルムだとこのようなイレギュラーも遊び感覚で取り入れて楽しむこともできる。
ネガフィルムで撮影した写真をデジタルデータ化するメリットは、デジタルカメラやスマートフォンのカメラでの撮影に日常的に慣れ親しんでいる者ほど大きいと感じる。写真本来の楽しみ方はプリントした写真を実際に手にし、じっくりと観ることであるのは今でも変わりないが、現在のようにデジタルデバイスが生活のなかで重要かつ切り離せない世の中では、いうまでもなくデジタル化された写真の利便性は計り知れない。そこに少々時代はずれなフィルムで撮影された写真を組み合わせることは、これまで画質至上主義とも言える高画質を求め続けてきた写真の発展に「緩さと曖昧さ」という心の余裕を投げかける良い契機となっているのではないだろうか。
とまぁ、ことばにするとちょっと堅苦しくなってしまいがちだが、いつしか忘れてしまった偶然の楽しさや、色味や物事がはっきりしないことに対しての不可思議さなど、遊び心をくすぐる「新しくて古い」写真の楽しみ方の発見であることには違いない。さらに最新のカメラとはひと味もふた味も違う、金属の質感を感じられるオールドカメラを、あえて面倒とも言える煩雑な操作で使いこなすという「ちょっと厄介だけど楽しい不便さ」にも出会える。
この「新しくて古い」「ちょっと厄介だけど楽しい不便さ」は、まさにアナログとデジタルのハイブリッドな手法として他では得難い満足感につながるのではないだろうか。これは今の時代においてはとても贅沢かつ自由自在な写真の楽しみであると言っても良いだろう。まったく、人というものはなんともワガママな生き物なのでしょうね。
■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員
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「一本勝負」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
辞書を引くと、柔道や剣道に由来し一回で勝負が決まることをいう。やり直しがきかない、替えの効かない勝負、それを「一本勝負」という。
写真の世界で「一本勝負」というと、例えばレンズを1本だけ持って撮影に出かけるときに使ったりする。どんなシーンに出くわすかはわからないけれど、そのレンズだけで撮り切らなければならないという、チャレンジングな撮影だ。スキルアップしたい・いつもと違う撮影がしたいときにおススメの手法で、ズームよりは単焦点レンズを選ぶと学びが多い。
2023年12月。私は石川県金沢市に5日ほど滞在した。金沢とのご縁は2023年春から始まって、まだ1年にも満たないのに、すっかり身近な場所となった。そんな金沢でやってみようと思った。そう「一本勝負」を。
金沢一本勝負の相棒には富士フイルムのXF30mmF2.8 R LM WR Macroを選んだ。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、2022年11月25日に発売したレンズ。長さ69.5mm、重さ195gと小さくて軽いのが嬉しい。35mm判換算で46mm相当と、目で見るような感覚で撮影できる焦点距離。しかも等倍マクロ。さらに開放F2.8。まちスナップから小さきものまで、これ一本でいろいろな撮影が楽しめる、まさに一本勝負に適したレンズ。
よし、XF30mmF2.8 R LM WR Macroと金沢まちスナップに出かけよう。
金沢駅前のホテルからブラブラと歩く。
まち歩きは、朝早い時間から歩くのがおススメ。
朝の「これから始まる」という雰囲気を感じることができるし、そこに住む人々の生活が垣間見えるのも好きなので、なるべく早起きをして歩く。
椿にぐぐっと寄ったり、
屋根から見える白いラインは何だろう、青空に映えるなぁと観察したり、
道の奥に尾山神社を見つけて嬉しくなったり。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは最短撮影距離が10cmと短いから、撮りたいものを撮りたい距離で写真にすることができる。インナーフォーカスと精度の高いリニアモーターを搭載し、高速でかつ静穏なAFのおかげで、撮影が楽しい。
そんな風にXF30mmF2.8 R LM WR Macroと歩いていたら、ふと素敵なお店を見つけた。
この蔦の感じ良いなぁ。ぐぐっと見上げて撮影してみる。
中からはパンの良い香りがする。そういえば、前に「素敵なモーニングのお店があるんです」と教えてもらったことがあったなぁと思いだす。
これも何かの縁。入ってみよう。
「おはようございます」「いらっしゃいませ。あっ、カメラ!僕も撮るんです」と店員さん。「撮影してもよいですか?」「どうぞどうぞ、たくさん撮って!」
そのフレンドリーさにほっこりしながら席に座る。
パチリ。
席に座って、同じ場所から向きを変えて2つのシーンを撮った。1枚目は丁寧に置かれたテーブルセッティングと灯りの映り込み。2枚目はお客さんを待つテーブルとその奥にある鏡。30mmは「広すぎず、狭すぎない」ちょうどよい焦点距離。その場の雰囲気をまるごと捉えてくれる。開放F2.8なのでボケ感のコントロールもしやすい。
よし、モーニングセットの中から、アボカドが美味しそうなメニューを選んだ。本日のスープもつけちゃおう。
しばらくして、スープとオープンサンドがやってきた。
すかさずXF30mmF2.8 R LM WR Macroで撮ってみる。自分の目の前に置かれた食事を見たままの距離感で撮影できるのが良い。食べ物の撮影ではXF30mmF2.8 R LM WR Macroの最短撮影距離10cmという特徴が活躍する。遠慮は無用。ググっと寄って撮ってみよう。こんな風に。
最短撮影距離でピンクペッパーにググっと迫る。最短撮影距離だとレンズ先端から被写体の距離は1.2cmとかなり近づいて接写ができる。真ん中のピンクペッパーはしっかりとピントが合ってほしかったのでF3.2にした。柔らかなボケ感も味わい深い。
カフェや旅先での食事は、食事はもちろん、お店や周りの雰囲気も一緒に写しこみたい。でも、美味しそうな部分に寄って撮ったりもしたい。そんな欲張りな想いにXF30mmF2.8 R LM WR Macroはしっかり応えてくれた。
紅茶を飲み終わって、ふとソーサーに目をやると、小さなサプライズ。薄緑色の小さな紙に切り抜かれた四葉のクローバー。「素敵な一日を」というお店の素敵な心遣い。ああ、好きだなぁと思ってアップで撮った。
俯瞰撮影は、場合によっては立ち上がって撮影する必要があり、お店ではできないことも。でも、XF30mmF2.8 R LM WR Macroならお手のもの。最短撮影距離が短いから、すこし手を伸ばせば俯瞰撮影もできる。とにかく最短撮影距離が短いということは、それだけいろいろな撮影ができるということなのだ。
ちなみに、パンくずはあえて取り除かなかった。そのほうが、この時の臨場感が伝わる気がして。
金沢に初めて来たときにまち歩きをしたのが尾山神社周辺。メインから一本外れたところにあるこの道が好きで、来るたびに歩いている。
佇まいの良い理容室とサインポール。今日は近くに黄色の車が止まっていた。
尾山神社を挟んで反対側も雰囲気のある場所。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、木漏れ日など繊細な光も丁寧に描写する。
どちらの写真もその繊細さがあるからこそ成り立つ。
背景の要素も多く一見雑多になりがちなシーンだが、F2.8ならではの主役の引き立て感、描写の良さが際立つ。
階段の途中にあった小さな実にぐっと寄ってみる。奥の光のキラキラ感がドラマチック。
尾山神社周辺から歩いて25分ほどの主計町(かずえまち)茶屋街を目指してみる。その途中にあるのが、「あかり坂」。「あかり坂」は2008年に主計町にゆかりのある作家の五木寛之氏が名付けたそう。すぐ近くには「暗がり坂」もある。
なかなかの急な坂道(階段)なので、下新町側から入り下るほうがおススメ。
急な階段とその奥の道まで入れることで、迫力ある写真になった。
階段を降りきったところで、印象的な光を見つけた。
ぐっとしゃがんでローアングルに。あかり坂までの道を感じさせる余韻のある1枚になった。近寄ったり、引きで撮ったり。XF30mmF2.8 R LM WR Macroならではのまちスナップが楽しめる。
ちなみに、望遠レンズが必要なシーンも諦めないで、発想を変えてみよう。
途中で、川の向こうに白くて大きな鳥がいるのを発見した。望遠レンズがあればアップで捉えることができるが、XF30mmF2.8 R LM WR Macroではアップで捉えることは難しい。しかし、例えば、レンズ特性と構図の工夫で写真にすることはできる。
F2.8で枝を前ボケにし画面の大部分を覆うようにする。さらにトンネル構図にし、白い鳥が画面のなかで小さくてもしっかり目がいくようにした。こうすることで、35mm判換算46mmの表現として成り立たせることができる。
今持っているレンズで、出会った被写体をどう撮るか。希望の焦点距離ではないレンズだとしても、発想しだいで写真にすることはできる。
今回は、XF30mmF2.8 R LM WR MacroとX-T5の組み合わせで撮影した。
どちらも防塵防滴なので、シーンを選ばず撮影ができるのが嬉しい。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、実に汎用性の高いレンズ。マクロ撮影はもちろん、35mm判換算46mmという焦点距離を活かすことで、まちスナップもしっかり楽しめる。
ぐっと近づいたり、遠くを眺めてみたり。
この2枚が1本で撮れるのだから、その器用さに驚く。手元にあるとついつい使いたくなるレンズ、それがXF30mmF2.8 R LM WR Macroだなぁと思う。
さて、次はどんなカメラやレンズと旅に出よう。
きっとたくさんの出会いが待っている。
みなさんも、カメラやレンズと良い旅を。
■撮影協力
金沢・せせらぎ通り 『ひらみぱん』
https://hiramipan.co.jp/
■写真家:渡邉真弓
札幌在住。日常をモチーフに「時の有限性」「薄れゆく記憶」について考察する作品を制作。「写真と一緒にくらしを楽しむ」をキーワードに、写真教室、写真にまつわる執筆・企画提案、撮影など幅広く活動している。北海道カメラ女子の会代表、フォトフェスCuiCui 事務局代表、京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。富士フイルム公認X-photographer。地方自治体と地域振興プロジェクトも展開中。
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2016年11月に発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROは開放F値がF1.2という大口径を持つレンズで、とろけるようなボケと高い解像力が特徴です。35mm判換算で50mm相当の画角となる本レンズはいわゆる「標準レンズ」としての画角を持ちつつF1.2と非常に明るいレンズであり、発売(2016年11月)から時間は経っていますが、画角の使いやすさとレンズの明るさから今も人気の高い本レンズを改めてご紹介いたします。
本レンズの大きな特徴は、まずなんといっても開放F値がF1.2であるということ。F値が小さいほど絞りを大きく開くことができ、それと比例して大きなボケを得ることができます。一般的にレンズは開放絞りよりも少し絞った方がパフォーマンスは良いとされますが、本レンズは開放のF1.2でも非常に美しく滲むボケを得ることができます。
見事に苔むした木の幹を見上げると、ピントの前後は滑らかにボケる一方で、拡大するとピントの合った箇所は細かな苔がしっかり描写されており、解像度の高さがわかります。
金沢で美味しいお鮨をいただいたのですが、お鮨の手間にピントを合わせると、ガラスのお皿の細かい柄がキラキラの玉ボケとなりました。F1.2とF1.8で比較してみるとそのボケ感や玉ボケの大きさの違いがよくわかります。
▼F1.2
▼F1.8
絞り開放のF1.2では少々レモン型になった玉ボケも、2/3段絞ったところでは綺麗な真円となりました。
▼F1.2
▼F1.4
▼F1.8
開放F値が小さいと、それだけ一度にたくさんの光をカメラに取り入れることができるため、暗い場所でもISO感度を上げずに速いシャッター速度を得ることができます。本レンズはF1.2とかなりの大口径を誇るレンズゆえに、室内や夜の撮影でその威力を発揮してくれます。また、防塵防滴機能を備えているため、雨の日の撮影でも安心して持ち出すことができます。
夜の帳が下りる頃、土壁を雪から守る薦(こも)掛けが続く街並みで、雨で濡れた石畳に落ちた灯りが反射してとても綺麗でした。絞りを開放のF1.2にすることでISOは800でも1/100秒のシャッター速度で撮影することができました。
暗い路地裏に佇む日本家屋の窓ガラス越しの灯りがやさしく感じられてシャッターを切りました。ガラスの表面と外壁の質感がしっかり見て取れます。
コロナ前ですが香港へ行った際に、定番ではあるものの夜景を手持ちで撮影しました。ピントを合わせる被写体までの距離があるため、絞り開放のF1.2でもボケるようなことがなく、またシャッター速度が1/40秒ですがカメラ本体の手ブレ補正のおかげもあり、ISO400で撮影することができました。
雨の日に猫カフェで撮影させていただきました。室内での動物撮影はなかなかに難しいシチュエーションですが、絞りを大きく開くことができることでISO感度をそこまで高くせずとも速いシャッター速度での撮影が可能となったとともに、やわらかなボケで猫のモフモフ感を表現することができました。
本レンズの最短撮影距離は0.3m(30cm)。当然マクロレンズほどの接写は叶わずとも、35mm判換算で50mmのレンズと考えるとかなり被写体に寄って撮影することができます。被写体に近づくほどに背景は大きくボケるため、開放絞りF1.2と相まって非常に大きなボケを得ることが可能です。
鉄分と塩分を多く含む有馬温泉の源泉が湧き出る施設で、湯の花が付着しているのかと思いきや、塩の結晶であると教えていただきました。最短撮影距離ギリギリまで近付きマクロ的に撮ってみましたが、拡大してみると半透明の薄い花弁のような結晶の模様までしっかり解像しています。
有馬名産の炭酸せんべいをいただきました。手に持ったおせんべいにピントが合うギリギリまで近付いたことで、背景にあったお店の灯りが大きくボケました。
マイクロフォーサーズ規格での25mmは、35mm判換算では50mmに相当し、いわゆる「標準のレンズ」と言われる画角になります。実際の「視野」よりは狭いものの、「注視していない時に視認できる視野に近い」という説や「見た目に近い遠近感が表現される」ことで「肉眼での見え方に近く、自然に感じられる」ということから、スナップ撮影においても被写体を極端にデフォルメしたりすることなく「見た目に近い自然な印象の撮影」ができると言えます。
前述の温泉街にて、別の源泉の採取設備のある場所を訪ねると、もくもくと立ち上がる湯気にちょうど太陽の光が斜めから差し込んで神々しい光景となっていました。刻々とその姿を変える湯気のスクリーン上に描き出される光の帯は見ていて飽きないものでした。
鉄分を多く含む茶褐色のお湯が特徴的な有馬温泉ですが、温泉街の一角に無料で利用できる足湯施設があります。足湯を楽しむ人の足元を画面内に収めつつ、周囲の余計なものが多く入り過ぎない、ちょうど良い画角でした。
元旦に訪れた近所の神社。毎年、この時期の朝の決まった時間に訪れると、手水舎にいる龍の首のところから太陽の光が差し込みます。今年はいいお天気に恵まれ、見事その場面を写真に収めることができたのですが、絞りをF9に絞ることで綺麗な光条が現れました。
金沢を訪れると必ずいただきたい郷土料理の治部煮(じぶに)。地元の陶器である九谷焼の豆皿に乗った生麩と共に、見た目にも楽しい御膳をいただきました。25mm(35mm判換算50mm)の画角は、座った状態でちょっと引き気味の位置から一人用のお膳がギリギリ収まる画角です。ここでも最短撮影距離の近さを利用して、生麩田楽のお皿をクローズアップするように撮影してみましたが、周囲の豆皿もいい塩梅に画角内に収まりました。
数年前に訪れた香港で市街地から少し離れたビーチを訪ねました。絞りを開放のF1.2に設定していますが、木陰に置かれたビーチチェア越しにアウトフォーカスながらも、浜辺にいる人々の様子と背景の海や島々の光景がしっかり伝わるボケ加減となっています。
南国らしいハイビスカスを見上げる角度で撮影しました。そこそこ広い画角ゆえに背景の緑や空をしっかり捉えつつ、F1.2ゆえに葉に当たった光がまぁるい玉ボケとなっています。
香港の街を走るミニバスがたくさん集まる通りを歩道橋から撮影。バスやタクシーでごった返す通りの様子が自然な遠近感で表現できています。
朝の繁華街で、開店前のレストランのテーブルをガラス越しに撮影。私のすぐ横を赤いタクシーが通り過ぎるタイミングを狙ってシャッターを切ったのですが、ガラス越しであってもテーブルの上に置かれたワイングラスの透明感が際立つ1枚となりました。
夜の繁華街を歩いていてふと、なんだか視線を感じてそちらへ目をやると……!(笑) 咄嗟にシャッターを切りましたが、やはり開放F値の小さな明るいレンズは夜スナップにはもってこいだと感じた瞬間でした。ちなみにどうやら美容業界向けの問屋さん的なお店だったようですが、翌日同じ場所を通るとマネキンたちはもうまったく別の方角を見つめていました。やはりスナップ撮影は一期一会ですね。
35mm判換算で50mm相当という画角のレンズは、同じOM SYSTEMから発売されているものとしても以前ご紹介した M. ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 がありますが、絞りを最大限まで開いて1.8なのと、1.2まで開くことができるのとではやはり「ボケ感」や「使えるシチュエーション」において大きな差があります。この2本のレンズを比較するとレンズ自体の大きさとしては少し大きくはなるものの、フルサイズ機用の同等のレンズと比べるとはるかに小さいと言えます。
また本レンズはPROシリーズのレンズとして非常に高い解像力や美しいボケを誇りつつ、防塵・防滴、さらには耐低温性能をも兼ね備えており、シチュエーションを選ばずワンランク上の撮影を楽しみたい方にはぜひおすすめの1本です。
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
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植田正治という写真家の不思議な魅力について、ときどき考え込んでしまうことがある。なぜ、私たちはその作品世界に惹かれてしまうのだろうか。生涯を「アマチュア」写真として生きた植田の作品は、時間や場所を超え、今なおファンを獲得し続けている。豊かな創造性の秘密に触れたくて、その歩みをこれからたどり直してみようと思う。
1971年、植田正治は自身として初の本格的な写真集といえる『童暦(わらべごよみ)』を出版した。1950代からカメラ雑誌に発表してきた子どもをモチーフにした作品を、春夏秋冬の順で再構成したものである。
冒頭、「春」の章を開くと、一本道の真ん中で桜の枝を抱えて立つ、イガグリ頭で満面笑顔の少年がいる。強く印象的な縦位置のポートレイトである。続いて横位置で写された、横に広がる白い一本道の写真へと変わり、さらにページをめくると向こうからボールを手にした制服姿の少女がしだいに近づいてくる。その縦と横、さらに奥行きをもったイメージの連なりはじつに映像的だ。後に続く写真も近在の子どもたちを呼び止めて撮られている。その単純化された画面はまさに「植田調」だ。
とはいえ、前回に紹介した「パパとママと子どもたち」、「砂丘群像」「妻のいる砂丘風景」などとは、雰囲気がかなり違う。まずロケーションが、砂丘や砂浜という無機質で抽象度の高い場所ではなく、具体的な土地の個性がみえる場所を選んでいる。しかも画角を広くとることによって、撮影地の特徴が描写され、風景写真的な性格へと変わっている。得意とする演出の効果もかなり抑制的で、記念写真のように見える。そんな人物が風景の中に小さく配置されているのに、以前の作品よりも被写体の個性や実在感があるのは不思議なことだ。プリントでもモノクロームの陰影が濃くなっていて、よく見ると影のなかにさらに深い影がある。その焼き込み具合は、山陰地方の静かな空気感をよく伝えている。
『童暦』に見られるこのような変化は、自分をはぐくんできた土地の風土性を表現しようとする志向の表れである。だとすれば、植田はどのようにこの地点に至ったのだろう。それを知るには、1950年代から60年代の写真界の潮流を見なければならない。
ひとつには土門拳が「絶対非演出の絶対スナップ」を唱えた、1950年代のアマチュア写真界を席巻したリアリズム写真運動の影響がある。土門は絵づくりのための演出を否定し、戦後の日本の現状を表現するために、人間のリアルさとストレートに向き合うように呼びかけた。演出写真で知られた植田はその主張にショックを受け、あらためて写真にとっての「リアル」さについて考えることを余儀なくされていた。そして思い至ったのが、カメラを向けた時の、被写体の素直な反応を捉えることが写真的なリアルさだというものであった。植田は、カメラを向けると写される方は必ずカメラを意識する、それこそが写真という表現のリアリズムではないかと考えたのだ。それは地元で営業写真館を営んできた経験から得た、回答だった。確かに植田のカメラは、その前に立った子どものはにかみや緊張までのリアルな反応をすくい取っているのだ。
また、この頃の植田は山陰の風景と向き合うことをはっきり自分のテーマに据えていた。山陰地方をくまなく回りながら、助手に祭事のリストなどを作らせたりしている。その経験は、歴史学者との共著である『出雲の神話 : 神々のふるさと カメラ紀行』(淡交新社、1965年)や『出雲旅情』(朝日新聞社、1971年)などに生かされることになる。
1950年代のカメラ雑誌をめくっていると、風景写真についての特集がそれ以前よりも増えていることに気づく。もちろん風景はいつの時代にも共通するテーマなのだが、この時期のそれはその土地の歴史と性格、つまり“風土”をいかに表現するかが問題になっている。
その関心を高めるきっかけとなったのは、1956年に濱谷浩が出版した『雪国』(毎日新聞社)だ。これは新潟県の山あいの村に受け継がれた伝統行事をテーマにした民俗学的な視野に立った写真集であり、濱谷はそれを「生活の古典」の記録と位置づけている。きわだった詩情と知的センスを感じさせる濱谷の写真は、土門のリアリズムとは別の角度から、日本人とは何かを見つめていた。また戦後復興から高度経済成長期へと社会が推移するなかで、忘れられていくであろうものをこの写真集は示してもいた。
植田の写真や作品解説に風土が強調されるのもちょうどこの頃からで、じっさい山陰各地、ことに出雲地方の行事ごとや風景をくまなく撮り歩いている。それだけに『雪国』にある子どもたちの行事を撮った写真が、『童暦』に散見されるのは偶然ではないように思われる。例えば雰囲気は違うものの、冒頭の桜の枝を抱えた少年の姿は『雪国』に収録された「榊を持つ子供」によく似ているし、有名な「鳥追い」のように、祭りの日に一列になって歩く子どもたちを遠景から捉えた写真も多くある。(榊(さかき)=神棚にささげる常緑樹)
もちろん、民俗行事に対する視点を吸収しつつも、植田の核にあるものは変わっていない。求めているのは民俗の風景を通じて、より普遍的なイメージとして自身の心象を昇華することだった。1968年に、書いたエッセイには次のように書かれている。
「たとえば早春の山村である。山陰の冬は厳しい。それゆえにこそ、春を待つ人々の、心に何かを憧れるような、春の歌でも口ずさみたくなるような、切実な気持ちを抱く。この切実さを自分自身のものとして把握することだ。そうすれば、おのずから抒情はたぎり立ち、被写体は確実に見えてくる筈だ」※1
植田はこの抒情を、とくに「懐古的抒情」と呼んでいる。その思いを託した作品には、このほかにも1959年から1965年まで『日本カメラ』で断続的に発表した「山陰秋譜」、「秋のうた」、「こども歳時記」などと題された一連のシリーズがある。それらは掲載時に大きな話題とはならなかったが、写真からあふれる抒情にいち早く注目していたのが、当時気鋭の写真評論家だった吉村伸哉である。吉村は1960年10月号に掲載された「秋のうた」についての作品解説を書いているが、それは解説というよりは賛辞に近い。
「筆者も、植田正治の写真を見ているとあまりにもよくわかりすぎ、体質的に共鳴できすぎるので、かえっていやになり反発さえしたくなるほどです。しかし、理性的にはどう評価しようと、感情的にはしらずしらず共鳴し、じっと見つめていると痛烈な郷愁で胸が締め付けられるような気持ちになってくる自分をどうしても抑えることができません。
また、はたしていままでの誰が植田正治ほど鮮やかにそして鋭く、日本人的心情の本質を形象化したかという探索になるとその結果は、彼の作品のユニークを証明するだけに終わるでしょう」
こうした評価が「すっかりペシャンコ」になっていた自分に再び自信を与えてくれた。翌1961年の『カメラ毎日』7月号に掲載された「曇り日と夕暮れが好きな 植田正治」という記事にはそう発言したと書かれている。その後、彼はこの懐古的抒情路線を進め、やがてその存在が再び写真シーンの最前線で注目されることになる。
『童暦』についてもう少し説明を加えておきたい。まず、同書は中央公論社が刊行していた「映像の現代」という全10巻のシリーズ本の、第3巻目として刊行されている。他のラインアップをみると東松照明、深瀬昌久、奈良原一高、立木義浩といった30代の写真家たちが並んでおり、そのなかで56歳の植田は最高齢だった。植田を起用したのは監修を務めた『カメラ毎日』編集長の山岸章二で、写真集の構成は堀内誠一が担当した。当時の写真界で、これ以上ないコンビだったといえよう。
山岸は立木を始め、高梨豊、森山大道、沢渡朔、牛腸茂雄ら新しい才能を積極的に起用して、写真界の風景を変えた立役者だった。また1974年にはニューヨーク近代美術館で開催された、戦後日本の写真表現を紹介した「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィー」展の共同キュレーターも務めるなど、国際的にも活躍している。
一方の堀内は“天才”と称されたアートディレクターである。『平凡パンチ』や『アンアン』(マガジンハウス)といった若者雑誌に立木や沢渡らを起用し、ファッション写真の世界に革新を起こしていた。後に絵本作家としても活躍した堀内は、メルヘンチックなストーリー性を持ちこんだのだ。子どもを通じて「懐古的抒情」を描いていた植田の写真には、まさにうってつけといえた。
そして本書に敏感に反応したのは20代から30代の若い世代だった。彼らは『童暦』を文字通り「現代の映像」として受け止め、その作者である植田正治を自分たちと同じ時代を生きる写真家として見いだしていた。その反響から『童暦』をもって「第二のデビュー」と評する声もあるほどだ。いったいなぜそれほど、若い世代の心をとらえられたのだろうか。
この1970年代初頭、一種の記念撮影的な素朴さをもった「コンポラ写真」のムーブメントが静かに広がっていたこととも関連している。この時期に注目されていた、たとえば牛腸茂雄や新倉孝雄らに代表される新進写真家たちは、個人の価値観にもとづいて日常性といわれるものを写真で捉え直していた。そのスタイルも、テーマの持ち方も植田の写真に通じるものがあったのだ。それゆえ1948年生まれで植田と深い交流のあった写真史家の金子隆一は「構図の巧みさや山陰の風土や生活に対する叙情よりは、パーソナルなまなざしによって世界と関わろうとする態度」※2 という座標軸で『童暦』が評価されたのだとしている。
また写真評論家の重森弘淹は、若者たちの反乱と呼ばれた学生運動後の状況を踏まえて「七〇年代前後の激しい政治の季節のなかで、挫折に賭けた傷に植田の作風はひとつの甘さをともなった清涼感をもたらすものだった。しかも政治的季節ともかかわりなく、そこに確固としたリリシズム的空間が存在しうることへの驚きでもあった」※3 と分析している。そしてこの年、私家版写真集『センチメンタルな旅』を発表して「私写真家宣言」をした荒木経惟は、後に植田の子どもに向けたまなざしの「ピュア」さへの敬意を表し、最も好きな写真家は植田正治だったかもしれない※4 と語っている。3人の言い方はそれぞれだが、世評に迎合せず、ひたすらに自分の写真を追求した姿勢を読み取っているのだ。
じっさい植田は、これまで見てきたように、時代ごとのさまざまな写真のムーブメントや環境の変化の波にもまれてきた。見事なのはその影響を吸収し、自らの作品をさらに深めていく、しなやかさだ。この当時、ときに植田と同世代のベテラン写真家たちから難解だと非難されていた、森山大道や中平卓馬などの若い写真家たちの作品からも学ぶことを、カメラ雑誌を通じてアマチュア写真家たちに繰り返し呼びかけているほどである。
「作者が、それを必要としたであろうブレた写真も、ピンボケを計算した写真にも、表現の自由を求める気がして、私は黙殺する気にはなれません。大切なことは、表面的な技法ではなく、うちに秘められた作者の、対象との言葉だと信じています。
自分の写真に絶対の自信をもった人はいないとおもいます。私たちは、いつも、いつまでも努力をつづけなくてはなりません」※5
「したがって私たちが今日信じ行っている写真活動の方向は、明日の写真界を必ずしも指向しているとはおもえません。好むと好まざるにかかわらず、常に変化を繰返していくことは必定です。私たちは若い人たちの想像もしなかった写真表現に、ときには反発を感じながらも積極的に理解しようと努め、現代の写真界の動向に今すこし関心と興味をもつように寛大な気持ちで心がけようではありませんか」 ※6
過去にとらわれず、常に現代を志向する精神が、この写真家を、世代を超えた稀有な存在とした。いや、それは時代だけではなく、地理的な距離さえ超えて海外の写真シーンにまで伝わったのだった。
【後編へつづく】
※1植田正治「“山陰の海”によせて ―風景写真によせる体験的エッセイ―」『フォトアート』1968年11月号 (研光社)
※2金子隆一「写真という未完」『日本カメラ』2000年9月号(日本カメラ社)
※3重森弘淹「植田正治小論―抒情的空間の堅固さ」『写真批評』7号(東京綜合写真専門学校、1974年)
※4荒木経惟「下駄屋のせがれ同士でもっと話したかった手品みたいな写真家の謎」『アサヒカメラ』2000年9月号(朝日新聞社)
※5植田正治 連載「植田正治 写真教室:1-脱複写」『アサヒカメラ』1973年1月号(朝日新聞社)
※6植田正治 連載「植田正治 写真教室:6芸術大写真」『アサヒカメラ』1973年6月号(朝日新聞社)
より引用
■執筆者:鳥原学
1965年、大阪市生まれ。近畿大学卒業。ギャラリー・アートグラフを経てフリーになり、おもに執筆活動と写真教育に携わっている。著書に『日本写真史(上・下)』(中公新書)、『教養としての写真全史』(筑摩選書)などがある。現在、日本写真芸術専門学校主任講師、武蔵野美術大学非常勤講師。2017年日本写真協会賞学芸賞受賞。
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まだまだ寒い日も続くが、いろんな花が咲き始めてそわそわする季節。
その中でも春の花の主役と言えば桜。
基本遠くへ撮影に行かないタイプなので、毎年自宅近くの徒歩圏内で。
桜を撮りに出かけたとしても花の部分にはそこまでこだわらず、画面の中にちょこっとあればいいかなと思いながら撮り続けている。
東京郊外の特に観光地でもない場所だが、そんな近所の身近な桜を、どんな思いで撮っているのか紹介したいと思う。
雨の日、家から一番近い小さな公園。
満開の桜も撮っていて楽しいが、自分が好きなのはこういった桜の終わり際の、散った花びらと人工物との組み合わせ。濡れていなければタイヤに花弁はついていなかっただろうし、雨だから撮れた写真。
タイヤと桜の花びらだけ写したい場面だったので、カメラをタイヤの真上にもっていって自分の脚が入らないギリギリの広角で撮ってみた。 桜の花びらの入った写真はシンプルに、情報量は少ない方がいい事が多い。
こちらも雨の日、遠くまで見渡すことができる橋の上から。右下の自転車二台の前かごに赤と青の荷物があって、遠くに相合傘のカップル。 自転車一台だったら撮らなかったと思う。二台縦並びで、荷物の色が気に入っているところだ。全体的な構図を安定させるために、左側の濡れて反射する細い道をこの位置に入れた。
満開でなかったのが少し残念だが、ここも毎年撮っているお気に入りの場所。なかなか都内では撮れない空と、広い場所にぽつりと桜。
そんななか珍しい自転車三台縦並びに遭遇。桜の木と対になる場所に来た時にシャッターを切った。
スッキリ晴れているよりも雲に模様がある方が桜の色も出しやすくて好きだ。
緑のネットにくねくねになった赤い線。真っすぐだったらなんにも感じなかったと思うが、不規則な状態に惹かれたのだと思う。その先にピンクの傘の女性がぽつり。
緑色に、特に赤い系のピンク色が映える。
左側のカラーコーンが二つあることで構図に落ち着きがでたと思う。
その場所で普通ではないと思うものを中心にいろいろと構図を考えるのも楽しい。
桜より少し早めに咲く桃の花。木はまだ小さいが八重咲で花も大きく紅白なのでお気に入りの場所。これも珍しい自転車四台が駆け抜けて行ったので、花にかかる少し手前でシャッターを切った。
対岸に、ソメイヨシノよりも一週間ぐらい早めに咲く桜。
手前で子供二人が水切りをして遊んでいた。白黒の洋服の対比があったのと、水切りの時の体勢が面白くてシャッターを切った。
保育園が取り壊されて鉄棒とジャングルジムだけが残った公園。
雨の日は大きな水たまりができるのを知っていたので行ってみた。
ボタンの花が落ちていたので柵で取り囲む構図にしてみた。
明るい単焦点だから撮りやすい柵越しのスナップ。絞りを開け気味にして奥にピントを持っていき、少し角度をつけてあげるとこんな感じで透けて、先の風景を見ることができる。
レンズを柵に近づけて角度や高さを気にしながら探すといいと思う。
よく見る花吹雪の写真は晴れていることが多いので、この曇り空でこう撮れたのが意外だった。背景が暗かったことにより、花吹雪が思ったよりも明るくはっきり写ってくれた。F1.4で撮っていたのもよかったと思う。
10年ぐらい前に池のほとりに枝垂れ桜が植えられて、ここ5年ぐらいでいい感じに撮れるようになってきた。
特に夕方になると逆光になって桜の花びらも明るくなり、橋を渡る人と一緒に撮るとさらにいい感じになる。
松葉杖の女の子を心配そうに見ている子犬に物語を感じてシャッターを切った。
今回紹介した身近なところで撮る桜はいかがだっただろうか。
どれも自宅から徒歩20分圏内。写真を始めたばかりのころは土手を広角で見上げてみたり、望遠で一部分を切り取り圧縮効果を狙ったりするぐらいしかなかったが、夕暮れ時の逆光、池の反射、人工物など、組み合わせで毎年何か違う写真が撮れないか探すようになってきた。
毎年同じ場所で撮り続けるのも悪くないと思う。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。
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こんにちは!大橋愛です。今回はランタン祭りを観に、旧正月明けの台湾へ遊びに行ってきました!
今回のお供はキヤノンRF24-50mm F4.5-6.3 IS STM。ランタンを撮るには広角寄りのレンズが良いと思って決めました。
EOS R8のキットレンズで、長さ58mm、重さ210gの超小型で旅に持ってこいのズームレンズです。さらにランタンは大きいし上に飾ってあることが多いと思ったので、背伸びしてでも撮れる軽やかさが重要と考えました。ご飯と遊びに集中した5日間、たくさん歩きたくさん撮影しました。ぜひご覧ください。
台湾は日本から近いわりに、珍しいものばかりでとっても刺激的!!そしてキラキラというか派手なんです。
今年は辰年だから、あちらこちらに龍がたくさんいました。ビルに巻き付いていたり、もちろんランタンも龍ばかり。
ここであれ??龍と辰の違いってあったっけ??と調べると、「龍」「竜」「辰」は生物上の意味・見た目は同じものだそうです。
この龍は滞在したホテルに近い龍山寺の入り口に飾ってあったのですが、この寺には100もの神様がいらして、めちゃくちゃパワースポットなんです。みなさん熱心にお参りしていました。
これは蛇!!しかもゴールドの蛇なんです。グーグルで調べてみると、どうやらここは蛇のスープ専門店とのこと。
金色の蛇って金運の象徴だから、お店の看板になってるみたいです。学生の時に神社で白蛇を見つけたことがあって神主さんと捕まえて山に逃したことがあったけど、金の蛇は初めてでした。ご利益あるといいけどなーーーー。 初日からかなりの衝撃被写体にあったのに、ホテルに帰ったら爆睡してしまいました。
次の日。早起きして少し散歩をしました。わんこを散歩している人も多く、2月なのに朝から23度くらいの気温でサラッとした風が吹いていて、とっても気候が良いです。わんこもジャンプして気持ち良さそうです。さて朝ごはん散策です!!
朝食専門店。11時には閉店らしく8時半くらいに行ったら10人くらい並んでいました、ここは豆乳と揚げパンとお餅の専門店です。みんな出勤前にバイクで家族分を買いに来ている感じでした。小さいサイズを頼んでホテルで朝食にしました。豆乳の甘みがとっても優しくてロイヤルミルクティーみたいなんです。
揚げパンとお餅が少ししょっぱくて無限にいけそうです。調べてみたらかなりの人気店でした。自分の食欲センサーがものすごくいい仕事してるって確認できました!!
日中はお買い物したり観光したり台北を満喫。台湾でのお買い物のおすすめはチャイナシューズと竹やビニールのカゴバックです。
漁師が使っていた網をエコバックにしたものもあるんです。どれも可愛く安いのでおすすめ。今から夏が楽しみです。
そして夜市のご飯は絶対です。場所によって特徴が違うので色々な夜市をハシゴするのも楽しいですよ。
ここは行列ができていたから食べてみたのですが、魚の練り物を揚げたものです。ソースは甘辛いソースとわさびソースの2種類。
お店のお母さんの髪色が逆光で綺麗すぎました!!そしてもちろん揚げたてだから美味しいに決まってます。
あーーーービールが欲しくなる!!
夜市は食べ物が多い夜市とゲームが多い夜市があって、台湾の子供はゲームが好き!
しかも目を引いたのはイカの形のゲームのおもちゃ!!イカをおもちゃにするって斬新すぎる!!
このとき台北は2月でも昼間は28~29度くらいあって、太陽の下では汗をかきました。ですから夜散歩は本当に気持ちがいいのです。
しかしいくら安全な街と言われても、小さな道は避けて人通りがある大きな通りをお散歩撮影です。もうブーゲンビリヤが咲いていて夏の気配を感じます。
RF24-50mm F4.5-6.3 IS STMは手ブレ補正機能を搭載しているので、夜間の撮影でも手ブレを心配しなくても大丈夫です。
駅の方に行ってみると、またまたランタンが飾られていたけれども足元を見ると星座が埋め込めれていて、ランタンの光を帯びてとても素敵に光っていました。
写真を撮っていると上や下を見たり進行方向だけではなく後ろを振り返ってみたり、目的の場所ではないところに行ってみたり。特に遊びで行っていると時間は制限がないから、足取りも撮影も本当に自由になります。
そしてこの暖かさ!!気持ちも軽やかになります。そしてカメラもレンズも軽い!!重たいのは食べ過ぎの私の身体、、、とほほ。
朝焼けもとっても綺麗で、奥の方は雲海のように雲が広がって見えました。これは窓越しに撮影したのですが、部屋の中を真っ暗にしてフードも外して、レンズを窓にピッタリくっつけて撮影するとうまく撮れますよ。電気が消せない時はカメラの周りを黒いもので覆い、光が入り込まないようにするとうまく撮れます。飛行機の中でよく撮影している人を見かけますが、室内灯をひろってうまく撮れない、そんな時は上着をかぶって光を遮り、窓にカメラのレンズをつけて撮ってみてください。ビルの展望台で夜景を撮る時も同じです。
こちらは人気店の台湾スイーツ豆花(トウファ)です。タピオカとナッツトッピング。優しい甘さで、歩き疲れた体に元気チャージしてくれます。店内でも食べられるのですが、緑を入れて撮影したい私はあえて外のスタンディング席。
インスタ用に撮影している女の子もたくさんいました。海外のお皿って本当に可愛いなと思います。ゴールドの陶器は白いスイーツに合うし黒のテーブルもシックで素敵。派手な赤やLEDのキラキラも台湾らしいけどこういう組み合わせも素敵です。
またまた龍山寺に行ってきました。神様は午前中にいるみたいなのでご挨拶に!!結構早いと思っていましたが、もう人がたくさんいらしてお菓子や果物、お花をお供えしてお祈りしていました。お供物は持ってきた人が持ち帰るそうですが、間違えないのかな??って思うくらいです。日本のように切花を生けるのではなくお皿に並べていました。とっても綺麗で華やかでお花も元気で、人も活気があるお寺さんです。
そしてこの方たちはじっくりお経を唱えていました。中には知り合いに会っておしゃべりをしている方もいたり、ほんのちょっとしか離れていない国なのに、こんなにも習慣や違うんだと思った光景でした。このお寺は観光客もたくさん来るし、東京でいうならば浅草寺でテーブル並べてたくさんの人がいるってことですよね、本当にたくさんのものを見て自分の幅を広げなければ、って思うのです。とは思ってもお腹が減っては、、、で、またまた朝ごはん散策へゴー!!
こちらは小学校。可愛いデザインで看板を確認する前に撮影してしまいました。
結構街中にある小学校だから校庭とか狭いのかな??体育館はどこにあるんだろう??と思ったけど、日本は東京駅前にも小学校があるし、子供たちがどこでも元気に遊んで勉強している姿が目に浮かびます。
だいぶ前ですが、地震があった中国の四川省の小学校をある企業が建て直しの支援をした時に、ボランティアで撮影しに2ヶ月に1回くらい通ってました。子供たちは全く中国語ができない私でも一緒に遊んでくれて、楽しかったことを思い出します。もうだいぶ大人になってるんだろうな。
観光地で有名な九份に行ってきました。提灯の光が灯ると、平日でもどこからこんなに人が集まったんだっ!!と聞きたくなるくらい人の多さにびっくり。山の斜面の階段にお土産屋さんやレストランが並んでいてたくさんの人が押し寄せるし、立ち止まって撮影したりお菓子を買ったりしているから進めないのです。ってことを私は調べ抜いていたので、15時には九份に到着。
お土産屋さんをゆっくりみたりして灯籠に火が灯ったら、チャチャっと人混みに入り、さくっと撮影して退散!!帰りのバスはめちゃ混みだから山の上から乗るのがおすすめです、途中のバス停からは混んでて乗れません。プチ情報です。
台湾は食にとってもこだわる方が多いので香辛料や保存食、お茶屋さんがものすごく多くて市場を見にいってきました。
乾燥の貝柱やエビはもちろん、八角や色々な匂いで満腹になりそうでした。一番目を引いたのがこの唐辛子のツリー!!
干してあってとっても綺麗なんです。台湾の食事は少し味が薄めで、自分で唐辛子のペーストや醤油や調味料で自分好みにする人が多くて、なるほど!!と思いました。唐辛子は店頭に干されていたのですが、これも順光より少し逆光のほうが立体感が出て、影の締まりが綺麗に出ました。
唐辛子もですが街中には赤が溢れています、気になって撮影していたお気に入り3カットをまとめました。
赤い壁、赤いドアは結構あるのですが、それではつまんないなーーと思い私のサングラスを影にして撮影してみたり、花柄の2カット目は布のように見えますが裏に照明が入っているプラスチックの壁!!そして私の名前にも入っている大橋のお箸違い!!なんて冗談撮影も楽しく。写真って本当に楽しい。
この日は目的の台南のランタン祭りに行きました。現地に着くまで、新幹線のチケットは当日だと割引がなくて落ち込んだり、ネットで買ったチケットの引き換えカウンターがわからなかったり、爆睡しすぎて終点まで行ってしまったりトラブル続きでしたが、無事到着!!
海の近くですから牡蠣が名物で、まずは牡蠣食べるぞ!と意気込みましたが、あれ??ランタン祭り静かすぎやしないか??と不安になっていたのも束の間、車でどんどん観にくる人がやってきてあっという間に駐車場はいっぱい!!
しかしさすがに南。昼間も暑くて、夜もじっとり暑い!!そして想像していたランタンとは大きく違ったのです。
これは竹細工を丸くしてドームにして、しかも中に入れるランタン!!竹の匂いもして、ものすごく素敵!!
広角のレンズがちょうどいい!!撮りたいように撮れる!!嬉しい!!と興奮気味でした。竹の繊細な質感も出ています。
旅の話がどうしても多くなってしまうので、同じ被写体でも光の位置で全然違うってことも書こうと思います。
上の提灯の写真の1カット目は逆光で、透けた提灯はガラスのように光って見えました。
空と逆光は少しアンダー目に撮ると色もくっきり出ます。次に下を見ると影が水玉模様みたいで可愛いではないですか!!
そして順光も撮ってみること。しっかりものが見えてきます。光の方向を読んで何枚か撮影するとバリエーションが増えますよ。私は最後の縦のカット、逆光で下の影も入れて撮ったものが一番好きでした。
私が大切にしている写真的とはどうゆうことか??についてお話しします。例えばこのカットは古道具屋さんで修理しているおじさんを撮ったのですが、影を印象的に使って撮影しました。
仕事ぶりを見せたかったら影で潰さないように手元もわかるように撮りますが、この時はレコードの蓋を開けた時に同じような角度の光がちょうど入るところを探しました。現在と過去の2分化が表現できるのではないか?と考えたのです。これが写真的な考えだと思います。
こんなことを考えながら写真を撮ると、被写体だけではなく光と影の位置がどれだけ重要かがわかってくるのではないでしょうか。
上の2枚は1カットずつみると市場で人が働いている路地ですが、左カーブを揃えることで2枚の写真がなんだか陰と陽のコントラストに見えてきます。
私の場合は多分、前に撮ったものが自分の頭の中に残っていて、それと組み合わせたらどうか??と無意識に考えているのだと思いますが、意識してこのように撮ってみても被写体の別の表情が見えてくると思います。
光と影を使ってみせる方法はやっぱりすごく効果的だし綺麗です。太陽の力って大事です。撮影前にちょっと休憩に入った古いお茶専門店は中もシックでかっこよくて素晴らしかったけど、この光が一番素敵なエネルギーチャージができた時間でした。
水面に映る光も使わない手はありません。ガラスと同じ効果があるけども水面は風や魚で揺れるので、この歪みは計算できないから楽しい!!そして露出をどちらに合わせるかで見えてくるものが違ってきます。
肉眼で見落とすようなものを写真で表現したいと常々思っている私は、やっぱり光るものが好きですね。
シャボンもシャボン液の光に露出を合わせて撮っていたし、この池の水面も同じことなのです。
そして室内の窓も、外に露出を合わせると全く違ったものに見えてきます。
自分のいるところ、光、影、本当に当たり前のことですが、カメラによって見えてくるものが違うって写真でしかできない楽しみなんだな、と思います。このあとに機材の選択、自分に合うレンズを選んでいけばいい。自分に合った機材を見つけることが大切だと今回の旅で改めて思いました。
自由な旅は自由になんでも撮れるけど、撮ったあとにまとめてみるとまた面白い発見があります。
何を撮ったらいいかわからない人や、セレクトってどうやってどうしたら面白くなるの??と思う一例として、同じテーマで揃えてみるのも良いかもしれません。
これはウインドウでまとめました。
左上は映り込みを意識したもの、右上は古道具屋さんだから少しアンダー目に撮って時代を感じるように。左下は小籠包を包んでいる職人さんをみている少女を、猫が窓の外を見ているように表現してみたり、右下は閉店間際の厨房が掃除で泡だらけの状態を撮影してみたり。自分の立ち位置でまとめても被写体が改めて面白く見えてくるし、動画ではできない編集ができると思います。
違う被写体を並べても面白い時があります。例えば、扇風機と鉢を撮影したのですが、これが花の部分を全部入れてしまうと扇風機と対比のカットにならないのです。
そして撮った写真をどれと組み合わせると面白くなるのか??を考えるのも編集の楽しみです。
2つ並んでいるものを2枚並べてみたら、強制的に2つの被写体が並んでいるカットに見えてきますね。
ちなみに台湾のポスト情報ですが、緑色のポストは国内専用、赤色のポストは航空便と速達用、あといろんな面白ポストもあるみたいです。世界中のポストを撮影して集めている人いそうだなーー。
この風景は同じところを場所、時間を変えて撮りました。
右奥の地形が同じで比べるとわかります。手前に提灯の光が入ったことや空が焼けているのも素敵でした。
夕焼けのカットは実はもう帰る前で、少しお疲れ気味でした。肉眼で見てもさっき撮ったから良いかな?なんて思っていましたが、カメラを向けるとすごく綺麗!!撮るしかなく!!体が動いていました。レンズの繊細な描写力でグラデーションがきれいにでています。
そんなこんなで今回は撮って食べての繰り返しでたくさん歩きました。この胡椒餅はまた食べたい一品です。24-50mmだから持ちながらも撮影できるし、最高!!でした。
帰りの空港に向かう電車の中も映り込みを使ってセルフポートレート!!
台湾の旅、いかがだったでしょうか。今回もボディはEOS R8を使いましたが、モニターの見やすさや夜の撮影に強いセンサーとRF24-50mm F4.5-6.3 IS STMの相乗効果で、台湾との相性抜群でした。黒の締まりなど想像以上に活躍してくれました。そしてやっぱり軽いのが一番!旅に行くと、やっぱりあれ持てくれば良かったとか思うことがありますが、今回は全くありませんでしたね。あーーまた旅行行きたい!!次回もお楽しみに!
■写真家:大橋愛
神奈川県生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。写真作品活動のほか、企業広告、雑誌、出版等の分野で活動。個展、グループ展多数。写真集『お裁縫箱』、HeHeより発売中です。
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皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。さて、今日はどんなライカが登場するのか、いつもながら楽しみです。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの水谷さん。初回に出していただいた真っ赤なライカMデジタルのインパクトは相当なものでしたが、水谷さんの得意ジャンルであるモダン・クラシック的なアプローチのライカを用意していただいているのではないかと推測しつつ、カメラの登場を待ちます。
「こちらになります」とカウンター越しに手渡されたカメラは、黒塗りのヴィンテージスタイル。でも水谷さんが出してくるライカだから意外に新しいモデルかもしれません。シャッター幕をチャージした状態で白丸が見えるし、古いライカでは機械式のセルフタイマーレバーがあるべき場所がバッテリー交換用の蓋になっている。しかもレンズマウントの金具はプラスネジ止めの仕様。ということはレトロスタイルのモダンカメラ?
「これは、ライカMP3です」と水谷さんに教えてもらっても、いまいちピンと来ません。音楽圧縮フォーマットみたいな型番ですねと話を振ると、その名前の由来を優しいトーンで説明してくれました。このカメラは、20世紀の半ばにライカが少数プロ向けに製造したライカMPというモデルを継承する3代目という意味だそうです。
これに似たライカを前に見せていただきましたよね? と尋ねると、ライカM3Jをカウンターに並べて比較させてくれました。正面から見るとほとんど同じカメラのように見えますが、左がライカM3Jで、右がライカMP3になります。どちらも布幕横走りで機械式のシャッターを搭載したライカMマウントのレンズ交換式レンジファインダーカメラで35mm判のフィルムをフルサイズ(昔の言い方ならライカ判ですね)で撮影できます。
シャッター幕の白丸は、内蔵した露出計での測光に使用するもの。ファインダーの中に3点式のLED表示があってマニュアルで露出を決めていく仕様です。それって現行のライカMPと同じじゃないの? と思って確認したところ、いずれも21世紀の初頭に登場したライカMPをベースに作られたスペシャルモデルだということだそうです。
この2台のカメラは、いずれも中身は2003年発売のライカMPをベースにして限定生産されたモデル。下にあるのが本稿で取り上げている2005年に生産されたライカMP3で、上にあるのが2006年に登場したライカM3J。これはライカが世界初の直営店として開店を目論んでいたライカ銀座店の記念モデルとしてライカカメラジャパンからのリクエストで実現した製品で、ライカMP3の後を追って発売されています。
おそらくライカMP3で特注したオリジナルのライカMP風のトッププレートという実績を踏まえて、その翌年にライカM3JではライカM3風のトッププレートを発注することができたのではないかなと思います。いずれもライカがゾルムスにある時代のもので刻印も似ていますが、フォントの種類や文字の大きさに微妙な違いがあります。ライカMP3の方が少しだけ文字が大きいですね。
オリジナルのライカMPといえば、バルナックライカ時代にあったフィルムの迅速巻き上げ装置であるライカビットをM型ライカでも使えるようにしようというコンセプトで1950年代後半に製造された希少種で、ライカM3をベースにしたライカM2のプロトタイプという解釈もできるモデルですが、このライカMP3もライカビットに対応しています。
ただし互換性に関してはオリジナルのライカビットが装着できるのは当時のライカMPおよびライカM2などで、現行品のライカでは連結方法が異なるので使えません。で、この写真で装着されているのは現行のライカビットMです。レバーを引きあげてぐいっと引き寄せるとフィルム1コマぶん巻き上げられ、レバーはバネの張力で自然に戻る仕組みです。
ライカMP3を特注したのはLHSA(ライカ ヒストリカル ソサエティ オブ アメリカ)と呼ばれる団体で、1968年にアメリカ合衆国で発祥したライカの熱心なコレクター集団としてライカマニアの間では知る人ぞ知る存在です。彼らは早くも1978年に設立10周年を記念してフィルム一眼レフのライカR3記念モデルを発注して以来、さまざまな記念モデルをライカに依頼してきた経緯があります。
おそらく会員の方々にはオリジナルのライカMPを所有している人も存在していると思われますが、実用主義者のアメリカ人気質として“コレクション用”ではなく“使う用”のライカMPが欲しかったのではないでしょうか? ライカMP3のファインダーマスクは現行品のライカMPとは異なり、35mm 、50mm、90mmの3種のみで同時に2種類の枠が出ない仕様になっているのもストイックです。
では、このライカMP3に合わせるといい感じになると思うレンズは何でしょう? と水谷さんにお薦めレンズを尋ねると、カウンターの上に登場したのはクラシカルな雰囲気のレンズでした。金属製のピント調整リングに細かく縦筋が刻まれたローレット加工は1950年代のライカレンズに見られるもの。さてこのレンズの正体は?
「ライカM3J(連載vol.004)のときにもご紹介させていただいたのですが、アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.特別限定モデルを推させてください。これが好きなので、ついつい色々なボディと合わせたくなるんです」と語る水谷さんお気に入りの1本は、通常のアポ・ズミクロンと光学系は同じですが真鍮製の鏡筒をクラシックスタイルで再設計してブラック仕上げしたもの。2018年に300本だけ限定生産されたもので、実はこのレンズを発注した団体は、ライカMP3と同じLHSAだったのです。その翌年にはLHSA刻印なしの品物が上市されることになります。
ライカM3と同様にファインダーガラス外枠にデコラティブな張り出しがあり、レンズマウント周辺部に深くエプロンが伸びる一体成型のトッププレートを持ちながら、フィルムカウンターは剥き出しのディスク式。これは明らかにオリジナルのライカMPへのオマージュですね。これらのディテールは、ライカの熱心な研究者集団であるLHSAのメンバーがオリジナルのライカMPを特別な存在として捉えていたからこそ再現されたのでしょう。
ライカMP3は、ブラックとシルバー各500台で合計1000台が製造されたそうですが、日本市場に入ってきたのはボディ単体ではなくライカビットMP新造型および特別仕様のズミルックスM f1.4 50mm ASPH.を同梱したスペシャルセットだったとのこと。その驚異の内容は、次回にお伝えする予定です。
■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカMP3(中古AB) 価格440万円
・アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH. LHSA 50周年記念モデル(中古A)価格600万円~
※価格は取材時点での税込価格
■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:水谷浩之
1985年生まれ。憧れのカメラはM3J、M3ブラックペイント。
■写真家:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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とっても軽くて小さい焦点距離70-200mmのGレンズが発売になった。しかも、すごく寄って撮れると、SONYユーザーがザワザワしたのは去年の7月のこと。FE 70-200mm F4 Macro G OSS IIが発売になり、それから、あっちこっちでこのレンズは使いやすいと聞く。
購入した人が口々に言うのは、
「すごく軽い。焦点距離200mmが撮れてこの軽さはすごい。」
「他にも望遠レンズを持っているけれど、コンパクトだから出番が多い。」
「望遠レンズなのに、マクロが撮れるのがすごい。」
ということ。
FE 70-200mm F4 Macro G OSS IIの仕様をまとめてみよう。
■大きさ:最大径82.2mm×長さ149mm
■質量:約794g
■最短撮影距離:0.26m-0.42m
■最大撮影倍率:0.5倍
■フィルター径:72mm
■レンズ構成:13群19枚
■ソニー製テレコンバーターSEL20TCおよびSEL14TCの装着が可能
従来機種FE 70-200mm F4 G OSSも軽くて使いやすいと思っていたけれど、後継機種であるFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIは、さらに小型軽量化した。そして、ハーフマクロ撮影まで出来てしまう。マクロ撮影ではなく、最大撮影倍率が0.5倍なので、ハーフマクロ撮影ということになる。
質量794g(約800g)ってどのくらいかと考えてみる。調べてみると豆腐一丁が約400gだそうなので、豆腐二丁分くらいの重さということだ。いやきっと、400gのお豆腐は大きめのものだと思うけれど、焦点距離200mmのレンズでその軽さは、すごい。長さも149mmと、とても短い。
さらに、最短撮影距離がすごい。ワイド端(焦点距離70mm側)で、26cmまで寄ることが出来る。最短撮影距離と言いうのは、センサーからの長さになる。レンズの長さが14.9cmだ。フードを付けたら、もう、26cmなんて、フードのすぐ先になる。フード先すぐの距離でピントが合うのだ。そして、ハーフマクロが撮影できる。
これは、すごい。
私もぜひとも試したいと思い、旅のお供に持っていくことにした。
行く先は、北海道。
今か今かと待っていた流氷がやって来たというニュースが届いたから。
撮りに行こう。
飛行機に乗り込んで窓の下に広がる景色を眺める。
1月。
美しい雪景色が広がっていた。
リュックからFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIを取り出して撮影してみる。
撮影しながらふと思う。
機内で、焦点距離200mmの望遠レンズを取り出して撮影しようなんて、今まで思ったことがなかった。そんなことは、思考の中に入ってこなかった。できれば小さめのレンズで、だけれども寄れるレンズで、機内食を撮ったり、窓の外の景色を撮ったり。でも、このFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIは、望遠レンズにしてはとても小さい。そして、軽い。だから、「飛行機の機内で鞄から取り出して撮影しよう」という選択肢が生まれるし、ひょいっと取り出してフットワーク軽く撮ることが出来る。選択肢が一つ増えるレンズだなあ、そう思いながら、美しい雪の景色を撮影した。
何度か流氷は撮影したことがある。
ニュースでは流氷が来ていると伝えているけれど、自分の目で見るまで納得できない。
ドキドキしながら北の大地に降り立ち、眺める。
流氷だ。
少し進むと、
見渡す限り、水平線のところまでずっと流氷が広がっていた。
ありがとう。
そう思いながらシャッターを切る。
水色と、白。
色数は少ないけれど、それぞれとても美しく描けるレンズだと、再生ボタンを押しながらうなずく。
流氷の上に、ぽつりぽつりと鳥がいるのが見える。
オジロワシやオオワシ、そして、カモメなど。
遠くの方に、目で見たらぽつんと、例えるならばゴマ粒より少し大きいくらいに見える。
「多分つがいでしょう」と地元の方に教えていただいたオジロワシ。日本では天然記念物に指定されている鳥。
ひゅーうと飛び回るオジロワシやカモメをしっかりと、そして、気持ちよく追随してくれる。鳥や動物を撮るときは、設定をしっかりすれば、本当に簡単に撮れる時代になった。この時使用していたカメラはSONY α7C II。次世代のAIにより被写体認識力が従来のものより格段にアップし、鳥や動物などの追従が素晴らしく、撮影が驚くほど簡単になった。
α7C IIのボディとFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIの組み合わせが爽快。AFが俊敏。
でも実はさきほどお見せした写真、下の写真たちをトリミングしているものである。
焦点距離200mmにクロップ撮影やテレコンバーターを組み合わせても、正直なところ「あとちょっと、あとちょっと望遠して撮りたい」という気持ちが強くあるのは否めない。でも、そんなときは、大きめに撮影しておいて、後でトリミングすることを考えてもいいのかもしれないと思いながらシャッターを切っていた。
筆者はいつも、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSレンズを愛用している。それに、2XテレコンバーターSEL20TCを装着することもある。だから、ボディ内のAPSCサイズクロップ機能を組み合わせて撮影したりすれば、焦点距離400mm×1.5倍(APSCサイズクロップ)×2倍(2XテレコンバーターSEL20TC)=1,200mm相当で撮影していることになる。それに比べると、やはりもう少し望遠で撮りたい気がするが、高画素のカメラでトリミングする方法で撮るというのも一つの手段だろう。
この時は、3300万画素のセンサーを持つα7C IIで撮影していたのであまり拡大してトリミングできなかったけれど、もっと高画素のカメラで撮影してれば、大胆なトリミングも大いに可能だと思われる。
それにしても、794gは軽い。
望遠レンズを抱えてずっと撮影していると、たまに、肩が…腰が…と痛くなるけれど、このレンズ、そんな気持ちに一切ならない。軽いなあ。
望遠側で、流氷をいろいろと撮影した。
どこまでも澄んでいるようなその水の美しさに見惚れながら、シャッターを切る。
透明感が描けるレンズ、そう思った。
空が刻々とピンク色に変わり、キリっとした寒さになってきた。
どこまでも続く流氷が夕暮れ色に染まっていく。
宿泊した日の夜は、少し雪が降った。
次の日、外に出ると、少し積もった雪が美しく輝いていた。
そうだ。
と、雪に近づいていてみる。
いくつか、雪の結晶のようなものが見えた。
リュックからカメラを取り出し、グググっと寄ってみる。
キラリ、と雪の結晶が輝いていた。
フード先すぐそこの距離でピントが合う。
APSCサイズにクロップしているので、1.5倍で撮影しているということになる。
野生の鳥も俊敏に撮れて、雪の結晶もググっと寄って撮れる。
やっぱり、このレンズ、すごい。
ギャップが、すごい。
ShaShaでは、今までいろいろなSONYの望遠レンズについて記事を書いてきた。
今回のレンズFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIと合わせて、参考にしていただけたら嬉しい。
今まで書いてきた記事を比較して、どの望遠レンズを購入するか検討し、実際に購入したという方もいた。嬉しい。
筆者的に、どんな人にどのレンズが合うのか、というおススメを下記してみる。
「とにかく望遠レンズが欲しい。でも、できれば、美しい写真が撮りたい。」という方は、ソニーが誇るGMレンズFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIがおススメ。開放F2.8で描く被写体美を楽しんでほしい。
「野生の鳥や動物を撮りたい。そして、美しい写真が撮りたい。」という方は、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSがおススメ。やはり、焦点距離400mmを撮れるのは魅力的。筆者も愛用中。
「とにかく軽く、そしてリーズナブルに、ダイナミックな望遠の世界を楽しみたい。」という方は、FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSSがおススメ。ソニーレンズ群の中で焦点距離300mmをカバーしながら、この軽さは魅力的。特に、軽さを求める女性に人気のレンズです。
「フットワーク軽く望遠の世界を楽しみたい。マクロの世界も楽しんでみたい。」という方は、今回のレンズソニーFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIがおススメ。他の望遠レンズを持っていて、でももっと気軽に望遠レンズを楽しみたいという方に二本目の望遠レンズとしてもおススメ。筆者はFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを愛用中だけれども、このレンズの小型軽量さ、撮れる範囲の幅広さに強い魅力を感じている。正直、とっても、欲しい。二本目の望遠レンズとして、ものすごく欲しい!
鳥が撮れて、雪の結晶が撮れる、ギャップがすごいFE 70-200mm F4 Macro G OSS II。
流氷の世界をフットワーク軽く撮影することができて、とても楽しかった。
これから季節は春に向けてぐぐっと進むころ。
サクラももうすぐ。
お花を望遠レンズで撮影するのもとても楽しい。
ぜひFE 70-200mm F4 Macro G OSS IIを手に取って、試してほしい。
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
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ShaShaで初めて記事を書かせていただきます。よろしくお願いいたします。沼にどっぷりはまるようなことがないように自制しつつ、昔のカメラとレンズを使って撮影をたのしんでいます。
そりゃライカやコンタックス、ハッセルブラッド、ローライフレックスといった舶来のカッコいいフィルムカメラは憧れですが、そもそも敷居が高い感じは否めない。ってことで、比較的入手しやすい国産のフィルム一眼レフ、これからフィルムカメラを始めたいかたにもおススメできそうな機種をご紹介してみます。今回はニコンのニコマートです。
偉そうにご紹介とか言っていますけど、まあ好きなカメラを自分で探してお気に入りの一台を見つけて撮影を楽しむに尽きるので、実際はどんなカメラが良いとか、悪いとかってないですよね。また、機種選定に関しては僕の独断と偏見でセレクトしていること、加えて僕自身カメラに対する見識はまだまだ乏しく、私感を羅列するにとどまることをお許しください。
まず初めにニコマートについて。って有名なカメラですよね。名前はもちろん、持ってますよーって方も多いのでは。
ニコマートは1965年から1970年代後半までシリーズ化されたニコンのミドルクラス一眼レフ。ニコンFの発売までは主にプロユースを想定した高級機路線の日本光学(現ニコン)でしたが、販売拡大の機会を狙うために普及クラスへの製品展開を進めた中で登場したカメラです。
ニコマート以前にもニコレックスシリーズを投入するなどして低価格帯カメラへの参入を図った同社。しかしながら他社の低価格カメラへなかなか追いつくことは出来ず、その後登場したのが1965年7月発売のニコマートFTおよびFSでした。ネーミングは「ニコン」と「オートマチック」を組み合わせてニコマートとしました。一つ、ネームプレートに“Nikon”を採用していない点は個人的にちょっと意地悪な気がします。「マート系」なんて呼ばれたりしますが、事実ニコマートをぶら下げてると、「なんだニコマートか、やっぱりF一桁じゃないと」なんて多くのカメラ先輩たちからいつも揶揄されたことを鮮明に覚えています。NikonじゃないとNikonではないなんて平気で言われましたから。16.7歳の当時の僕は傷つきましたね。
まあそれはともかく、ニコマートはニコンFシステムのレンズはもちろん、共通のアクセサリー類の使用が可能、TTL測光方式の露出計内蔵という、ニコレックスシリーズとは異なるニコンFの姉妹機という位置付けでのカメラです。FシリーズがNikonブランドの花形フラッグシップ一眼レフとしてまだまだ高値の花だった時代に登場したニコマートは、露出計を標準仕様とし、1/1000までの縦走り金属シャッターを採用(コパルスクエアS)して、フラッグシップにも負けずとも劣らない仕様で登場したわけです。
シリーズはニコマートFTに始まり、1977年発売のニコマートFT3まで7機種が発売されました。プロからも評判はよく、カメラ拡販に大きく貢献したようです。電池がなくてもシャッターが動くフルメカニカル機のニコマートFT、FS、FTN、FT2、FT3、電子シャッターで絞り優先AE搭載のEL、ELWの7機種。FSとFT3の2機種が少し探しにくいですが、それ以外の生産数の多い機種、特にFTNであれば中古市場で比較的見つけやすいと思います。
細かなスペックと変更点を述べると大変なんですが、共通点としてはFS以外の機種はすべて露出計搭載ということ。同時代のフラッグシップのFやF2はフォトミックファインダーを搭載しないと露出計は機能しません。
Fはプロ機だから露出計なんてなくても大丈夫。確かに報道分野ではストロボかフラッシュを使った撮影であれば、露出の相場は決まってきちゃうので必要ないのかもしれません。内蔵露出計不要論とまでは言いませんが、プロ機は露出計なしでもOK、でも中級機種は露出計搭載という不文律ができていて、それに沿った製品展開だったのかもしれません。はじめに中級機で試験的に露出計搭載機を発表して、様子をうかがっていくというマーケティングもあったようです。
そしてこの露出計というのが、あのニッコールレンズ特有の通称「カニの爪」と密接な関係があるのはみなさんご存知の通り。Fマウントは1959年のニコンFで採用されたレンズマウントですが、当初からレンズには「カニの爪」がついています。これ、外光露出計と連動させるための「露出計連動爪たるカニの爪」で、しかもこの「爪」がないと開放測光ができないわけです(1977年のAi方式化まで)。
ニコマートは当初外光式露出計搭載を見込んでいたようですが、時代の流れとしてTTL開放測光の露出計を開発途中で採用決定した経緯があります。そこでニッコールの爪を連動させるピンがマウント周辺部に突出する形になりました。ちなみにニコマートFTは平均測光ですが、ニコマートFTNからは中央部重点測光に変更されていますね。
マウント周囲に見えるピンが目立つのはデザイン的に賛否ありますが、レンズをつけちゃえば不思議なほど目立たなくなります。しかも、ピンを連動させる操作がなんとも機械を触っている感がして楽しかったりします。そしてニコマートFTN以降の機種で行うレンズの開放F値をカメラ側に認識させる動作、通称「ガチャガチャ」がまたいいわけです。ただ絞りリングを往復させるだけなんですけど・・・。今のカメラがいかに不自由なく使えるかを実感できるいい機会ですよね、フィルムカメラって。
ちなみに今回作例用に使用した機材はELとFT3の2機種です。セレクトの理由は特にないんです。AEが使えてシャッタースピードがダイヤル式のELが使いやすいので。FT3はあえてカニ爪のないレンズを使用するのに使いました。
手持ちのボディは露出計含め動作が比較的良好なので、撮影結果は問題なしでした。ポジフィルムとあわせて超久々にカラーネガでも撮影してみました。レンズ交換のたびに連動ピンにあわせてレンズを装着するのが若干面倒だなと思いますが、まあカメラ好きなのでそこはそれほど苦にはならず。
ただシャッター速度が1/1000秒というのが少々ネックだと思う人はいるかもです。多くのフィルムカメラが抱える問題なんですが、特に絞りを開けた撮影が難しくなってしまうから。古い機材を使うときの制約というか、そういうもんだと知って使わなきゃいけないので文句はなしなんですが、とはいいつつ、レンズの個性を知るためのひとつとしては開放での撮影もしてみたいですよね。そして、いろんなニッコールレンズを揃えていって撮り比べ・・・。そうこうしているうちに沼にはまるんでしょうか。
個人的には仕事の撮影はズームばかり、良くてF2.8、F4開放のレンズで撮影しているわけで、大口径にはあまりこだわらず、かつ絞り開放で撮影する機会が極端に少ない僕にとって1/1000秒でも大丈夫です。交換レンズも増えることはないでしょう。
さて、最後にカメラ好きおじさんからアドバイスです。この記事をお読みの読者には釈迦に説法と思いますが、もしかしたらフィルムカメラで撮影してみたいっていうフィルムカメラビギナーの方もいるかもなので。とにかく中古機材のフィルム室だけは確認しておいてください。
特にフィルムを押さえる部分の圧板は一番大切ですね。傷がついていることはまあそれほど多くないですが、傷ついていたらご想像の通りです。これを確認するのは通販だとちょっと難しいんですが、実際カメラを手に取って選ぶ際は要チェックポイントですね。遮光用のウレタン(通称モルト)の劣化はほぼ間違いないと思われますの、きれいに清掃してからフィルムを入れてあげてください。出来ればモルト交換するのが望ましいんでしょうけど・・・。いろいろと確認事項はあるものの、自分にとって最良な機材と出会って、写真を楽しんでいただけたらなーなんて思います。
■写真家:種清豊
1982年大阪生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
2004年より3年半、写真家竹内敏信氏のアシスタントを経て、2007年よりフリーランス。
企業商品撮影のほか、雑誌、Webなどに作品、写真関連記事を掲載している。
国内及び海外の街並みをテーマにしたスナップを撮影中。個展、グループ展等で作品を発表している。
キヤノンEOS学園講師
JCII(日本カメラ財団)フォトクリニック講師
カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部講師
銀座写真会主宰
公益社団法人 日本写真家協会会員
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前回は冬景色についての撮影ポイントをお送りしたのですが、今冬は暖かく春の訪れが早いですね。きっと桜の開花も例年以上に早まるのではないでしょうか?そこで今回は、日本の春の象徴でもある桜の撮影についてのポイントをテーマにお送りいたします。
桜には色んな種類がありますが、代表的なものと言えば「ソメイヨシノ」ですよね。日本各地、あらゆるところにあり、その明るい花色を見ると春の訪れを実感します。色は淡いピンクなのですが、実際には白に近いとも言えます。前回の雪の撮影ポイントでも触れたのですが、白っぽく明るい色にカメラを向けた場合、オート露出(絞り優先オート、シャッター優先オート、プログラムモード)で露出補正が0の補正なしの状態だと全体的に暗く写ってしまう傾向があります。そのため画面全体を桜が占めるような構図では露出をプラス傾向にする必要があります。ミラーレスカメラの場合はファインダーや液晶を見ながら補正を調整。一眼レフタイプの場合は1枚撮影してから画像を確認、露出を判断すると良いでしょう。
ただし桜以外の色が多くを占めるような場合ではプラス補正を控えめ、もしくは補正の必要がない場合もあります。また春先に咲く河津桜やソメイヨシノより遅れて咲く八重桜のように、ピンク色が濃い花に関しても同様でプラス補正が不要な場合もあります。
桜の花が白いといっても逆光状態などで背景が影になっている場合は、プラス補正ではなくマイナス側に補正する必要があります。色による補正が必要なのか?明暗の強弱による補正が必要なのか?シーンごとの露出感覚をつかめるようになるのがベストです。
前述のように桜はピンクと言っても結構白っぽい色をしています。それゆえ色をしっかりと出すのが難しい花だとも言えます。私自身は繊細なありのままの桜色を表現するため、後述の作例で触れる、時間帯による光の色や光の方向を上手く利用して「自然かつ良い色」が出るように心がけていますが、どうしても色を出したい場合、ホワイトバランスの設定画面でマゼンタ方向に色調整したり、撮影後の画像処理によってマゼンタを加えたりすることで桜をよりピンク色に描くことも出来ます。
また各カメラに搭載のピクチャーモード(風景モードやビビッドモードなど)を使うと鮮やかな写真となります。しかしながら、実際にはあり得ないような色に仕上がった写真を見ることも多々ありますので注意が必要です。それぞれの撮影スタイルによって「自然な写真」or「映え写真」を目指すのか?そこは好みもあるので何とも言えませんが、目の前に広がる風景の色をしっかりと目に焼き付け、その姿を描く事が出来るようになるのが写真上達への近道だと考えています。撮り方が良くない写真でも安易に色をプラスしたりコントラストを上げたりすれば良いとの考え方は、例えるなら「濃い味の料理に慣れてしまい、素材の味を損なってしまう」ことにつながり、上達を妨げてしまうこともありますので節度を持って行いましょう。
右の作例は小さな画面で見ると一見、桜のピンク色が濃く色鮮やかに見えますが、しっかり見ると木々の色や芽吹き始めた柔らかな緑までが赤っぽくなっており不自然。やはり自然なのは左の作例だと言えます。色の強調には注意が必要で、あくまでも「隠し味」程度にとどめておくのが良いでしょう。
光の色について簡単に解説すると下記のようになります。
●日の出前や日没後 → 青っぽい光
●日の出直後や日没間際 → オレンジっぽい光
●晴天の日中 → 白い光
●ライトアップ → 照らす光源の色によって光の色が変わる
ホワイトバランスを太陽光や昼光に設定しておけば、その時間帯による光の色を生かした写真が撮れます。この時ホワイトバランスがオートになっていると、光による色をカメラが勝手に変えてしまいますので注意が必要です。ホワイトバランスに関しては過去の記事で詳しく触れていますのでそちらも併せて参考にしてくださいね。
あくまで私の基準なのですが・・・
●上品で艶やか(あでやか・つややか)な色表現を望む時は日の出前や日没後のやや青っぽい光の時間帯
●より鮮やかに桜色を強調したい場合は日の出直後や日没間際のオレンジっぽい光の色の時間帯
●可憐で控えめな桜色を表現したい場合は晴天日中の白い光の色の時間帯
に撮影する事を心がけています。以下の写真を参考に皆さんも撮影する時間帯を考えてみてくださいね。
桜に限ったことではないのですが、やはり光の向きは重要。自然な色合いでしっかりと色を出したい時にはサイド光が基本。より印象的に表現したいと思ったときは逆光を選びます。順光は正しい色表現ができるのですが、どうしても陰影に乏しくなるため立体感や奥行き感に欠けますし、桜の色がより白っぽく表現されてしまう傾向にあります。
桜の見頃時期は案外短いもの。開花した後、平年並みの気温で推移した場合、一週間ほどで満開を迎えます。
気温が高ければ数日で一気に花が開き、満開の期間はそう長く続きません。週末にしか撮影に出られないという方はその時に撮っておかないと翌年まで撮れないなんてことも・・・。 撮影に行った時、上手く撮りたい天候条件になってくれれば良いのですが、なかなか上手くいかないことも多いです。そこで自分が天候条件に合わせた撮り方をする。もしくは天候条件に合うような場所を、撮影地に選ぶことを意識してみましょう。
満開のピークを過ぎても美しい写真が撮れるのは桜ならでは。風にはらはらと舞う桜吹雪や水面に浮かぶ花筏にもトライしてみましょう。
桜の撮影ポイントについてお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?目で見ていると美しい桜も「写真にするとイマイチ」と悩んでいる方も多いと思います。今回の記事を頭の片隅に置いて、今年の桜撮影にのぞんでいただけると嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師
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今回ご紹介するのは、キヤノンのAPS-C用レンズとしては初となる超広角ズームレンズ「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」です。35mm判換算で16-29mm相当の広さで、フルサイズ用RFレンズ「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」とほぼ同じ画角をAPS-C機でも楽しむことができます。広大な風景だけでなく、被写体と距離を取れないような狭い室内での撮影などでも活躍してくれる「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」の魅力をご紹介していきます。
全長は約44.9mm、プラスチックモールド非球面レンズを採用していることで重さは約150gと、ほぼ同じ焦点距離のフルサイズ用RFレンズ「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」と比較するとサイズも重さもほぼ半分で、APS-Cの利点のひとつである携行性の良さにマッチしています。歪曲収差をカメラボディ内補正に任せるという大胆な設計によって、このサイズと軽さを実現しています。
外観はAPS-C用キットレンズラインナップのひとつである「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」とよく似ています。スイッチレスなレンズ収納機構を搭載している点も同じで、ズームリングの回転操作のみでコンパクトにレンズを収納できます。
最短撮影距離はAF使用時、レンズ全域で0.14mmとかなり寄ることができます。また、焦点距離が10mmの時のみ、MFに切り替えれば0.086mとさらに近寄れるので、被写体に寄りつつ広さを生かしたダイナミックな表現も楽しめます。広角レンズはそもそもボケにくいという特徴がありますが、「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」もそこまで明るい開放F値のレンズではないため、ボケ味はそれほど期待しない方が良いかもしれませんが、撮り方を工夫すればそれなりに背景ボケを楽しむことはできます。
お値段は手頃な「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」ですが、逆光時のフレアやゴーストが気になることはほとんどなく、開放F値でもフリンジが目立つこともありませんでした。今回は2420万画素のEOS R10での撮影でしたが、この画素数との相性の良さが四隅の解像感からも伝わってきました。
フルサイズ換算16-29mmの広い焦点距離と最短撮影距離が約14cmまで寄れる点は、引きのない室内の撮影において大きなアドバンテージになります。器などのパースが気になる被写体の時は、テレ端で撮影すれば歪曲収差補正の効果で歪みを感じることはほとんどありません。
4.0段分のレンズ内手ブレ補正機構を搭載しており、ボディ内手ブレ補正機構搭載のカメラと組み合わせることで最大6.0段分の手ブレ補正が可能です。また、動画電子ISを搭載したカメラとの協調制御も心強いです。
三脚NGの屋上から東京駅前を行き交う人や車を動画で手持ち撮影。風の強い中で実質1分半ほどの撮影時間でしたが、ほとんど手ブレせず撮ることができました。クリエイティブフィルター「ジオラマ」の効果で16秒ほどに圧縮されていますが、コミカルな動きが楽しい動画になりました。
超広角レンズというと、風景や星空などの自然風景で出番が多いというイメージがあるかもしれませんが、少し視点を変えると普段見ている日常を現実離れした世界に変身させてくれる面白さがあります。
雪の降った日、R10とRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMを連れて近所をスナップしました。普段の自分の視点よりも目の前の景色をさらに広く捉えてくれるこのレンズで見た世界は、まるで自分ではない誰かの記憶を見ているようで、その現実離れした感覚を表現したくてピクチャースタイルを「モノクロ」にして、もう一段現実感を薄めてみました。
キヤノンのAPS-Cカメラはフルサイズモデルと比較してレンズの焦点距離が1.6倍となるため、これまでのRF-Sレンズのラインナップでは広角側の広さに物足りなさを感じる人もいたかもしれません。今回ご紹介した「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」は35mm判換算16-29mmというワイドな画角を持ったRF-Sレンズで初となる超広角レンズで、ほぼ同じ焦点距離のRFレンズと比ベるとその軽量コンパクトさは大きな魅力です。
すでに発売されている「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」や「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」と組み合わせればより幅広い撮影シーンに対応できます。価格的にリーズナブルなのも、普段超広角に触れる機会がない人も手に取るきっかけになるのではないでしょうか。いつもとは違った視点で世界を見られるこのレンズ、ぜひ一度覗いてみてほしいです。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。雑誌やwebマガジンなどでの撮影・執筆のほか、フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。
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今回もジャンク品のレンズのお話です。今回ピックアップしたのは2つのジャンク品アイテムです。中古市場で多く見られる50mm標準レンズのペンタックス「smc PENTAX 50mm F1.4」と、少し変わり種になりますが非常に安く手に入れられるケンコー「Macro TELEPLUS MC7」です。この2つのアイテムを組み合わせて格安ジャンクレンズを3倍楽しんで撮影してみたいと思います。
今回ジャンク品でピックアップした「smc PENTAX 50mm F1.4」は、ペンタックスのマウントM42マウントからKマウントに変わった時のレンズで、光学的にはタクマーシリーズの設計を踏襲してますが、フィルター径を49mmから52mmに大きくしたため少々重くなってしまったレンズです。この「smc PENTAX 50mm F1.4」は非常に短命で終わったレンズで、発売された翌年には新しく小型化された「SMCペンタックスM」シリーズが発売になっています。
そしてもう一つアイテムは、ケンコーの「Macro TELEPLUS MC7」です。ヘリコイド式マクロ機構がついた2倍のテレコンになります。中古市場では古いテレコンは非常に安い価格で入手する事が可能ですが、この「Macro TELEPLUS MC7」は2倍のテレコンだけではなくヘリコイド機構が使えるのが魅力のポイントです。
「smc PENTAX 50mm F1.4」に「Macro TELEPLUS MC7」を組み合わせる事によって焦点距離100mmF2.8の中望遠レンズ、そして焦点距離100mmの等倍のマクロレンズとしても使えるようになります。
■smc PENTAX 50mm F1.4の基本スペック
焦点距離 | 50mm |
レンズ構成 | 6群7枚 |
開放絞り | 1.4 |
最小絞り | 22 |
フィルター径 | 52mm |
絞り羽根枚数 | 8枚 |
最近接距離 | 0.45m |
マウント | Kマウント |
最大径x長さ | 約63mm x 41.5mm |
発売 | 1975年 |
■ケンコー Macro TELEPLUS MC7の基本スペック
倍率 | 2倍 |
マクロ撮影時 | 1:1(等倍)~1:20(0.05倍) |
レンズ構成 | 5群7枚 |
自動絞り | 連動 |
露出倍数 | 4倍(2絞り分) |
マクロ撮影時 | 4倍~8倍(3絞り分) |
最近接距離 | 0.45m |
マウント | 各種メーカー有 |
最大径x長さ | 約67mm x 約44.5~62mm |
重 量 | 約260g |
今回使用するジャンク品の「smc PENTAX 50mm F1.4」は、外観は綺麗な状態ですがレンズ内部に汚れやカビ、クモリがあるような状態のレンズで、購入価格は2,200円。クリアーな撮影は期待できませんが、味わいのある軟調の写真が撮れると予想しています。
そして「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」は、カビやクモリもほとんど無い状態のキレイな状態のレンズですが、あまり人気が無いせいなのでしょうか、処分品のジャンクコーナーにて2,200円でゲットしたものになります。
今回はこれにマウントアダプター「K&F Concept KF-PKE.P」を組み合わせてみました。
この3アイテムの購入価格を合計しても、10,000円でおつりがくる状態です。果たしてどんな画像が撮れるか楽しみです。
50mm標準の単焦点での撮影、100mmの中望遠での撮影、100mmでのマクロ近接撮影と撮影をしてみました。同じ被写体でも、それぞれ違った表現が格安ジャンク品での組み合わせで簡単にできました。
ジャンク品や中古品は、1点限りの商品です。購入するタイミングを逃すと次に入手するのが難しくなったり同じものを見つけることができなかったりしますが、もっと掘り出し物を見つけることもできるかもしれません。それゆえジャンク品を購入するには、それなりの覚悟も必要な場合もあります。筆者のジャンク品購入の場合は、あくまでも使えなくても仕方がないと割り切って購入する事と、購入金額は低価格のモノと決めています。
お店に並んでいるジャンク品は、定期的に入荷されるため商品はどんどん入れ替わっていきます。お手頃な掘り出し物を見つけるには、定期的にお店を訪れお宝探しをしなければなりません。楽に入手することは難しいですが、自分にとってのお宝が見つかった時はうれしくなります。ジャンクコーナーはそんな場所です。
実際にクモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」で都内スナップ撮影をしてみました。予想通りソフトフォーカス調の、コントラストの弱いニュートラルな描写になりました。この程度であれば、普通に撮影を楽しむ事ができるレベルです。特に曇りの日や雨の日などの情緒あるスナップ撮影に丁度いいレンズではないかと感じます。
電球の枠の部分を見てみるとパープルフリンジの収差が発生しています。輝度差の激しい部分ではこのような症状が多く発生しそうです。
背景の玉ボケは収差による輪郭部分が強く出る感じで、少しバブルボケと呼ばれるようなボケの描写をしています。
クモリのあるジャンクレンズなので、逆光での撮影には弱く盛大にハレーションが発生します。
ここからは、クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」に「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を装着して、焦点距離100mmF2.8で撮影をしてみました。
もともとクモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」をベースにしている事もあるのでしょうが、正直な感想を言えば、予想以上の写りといったところです。昔からテレコンをつけると解像感が大きく劣化すると言われていますが、周辺部の解像感の低下は少し見られますが中心部に関してほとんど問題無い感じです。ベースとなる組み合わせレンズの状態によってはもっとクリアーに写す事ができると思います。
最後に、クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」に「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を装着しヘリコイド機構を繰り出してマクロ撮影をしてみました。ヘリコイドの繰り出しは、1:20~1:1の等倍撮影まで連続的に調整する事ができます。
ちょうどアイスチューリップが咲いていたので、マクロ撮影を楽しんでみました。クモリのあるジャンクレンズ「smc PENTAX 50mm F1.4」のおかげもあって、ソフトフォーカス調のマクロ撮影になり、チューリップを柔らかい表現で撮影することができています。今回の絞り設定はあえてすべて開放状態で撮影をしています。本来であれば少し絞って撮影した方がピント面に関しても撮影がしやすいのですが、メインのレンズの状態がそれほど良いわけではないので絞り開放での撮影になっています。
ヘリコイドの繰り出し量によって、撮影倍率も簡単に変えられるので構図の設定など撮影は比較的しやすいと思います。しかしマニュアルでのピント合わせでヘリコイドの繰り出し設定等レンズ部分を操作する事は多いので、三脚を使ってしっかりとカメラを固定して撮影したほうが良いでしょう。
「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」は、ヘリコイド機構を持った使い勝手の良い2倍テレコンで、標準50mmの単焦点レンズとの組み合わせで、撮影の幅が各段に広がるアイテムです。50mmのオールドレンズを使っている方で、「ケンコー Macro TELEPLUS MC7」を見つけたら是非ゲットしてほしいアイテムの一つです。ちなみに「TELEPLUS MC7」の名前でマクロ機構が無いものもあるので、入手する時には気を付けましょう。
少しクモリのあるジャンクレンズは、柔らかいソフトフォーカスレンズの様な表現をしてくれます。逆光には弱いですが使い方次第では、独特な雰囲気の写真が撮れるかもしれません。
今回は「ジャンクxジャンク」の組み合わせで3倍撮影を楽しめるアイテムのご紹介でした。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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2006年というと、今の大学写真部員の方がようやく生まれた頃だろうか。そんな年に発売された色褪せぬ名機が、今回取り上げるPENTAX K10D(以下K10D)だ。令和の今から見ればかなり古いデジタル一眼レフであるが、当時その眩しいスペックに憧れて何度も家電量販店に足を運び、その度に「画質革命」とシンプルに書かれたパンフレットを持ち帰って眺めていたものだ。
前回の記事で紹介したキヤノンEOS 5D Mark IIIに続き、オールドデジカメ礼賛という形で、今でも十分に通用するK10Dの魅力を紹介していきたい。当然スローな所もあるが、フィルムブームの昨今、一周回ってそういったユーザー層にピッタリな気もするのである。
2006年当時、筆者がメインにしていたキャノンのEOS 10Dをはじめ、ミドルクラスのデジタル一眼レフでは600万画素あたりが主流だった。そんな中、オーバー1000万画素機が遂に来たかという印象を受けたのがこのK10Dである。その衝撃は翌年カメラグランプリに選ばれたことからも察せられるだろう。
ソニー製の23.5×15.7ミリ 1020万画のCCDセンサーを採用、特筆すべきは420万階調という高い分解能を誇る22ビットのA/Dコンバーターである。詳しくは後述するが、それによって得られる非常に階調豊かなデータこそ今でもK10Dが十分通用する点だと思う。
なお作例に当たっては、なるべく本機の色再現を伝えるためにコントラストの微調整にとどめている。
ローパスフィルター上にはゴミが付きにくくするSPコーティングが施され、さらに手ブレ補正機能「SR」(Shake Reduction)機能を使いセンサーを微振動させ付着したゴミをふるい落とすといった配慮もなされている。今でこそセンサーのゴミ除去機能は当たり前になったが、デジタル一眼レフがようやく一般ユーザーにも浸透し始めた時代にこういった細部まで手を抜かないPENTAXはさすがである。
電源をいれるとカタカタとやや大袈裟にダストリムーバル機能の振動が手に伝わってきて、毎度カメラに「頑張れ!」と鼓舞されているような気になる。
ボディ内手ぶれ補正はマニュアルレンズにも適用できるのが有り難い点ではあるが、最新の手ぶれ補正を知っている方には微妙な効きかもしれない。そこら辺は2006年のカメラ、可愛いやつだと思って付き合ってあげよう。
細かい配慮でいえばさらに、防塵・防滴のために72カ所もシーリングが施されている。ハイエンドクラスならいざしらず、SDカードスロットを開けるにもロック機構があり、もはや「やりすぎ」ともいえる熱量が投入されているのは一度手にすればすぐに伝わってくるはずだ。
こんな盛りだくさんの内容で当時実売価格が12万程度だったと記憶する。それでも写真家の卵にはなかなか手が届かない存在であった。
何も説明なしに撮っても、出てきた絵を見たら納得できるのが先述した22ビットのA/Dコンバーターによる広い階調性だろう。
センサーに届いた光というアナログなものをデジタル変換するものであるが、420万階調という高い分解能によって豊かな階調を実現し、単色の空やレンズの持つボケ味をより一層印象深いものにしている。
残念ながら背面モニタの色再現は時代を感じるものなので、ヒストグラムだけ信じて撮影するのがオススメ。こういう言い方もなんだが、撮影時にあまりピンと来なかったものでも後でパソコンで開くと「お、写っているじゃん!」となるので、ある意味お得なフィルム体験のようなものかもしれない。
画質を語るにあたって、やはり写真本来の楽しみ方であるプリントという形に落とし込んで見るべきだ。そこには数値では語れないものがある。EPSONのSC-PX1VLでA3ノビ(イメージサイズ 45cm×30cm)に印刷してみた。
その結果は予想に反していた。ここまで写るのかという期待の遥か上の描写だったのだ。決して目を見張るような解像感があるとかではなく、そこまでカリカリに写っていないのに全体のバランスが非常に良い。曖昧な言い方だが「実に写真的」なのだ。おそらく目で見て受ける印象は、実際の数値上の解像感・階調性を遥かにしのぐものだと思う。
フィルムライクというのが適切かわからないが、そういう優しさがあると言おうか。度々言うように、デジタルの画質は現像ソフトや編集アプリの向上に依存する。そういう意味ではナマモノなのだ。
冒頭の築地市場の写真は2013年に撮影したもので、拙書「築地0景」(ふげん社)に収録されている写真である。掲載したのは当時のデータであるが、やはり今回改めてRAW現像すると明らかにその違いが分かる。
K10Dの画質はプリントしてはじめてその真価が分かると言える。何度も言うが本当に驚いた。もっと大伸ばしにするならPhotoshopのスーパー解像度を用いて4000万画素のデータにすれば余裕すらあるだろう。
付け加えておくと、スーパー解像度はデータの相性があるのだが、筆者がいくつかのカットでテストしたところK10Dはかなり相性がよく、アップスケールしても元データが持っていた良さを損なうことはない。
当時最高感度のISO1600はよほどでない限り使えないレベルであった。今のカメラで言えばISO51200と同等といった感じであろうか。上の写真を見ればちょっと使うのを躊躇うところだ。
しかし前述の通りデジタルはナマモノ、画質は進化する。AdobeのAIによるノイズ除去を施したものを比較してみよう。
どうだろう、筆者としてはこれなら十分使えるレベルになったと感じる。K10Dのノイズは嫌味がないので多少のノイズはかえって写真らしい。ノイズの消しすぎはディテールの損失につながるのでほどほどにするのがポイントだが、まさに生き返ったという感じだ。
画質がよければ他のものは許せる派の筆者であるが、やはり2006年発売ということで古臭さを感じる点もあるのは否めない。メニュー画面や電源を入れてからスタンバイまでややラグがあるし、AFもやや遅く感じる。
飛行機などの動き物を撮るとなればさすがに苦しいものがあるが、今回のようなスナップだとストレスを感じるということはなかった。幸いバッテリーがかなり長持ちするので撮影中は常時電源オンにしておけば良い。
APS-C機としてはピントの山も掴みやすいのでMFレンズの活用もおすすめだ。
ボタンの割当などカスタマイズ性は少ないが、逆にその少なさが良いと感じるところがある。今回の作例ではAモードメインで撮影しているが、絞りの変更・感度の変更すべて前ダイヤルだけで行える。
この潔さがかえって写真と真摯に向き合うことができるように、今回感じた次第だ。
最後にCCD機に対する筆者の所感。CCDとCMOSに特性の違いはあるのは確かだが、デジタルデータはその他様々な要素が複合的に寄与しているのでCCDだから独特の絵があるというのは違うと考えている。
ただ自然なノイズ感はこの時代のデジカメならではといった感じなので、フィルムのテイストが好きな人から、本稿で述べたようにRAWデータから現代的なデータを楽しむ方まで幅広く使える一台だ。
これだからデジタルカメラというものは楽しいのである。
写真系ポッドキャスト『トーキョー フォットキャスト – TOKYO FOTTO CAST』のご紹介
都市風景を撮ること23年、写真家・新納翔(ニイロショウ)が気になることを深く鋭く突っ込まずに探っていく番組です。週二回定期配信。番組の感想はSNS等気軽にいただけると嬉しいです。
https://podcasters.spotify.com/pod/show/sho-niiro
■写真家:新納翔
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングにて写真集を上梓する。2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として活動をしている。日本写真協会(PSJ)会員。
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近年人気の野生動物撮影。超望遠ズーム等、長玉を用いて撮影するのが一般的ですが、年間を通じて撮影していると不意に、近距離で撮影できるシャッターチャンスが訪れることもあったりします。
しかし、カメラボディーに付いているレンズは超望遠・・・
最短撮影距離よりも被写体が近すぎてピントが合わない、若しくは、何とか撮影できたものの超どアップ・・・
そんな苦い経験をされている方も少なくないのではないでしょうか?
今回は、そんな「千載一遇」の場面で、サブ機に装着したり、カメラバックに忍ばせていることにより、何度も「ピンチをチャンス」に変えてくれた、富士フイルムの望遠ズームレンズ「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」をご紹介したいと思います。
私も使用している「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の良さは、大口径の望遠ズームレンズでありながら、長さが僅か175.9mm(フード除く)と非常にコンパクトなことです。メイン機とサブ機2台持ちの場合や、カメラバッグに入れている時など邪魔にならず、内筒部も伸縮せず長さが固定されているので携行性に優れています。
野生動物の撮影は、錯雑地のヤブ漕ぎやフィールドまでの徒歩による長距離の移動、また被写体の動きに合わせた小移動等、機材をコンパクトに纏め、機動力を発揮しなければならない場面がいくつも存在します。
そのような時でも「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」のコンパクトな携行性のお陰で、長時間持ち歩いても苦にならず体力も温存できるので、疲労感で集中力を切らすことなく、決定的な場面でも素早い反射でシャッターが切り出せます。
不意に被写体が現れ、迅速かつ冷静にレンズ交換する際も「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は全長が短くコンパクトなので、最小限の身体の動きでレンズ交換が可能です。
野生動物は、素早く大きな身体の動きに対しては非常に敏感な反応を示すため、「焦らず・慌てず」適切に対処することが極めて重要になってきます。
開放F値2.8の明るさを誇る「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、薄明・薄暮等の低照度で活発に行動する野生動物を撮影するのに最適な望遠ズームレンズです。また、被写体の表情を作るために絞り込んだり、シャッター速度の選択肢が増えたりと、表現者として想い描いたイメージをカタチとしてしっかりと捉えてくれます。
厳しい冬の訪れを告げる初冬の東北地方で、吹雪の寒さにじっと耐えるニホンザル。この日は非常に光が弱く視界も悪いため、撮影しづらい条件でしたが、ニホンザルは寒さをしのぐため、家族で集まり猿ダンゴを近距離で作り始めました。
近距離で低照度という撮影条件が揃ったため「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の出番となりました。
大雪が降り始めたタイミングで塒(ねぐら)の杉林から一斉に里に下りるニホンザル。
絞り込んで平面的な撮影をしても、大雪の影響で背景のボケ具合の変化にはあまり差異が現れないこと、しかも低照度であったことから「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」の明るさの強みを活かして開放で撮影しました。
超望遠レンズの画角では撮影できない、広範囲に広がったニホンザルの群れが冬景色を大移動する圧巻の情景を「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」がまるごと切り取ってくれました。
明るいレンズ「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、シャッター速度が稼げるだけではなく、絞りの調整幅が大きくなることも強みです。
エゾシマリスが突然、目の前の岩穴から姿を現しました。
ファインダーを覗き、背景の山のボケ具合を「何か分からない塊」から「山や火山」と認識でき、自分が理想とするボケ具合になるようにF値を2.8から数字の大きい方に絞り込んで調整します。
絞り値が理想の値まで行くように、状況により必要な分だけ感度も増感します。そうすればその分、適正露出を維持しながら、さらに絞り込んでいくことができます。その際、被写体が動き出す可能性があるので、動いてもしっかり被写体ブレを起こすことなく撮影できる、最低限のシャッター速度にしておく着意も忘れてはいけません。
上記の動作を被写体を認識してから一瞬でできるように、機材操作に習熟していきましょう。
色収差を抑制する「スーパーEDレンズ」や「EDレンズ」6枚を含む、総数23枚ものレンズを惜しみなく使用した「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」はクリアで立体感ある高い描画性能を誇ります。
残雪の斜面を進んでいると、塒の前に佇んでいる換毛期のエゾユキウサギが突然視界に入ってきました。
エゾユキウサギは夜行性のため、日中は写真のように休息しています。普段は、距離が離れていても危険を察知すると素早く逃げていきますが、じっと動かず危険をやり過ごす個体だったため、私も発見が遅れてしまい、結果的に「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」で十分撮影可能な距離になりました。
エゾユキウサギの瞳や繊細な毛並みの質感を「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を通して、リアルに表現することができました。
晩秋の山道で、こちらを窺うニホンカモシカの親子と出会いました。
被写体との間合いをはかり、躊躇なく「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を選択します。美しくシャープに撮れるレンズであることは使う前から既に分かっているので、フィールドでは高い信頼を寄せています。
大雪の中、ニホンザルが柿に群がり食事を始めます。
冬季の撮影では、機材を風雪に晒した状態で撮影のタイミングを待つことも非常に多くなります。そんな過酷な環境でも、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、防塵・防滴に加え-10℃の耐低温構造であるため、レンズのケアに気を使わず撮影に集中することができます。
数日前から、見晴らしの良い場所を塒にしているエゾシカを確認していました。この個体を日の出前の情景で撮影するために選んだレンズが、明るく低照度に強い「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」でした。
機材が泥まみれになる体勢で気配を消し、徐々に間合いを詰めていきます。そんなレンズを酷使する最前線でも「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」は、魂の1カットを誤作動や故障を起こすことなくダイナミックに捉えてくれました。
不意に訪れる近距離のシャッターチャンス!持ってて良かったこの1本と題して、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」が必要となった場面で撮影した野生動物写真をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
超望遠レンズのみで撮影していると単調な写真になってしまい、被写体が近距離に現れた際のシャッターチャンスも逃してしまう原因となってしまいます。
「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」で撮影した写真は被写体が近距離であるにも関わらず、画角が超望遠レンズよりも広いため、生息環境を含めた、ダイナミックで奥行きある写真が撮れるのも魅力の一つです。
近距離に現れた被写体の撮り漏らしを防ぎつつ、今までの単調な写真から脱却し、写真のカットバリエーションを増やすためにも価値のある1本を是非お手に取って頂き、新たな作品づくりに活かして頂ければ幸いです。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師
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2019年7月、ソニー FE 600mm F4 GM OSSはミラーレス用の600mmの超望遠単焦点レンズとしては、世界ではじめて発売されました。
重さは約3,040gと、600mmで開放がF4の単焦点レンズとしては世界最軽量のレンズです。しかし、重量バランスをボディ側に寄せているため、体感としてはもっと軽く感じます。僕がはじめて600mmを使った時代は6キロの重さがあったことを思うと、隔世の感があります。
発売からすでに4年以上経ちますが、全く色あせることのない最先端のレンズという印象です。
僕は「野鳥撮影は観察の仕上げ」と思っていますので、野鳥の行動が読めるようになるまで十分に時間をかけて観察し、その後撮影にかかります。そして撮影は、鳥の出現場所の近くに短めのレンズを装着したカメラを隠して、遠隔操作で行うことが多く、超望遠レンズの使用頻度は、実はそれほど多くありません。
では、どのような時に超望遠レンズを使うかと言うと、ズバリ距離感を強力に圧縮したい時です。200mm~300mmクラスの望遠レンズでもできないほどの強力な圧縮効果、これが600mmの超望遠レンズのいちばんの特徴といえるのではないでしょうか。
以下2点、圧縮効果を活かして撮影した写真をご覧ください。
蛍石レンズを贅沢に3枚使った光学系によって、解像力は凄まじく、ボディのポテンシャルを最大限に引き出してくれます。絞り開放から克明に描写されるので、開放から躊躇なく使うことができ、その結果、ISO感度をあまり上げずに撮影することができます。
近年のレンズは、どのようなレンズでも解像力という点で極めて優秀で、解像力に問題を抱えるレンズはないように感じています。
しかしながら、ボケという点ではレンズによって大きく異なります。ボケが硬いと感じるレンズも中にはありますが、こちらのFE 600mm F4 GM OSSはボケも柔らかでなめらかです。シャープとボケという相反するものを両立しているのは、さすがにG Masterといったところです。
XDリニアモーターを2つ搭載しているので、AFは高速・高精度で、瞬間を逃さずにとらえ続けることができます。また、駆動は静かなので動画撮影時に有り難く、低振動はシャッタースピードを遅くした流し撮りにも有効です。
飛躍的に進化しているボディ側のスピード性能にも余裕をもってついていくことができるので、最新のスピード系のαとのマッチングも良好です。
開放から使える確かな描写性能は、F4という明るさを最大限に活かすことができ、柔らかでなめらかなボケは、さすがにG Masterといった感じです。
発売からそれなりの時間が経ちますが、最先端のレンズとして、この先も十分に使っていくことができます。
プライスはさておき、それ以外は全て文句のつけようのない、究極の単焦点超望遠レンズと言えるのではないでしょうか。
■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『写真は「構図」でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)など。 最新刊は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)。
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OM SYSTEMからマイクロフォーサーズ用超望遠ズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISが2024年3月15日に発売されます。今回はその発売を控えたM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISの魅力や開発への想いをOMデジタルソリューションズ株式会社マーケティング担当の方にインタビューしましたので是非ご覧ください。
― M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISはどのようなレンズですか
このレンズはマイクロフォーサーズの強みを最大限生かすことができる唯一無二の超望遠撮影レンズです。レンズ単体、35mm判換算1200mm相当、2倍テレコン使用時に2400mm相当の超望遠撮影ができることが最大の魅力です。しかも強力な手ぶれ補正が搭載されていますので、上記焦点距離を手持ちで実現できることが大きなポイントです。
レンズ単体Wide 6.0 段/ Tele 5.0段、シンクロIS時Wide 7.0段 / Tele 6.0段の手ぶれ補正効果で超望遠領域での手持ち撮影を可能にします。超望遠撮影の実現で今までにない撮影体験を楽しむことができます。
― OM SYSTEMの望遠レンズラインナップの中でどのような使い分けを想定されていますか
望遠レンズのラインナップが豊富なのも当社の強みです。初めての望遠レンズデビューであれば「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」がおすすめです。非常にコンパクトのサイズながらフルサイズ換算で600mm相当の焦点距離になります。さらに価格的にもお求めやすくなっていますので、お手軽に望遠撮影したい方におすすめです。
続きましてより本格的に超望遠撮影を楽しみたい方には「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」がおすすめです。描写力にも優れ、テレコンバーターにも対応しています。さらにレンズ内手ぶれ補正も内蔵されていますので、野鳥やモータースポーツ、飛行機撮影を本格的に始めたい方にはおすすめです。
次は「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」の単焦点レンズです。解像力が欲しいという方にはおすすめの一本です。当社のレンズラインナップの中で、No.1の解像力を誇ります。
そして、「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO」です。解像力に優れながら、1.25倍のテレコンバーターが内蔵されています。ズームも解像力も譲れないという方におすすめです。
最後に今回発表いたしました、「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS」です。とにかく焦点距離が欲しいという方におすすめです。このように当社は多くの超望遠レンズを揃えていますので、お客様の撮影スタイルに合わせた商品をご提案できます。
― フルサイズのカメラを使って超望遠領域での撮影されている方に向けて、本レンズの魅力やマイクロフォーサーズシステムだから出来ることについて教えてください
マイクロフォーサーズは焦点距離がフルサイズ換算で2倍になるという強力な強みがあります。さらにボディもレンズも小型軽量ですので、機動性に優れながら望遠撮影を楽しむことができます。野鳥を探しながら、撮影を楽しむシーンや自分の好きな構図で撮影を楽しみたい方には非常におすすめです。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISのレンズもフルサイズ換算で1200mmの焦点距離になりますので、圧倒的な超望遠撮影を実現できます。また超望遠撮影が可能なため、トリミングをする必要がなく、オリジナルの画素数で撮影を楽しむことができます。そして野鳥と距離を保って撮影を楽しむことができます。そうすることで野鳥に負担を与えてしまって怖がらせず、野鳥の自然な表情を撮影することができます。
当社の望遠システムはもう一つの楽しみ方があります。それはマクロ撮影です。「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS」の撮影倍率は0.7倍です。さらに1.4倍テレコン装着時は0.98倍、2倍テレコン使用時は1.4倍とマクロレンズ級の撮影を実現いたします。遠くの被写体を撮影できるだけでなく、近くの被写体を大きく撮影する楽しみも実現します。
― 光学性能について教えてください
ズーム全域で高い光学性能を有し、高い解像感とクリアな描写を楽しむことができます。特殊硝材を贅沢に使用した15群25枚のレンズにより、色収差をはじめたとした各収差を徹底的に抑制した高画質を実現しています。
― レンズの操作性はいかがでしょうか
ズームのトルクスイッチが新たに搭載されました。
「S」Smooth:滑らかなズーム操作、直進ズームに適した軽いトルク
「T」Tight:重めのトルクで、任意の焦点距離でズームリングを保持し自重による伸び縮みを防ぎます。
「L」Lock:ズームリングをワイド端で固定。
撮影状況に適した設定があります。特に直進ズームは非常に便利で、150mmから一気に600mmまで持っていくことができます。
被写体にしっかりピントを合わせられるように直進ズームに対応しています。
― 同時にリリースされたOM-1 Mark IIの魅力を教えて頂けますか
新製品OM-1 Mark IIは「OM-1」から飛躍的な進化を遂げ、唯一無二の撮影領域をさらに拡大させています。大きな進化ポイントといたしましては、4点あります。AF精度の向上、AI被写体認識AFに「人物」が追加、さらに世界で初めてOM-1 Mark IIに搭載されたライブGND(グラデーションND)など「どこにでも持ち歩ける」「感じたものが思ったままに撮れる」という価値をお客様にお届けできるカメラになっています。
― 本レンズをOM-1Mark IIに装着して野鳥や飛行機を撮影するとどのような撮影が可能になりますか
まずは手ブレ補正効果8.5段により超望遠撮影を手持ちでお楽しみいただけることです。遠くの野鳥や飛行機を大きく撮影することができます。OM-1 Mark IIはAF性能や手振れ補正がさらに進化していますので、さらに野鳥や飛行機撮影をお楽しみいただけます。
― 焦点距離2400mmで野鳥を手持ちでも狙えたりしますか
はい。シャッター速度にもよりますが、手持ちで撮影をお楽しみいただけます。実際に手持ち2400mmで撮影をしているシーンの動画がありますので、ご覧ください。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISは“もっと大きく撮りたい”に応える超望遠ズームレンズです。今までにない長い焦点距離を活かして、野鳥や動物、昆虫などのネイチャーフィールドでの撮影に威力を発揮します。またスーパーEDレンズやEDレンズといった特殊レンズを贅沢に使用した15群25枚のレンズ構成によって、超望遠レンズで目立ちやすい色収差をはじめとした各収差を徹底的に抑制し、ズーム全域で高い解像感とクリアな描写を実現しています。今よりもっと超望遠撮影を楽しみたい方、ぜひ「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS」をもって撮影に出かけませんか。
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2024年2月23日(金)-2024年3月19日(火) の期間中、新宿 北村写真機店 6F イベントスペースにて写真展『世界に、なにを見よう』を開催いたします。開催を記念して主催者の花澄 氏にインタビューを行いました。
前編では花澄 氏のこれまでの活動にフォーカスを当て、写真家としての活動や前回の写真展開催までの経緯をお聞きしました。後編では本写真展の開催までの道のりや見どころをお聞きしましたので、ぜひご覧ください。
花澄写真展『世界に、なにを見よう』の詳細ページはこちらより
写真展『Scent of a…』が終わり新型コロナウイルスもそれまでと比べて落ち着きを見せ始め、もともと好きだった風景や花を撮るために外に出ての撮影ができるようになった。
「外で撮影が難しかった2年間と解放されてから撮影した写真は共通点が無いかといったらそんなことはないと思っています」
景色や花のエッセンスを掬い取り、写実的でなく昔から好きな印象派の絵画ような1枚にしたいという思いがある。それは箱庭で撮っているセルフポートレートにも共通しているという。
そしてコロナ禍にセルフポートレートを撮りためていた頃は何が撮りたいかが分からなかったものの、撮り続けている中で「好きだ」と感じる芯が通っていた。
「ずっと撮り続けたからこそ”テーマ”のようなものが見えてきたんです。そのとき、以前の写真と今の写真を組み合わせることができると思いました」
組写真での写真展の思いを強くさせたのはライカの銘玉の一つであるタンバール M f2.2/90mm(復刻版)との出会いだという。もともとオールドレンズが好きな花澄 氏だが、レンズの本を読むとタンバールが紹介されていることが多く気になっていた。
生産が終了したこともあり、なかなか見つからなかったが奇跡的に中古のタンバールと出会い「世界を変えられるかもしれないレンズを試す価値はある」と思い購入したそうだ。
- Leica THAMBAR M f2.2/90mm
1935年に製造されたタンバールを復刻したモデルとして2017年に発売。ライカで唯一のソフトフォーカスレンズで、ギリシャ語で「不鮮明な」を意味する「thambo」が名前の由来。ライカスクリューマウントのオリジナルになるが故 木村伊兵衛 氏が愛用してしたことでも知られる。
「タンバールは画角が狭くなる分、自分が見ているものの主題が切り取れます。テイストもライカのレンズで唯一無二の写りで私が好きな雰囲気にぴったり。使ってみると何でも撮れるレンズだと思い凄く仲良くなれました」
タンバールのソフトフォーカスな描写は花澄 氏の絵作りや世界観とも近しく、今回の写真展で展示されている作品でも多く使われている。
タンバールで瀬戸内や海を撮ると夢のように美しく感動したという。その後、紅葉の季節になり、山に行くと紅葉とタンバールの相性の良さに驚いた。そしてそのとき「世界は美しい」と改めて思った。
「紅葉を撮ったときの相性が良かったので、雪も絶対に素敵に撮れると確信を持っていました。山の雪は見たことがありましたが平原の雪は見たことがなく、寒いのが苦手なものの1週間北海道で撮影しました。」
北海道で撮影した写真の撮れ高は非常に良く、北海道から東京へ帰る飛行機に乗る直前に今回の写真展『世界に、なにを見よう』の開催を決意した。
そして開催となった写真展『世界に、なにを見よう』の見どころを花澄 氏に伺った。
本写真展のDMやイメージビジュアルにも採用されており幻想的な描写で撮影した瞬間に「さすがタンバール」と感じた1枚。
釧路湿原に抜ける道から少し外れた場所で撮影した写真。北海道の中でも太平洋側に位置する釧路湿原は比較的雪が少ないようだが撮影日前に多くの雪が降り、手を震わせながら撮影したそうだ。
タンバールで撮影したセルフポートレート。撮影のために新しく用意したランプの影が美しく、自身の背中をキャンバスにしてランプの影を写し撮った。
写真の色味や印象を決める大切なペーパーには、ピクトリコのセミグロスペーパーを使用している。セミグロスペーパーは明暗の階調が広く色乗りも良いため花澄 氏の作品とも非常にマッチ。反射も抑えられているのでスポット光が当たっても非常に見やすい用紙だ。
会場内にはBGMが流れていないが耳を澄ますと上品な風鈴の音がする。その正体は天井につけられたウィンドチャイムだ。会場内の風に合わせて音が鳴るためいつ行っても新鮮な気持ちで楽しめる。
右奥にあるオーガンジーにはサンキャッチャーで拡散された光が投影されており、天使の羽根を思い起こさせる光は夢の中のような優しい空間に仕上げられている。
音と光と風がただそこにふわりと存在しており、ゆっくりした時間が流れる。
今回の写真展も前回と同じく仕事の合間を縫って在廊しており作品について聞かれると、本記事では載せきれなかったそれぞれの作品に込められた想いや撮影時のヒストリーをたくさんお話しされていました。
随所に花澄 氏のこだわりが詰まった本写真展は2024年3月19日(火)までの開催で期間中は写真集『Scent of a…』やポストカードも販売しています。まだご覧になっていない方は期間中にぜひご来場ください。
写真展の詳細ページはこちら
映画『ゴールド・ボーイ』
花澄 氏が出演している映画『ゴールド・ボーイ』が2024年3月8日(金)より全国公開されます。金子修介 監督の作品としては『信虎』『百合の雨音』に続き3度目で、今回は打越遥 役として出演。俳優として出演だけでなく写真家としてもバックステージを撮影されていますので、花澄 氏のInstagram(@textisan)もぜひご覧ください。
埼玉県熊谷市生まれ。
俳優・ナレーターとして、舞台・映画・ドラマ・CM・ラジオ等で幅広く活動。
同時にLeicaとの出逢いから写真家としてもデビュー。
オールドレンズをこよなく愛し、やわらかいタッチと視線で世界を見つめている。
コロナ禍を機にセルフポートレートにも取り組みライフワークとしている。本会場での展示は2度目となる。
ソニーからフルサイズ対応Eマウントレンズ「FE 24-50mm F2.8 G」を、2024年5月17日に発売するとアナウンスがありました。F2.8の標準ズームレンズと言えば、多くのプロ写真家やハイアマチュアの方が愛用する1本ですが、その中望遠域を削ぎ落すことで軽くて小さなF2.8の標準ズームがGレンズの称号で誕生しました。小型軽量ながらも光学設計でのレンズ配置を工夫する事で高い解像性能を有し、高推進力の小さなモーターを活用する事で優れたAF性能を実現しています。今回はその FE 24-50mm F2.8 G の魅力やどういった方にお勧めのレンズなのか、メーカー担当者へのインタビューを交えてご紹介します。
24-50mmの焦点域に開放F値2.8の大口径レンズ。質量約440gと圧倒的な小型・軽量デザインになっていますので、これからカメラをはじめる方でも扱い易く、F値2.8の明るくボケを活かした表現を楽しめます。
小型ボディーのα7C IIやα7シリーズ ベーシックモデルのα7 IVに装着しても非常にコンパクトに持ち歩く事ができます。気軽に持ち歩けるので日常のシャッターチャンスを表現力豊かな映像に残すことができます。
4枚の非球面レンズと2枚のED(特殊低分散)ガラスを効果的に配置することで、色収差などの諸収差を低減し、画面中心から周辺部分まで高い解像性能を実現しています。また11枚羽根の円形絞りや球面収差の最適化などによる、Gレンズならではの美しくやわらかなぼけ描写を得ることができます。
広角側での最短撮影距離は0.19m、最大撮影倍率0.30倍の高い近接撮影能力を発揮します。MF時には0.18mまで寄ることも可能です。
最適化された2基のリニアモーターと高度なレンズ制御により、高速・高精度・高追随なAF性能を実現しています。高度なレンズ制御による精度と圧倒的なスピードで被写体を捉えます。
正確で静粛性の高いAF性能をもつ、コンパクトで軽量なF2.8大口径標準ズームは、動画撮影に最適です。重心移動が少ないため、ジンバルやドローンでの撮影も快適に行えます。また、αシリーズボディの手ブレ補正「アクティブモード」と組み合わせることで、歩きながらの手持ち撮影でも安定した動画を撮影できます。そして、本レンズはαシリーズボディの「ブリージング補正機能」にも対応しています。
- F2.8の標準ズームレンズを開発した理由を教えてください
標準ズームレンズを求めているお客様へ、より望遠を求める方はFE 24-105mm F4 G OSSを、より広角を求める方はFE 20-70mm F4 Gを提案してきました。そして今回はより明るく小型軽量のズームレンズを求める方に向けてFE 24-50mm F2.8 Gを開発しました。これまでよりも幅広い方にF2.8の明るさやボケを活かした表現を楽しんで頂きたいと考えています。
歩きながら自撮りでの動画撮影される方であれば、アクティブモードを使っても背景を広く写せるようにFE 20-70mm F4 Gがオススメの方もいれば、気軽に持ち運べるサイズや美しいボケを活かした表現を望まれる方にはFE 24-50mm F2.8 Gをオススメ出来ればと思います。ラインナップを広げることで用途に最適なレンズを選んで頂けると思います。
- このレンズではどのくらいの解像性能を望めますか
画質の部分では初代のFE 24-70mm F2.8 GMに迫るところまでの解像性能とコントラストを実現しています。MTF曲線を見て頂いても殆ど同じようになっているのが見てとれると思います。初代のGマスターに匹敵する高画質性能を持っていますので、コストパフォーマンス的にも非常に優れていると感じて頂けるかと思います。
・FE 24-70mm F2.8 GMのMTF曲線はこちら
・FE 24-50mm F2.8 GのMTF曲線はこちら
- そうなると大三元の標準ズームレンズが売れなくなることはないですか
それはないと思います。確かに初代のGマスターに匹敵する高画質性能を持っていますが、その後継レンズのFE 24-70mm F2.8 GM IIになると、より圧倒的な高画質性能となっていますので画質面で大きな差があります。加えて大三元の標準ズームは50-70mmの中望遠側の焦点域に対応していますし、AF性能、操作性など全てにおいて、Gマスターの称号を持った最高峰の標準ズームレンズになっており明確に棲み分けされています。
今回のFE 24-50mm F2.8 GはF値2.8の表現力や高い解像性能、操作性を持っていますが、小型軽量化してF2.8の明るい標準ズームレンズを楽しみたい方にお届け出来ればと考えています。
- どんな方にオススメのレンズですか
写真も動画も初心者の方からハイアマチュアの方まで幅広く使って頂けるレンズになっています。初心者の方には標準ズームレンズが最初の1本として選ばれてきましたが、FE 24-50mm F2.8 GもF値2.8を気軽に楽しめる標準ズームレンズとして選択肢の1つになると考えています。最初に買ったカメラで撮った写真で美しいボケが見てとれると、これがミラーレスカメラで撮った写真なんだと感動して頂けるのではないかと思います。
またGレンズの称号を持つレンズですので高い描写性能を持っています。先ほども話しましたが、解像性能ですと初代のFE 24-70mm F2.8 GMに匹敵する性能を持っていますので、小型軽量の機動性を重視されるハイアマチュアの方にもオススメです。そして近接撮影性能にも優れ、AF時に広角端では0.19mまで被写体に寄れたり、動画撮影時などにも優れた撮影性能を発揮したりしますので初心者に限らず多くの方に使って頂きたいと思っています。
- おススメの撮影ジャンルはありますか
24mmの広角では風景やスナップも撮れますし、50mmでは目で見た画角に近いかたちでポートレートも楽しめます。軽くて小さいので気軽に外に持ち出して撮ることも出来ますので旅行にも最適の1本です。そして被写体に寄れるレンズでもありますので、花やテーブルフォトでも便利に使えます。標準ズームレンズの中でもよく使われる画角を抑えていますので、様々な場面で重宝するレンズになっていると思います。
- どのカメラに装着するのに適していますか
α7C IIに装着頂くと非常にコンパクトな撮影システムになりますし、α7 IVや先述のα7C IIなど最初のフルサイズカメラとして選ばれるカメラにぴったりなレンズになると思います。ただ実はα9 IIIの最高約120コマ/秒の高速連写にも対応するトラッキング性能も持っていますので、もっと上位クラスのカメラを使っている方にも十分にご使用頂けるレンズになっています。
- レンズラインナップについても聞いてもいいですか
FE 24-50mm F2.8 Gの登場でフルサイズのミラーレスカメラ専用レンズは53本となり、幅広いレンズを取り揃えています。大三元レンズは2巡目に入り性能を進化させ、今回のような標準ズームレンズも様々な撮影を楽しめるように拡充を進めています。また先日発売したFE 300mm F2.8 GM OSSはミラーレス専用レンズでソニーが初めてこのクラスのレンズを出したりと、お客様のニーズに応えるべくレンズ開発を進めています。
ソニー純正レンズはボディー側の性能を最大限に引き出す事が出来るのと、将来を見据えた設計になっていますので購入後も安心して使って頂けるレンズになっています。
FE 24-50mm F2.8はいかがでしたでしょうか。従来大三元でないと味わうことが出来なかった標準ズームレンズでのF値2.8の撮影体験がとても身近になり、1本目のレンズとしても選ぶ事が出来るようになった事はとても画期的であると感じました。小型軽量化を実現する為に中望遠域の50-70mmは削り落とされているものの、APS-Cモードを使えば75mm迄カバーできますので、使い方によってはF2.8通しの24-75mmのレンズのように扱う事もでそうですし、使い勝手が良く非常にコストパフォーマンスに優れたレンズだと思います。
当社指定商品を買取り査定額より20%UPで買取り実施中です。詳しくはこちらからご覧ください。
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2024/3/16(土)に開催されるソニープロカメラマンセミナーでは、桃井一至さんが登壇して本記事でもレビューしているα7RシリーズとGMレンズの魅力を紹介する予定です。本記事をご覧頂き、更に深い理解を求められている方は奮ってご参加ください。セミナーの詳細は文末に記載しています。
フルサイズのソニーαシリーズは、高画素、超高感度、高速連写などの逸材揃い。もちろん一朝一夕で現在があるわけでなく、元々ミラーレス一眼は、小型センサーから端を発して、一眼レフよりも小型軽量にしやすいことや、静止画だけでなく、動画にも向いた構造だった事から一気に注目を浴びた。フルサイズ αシリーズの魅力を知るために先ずは少しこのあたりの歴史を紹介したい。
ソニー初のミラーレス一眼は2010年に登場したNEX-5/NEX-3で、現在のα6700などと同じくAPS-Cセンサーを搭載したものだった。当時、世界最小、最軽量のNEX-5はレンズマウントがボディ本体よりも大きなデザインなども目を引き、「画質がいいけど、大きく重い」というレンズ交換式カメラの概念を覆すコンセプトで人気を博した。一方、他社ではより小さなセンサーを搭載したモデルも登場するなど、ミラーレス一眼の方向性が混沌としていく中、2013年にセンセーショナルに登場したのが、大型のフルサイズセンサーを搭載したソニー α7/α7Rだ。
当時すでに一眼カメラの主軸はフィルムからデジタルに移り変わっていたが、フィルム主流で写真を楽しんだ人たちにAPS-Cセンサーサイズは、慣れ親しんだレンズ焦点距離と画角の違いから違和感がある事や、大型センサーのほうがぼけ量も大きく、画質も優位という事もあって、カメラ・写真ファン待望の製品として歓迎された。同時に従来、NEXと呼ばれていた呼称もαに一本化。先行するAPS-C機とフルサイズ機のマウントを統一した事もあって互換性が高く、早々に受け入れられた。
フルサイズαは約2430万画素のα7と約3640万画素のα7Rから始まったわけだが、この時点ですでにスタンダードと高画素の2台体制でラインナップ構築しているのが興味深い。その後、超高感度撮影を得意とするα7S。ブラックアウトフリーで高速連写可能なα9、総合性能を高めたα1が登場。フルサイズα登場から丸10年を過ぎて、早いものではα7RⅤのように五代目まで進化を重ねて成長してきている。合わせて並行するように小型・軽量化されフラットトップのα7cシリーズや、同じEマウントを採用した動画向けのVLOGCAMやプロフェッショナルカムコーダーなど、進化と拡充をすすめて現在に至っている。
現在、ラインナップのメインストリームであるセンターファインダータイプの製品は、フラッグシップモデルのα1を筆頭に、グローバルシャッター搭載の高速モデルα9 III。個性豊かなα7シリーズには、高画素モデルのα7R V、超高感度モデルのα7S III、そしてバランスの良いスタンダードモデルα7 IVが用意されている。
名称に付く数字が小さなほど上位モデルというのが基本だが、αシリーズの面白いのは各機の個性というか、得意分野で成り立っているのが特徴なことだ。すべてが唯一無二で、絶妙なバランスで構成されている。
カメラの引き立たて役として重要なのがレンズ群だ。焦点距離にして超広角12mmから超望遠の600mmまで、現在コンバーターレンズも含め70本以上のソニー純正Eマウントレンズが揃っている。また焦点距離や開放F値だけでなく、GマスターやGレンズ、そしてカールツァイスなどグレードやブランドでも区分けされ、店頭やサイトで眺めるだけでも目移りするほど。
特に近年は、画質はもとより動画需要の高まりに合わせて、絞りリングの追加や静音化。滑らかに絞りを動かす技術、ズーム中に被写体の大きさが変わりにくい構造が求められるなど、ものづくりの難易度がアップ。さらに言えば、レンズとカメラボディの協調で効果を高める手ぶれ補正やオートフォーカスと超高速連写の連携など、レンズに求められるハードルは高まるばかりだ。
ソニーEマウントは発表当初より技術公開された経緯から、レンズ専業メーカーの製品も豊富だが、超高速連写時の撮影コマ数に制約があるなど、一部、非純正レンズでは機能に差がある製品も存在する。レンズ選びは楽しいが、自分の使い方と照らし合わせて、正しいチョイスをしたい。
それでは、主だったレンズについて作例写真を交えて紹介していこう。
スポーツや動物など近づけない対象を撮るのに欠かせないのが望遠レンズだ。AIを活用したα7R Vのリアルタイム認識AFの力を借りれば、カワセミをフレーム内に入れて、あとは構図に集中。約944万ドットの美しい有機ELファインダー越しに眺めるカワセミの美しさはひときわだ。さらに大きく撮りたいときには、APS-Cモードに設定すれば、約1.5倍の望遠にもできる。このとき画素数は最大で約2600万画素になるが、もともとゆとりある画素数のため心配無用だ。
動画に適したパワーズーム付きの広角ズームレンズだが、コンパクトで静止画撮影にもぴったり。約353グラムと小型ペットボトル程度の軽さを活かして、旅へ持って出るにも最適だ。最新設計で描写性能が高いのはもちろん、広角シーンでも適度なボケで奥行き感も楽しめる。ワイドレンズに慣れている、スマホからのステップアップユーザーにもおすすめしたい一本だ。
コンクリートジャングルと揶揄される都会の隙間から空を見上げれば、遠近感の強調されたビル群がファインダーいっぱいに広がった。被写界深度を深くするため、絞り設定はF8を選択。PCモニターで意地悪く、画面の隅々まで拡大して眺めるが、壁面のタイルや雨シミまで確認できる。スタンダードモデルだが、α7 IVの解像感も心地よく、しっかりレンズ性能を引き出してくれた。
オープンカーのコックピットを標準ズームで狙う。手前のサイドウィンドウをぼかすために絞り値は開放のF4に設定。撮影対象が黒基調であるため、高級感や存在感を損なわないよう、やや多めの-2.0の露出補正を加えている。仕上がりはダッシュボードやウッドステアリングなどの味わいある風合いが、狙い通りに再現されて大満足。メッキの質感も記憶のままの印象だ。24-105ミリは程よい広角から望遠まで楽しめるので、αレンズの中でも人気の高い製品だ。
静かな森の中で祈る人。ふだんはズームレンズでも、特別な場所では単焦点レンズで気持ちを引き締めて撮影するのも一案。バリアングル液晶モニターを使い、水面ギリギリまでカメラ位置を下げて構図を決めているが、画角を身体が覚えていれば、モニターを凝視しなくても撮れるのが単焦点レンズの良さだ。その場の空気までも感じるような、精緻な描写に惚れ惚れする。大口径レンズにも関わらず、445グラムと軽く、ボディとのバランスも良好。緑の中でリラックスした気分のまま、ここ一番の贅沢な一本として手にするのもいい。
背後から視線を感じて振り向くと一頭のヒツジ。突然、動物と目が合うと気持ちが動揺して焦りがちだが、α7R Vのリアルタイム認識AFなら、ファインダーを覗くとほぼ同時に捕捉。幸い動かずにこちらをじっと見ていてくれた。顔の半分が隠れているにも関わらず、AIの恩恵で認識精度が高く、すべてカメラ任せ。ヒツジと対峙しながら、静かにシャッターボタンを押した。確認すると、鼻先はぼけても目にしっかりピントが合焦。カメラに合わせて、撮影方法もアップデートする必要性を再認識した。
高品位な製品に与えられるGマスターの中でも、定番レンズとして人気なのが本製品だ。第2世代に入り、大口径レンズのウィークポイントを徹底的に洗い出し、画質向上のほか、近接撮影能力のアップ。動画対応、従来比、約200グラムの軽量化や小型化を図るなど大幅に進化した。これなら普段持ち歩くのも軽快で、描写も極上。質量的なボリュームはFE 24-105mm F4 G OSSとさほど変わらず、大口径の明るさとGマスターの描写力を取るか、ズーム比で利便性を取るか、悩ましい選択だ。
Eマウントレンズには50ミリが5本あって目移りするが、昔から定番はF1.4。しかし、そのF1.4も本レンズとカールツァイスの2本あって、甲乙付け難い。背反するボケとシャープさの両立と、動画対応を含めた最新設計なら本製品がオススメ。わずかな収差を極上テイストとして楽しむならカールツァイスだろうか。顔瞳優先AF(犬・猫)にまかせて、ローポジションから、お散歩中の犬を狙う。自然なボケと誇張のない画角は、どこか気持ちも落ち着く。
夕陽の絶景スポットだが、陽が沈むと同時に周囲が静かになった。ここからはグラデーションが美しくなる時間帯。波打ち際まで進んで、波紋と空のバランスを考えながら構図を決めていく。広角の焦点距離「1ミリ」は望遠と違い、絵柄に大きく影響する。20ミリでは遠近感が強まり、標準ズームがカバーする24ミリとは印象が大きく変わる。超広角域から程よい望遠までカバーしたい欲張りなユーザーにはちょうどよく、コンパクトで動画対応も施されているので、静止画、動画の両ユーザーにおすすめしたい。
2024年3月16日(土)講師に桃井一至さんをお招きして、SONYフルサイズミラーレスカメラ”α”の魅力を紹介するセミナーを開催します。その中で今回の記事で紹介したα7Rシリーズを使用したスナップ撮影ポイントや、おすすめのGMレンズの紹介、各レンズの特徴やそのシーン別使用例などをお話いただきます。スナップを普段から撮影されている方や、これから撮影を始めてみたいと考えている方にオススメのセミナーです。当日は講師への質問もできますのでこの機会に奮ってご参加ください。
開催場所はカメラのキタムラ全国のカメラのキタムラ21店舗でライブ中継にて開催いたしますので、最寄りの店舗でご参加ください。
【概要と申込み】
■開催日時:2024年3月16日(土)【第一部】11:00~12:00【第二部】14:30~15:30
■費用:無料
■場所:ライブ中継先店舗
■定員、申込み予約:下記店舗一覧より希望店舗へお問い合わせください。
■申込み期限:2024年3月15日(金)各店舗営業時間内
【ライブ中継先店舗】
募集状況やお申込み、ご質問などは各希望店舗へお電話ください。
■北海道:札幌/羊ケ丘通り店
■青森県:弘前/高田店
■秋田県:横手/横手店
■宮城県:仙台/泉店
■山形県:山形/馬見ヶ崎店
■福島県:いわき/平店
■東京都:東京/日本橋店
■千葉県:千葉/おゆみ野店
■埼玉県:大井/ふじみ野店
■茨城県:つくば/つくば店
■静岡県:浜松/柳通り店
■富山県:富山/掛尾店
■京都府:京都/四条西院店
■大阪府:豊中/豊中店
■香川県:高松/高松南店
■岡山県:岡山/下中野店
■山口県:宇部/南浜町店
■福岡県:福岡/ミーナ天神店
■福岡県:太宰府/太宰府店
■佐賀県:佐賀/南部バイパス店
■熊本県:熊本/東バイパス中央店
【桃井一至さんプロフィール】
京都府生まれ。神奈川県在住。各種雑誌やカタログの撮影をはじめ、カメラ専門誌などで執筆。またテレビ出演、webレポートなど活動ジャンルは多岐に渡り、丁寧なテクニック解説にも定評がある。
・写真展:ヴォーリズ建築写真展「VORIES TIME」
・出版物:ソニー α7R & α7 FANBOOK (インプレス社)
・公益社団法人 日本写真家協会会員 正会員
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桜の撮影って本当に難しい! 幼い頃から誰もが見ている、知っている花だからみなさんそれぞれにイメージが出来上がっちゃっているんです。そこをぶち破るくらいのインパクトのある写真じゃないと「あぁ~桜ねぇ~」って普通に見えてしまいますよね。
そんな桜の花の撮影でいつも気をつけていることは、枝や日陰の暗い部分をできるだけ入れないようにすること。なぜかというと桜の色は白やピンクなどの明るい色が多いので、その中に枝や日陰の暗い部分が黒く入ってしまうとすごく目立ってしまうからです。
桜の花は小さくて可愛いイメージですが、ここの枝が邪魔、そばにある花が邪魔だと切り取りながら画面を整理していくと、どんどん花が大きくなってしまいます。このように画面いっぱいに複数の花を入れるとひとつひとつの花が主題になってしまい、どれが主題なのかわからないごちゃごちゃした印象になりがちです。また、平面ではなく奥行きのある花付きをするので、手前にピントを合わせるとそれ以降にある花が中途半端にぼけてしまいますし、痛んでいるところも大きくなって目立つので汚く見えてしまいます。
花を大きくフレーミングするほど寄ることになりますし、撮影位置を変えずにズーミングして画面を整理すると、焦点距離が長くなるので被写界深度が浅くなり、こんなふうに中途半端にぼけた花が多くなってしまいます。
画面の1/4くらいの範囲にひとかたまりを収めるイメージで小さく撮ってみましょう。そうすると複数の花がひとつの被写体として見えてきますし、中途半端なボケがあっても花全体を小さくフレーミングするのであまり気になりません。小さく撮ると花数を見せながら画面をすっきりさせることができます。
小さく撮れる被写体選びの一番のポイントは、このように枝先の花を探すこと。枝の途中に咲いている花だと画面の中を枝が貫通してしまいますし、黒い枝がたくさん写ってしまうので汚く見えてしまいます。また、花付きや形の良さだけでなく周囲に他の被写体がない花を選ばないと、小さくフレーミングしたときにすっきり見せることができません。正直言うと、この被写体選びが一番難しいんです。だってそんな都合の良い被写体はなかなかないからです。
たくさん咲いているところで被写体を探す方が選択枠は広がりそうですが、それも思い込みです。花の密度が濃いほど余計なものが入りやすいので、切り取らないと画面の整理ができないってことになるんですね。ポイントは花数(枝)の少ないところで被写体を探し、たくさん咲いている雰囲気は背景で作ります。このように画面の左右どちらに配置しても他の被写体が入らない花を探してみましょう。
また、手前の被写体ばかり見ているのも同じような写真を量産する原因なので、どんどん奥、もしくは上の方に咲いている花に目を向けていきましょう。遠くに咲いている横並びの花のまわりに他の花や枝がなければ、小さくフレーミングしてもその花だけにしかピントが合わなくなります。奥の花は手前の花を前ボケとして生かすことができるので、ちょっとアングルや位置を変えるだけでたくさんのバリエーションを撮ることができます。
奥の花に目を向けると、この花の横並びに他の花や枝がありませんね。欲をいえばこのように枝が伸びて丈があると、前ボケを入れるときにアングルをコントロールできる幅が広がるのでよりベストです。目安としては100mmのレンズなら1mくらい、200mmなら2mくらいのところを探してみましょう。
ほら、余計なものが周囲になければ切り取る必要もなくなるので、小さくフレーミングしてもこの花だけが自然と浮かび上がってきてすっきりするのです。
少ししゃがんで、手前の花の隙間からこの花が見えるアングルを探せば前ボケをたくさん入れることができるので、花を大きく写さなくてもたくさん咲いている雰囲気を出すことができます。
さらに数センチアングルを下げてもっと前ボケを入れたら、色の印象の強い作品に仕上げることだってできるんです。こんなふうに小さくフレーミングできる被写体が探せるようになると、被写体以外の空間が多くなるので、前ボケや背景のボケを変えることで同じ被写体でも印象の違う作品を作り上げることができるようになります。
たくさんの花にピントを合わせた方が、たくさん咲いている雰囲気が出ると思って枝に対して真横からレンズを向けると枝が入りますが、桜の花は白やピンクなどの明るい色ばかりなので、その中に枝の黒が入ってくると目立つ上に汚く見えてしまうのです。
画面の中を桜の色一色で埋め尽くしたいなら、枝に沿うようにレンズを向けてみましょう。このときの自分の目線より低い枝を探すのがポイントです。高い枝では沿うようにレンズを向けることができないからです。
このように枝に対して横からではたくさんの花にピントを合わせることができますが、枝も必ず入ってきてしまいます。この枝を消したいなら枝に沿うようにレンズを向けましょう。
低い枝先の花なら枝に沿うようにレンズを向けられます。横からよりもこっちの方がキレイに見えませんか?
垂れ桜なら枝の真下から真上に向かってレンズを向けてみましょう。枝に沿うようにって意味がわかってもらえるかな?
どのような桜でも枝先の花にピントを合わせれば、その向こう側にある枝は花で隠すことができるので、画面全体を明るい色だけでまとめやすくなります。
私は桜の柔らかな雰囲気と薄いピンクの色が好みなので、日陰や曇り・雨のような柔らかい光が当たっている桜が一番好きです。だからといって桜を撮るのに最適な光は曇りや雨なんて決めつけないでくださいね。
どんな光の状況で写しても構いませんが、色を出すなら明暗差のない日陰や曇り・雨のような光の方が最適ですし、透過光を生かして輝きを出すなら逆光、青空と絡めたいなら順光と、撮りたいイメージに合わせて光を選べるようになることが大切です。
同じ花ですが、日陰と木漏れ日のような光が当たっている逆光ではこんなふうに変わってきます。日陰は明暗差がないので色がちゃんと出ていて柔らかい雰囲気に仕上がっていますし、逆光は花びらに光が透けて輝きを感じますがそのぶん影が強くでています。
どっちが正解なのか? ではなく、どんな風に桜を写したいのかによって光を選べるようになりましょう。
順光の光が当たっている桜は一番キレイに見えますし、快晴の青空が背景にあったらついついレンズを向けたくなってしまいます。でも、アップで撮影するほど花びらは反射して色が出なかったり、影の部分は見た目以上に黒く写って汚く見えてしまいます。影を目立たなくするためにも花を小さめにフレーミングすることを意識しましょう。
標準露出だと青空は濃くなりますが、影の部分も黒く目立ってしまうのでキレイに見せたいなら少し明るめの露出がオススメです。こう書くと「どのくらい補正したらいいのか?」って気になると思いますが、あえて言いません。だって+1EV補正って書いたらそれしか補正しないんですもの。このあたりの補正値は好みで変わってきますから、いくつか試して好みの明るさを見つけてください。そうそう、花は白飛びするところが出てきますよ。でも全体をキレイに見せたいなら気にしなくていいです。
順光や逆光で撮っちゃいけないと否定しているわけではありませんよ。太陽の光がある写真だってキレイです。でも日陰や曇りや雨の柔らかい光の中で撮影する方が色も出せるし影も出ないので、私のイメージするふんわりした桜のイメージが作りやすいんです。
薄曇りでちょっと光の当たっている桜です。枝が入らず全て明るい色のみになったので、極端にプラス補正してみました。えぇ、白飛びしてますよ。いいんです、自分好みのイメージが形になるなら。
曇天の空の下では、グレーな空が真っ白になるまで極端なプラス補正をします。それが好みだからです。木の幹を背にした方向から手前の花を前ボケに置いて枝をフレーミングしています。手前の花と奥の花の距離は1mくらいです。
日陰に咲いていた桜です。枝に沿うようにレンズを向けて、手前の花のほんのちょっとの隙間から見える花にピントを合わせています。わさわさ咲いているところだったのでこのような前ボケを作ることができました。
垂れ桜の雰囲気は垂れている枝ですね。その雰囲気を出すなら、手前の枝越しに向こう側の垂れているものにピントを合わせてみましょう。離れて小さくなるだけでなく、手前の枝が前ボケになるのでたくさん咲いている雰囲気を出すこともできます。このとき、枝先を切ってしまうとごちゃごちゃした印象になりやすいので、枝先を入れるだけでなく少し空間を作るとすっきりとした印象に仕上がります。
たくさんの枝を小さくフレーミングするのはなかなか難しいので、最初はこのように1本から始め、徐々に本数を増やしながら遠くの被写体を探していくようにしましょう。
クロスしている枝が少ない方がキレイに見えますが、クロスしていないところは正直ありません。だからできるだけ小さくフレーミングして目立たなくするんです。
今までと違う写真を撮りたいと思うなら、今までと違う被写体や光の使い方をできるようになりましょう。上手に撮れる被写体を探そうとしても、それがどんな状況の被写体なのかが理解できていないと見つけることができません。まずは記事を参考に撮影し、うまくいかない場合は原因がなんなのかを探っていきましょう。周囲に余計なものが入ったり中途半端なボケが入るなら、まだまだ花の密度の濃いところで被写体を探しているってことです。背景がぼけないなら被写体と背景の距離が近いからです。撮影した画像を確認しながら気に入らないところを改善していくことを繰り返して、徐々に自分のものにしていきましょう。
■写真家:並木隆
1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。心に響く花をテーマに、各種雑誌誌面で作品を発表。公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会、日本自然科学写真協会会員。
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今回紹介するのは富士フイルムのX-H1です。発売日は2018年3月で、いまでは後継機のX-H2(高画素タイプ)とX-H2S(速射タイプ)の2種類がある、確固たる地位を築いているフラッグシップカメラの元祖です。富士フイルムさんのXシリーズにはこの他にも様々なバリエーションがありますが、このX-H1はXシリーズ初のボディー内手ブレ補正機能が入ったカメラでした。補正量も最大5.5段といまでも十分通用する仕様です(カメラのファームウエアVer.2.0以上では、ボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正の協調制御を実現しています)。
もう一つ印象的だったのは、動画に最適な新フィルムシミュレーション「ETERNA(エテルナ)」が初めて搭載されたことです。X-H1の特徴はこのフィルムシミュレーションに代表されるように動画撮影への対応でしょう。その他のXシリーズと違って、ボディー上面に大きめのサブモニターがあるのも少し違っています。背面の液晶モニターも3方向チルトでカメラが横位置だけでなく縦位置でも液晶モニターをチルトさせることができます。
私が富士フイルムさんとのご縁をいただいたのは実は師匠がらみでした。プロフィールなどで書くことはないですが、これでもちょっと有名な方のアシスタントを4年ほどしていました。そのアシスタント時代にお世話になっていた富士フイルムの方に声をかけていただいたのがきっかけで、X-E3というカメラを使い始めて「次にX-H1を触らせていただきながら本格的な撮影ができるかも」そんなことを思ったのを覚えています。
師匠が好きだった桜をETERNAで撮影しました。トーンが優しくなかなか相性が良いと感じました。
師匠は撮らなかったモノクロの桜。師匠は基本的には風景をカラーで撮影するイメージが強い人でしたが、昔はモノクロでドキュメンタリーを撮っていたので、モノクロのことも教えてもらいました。
桜はいつもワクワクする被写体です。師匠の元にいたときも桜の取材は宝探しのような感じでした。そんなことを思い出しながら都内の桜を撮るときもX-H1は活躍してくれました。師匠が大好きだったVelviaをあえて外しているのはへそ曲がりなところです。
このカメラで一番気に入ったのはシャッターボタンでした。フェザータッチで切れるシャッターボタンの感覚が私にはあっていました。はじめのうちはあまりにも繊細なので、シャッターボタンの半押しと全押しの違いをつかむのに苦労しましたが、慣れれば、指の腹にかける力具合だけでシャッターボタンの半押しと全押しを分けることができます。それまで使っていたX-E3はしっかりシャッターを押す、という感覚がありました。
このカメラを使うようになったもう一つのポイントはXF90mmF2 R LM WRとの相性です。この組み合わせは、レンズの重さとボディーの重さやハンドリングのバランスが良く手に馴染みます。XF90mmF2 R LM WRはそこまで大きなレンズではないですが、その描写はとても繊細でお気に入りのレンズです。
山の中腹で見つけた蜘蛛の巣にもやの水滴がついていました。カメラとレンズのバランスが良いので微妙なアングルが探しやすいのもポイントです。カメラ内RAW現像で色みをコントロールして仕上げています。
使い始めると旅気分で出掛けるときのお供になっていることが多かったように思います。旅といってもちょっとした山登りや渓流に日帰りか一泊程度です。トップや上の蜘蛛の巣の写真も御岳山に登ったときのものです。このときは10月の雨のあとで少しもやがでるような気象条件でしたが、防塵・防滴・耐体温(-10℃)仕様のカメラなので安心して撮影を続けていました。
木々の間をもやがゆったり流れるように動いていました。あっという間になくなってしまう条件なので三脚撮影より手持ち撮影の機動力を活かす方があっていました(カメラ内RAW現像仕上げ)。
新緑の鳩ノ巣渓谷に出かけたときの写真です。せっかくの渓谷はこのレンズの画角ではそれほど面白く撮れなかった記憶があります。それでもこの緑の色の美しさに出会えたので満足でした。このカメラとレンズの組み合わせはそんな緑の美しさを繊細に表現してくれます。
あまり欲張らないのが私の基本的な撮影スタイルですが、こんな雲が程よく迎えてくれることがあります。絞り優先で出来るだけ絞りを開け気味にして使うことが多いシステムですが、さすがに雲の撮影では絞りも少し絞り込むことになります。シャッターはメカシャッターと電子シャッターをシームレスで使う設定にしています。
御岳山に登るときはいつも同じ登山道を使います。慣れている登山道を使うと安心して撮影ができます。鳩ノ巣渓谷は足場が危ないところがあるのでいつも以上にゆっくり歩くようにしています。そんな感じで三脚は持って行かないというのも基本です。どちらもいつも同じコースで楽しんでいますが、季節や気象条件で出会いがあります。このカメラを使っているときはいつも以上に出会いに恵まれるように思います。
晩秋の箱根で見つけた光です。三脚を使わないもう一つの理由はこの光を追いかけているからです。特に森の中の木漏れ日は一瞬で変わってしまうので、三脚を構えるより手持ちの方が一番良い条件を追いかけやすいと考えています。
先の方で待ってくれていたように大きな木々に囲まれた若い木が輝いていました。そこに近づくより離れたところからからこの場所の雰囲気と一緒にまとめたいと考えて、少し後ろに下がって撮影しました。
この日は水量が少なくちょっと残念に感じましたが、しぶきの感じをだすために高速シャッターを使っています。こんな暗い条件でも画質を気にせず高速シャッターが使えるときはデジタルカメラの進化の恩恵を感じます。
箱根は初めてだったので気になる方へ自由に歩いたのを覚えています。そんなときに意識しているのは光です。基本的には光に向かって歩くようなコースを選ぶようにしていますが、そんな光に導かれながら歩いていると出会いも多くなります。
光を捉えるときに大切にしているのは、光の次の動き予測しながら先回りすることです。X-H1は手ブレ補正機能やフェザータッチのシャッターボタン、しっかりとしたグリップがあり、とても安定して構えることができます。そして、その安定感のわりには小型・軽量なのでこのカメラを持って長時間動いても疲れづらい印象があります。
このところモノクロ撮影が見直されている?というよりモノクロ撮影の機能が充実したミラーレスカメラが増えてきたように感じています。富士フイルムさんのフィルムシミュレーションにはそんなモノクロに適したACROSがあります。旅に出かけたときにモノクロにしていると初めての場所でもちょっと懐かしく感じる、そんな出会いがあります。そんな感覚を大事にしたいので旅にレンズをフルセットで持っていくという野暮なことはせずに、大体単焦点レンズ1本だけにしています。そのレンズで撮れることに専念すると新たなアングルに出会うことがあります。それが実は懐かしく感じる風景になっていたりします。
初めて電車で訪れた諏訪でした。まずは初めて降りた駅を1枚。どこから撮れば雰囲気がでるか考えながら歩くのも楽しい時間でした。
諏訪といえば諏訪湖。というあまりにもステレオタイプすぎる動きですが、5月の暖かい陽気に誘われて歩いていました。背景のアルプスの雰囲気も程よく収まるのがこのレンズの画角の良さです。
黒城とも呼ばれる国宝の松本城の内部です。中まで黒ではないですが、露出をかなりアンダーにして小さな窓から差し込む光を捉えるイメージにすると内部も黒い感じになります。
水が豊富な松本のイメージを捉えたいと感じながら狙った1枚です。水面の反射の美しさは豊富な水の美しさに繋がっています。
軽井沢での1枚です。賑やかな軽井沢ではなくしっとりした軽井沢。この日はそんなテーマで巡りました。
雲場池での1枚です。対岸で楽しそうにされている姿に思わずレンズが向きました。女性の顔が正面になっているのが気になりますが、別のカットの後ろ姿よりこちらの方が美しい立ち姿だったので、このカットを選びました。
見たままの美しさを捉える写真もあれば、自分のイメージを作る写真もあると思います。そんなイメージを作りやすいのもモノクロの利点です。そして、初めての風景に感じた懐かしさのような表現にもモノクロはあっています。そんな写真は1枚よりまとめた方が良いと考えています。今回紹介したモノクロの旅やカラーの風景は「Keita’s Book」という毎月作っていたフォトブックにまとめていました。
富士フイルムさんのXマウントシリーズには豊富な交換レンズがあります。それでも機会があれば、ZEISSのTouitシリーズを使ってください。このシリーズは超広角と標準と中望遠マクロの3本の単焦点レンズだけですが、その特徴は繊細さと深みのある描写です。
▼Touit 2.8/50M
マクロレンズとしてより、中望遠レンズとして使うことが多いレンズです。街の中で気になるものを切りとるのに便利で、自然なボケ味の万能選手です。
▼Touit 2.8/12
このレンズの画角の広さが活きると思って、東所沢にできた商業施設を見に出かけました。雲が多く光の弱い条件でしたが質感をしっかり再現してくれました。
▼Touit 1.8/32
大口径レンズというよりちょっと明るい標準レンズという感覚で使える大きさと重さのレンズです。夜の闇の深さの再現もよく、光の当たっている場所の程よい切れ味も良い雰囲気です。これはレンズの描写性能だけでなくX-H1の絵作りの良さもあります。
ちょっと語弊があるかもしれませんが、Touitシリーズは静止画がメインのレンズシリーズです。確かにミラーレスカメラでは動画もシームレスで撮れるのが魅力で、このX-H1もその動画撮影に対するアプローチを強めたカメラでした。それでも静止画を撮っていて安心するカメラです。そんなところもTouitシリーズと一緒に使ってもらいたいポイントです。
富士フイルムさんの絵作りはフィルムで培われた膨大な研究成果がそのバックボーンにあると聞いたことがあります。そのカラーバランスの良さから師匠に禁じられた風景を撮り、一時期はこのシステムで本格的に風景撮影を始めようか。そんなことを考えるほど良くできたカメラでした。それでも使っているうちに結局はモノクロがメインになっていました。そのモノクロでも繊細な線と暗部の深みなどの魅力は満載です。
本文で紹介したフォトブック「Keita’s Book」
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」というフィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。
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※本ページの更新タイミングによって表示価格はキタムラECサイト(https://shop.kitamura.jp/)と異なる場合があります。その場合はキタムラECサイトの表示価格が正となりますのでご了承ください。
]]>皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。いろいろなライカをお薦めしてもらっていますが、飽きるという感覚が一切ないのがライカのすごいところ。今日はどんなライカにお目にかかれるのか楽しみです。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの中明昌弘さん。プロのフォトグラファーだった経歴を生かした実用的な観点とヴィンテージサロン的な趣味性が両立したセレクトが持ち味の中明昌弘さんがお見立てしてくれたのは、ライカM6でした。
「どうぞお手に取ってみてください」とカウンター越しに差し出されたライカM6。このカメラ、持っていたことがありました。でも諸般の事情により手放しました。それはこのカメラが嫌いになったからではなく、好きだったけれど経済的な理由でやむなくという感じでした。思い返せば当時勤めていた会社のクリエイティブ部の部長から1990年代の前半に譲り受けたのです。いや、今は自分のカメラ遍歴を吐露する時間じゃないですね。
そもそも、ここで僕が手にしているライカM6は21世紀の製品で2023年製のもの。要するに新品なのです。ボディに装着してあるレンズだって往年の大口径広角レンズ、球面仕様のズミルックス35mm F1.4ですけれどこれも復刻生産されたもの。だから両方ともピッカピカで誰もフィルムを通していないカメラ独特のヴァイブレーションを放っております。
さて、ここでライカM6というカメラの出自を振り返ってみましょう。オリジナルのライカM6が登場したのは1984年。もうこの年号だけでエモいです。だってアップルコンピュータ社がIBMに対抗して初代のMacを発売した年ですから。それでカメラの世界はどんなことが起きていたかといえば、その翌年に本格的なオートフォーカス機能を搭載したミノルタアルファ7000が大ヒット商品となる直前ですね。ニコンからはフィルム旗艦機F3をチタン外装化したF3/Tが出ています。
要するに35ミリフィルムを使うカメラの主流は完全に一眼レフがメインストリームだった時代で、自動露出は当たり前という世の中に投入されたのがフルマニュアル機械式のライカM6でした。その最大の特長は、ライカM5ではアナログメーターだった内蔵露出計を、LEDの点灯で示すようになったことでした。
あらためて復刻されたライカM6を見てみましょう。この写真のブラックとクローム、どちらか一方が復刻新品で、もう一方が驚くほどキレイな状態で保存されていたオリジナルのライカM6です。どちらもレンズマウント上方にある赤いバッジに筆記体で記された屋号が、現行のライカでは“Leica”であることに対して1984年当時の表記のまま“Leitz”なのでオリジナルと復刻の区別がつきません。
降参したくなる気持ちはわかりますが、もう少し辛抱強く左右のボディの違いを見出そうとすると、ありました! ストラップのリングが当たりそうな位置に、トッププレート側面を保護することを目的としたプラスチック製のバンパーが右のカメラにはありますが左のカメラには見当たりません。正解は右のクロームのボディが1980年代製のオリジナルで、左のブラックのボディが新製品の復刻版。これは完璧なリバースエンジニアリングであると表彰状を差し上げたいほどの出来栄えです。
はい、正解がわかったところでトッププレートの刻印を見てみましょう。オリジナルのクロームボディにはERNST LEITZ WETZLAR GMBHとあり、右の新品復刻版の表記はERNST LEITZ WATZLAR GERMANYです。オリジナルのM6にあるGMBHとはドイツ語で有限会社を示す略号で、戦前のバルナック型ライカにも記されているお馴染みのものですね。現在ライカカメラ社はAG(アクチェン・ゲゼルシャフト=株式会社)になっているのでGMBHと刻印するのも変なので、代わりにGERMANYとしてあるようです。
この1ラインだけ社名がゴシック系フォントで刻印されているライカM6は初期生産のモデルに限り、社屋がSOLMSに移転した段階で刻印は無くなることから、古いライカM6の中でも“WETZLAR刻印”と呼ばれています。そのモデルを復刻しているのも心憎い演出ですね。
ライカM6はフルマニュアルの機械式フィルムカメラではありますが、露出計を内蔵していることもあり実用機として古くから写真を撮る目的のライカとして非常に人気がありました。復刻されたライカM6もその実用性は受け継がれています。現行のライカMシステムのフィルム機はライカMPとライカM-Aですが、いずれもライカM2やM3の時代をトリビュートした外装部品が採用されています。すなわちフィルム巻き上げレバーは無垢の金属製で、フィルム巻き戻しはノブ式です。
これに対してライカM6は、ライカM4以降のモデルで採用されたプラスチックの指当てがついたフィルム巻き上げレバーとクランク式の巻き戻しなので指あたりがやわらかく、巻き戻しも迅速にストレスなく行えます。露出計はライカMPをベースにした3点式のLEDなので、オリジナルの2点式よりも楽に操作できるのもポイントです。
では、復刻版のライカM6に合わせるといい感じになると思うレンズは何でしょう?とお薦めレンズを尋ねると、装着してくれたのはシルバーリムの広角レンズ、ズミルックス35mm F1.4の復刻モデルでした。ブラックボディと組み合わせるとクローム仕上げのレンズが映えます。「ライカM6が登場した1980年代の半ばであれば、明るい35mmレンズといえばこのモデルでした。外観はライカM6が登場するより前の時代のもので復刻されていますが、光学的な内容としては同じです」
そうなんです。球面ズミルックス35mm F1.4は古い設計なので何という写りだ!という強烈な個性を放つ描写で好き嫌いがはっきり分かれるレンズですが、僕は大好物です。「それに、この明るさでこのコンパクトさというのも魅力です」と力説する中明昌弘さんの意見に賛成1票です。ちなみにこのレンズ、同梱されている専用フードの仕上げにも惚れ惚れします。
現行のフィルム機として2022年に市場投入された復刻版のライカM6。新品の露出計付きフィルムM型ライカは、MPとM6という選択肢が用意されたことになります。どちらにしようと悩んでいるお客さんが来たらどうしますか?という問いかけに、中明昌弘さんは少し困った様子でした。
「難しいですねぇ。正直、見た目で選んでくださいという感じです。とにかくカット数を多く撮るのでしたらフィルムを少しでも早く巻き戻せるというのと、ショット数が多いほど巻き上げレバーの指あたりの部分も痛く感じるかもしれません。それが少し緩和されるのでそういう方にはM6の方がお薦めです。あとはブラックといってもM6の方が表面の強度があるので傷などを気にせずにハードな使い方ができるという差があると思います」
やはり1980年代でも2024年の現在でも、ライカM6は写真を撮るための道具として愛されていく存在ということなのだと思います。
■ヴィンテージサロン コンシェルジュ:中明昌弘
1988年生まれ。愛用のライカはM7 ブラッククローム
■執筆者:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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3月1日、名古屋を代表する商業エリアのひとつであるサカエチカに「カメラのキタムラ」がオープン。10時の開店と同時に大勢のお客様が詰めかけました。サカエチカ店はキタムラの「エリア旗艦店」であり、中部エリアにおける中心的な店舗となります。
最大の注目ポイントは、なんと言っても中古カメラとレンズの圧倒的な品揃え。そのラインナップは幅広く、1000万円を超える高価なM型ライカのヴィンテージモデルから数千円のジャンクカメラまで、老若男女の幅広いカメラファンを魅了することは間違いありません。
いまフィルム・ブームの後押しもあって、中古カメラとレンズが若者を中心に人気を集めています。デジタルだけでなく、フィルムカメラも充実するサカエチカ店は、話題になりそうです。
また、店舗デザインで目を見張るのは、約22メートルという間口の広さ。その開放的な空間が印象的なのですが、温かみを感じさせる木製什器にぎっしりと並ぶカメラやレンズが醸し出す光景は、なかなかお目にかかることができません。
店舗に近づいていくと、「おやっ?」と思わず声を上げそうになります。店舗の左右2カ所にあるエントランスの真ん中に、大きなディスプレイが視界に飛び込んできます。100台のカメラが行儀正しく整列して、ディスプレイ上にぽっかりと浮いているように見えます。さらに驚くべきことに、これらはすべて本物の歴史的なカメラなのです。さらに、ひとつひとつのカメラ全てにわかりやすい説明が付けられており、つい足を止めて読み込んでしまいそう。
もうひとつ、サカエチカ店で忘れてはならないカメラがあります。それが、ドイツの名ブランドであるライカ。現在の世界的なライカ人気はとどまるところを知りませんが、その品揃えはレアなヴィンテージ・ライカから最新モデルまでとにかく幅広い。とくに、高価なレアピースを含む中古のライカは130点の在庫を誇ります。
店長の芥川直輝さんに特にお薦めのヴィンテージ・ライカを選んでいただきました。
「ライカM2のブラックペイントですね。生産台数1851台のうちシリアルナンバーが948601~949100に該当するファーストロット。とても希少なライカです」とのことで、ほかにも選りすぐりの逸品が高揚感を高めてくれます。
もちろん、中古だけがウリの店ではありません。カメラメーカー各社の最新モデルは当然のごとく豊富な品揃え。店に足を踏み入れて右側の壁面の棚に並ぶのは、すべて新品のカメラとレンズです。各社の人気モデルが所狭しと並ぶさまは見ているだけで飽きが来ません。
中古カメラとレンズが3000点と聞くだけで、そのボリュームに圧倒されます。しかし、その楽しさは店を訪れないと実感できないかもしれません。というのも、サカエチカ店のインテリア空間は従来の「カメラのキタムラ」とは趣が異なり、シンプルながら木製什器の高級感も相まって、晴れやかな気分でショッピングができること。これは、今までになかった体験です。キタムラの旗艦店「新宿 北村写真機店」にも通底するデザイン性を感じます。
サステナビリティの浸透もあって、リユースの価値観が見直されていることも人気のバックグランドにあるのでしょうが、中古カメラ・レンズの人気は高まるばかりです。サカエチカ店を訪れることは、リユースカルチャーの新たな体験ができることを意味します。
また、写真上の「コンタックスT2」など人気フィルムカメラも充実。高級コンパクトカメラの代表的な存在ともいえる同モデルは芸能人にも愛用者が多く、近年ちょっとしたブームになっています。サカエチカ店では、コンタックスT2以外のコンパクト・フィルムカメラも揃っており、まさに必見です。
そして、非常に力が入っているのが、ジャンクカメラ。完全には動作しないもモデルや、錆やカビの付着があるカメラを”ジャンク”と称しますが、実際には撮影に影響の少ない個体も多いといわれています。修理を施していないため交換などはできませんが、宝探しのような楽しみがあります。
それと、これまた最近人気が高まっているフィルム。20代前後の世代から「エモい写真が撮れる」として、再ブームになった感がありますが、サカエチカ店では、フィルムを大々的にフィーチャーしています。富士フイルム、コダック、イルフォードなど有名メーカーはもとより、日本ブランドである「MARIX」の充実ぶりが目を見張ります。MARIXは色とりどりのパッケージも見た目に楽しく、これからフィルムを試してみたい人、また始めてみたい人には、お薦めのフィルムです。
最後にご紹介するのが、韓国発の人気フォトブースである「Photomatic」。地元ソウルでは、若い世代から絶大な支持を得ており、日本でもブレイク必至のセルフフォトサービス。名古屋をはじめとする中部エリアでもファンが急増する予感がします。
このように、従来の「カメラのキタムラ」店舗とは異なるコンセプトでオープンしたサカエチカ店。もちろん、現像・プリント、証明写真も扱っています。さらに新たなサービス「Photomatic」を常設するなど、写真カルチャーの発信地であり、ほかでは体験できない「フォトライフ・ストア」といえる存在なのです。
カメラのキタムラ 名古屋/サカエチカ店
愛知県名古屋市中区栄3-4-6先 サカエチカ
電話番号: 052-228-1251
営業時間 10時00分〜20時00分
休業日 サカエチカに準ずる
動画撮影をしたい方におすすめなソニーの「VLOGCAM」シリーズ。その中でもレンズ交換式で多様な表現を可能にしたのがこのZV-E10。優れたオートフォーカスと高性能な内蔵マイク、強力な電子式手ブレ補正によって快適なVlog撮影を可能とします。
「Xシリーズ」第五世代の「X-Trans CMOS 5 HR」センサーを搭載し高画質、高性能APS-Cサイズミラーレス。5軸・最大7.0段のボディ内手ブレ補正機能や、ファインダー倍率0.8倍/369万ドットの高倍率EVFを搭載しつつ、従来機より小型/軽量化した557gのコンパクトボディを実現。
小さくて軽いカメラがいいけど、撮影の性能は妥協したくないという人におすすめなAPS-Cサイズミラーレス。最高約23コマ/秒の高速連写や、EOS R3のAF技術を継承する人物・動物・乗り物の被写体検出を備え、動きものも快適に撮影できます。
EOS RシリーズのスタンダードモデルであるEOS R6がモデルチェンジし「Mark II」へと進化。細部の使い勝手を向上させるとともに、最高約40コマ/秒の連写や鉄道・飛行機・馬も検出可能になったAFによって、さらに動体撮影に強くなりました。
EOS Rシリーズのエントリーモデルとして、初めてミラーレスカメラを手にする人におすすめなEOS R50。上位機種譲りのAF性能を持ち、エントリー機種とは思えないほど高性能な被写体認検出&追尾を実現しています。
フラッグシップ機であるZ 9の性能はそのままに、ボディの小型軽量化を果たしたフルサイズミラーレス。静止画・動画撮影の両方で隙のない優れた性能を、より機動力高く持ち出すことができます。
世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスとして登場したα7Cの後継機。コンパクトなボディに最新機能を詰め込み、見た目以上の頼もしい性能を実現しています。フルサイズ機を常に持ち歩きたい、性能も妥協したくないというユーザーにおすすめです。
ニコンFM2にインスパイアされたヘリテージデザインが特徴的なフルサイズ機。フィルムカメラライクなお洒落な見た目が所有欲を満たすとともに、Z 9やZ 8譲りの性能によってどんな被写体も逃さず撮影できます。
チルト式モニターに回帰しスチール撮影重視となった高性能APS-Cサイズミラーレス。4020万画素センサーを搭載し高画質な写真撮影を楽しめるとともに、3つのダイヤルを活用した操作性も特徴的なカメラです。
ソニーのフルサイズミラーレスで最もスタンダードな機種と言えばこのカメラ。高精度なリアルタイムトラッキングで被写体を追い続け、静止画/動画ともに撮りたい瞬間を逃しません。
※本ページの更新タイミングによって表示価格はキタムラECサイト(https://shop.kitamura.jp/)と異なる場合があります。その場合はキタムラECサイトの表示価格が正となりますのでご了承ください。
]]>花に限らず、写真を撮るうえで最も重要なのが「光」です。花と言えば「逆光」で撮るものというイメージがありますね。逆光で見る花は、花びらに光が透けて輝いて見えるのでとてもキレイです。では背景はどうでしょう? 肉眼で見る背景よりも暗く写っていませんか?
そこで背景を見た目に近付けるために露出補正をプラス側に補正していくと、今度は花が真っ白に飛んでしまいます。
逆光で輝く花を基準に露出を決めたら背景が真っ暗に、背景を基準に露出を決めたら花が真っ白に。あちらを立てればこちらが立たずになってしまうのは、いったいなぜでしょう?
まず、写真は見た目通りには写らないんです!
えっ! っと思うかもしれませんが、明暗でいうと肉眼の半分くらいしか再現できないんです。
下の手書き感満載のイラストをご覧ください。肉眼で見える明るいところから暗いところまでをこの幅だとすると、写真で再現できる範囲はこのくらい(手書きなのですごく大雑把です。こんな狭いわけないとかツッコミは受け付けません)なんですよ。だから白飛びや黒つぶれがあるんです。
晴れた日のように光の当たるところ(日向)と当たらないところ(日陰)の明暗差が大きければ大きいほど、日向を基準に露出を決めたら日陰は見た目よりも暗く写り、日陰を基準に露出を決めたら日向は明るく飛んでしまうんです。
じゃあ光が均等に当たる順光なら大丈夫じゃないの? と思うかもしれませんが、順光では花の凹凸があると必ず太陽の反対側に影ができます。その影が見た目よりも暗く濃く写るので汚く見えてしまうんです。
その影を明るく見せようと露出補正をプラス側に補正していくと、光の当たっているところは逆光と同じように白く飛んでいってしまいます。見た目にキレイに見えるから、写真でもキレイに写せるはず! という先入観を取り払うことがポイントです。
見た目通りに見せたいならどういう光の状態を選べばいいかというと、日陰や曇り、雨など明暗差がないところです。
でもそんなところは薄暗いから写真でも暗く写っちゃうじゃないっ! と思って今まで避けていたのではないでしょうか?
しかし写真は露出補正という明るさを調節できる機能がありますから、日陰や曇り、雨など薄暗く見えていても、仮に暗く写ったとしても明るく写るようにプラス側に露出補正すればなんの問題もありません。
明暗差のないところであれば花に凹凸があったとしても影がでることはなく、逆光のように背景が真っ暗になることもなく、被写体も背景もちゃんと色を出すことができるのです。
でもひとつ注意したいのが色味。日陰や曇り、雨などの条件では明暗差がないかわりにやや青味がかった色味になっています。それを補正するのがホワイトバランスです。
最近のデジタルカメラは画面の中の色も判断しながらホワイトバランスを調整するので、オートでも良好な結果がでる機種もあります。でも、オートではフレーミングを変えると色味も変わるという欠点があるので、オート・曇り・日陰の3つは撮影しておき、後でどれが一番好みの色に仕上がるかを選べるようにしておきましょう。
また、あえて青味を残して雰囲気を出した方がいい場合もあります。こういうときはどんな設定にしたらいいのか? という答えを探るのではなく、どんな条件のときにどの設定が一番自分の好みかを探っていきましょう。それをいろいろなところで繰り返していくと、設定に迷うことはなくなってきますよ。
どのホワイトバランスが正しいのか、ではなく、どのホワイトバランスが好みの仕上がりになるのかで選べばいいのですよ。見た目の色なんて撮影した本人しかわからないんですから(笑)。
日陰で撮影したアガパンサス。形の複雑な花ほど光が当たると影が出て汚く見えてしまうことが多いので、明暗差の少ない光の条件で撮影すると色も形もしっかり出すことができます。
曇りの日は影が目立たないので被写体に影ができないだけでなく、背景にも影の黒い部分が入りにくく、色を出しやすいメリットがあります。
こう書くと日陰や曇り、雨じゃないと花は撮ってはいけない! と受け取る人が多いんです。あくまで明暗差のないところだと影が目立たなくなるのでキレイに撮れますよ、というだけ。逆光で撮っちゃいけないなんてひと言も言っていませんからね。
逆光では背景が暗くなりやすいですが、それは影になっている部分も入りやすいからです。その影の部分と光の透けている部分の明暗差が大きいから見た目通りに写らないだけなので、光の透けている部分と背景が同じ明るさなら明暗差が少ないのでちゃんと色を出すことができます。
逆光で撮影していますが、背景にも同じように逆光で光が当たっているので色がしっかり出ています。被写体と背景に明暗差がなければ逆光でも撮っていいんです。被写体と背景の光の当たっている部分を把握することが大切なのですよ。
またまたこう書くと逆光では色を出さなきゃいけないと受け取る人がいるのであえて書きます。明暗差があるのが逆光だから、このように影の部分を多くフレーミングしてマイナス補正すると、光の透けている部分だけが浮かび上がってきます。こういうときマイナス補正はどのくらい? って聞きたくなりますよね? だから露出補正がなかなか覚えられないんですよ。マイナス1~3段くらいまで変えて撮ってみて自分好みの露出を探していきましょう。
逆光で撮ってもいいんですから、順光で撮ってもいいんです。でも、順光では花びらの反射する面が多くなるので反射によって色が出にくく、色を出そうとすると暗めの露出にしなければならなくなります。また、花の形によっては花のところどころや茎などが黒くなりやすいので、アップでは影の黒い部分が汚く見えがちです。
色を出そうとすると暗めの露出になるので、背景もくすんできちゃうことがあります。このような大きさの花写真に順光が向かないのは、反射と影になっている部分の明暗差が激しいからなんですね。
じゃあどんなときに順光で撮るかというと、青空を背景に入れたいときです。逆光では空を入れても太陽に近い空が入るので白くなりがちだからです。また、花を大きく写すと前述したように影が目立ってしまうので、このように花を小さくたくさんフレーミングするのがポイントです。これは上の写真の菜の花からカメラを上に振ったところにある菜の花なので光線状態は全く一緒なんですが、全然印象違いますよね? 花を小さくすると陰も目立ちにくくなるからキレイに見えるんです。
もうひとつはこのように風景っぽく撮りたいときですね。望遠レンズでも広角レンズでもポイントは同じです。空を入れるときに比べて手前が多く入るので、広角レンズを使うときは自分の影が画面の下に入りやすいので注意しましょう。
ちょっと特殊な順光の使い方として、真っ赤な花を影と一緒に撮ったりもします。赤は露出を暗くするとどんどん濃くなっていきますし、影も同系色の暗い色なので極端にマイナス補正して黒く潰してしまいます。するとこのように真っ赤な色だけが印象深い作品に仕上がります。順光で光が当たっているからこそできる表現ですね。
撮影のとき、写真の再現できる範囲と肉眼で見える範囲の違いをまずは意識しましょう。晴れている日の順光や逆光で撮影したとき、撮影後の画像を背面液晶などで確認しながら肉眼との見え方の違いを把握すると、だんだんわかってきます。これが把握できるようになったときが「光の使い方」をマスターしたときです。
順光、逆光、日陰、曇り、雨といった光の条件で、花撮影にもっとも適した光なんてものは存在しません。どんな表現をしたいのかで変わってくるのです。
■写真家:並木隆
1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。心に響く花をテーマに、各種雑誌誌面で作品を発表。公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会、日本自然科学写真協会会員。
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皆様こんにちは!国分です。
今回は低粒子フィルムのKodak Ektar100を使って撮り下ろしました!
「世界最高峰の粒状性のカラーネガフィルム」と言われているだけあって、このフィルムで撮影する時は胸が高鳴ります。
写真はすべてKodak Ektar100と、Nikon F3で撮影しています。
作例も盛りだくさんなので是非見ていただけると幸いです!
普段から私の常用フィルムはKodak・Lomography・ILFORDがほとんどなのですが、
最近は使いやすいISO200~400の使用が多く、ISO100のフィルムは久しぶりの装填でした。
価格も決して気軽なものではありませんが、今回の撮り下ろしを経てやっぱりそれ相応の価値があるなと改めて感じています。
友人のモデルさんとお茶した時に、残りわずかな夕暮れで撮った写真です。(笑)
モデルさんと撮影するより、ご飯を食べたりお茶をしている時間の方がいつも長い私です…。(笑)
Kodakの青色は、昔から「コダックブルー」の愛称がありますが、影の部分にその色味を感じ取れました。
またEktarの色鮮やかな描写が、モデルさんの髪色と相まってより映えていますね!
低粒子な分、夕方は少し厳しかったものの背景や被写体のバランスで鮮やかさが伝われば嬉しいです。
私は今、山梨に住んでいるのですが、久々に街に雪が降りました。
決して山梨で雪が降ることは珍しくないのですが、冬生まれなせいか雪を見るとテンションが上がります。
手すりの雪解け水が美しかったのでその瞬間を収めました。
実はこの日は私の誕生日で、ケーキを買って帰りました。
帰ってきた時には、もうすっかり夕暮れで(いつも私は夕暮れに急かされている…笑)
特にしっかりテーブルのスタイリングをしたわけではないですが、夕日に照らされたスポンジケーキが綺麗だったので思わず何枚か撮影していました。
三脚を使って撮ればISO100でも、クオリティが保たれそうだなと感じたので今後の課題となりました。
日が落ちてからも、テーブルフォトに関しては三脚などを使って手ぶれを抑えることで、より長い時間楽しめると思います。
ここからはポートレート編です!
モデルさん・友人のフォトグラファー達と新潟に泊まりで撮影に行きました。
雪撮影は一面レフ板のような環境なので、肌も綺麗に撮れます。
何より低粒子であるEktar100はぴったりでした。
また彩度も保たれており、明るい時間に装填していたいフィルムだと感じます。
一面明るい場所といえど、モデルさんの服が白かったので露出に気をつけて撮影しました。
粒子感が少ないので、例えばここからプリントしたり、引き伸ばして展示をするにも良いフィルムだと思います。
また、粒子が少ないフィルムというのはそれだけ視覚的な情報量が減るので、作品にもスッキリした印象を持たせます。
透明感のある作品づくりを目指す時にもおすすめのフィルムであることには間違いないです。
引き続き雪撮影の写真を載せます。
もちろん明るい環境だからといって必ずしもISO100や、その他の低感度フィルムを使わなければいけない、ということは無いのです。
ですが、もしカメラにフィルムを装填する時、行き先や被写体があらかじめ決まっているのであれば、その時々によって今日の洋服を決めるように、フィルムも変えて楽しむことが大切だと感じますし、フィルムカメラやフィルム選びの一つの楽しみ方だと思います。
また適材適所でフィルムを選んでいけば、写真活動においては作品のクオリティにも繋がるので、まだEktar100を使ったことがない方は1本是非使ってみてください。
プリントでもデータ化した写真でも、空気感やなめらかさ、適度な彩度に心地良くなるはずです。
私の中でEktar100はそういったフィルムであるなと思います。
また今回は雪撮影での撮り下ろしでしたが、これからの桜の時期にもおすすめです!
特に晴れた日の桜は白っぽく明るく見えるので、青空と一緒に桜を撮るとその出来上がりに感動すると思います。
私もまだまだEktar100を使う予定です。
いかがでしょうか。今回はKodak Ektar100を完全撮り下ろしでお届けいたしました!
撮影する際はコンパクトフィルムカメラではなく、露出の調整をしっかり出来る一眼レフがおすすめです。
またSNS等で写真や記事の感想などいただけると励みになります。
それでは、次回の記事もお楽しみに!
写真家:国分真央
1990年 東京都生まれ。映像制作会社や写真事務所を経て独立。2020年に東京都から山梨県に移住する。書籍の表紙や広告写真、CDジャケットなど幅広いジャンルで活躍中。独特な色合いと自然が溶け込むような写真が特徴で、独自の世界観を作り上げる。近年はフィルム写真での撮影にも力を入れ、執筆活動も行っている。
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世界初(2024年2月現在)となる35mmフルサイズ対応F1.4対角魚眼レンズがシグマから登場しました。前回ご紹介した「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」とともにCP+ 2024の前日に発表され、パシフィコ横浜のシグマブースでご覧になったShaSha読者も多いことでしょう。大変な人だかりで人気でしたね。このレンズは星景や建築写真を撮影するフォトグラファーはとても気になる製品になっています。そのスゴさの一端をのぞいてみましょう。
迫力のある超広角レンズの歪曲効果を楽しめる「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」。しかも開放F1.4という明るさは驚きのスペックです。それを実現するためにシグマは惜しみない技術を投入しました。特殊低分散ガラスのFLD4枚、SLD3枚、非球面レンズ2枚を含む15群21枚というリッチな硝材とレンズ構成で、開放から画面全体で高い点像再現性と解像力を発揮します。F1.4という明るさと高次元の描写力は星景撮影はもちろん、風景からアーティスティックな撮影表現に素晴らしい写りを約束してくれることでしょう。
写りは圧巻です。180°の画角で迫力満点の遠近感や被写体の強調を楽しめます。低照度環境でもそれが可能です。また広い画角を誇るがゆえに太陽や点光源がフレーム内に入るシチュエーションが多い魚眼レンズですが、シグマの精鋭チーム「ゴーストバスターズ」が最先端のシミュレーションを行い、あらゆる条件の入射光に対し対策を行っているとのこと。これによって高い逆光耐性を達成しています。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はシグマの「Art」ラインに属するレンズです。ですので他ラインナップ同様に素晴らしいビルドクオリティとなっています。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」に似たルックスとなっていますが、画質と操作性を優先した結果、ほとんどのパーツは新規に作り起こしたものになっているようです。スゴいですね。
便利機能も搭載されています。「LOCK」位置にするとフォーカスリング操作が無効となるMFL(マニュアルフォーカスロック)スイッチは暗闇の星景撮影時に役立つことでしょう。また結露防止のためレンズ鏡筒にレンズヒーターを巻くシーンではフロント周りに設けられた段差のレンズヒーターリテーナーが不用意なケラレを防ぎます。
前玉が巨大かつ湾曲しているのでフロントフィルターの装着ではなく、後玉部分にシート状のフィルターを付けられるようリアフィルターホルダーを標準装備しています。さらにはそのシート状のフィルターを2枚収納できるロック付きのカバーレンズキャップが付属します。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」のものと似ていますが「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」専用品なので取り間違える心配も無用ですね。脱着式の三脚座にも注目です。軽量かつ丈夫なマグネシウム合金製で、うれしいことにアルカスイス互換となっているので三脚への着脱も簡単でスピーディーに行えます(三脚座(TS-141)はSIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art用と共通)。
LマウントとEマウントユーザーはこのユニークなレンズを楽しめるのがうれしいですね。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」をLマウントの「SIGMA fp」に装着してブラブラ撮影を楽しみました。星景撮影はかないませんでしたが、一般的な撮影でもその描写力の高さと圧倒的な画角を存分に味わうことができましたよ。
シグマ黒川新社屋の中庭です。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」の記事でもほぼ同じ位置から撮っていますので、その写りと比較してみてください。あちらは建物の線が真っ直ぐ写っていますが、「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」は魚眼レンズなので大きく湾曲した描写になっているのが分かるでしょう。
このカットはシグマ内にあるレンズセラーで撮ったものです。こちらも先ほどの「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」記事で同等のカットがあるので比較してみてください。どのような写真表現をしたいかで、これらの明るく広い画角を持つレンズを選択する必要がありますね。
竹林の中で真上を見上げてみました。画面中心に向かって伸びる竹の写りがとてもシャープですね。葉の描写も精細で、その発色も見た目に近い印象です。三脚を持ち込んで風のあるときに長秒撮影すると面白い写真が撮れるかもしれませんね。
シグマ本社近くの里山をフォトウォークしました。この界隈はまだわずかに緑が残されていますが、近年開発が進んでのどかな景色を見られるのは時間の問題かもしれません。丘陵の斜面にある耕作地を撮りましたが、構図によって魚眼レンズらしいデフォルメが楽しめました。スポット的に残された畑を魚眼レンズ特有の効果で演出できました。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はその明るい「開放F1.4」という絞りを使ってボケの表現も可能です。こちらも里山に生える大木に迫ったカットですが、絞り開放にしてピントを手前にすることによって豊かなボケをだすことができました。アイデア次第でユニークな写真を撮ることができそうです。
180°という広大な画角は巨大な構造物を撮影する時にも活躍します。外環(東京外かく環状道路)の東名高速接続部付近を撮りましたが、数百メートルもある工事現場囲いもご覧のとおりフレーム内に収めることができました。屋外はもちろん室内での建築物撮影でも大いに役立つレンズと言えます。F1.4と明るいので星景とともに建物を写し込むこともこのレンズなら簡単でしょう。
古民家のひな壇に迫りました。低照度の日本家屋でもこのレンズなら心配ありません。ひな人形と広い和室を雰囲気満点でキャプチャーできました。「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はイメージどおりのカットを提供してくれるレンズでした。
主な仕様
レンズ構成枚数:15群21枚(FLD4枚、SLD3枚、非球面レンズ2枚)
画角:180°
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
最小絞り:F16
最短撮影距離:38.5cm
最大撮影倍率:1:16
最大径 × 長さ:L マウント:φ104.0mm × 157.9mm
ソニー E マウント:φ104.0mm × 159.9mm
※長さはレンズ先端からマウント面までの距離です。
質量:L マウント:1,360g
ソニー E マウント:1,360g
エディションナンバー:A024
付属品:
・ケース
・カバーレンズキャップ(LC1040-01)
・リアキャップ(LCR II)
・三脚座(TS-141)
・プロテクティブカバー(PT-51)
・ガイドプレート(GP-21)
・ショルダーストラップ
世界初35mmフルサイズ対応F1.4対角魚眼レンズは、星景撮影だけでなく風景や建築撮影でも大いに活躍するポテンシャルを持ったレンズということが確認できました。その明るさと広大な画角は、フォトグラファーの表現力次第でグンと威力を発揮してくれることでしょう。使っていて随所に「シグマイズム」を感じさせてくれる一本でした。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。
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真冬の北海道というといろいろなイメージがあると思いますが、広い北海道では札幌や旭川などの日本海側と、私の住む釧路などの太平洋側東部では大きく天候が違います。日本海側では雪が多く、冬の間はずっとどんよりした天気が続きます。逆に太平洋側では晴れることが多く、雪はあまり降りません。天気が安定していることから、わざわざ札幌あたりから撮影に来るカメラマンも多く、冬の北海道で撮影するには道東の方が適しているといえます。
そこで今回は、真冬の道東で風景を撮影するときのアドバイスをしてみたいと思います。
北海道での撮影は車で移動することが基本となります。雪のない時期は人の来ない林道や脇道などにも出かけることが多いですが、冬になると除雪されているところしか行けなくなり、行けるのは基本的には一般的なところ、または観光的な場所=「定番の撮影ポイント」ということになります。
撮影は晴れた日の朝を基本とします。晴れると気温が下がりやすく、冬らしい景色が期待できるからです。曇天の場合は風景を諦めて、タンチョウやハクチョウなどのいきものの撮影に切り替えることも多いです。
気温は氷点下が続き、朝はマイナス20℃程度になることも珍しくありません。しっかりした防寒装備をしていても慣れないとかなりキツイかもしれません。とくに風があると寒く感じるので、万全な防寒の準備をしてください。よくカメラの防寒対策を聞かれますが、今のカメラはバッテリーを余分に持っていけば問題ないと思います。
撮影に行ける場所が定番の撮影ポイントに限定されてしまうと、撮れる写真も定番だけで終わってしまうと考えるのは間違いです。晴天の雲ひとつないときの富士山のように、ワンカット撮影したら次の切り取り方が思いつかないということの方が珍しいと思います。
景色を広くフレーミングしているだけだとあまり変化はないので、少しずつ部分的に切り取っていくようにしてみましょう。雲が流れていたり、光の当たり方が変われば、画面の中でアクセントになる部分も変わっていきます。広く撮ったら次は望遠で部分的に切り取るということを繰り返しながら、自分が気になるところを撮影していきましょう。移動できる場所なら、面倒がらず自分の足で歩いて違う景色を探すのもネイチャースナップには大切です。
雪景色や霧氷のついた景色など、冬の景色は白が基調となります。そのため、闇雲に撮影しても思い通りの印象で撮影できないこともあります。第一に、白い被写体を引き立てるためには光やコントラストに注意することが大切です。一見真っ白な雪面も、起伏があれば影ができます。この影を利用して被写体を目立たせるようにするのです。さいわい冬は太陽の高度が低く影も出やすいので、カメラポジションや時間帯を選ぶことでイメージに近い光線が得やすいです。光を考えて撮影場所を選ぶのも良い方法です。
光意外にも背景の色を意識するといいです。白と白が重ならないようにすることで、被写体の形が分かりやすくなります。基本的には被写体よりも暗い色のものを重ねると思えばいいでしょう。
例えば、霧氷がついた木を撮影するときには、青空が背景になれば霧氷の白が映えてきます。雲の白いところと重なると、色が同じために分かりにくくなってしまいます。
白が多い冬景色ですが、朝夕は太陽の光が赤みがかるために、景色も赤っぽく見せることができます。この時間帯は色の変化も大きいので、てきぱきといろいろなところにカメラを向けて効率よく撮影したいです。
また、雲が太陽を遮り影ができないときでも、頭上には青空が見えている場合には、青空の色が地面を照らして淡く青みがかることも多いです。日影も同様に青みが強くなりますね。
このような微妙な色の変化に気づくことで、作品の色合いをワンパターンから多才なものに変えることができます。撮影するときにはホワイトバランスをオートから太陽光に切り替えておきましょう。そうしないとどの光でも白くなってしまいます。好みによって色調整をしてみても良いと思います。
これらの景色の微妙な変化に気づくためには、ゆっくりと景色を眺めていることが大切です。撮影し始めるとカメラのファインダーを覗くことばかりに夢中になりがちですが、肉眼でも景色を見て実際の美しさを感じるようにしましょう。
ただ、ずっと同じ景色を見ているとその景色に慣れてしまうこともあるので、ときにはちょっと目を離してまた見てみると、あれっと思うような小さなことに気づくこともあります。
週末しか時間がない現役世代のカメラマンだと、せっかく撮影に出たのだからここはさっさと撮影してあっちもこっちも撮りに行きたいとなってしまうのかもしれませんが、そうすると観光旅行的にいろいろな場所に行って来ましたというだけの写真になりがちです。
定番の場所だからこそ、自分の視点が感じられるような一枚となるようにじっくり景色を見つめて、ここに感動したからシャッターを押したといえるようにしていきましょう。
標準ズーム、望遠ズームでひととおりの景色を撮影してしまうと、構図のバリエーションにも限界が出てきます。また、面白い被写体を見つけたけれど、周りに余分なものがあってうまく撮れないということあります。
そんなときに私が使うのがマクロレンズと魚眼レンズです。どちらも被写体に寄って撮影する使い方が基本で、魚眼レンズだと周りの景色の雰囲気も取り込めるという違いがあります。
作品のバリエーションとしても変化が出てくるので、ぜひ使ってみてほしいと思います。
広くてスケールの大きな景色が広がる道東の冬。ぜひ一度訪れて撮影してみてください。難しいのは、今回紹介した景色はいつでも見られるものではないということです。霧氷や流氷などは自然のいろいろな条件が揃って出会えるものなので、もし訪れたときにイメージ通りではなかったとしても、ガッカリせずネイチャースナップ的視点を磨いておいて、傑作をものにしてほしいと思います。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。
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2024年2月23日(金)-2024年3月19日(火) の期間中、新宿 北村写真機店 6F イベントスペースにて写真展『世界に、なにを見よう』を開催いたします。開催を記念して主催者の花澄氏にインタビューを行いました。
前編となる今回は花澄氏のこれまでの活動にフォーカスを当て、写真家としての活動や前回の写真展開催までの経緯をお聞きしました。後編では今回の写真展についてのお話しいただきますのでぜひご覧ください。
花澄写真展『世界に、なにを見よう』の詳細ページはこちらより
今回写真展を開催する花澄氏は現在、俳優・ナレーター・写真家として幅広く活躍している。いずれも”表現する”ということが共通しており、まず最初に経歴についてお聞きした。
「元々は俳優からスタートしました。ある時、所属事務所でナレーターセクションがあり声のサンプルを取った後にナレーターの仕事が決まり、ナレーターの活動が始まりました」とナレーターの始まりは意外な形から始まったそうだ。
「その後は事務所の先輩にスタジオの様子や録音の流れ、音声をやり取りするための装置であるカフやキューランプの仕組みや形を教えて貰ったものの、実際のナレーターブースは一人きり。右も左も分からないのでドキドキでしたが、ミスはだれでもあるので”とりあえずやってみよう”と腹を括って頑張りました」と現場での経験を積んでいき、ナレーターの道が始まった。
ナレーターとしても多くの仕事をするようになった花澄氏だが、カメラとの出会いを聞くと舞台終わりの寂しさがきっかけだという。
「舞台は稽古から本番まで数ヶ月間を共にするため家族のように仲が深まり、千秋楽が終わると急に一人になるのでいつも寂しく感じます。特に2015年に出演した舞台の現場は稽古から本番までとても幸せだったため寂しさの反動も大きく、心の復活にも時間がかかりました」
「それがちょうど秋ごろで自分の誕生日に何かプレゼントを買おうと思いました。ブログやインスタで写真を撮るのが好きで、周囲の方に相談してOLYMPUSのOM-D E-M5 MarkIIを買ったんです」
同社の可愛らしいフォルムのPENシリーズではなく、より高性能なE-M5 MarkIIを選んだことでカメラにハマる予兆があったという。
「カメラを購入後は自宅から駅までの道も撮りたいものがたくさんあり、息を吹き返しました。自分が見ている主題を切り取れるカメラは楽しくて水滴が一つでもあれば嬉しく、花が一輪咲いているだけで”こんなに世界がいろんなものにあふれているんだ”と再認識しました」
その後は3年間で3回壊れてしまうほど愛用。同時にオールドレンズにも興味を抱き、現在も重宝しているというケルンのMacro Switar(マクロ スイター) 26mm f1.1を購入したそうだ。
E-M5 MarkIIを使い写真の撮影を楽しんでいた花澄氏だがその当時はライカのことを知らず、知ったきっかけを聞くと小山薫堂氏の番組で花澄氏がナレーションを担当しており、ゲスト出演されたハービー・山口氏とお会いするようになったことで初めてライカを知ったようだ。
「その後にライカの方とお会いすることもあり、レセプションにご招待いただいたり、ハービーさん、薫堂さんの展示やソール・ライターの写真展を見た際にライカの展示もあって”何か違う”と感じました」
愛機のE-M5 MarkIIが3回目の故障となり、もう一度修理するか、それともライカを購入するかで悩んだそうだ。SNS(特にInstagram)が好きなことから、当時のライカよりもスマートフォンとの接続性が高いカメラもお勧めがあり悩んでいた時にハービー・山口氏にも相談したという。
「ハービーさん、ライカっていうのはどうですか?とお聞きしたところ、お使いになりたいカメラを使ってみるのが良いと思いますよ。とお言葉をいただき背中を押してくれたんです」
その後、ネットで調べた際に「買わない理由が値段なら買った方が良い。買う理由が値段ならやめた方が良い」という言葉や「使いたいなら1日でも長く使った方が良い」といった言葉を発見。ハービー・山口氏のお言葉もあり、Summicron-M 50mm/f2 (2nd)を先に購入。その後にライカM10を購入した。
ライカを購入後はレンズが持つ奥行き感に感動したという。舞台のオフショットや稽古中も俳優を撮りたくなったがM10はシャッターや電源をつけた際の音が大きめで気になっており、翌年に発売されたM10-Pは音が小さくなったことで買い替えたそうだ。
「2019年に京都で映画の撮影があり、オフでライカ京都店に立ち寄ったときに開催されていたソール・ライター展を見たんです。その展覧会ではヌードの作品ばかりで、そういった印象はなかったので見た時は雷に打たれたような衝撃が走り、当時宿泊していたホテルの壁紙がちょうど海外のような模様の壁紙だったので、好奇心から初めてヌードのセルフポートレートを撮ってみたんです」
初めてヌードのセルフポートレートを撮影した後はそのまましばらく撮っていなかったものの、「被写体として面白いな」とぼんやり思っていたそうだ。
2020年に新型感染症のコロナウイルスが流行し、花澄氏だけでなく世界中の情勢すらも一気に変わった。その影響は大きく、舞台は中止になり出演予定の映画は延期、感染予防の観点から劇場も行くことができなくなり全ての創作活動が完全に止まってしまったという。
「外には出られないけど表現者として何かしないと生きていけないから、家の中で出来ることを考えました。その時に私の手の中にあるライカで自分が写るセルフポートレートしかないと思いました」
「それから月日が経ちセルフポートレートを撮ったときのことを思い出し、”続きを撮ってみよう”と思いました。ただ、ずっと自宅で撮影しても飽きてしまうので小物やおもちゃ、光を工夫してバリエーションをたくさん出せるように試してみたんです」
コロナ禍は予想に反して長引いたこともあり、気が付けば多くの作品が仕上がった。しかし最初は誰かに見せるわけではなく創作活動として作品作りに没頭していたという。
最初は誰かに見せるわけでもなかったが作品は分厚いバインダー3冊分になるほど撮りためており、ハービー・山口氏にお見せしたことで写真展の気持ちが芽生えたという。
「ハービーさんにお見せしたところ、これはとても手間をかけて撮った写真だということが一目で分かります。クオリティもしっかりしているので、ちゃんと世に出すべきものだと思いますよ。と言っていただけたんです」
最初は世に出すことについて考えていたが、映画の公開のタイミングもあり「やるなら今だ!」と思い写真展の開催を決心したそうだ。
「決心したものの、なかなか条件に合うギャラリーが見つかりませんでした。そして最後にダメ元で来たのが新宿 北村写真機店だったんです。意外にもあっさりと決まりその後は写真集の制作に取り掛かりました」
「写真集はデザインを自分で作り、そのぶん紙質にこだわりました。ただイラストレーターを使ったことが無いため、「とりあえずやってみよう!」と別のソフトを使用してデザインしました。
そうして写真集はクラウドファンディングのご協力もあり無事に完成。写真展も開幕し多くのお客さまにご来場いただき大盛況だった。
花澄氏のInstagramアカウント(@texisan)より引用
筆者は当時、新宿 北村写真機店のギャラリーを担当していました。花澄氏は仕事の合間を縫ってできる限り在廊されて、来場されたお客様とたくさんお話ししていたことを覚えています。こだわりの詰まった作品や写真集、プロジェクターで投影された映像・音楽は多くの来場者を魅了していたのは言うまでもありません。
後編の記事では今回の写真展が誕生した背景や写真展の見どころをご紹介します。2024年3月9日(土)公開予定となっていますのでぜひお楽しみに。
『世界に、なにを見よう』も花澄氏のこだわりが細部に詰まっており、写真はもちろん会場内の光や音にもこだわった空間となっています。どなたでも無料でご覧いただけますのでぜひご来場ください。
写真展の詳細ページはこちら
埼玉県熊谷市生まれ。
俳優・ナレーターとして、舞台・映画・ドラマ・CM・ラジオ等で幅広く活動。
同時にLeicaとの出逢いから写真家としてもデビュー。
オールドレンズをこよなく愛し、やわらかいタッチと視線で世界を見つめている。
コロナ禍を機にセルフポートレートにも取り組みライフワークとしている。本会場での展示は2度目となる。
カメラという存在を考えるとき、もちろんそれは写真を撮るための道具であることが大前提だが、そこに筆者は光学機器ならではの精密感と、それを守るための堅牢な構造を纏った機械としての存在感に心を奪われる。今回取り上げるフィルム一眼レフカメラ「オリンパス OM-2」は、金属製のボディに大きなダイヤルやレバーがシンプルかつ無駄なく配置された、凝縮感の高い造形とエッジの際立ったデザインが印象的なカメラである。すでに発売から半世紀近くを経ているが、その印象は今でも薄れることがない。
OM-2というカメラが誕生した時代背景として、まずは当時の日本における一眼レフカメラの動向について簡単にお話をしておこう。1960年代後半から70年代初頭にかけて、各カメラメーカーは一眼レフカメラの性能を向上させることに日々情熱を注ぎ、さまざまなカメラを世に送り出していた。その成果によりカメラとしての精度が高まり、また新しい機能も日々開発されていたのだが、その一方、性能を重視した製品開発を続けたことでカメラのサイズはより大きく、より重くなってしまっていたのだ。当然それはカメラを使用するユーザーの負担が増えることにつながる。
しかし、1972年にその状況を大きく一変させる製品が登場する。その製品は、あるカメラ設計者の独創的な設計思想のもと、より高い性能を引き出しつつも、それまでのカメラでは考えられないほどの小型軽量化を実現してしまったのだ。これこそが、後に多くのカメラメーカーが競って進めることとなる小型軽量化への牽引役となった、オリンパスの一眼レフカメラシステム「OMシリーズ」の誕生の瞬間である。
OMシリーズでは、まず一機種目としてマニュアル露出撮影専用機であるOM-1(発売開始直後にM-1より改称)を発売。この画期的なカメラは、その驚くほど小さなサイズと軽量さが話題となり、その後にマイナーチェンジされたOM-1Nと合わせると通算でおよそ14~15年間ほどの長期にわたり販売がなされたほど人気を博した。
一方、今回取り上げるOM-2はOMシリーズの二機種目として1975年に登場した一眼レフカメラだ。カメラの基本デザイン、サイズや重さ、操作系は先行発売されたOM-1とほぼ同じに作られた兄弟機であったが、OM-1がマニュアル露出モード専用機であったのに対して、OM-2はマニュアル露出モードに加えて絞り優先オートモードも搭載した、オリンパス初のオート露出モード搭載一眼レフカメラとして開発された。このカメラではシャッター機構が機械式であったOM-1とは異なり、当時としては最新の電子シャッター式が採用されている。さらに絞り優先モードでの露出制御に世界初のダイレクト測光方式を採用するなど、最先端の電子制御回路を組み込んだカメラとして大きな話題を呼んだ。
『オリンパスOM-2の主なスペック』
■オリンパスOMマウント(バヨネット交換式)
■ファインダー ペンタプリズム式 視野率97%
■ファインダー倍率 0.92倍(50mmレンズ・無限遠)
■シャッター 電子式フォーカルプレーンシャッター
■シャッタースピード マニュアルモード:B・1~1/1000秒 オートモード:数十秒~1/1000秒 X同調1/60
■フォーカシング機構 マニュアルフォーカス
■ミラー クイックリターン式 ミラーアップは不可
■測光方式 マニュアルモード: TTL中央重点平均測光
絞り優先モード:TTLダイレクト測光式
平均測光(60~1/15秒)/中央重点平均測光(1/60〜1/1000秒)
■フィルム感度設定 ASA(ISO)12~1600
■フィルム巻き上げ レバー式 小刻み巻き上げ可能
■大きさ 幅136mm 高さ83mm 奥行き50mm(ボディのみ)
■質量 約520g (ボディのみ)
■電源 1.5V SR44 x2個使用
*メーカー発売時のデータを元にしています
OM-2にG.ZUIKO AUTO-W 28mm F3.5レンズを装着。このOM-2はシルバーモデルであることから金属外装のソリッドな印象をより強く感じる。コンパクトなボディサイズなうえ、ファインダーが設けられているペンタプリズム部がボディの箱型に半ば沈み込むようなレイアウト設計となっているなど、凝縮感が高いデザインであることもOMシリーズの特徴だ。
OM-2を上面から見る。カメラ本体の箱型はとてもスリムな印象。そこに大きなペンタプリズムとファインダーが備えられている。この中に収められている大きなプリズムにより高い倍率のファインダーを実現している。ペンタプリズム部中央のネジ穴はストロボ接点用。OM-1/OM-2ではデザイン優先の理由からアクセサリーシューは取り外し式となっているため、クリップオンストロボの使用時には対応したアクセサリーシューを装着しなければならない。
カメラ上面右手側には複数回の小刻み巻き上げが可能なフィルム巻き上げレバーとシャッターレリーズボタン、フィルム感度設定と露出補正を兼ねたダイヤルが配されている。露出補正ダイヤルは絞り優先オートモード時にカメラが導き出したシャッタースピードに対してプラス補正/マイナス補正を行うためのもの。フィルム感度規格は当時一般的であったASA表示とされているが、実質的にISOと同じ値なので使用するフィルムのISO感度数値に合わせれば良い。なおフィルム感度はダイヤルを摘んで持ち上げることで12~1600の間の任意の数値に設定する。
カメラ上面左手側には電源スイッチと露出モード切り替えを兼ねた大型のモードレバー、撮影済みフィルムをパトローネ内に巻き戻すための回転式Lクランクノブが配されている。モードレバーを「OFF」の位置から「MANUAL」に合わせるとマニュアル露出モードに、「AUTO」に合わせると絞り優先オートモードに切り替わる。また「AUTO」位置からさらにレバーを回して「CHECK」に合わせる(レバーは自動復元式)ことでファインダーの左横に設けられた赤いランプが点灯しバッテリーチェックを行うことができる。
カメラ前面マウント部の左側にはフィルム巻き戻しロックレバーとセルフタイマーレバーが配置。撮影し終わったフィルムを巻き戻す際にはロックレバーを反時計回り方向に1/4回転させてロックを解除したうえで、上面のフィルム巻き戻用Lクランクノブを左回転して巻き戻す。フィルムをすべてパトローネ内に巻き取った後、ノブを垂直に引き上げるとカメラの裏蓋が開放される。セルフタイマーは機械式で、セルフタイマーレバーをカメラ正面から向かって反時計回りに180°回した状態でおよそ12秒に設定される。レバーを回す角度に合わせてタイマーの秒数を4~12秒の間で設定することも可能。セルフタイマーのスタート/キャンセルはセルフタイマーレバーの下に隠れている小さなレバーをスライドすることで行う。
カメラ前面マウント部の右側には外部ストロボとシンクロコードで接続するシンクロソケットがある。OM-2のシンクロは現在でも一般的なX接点と、当時撮影に使用されていたFP級バルブフラッシュとの切り替えが可能。ストロボとの同調シャッタースピードは1~1/60秒。なおここの接点を使用してのシンクロストロボ発光ではTTL調光は使用できない。
OMシリーズ最大の特徴でもある、マウント周辺部に設けられたシャッターダイヤル。これは先行して発売されたOM-1ならびに、後に発売されるOM-3、OM-4の各シリーズモデル、中級機に位置するOM-20、OM-30、OM-40でも共通して採用された、まさにOMシリーズのアイデンティティーとも呼べるものだ。この位置にシャッターダイヤルを設けたことで、撮影時に右手はレリーズボタンと巻き上げレバーに添えたまま、左手のみでレンズのピントリング、絞りリングと同様にシャッタースピードの設定がレンズの軸に沿った回転動作で可能となる。この操作系に慣れてしまうと、一般的なカメラの上部に設けられている、シャッターダイヤルの操作がとても煩わしく感じられてしまうほどだ。
OM-2のシャッターは全速において電子式シャッターによって制御される。ただしレリーズボタンを押し続ける間はシャッターが開放されるB(バルブ)のみは機械式シャッターとなっている。B(バルブ)への切り替えは、まずモードレバーでマニュアル撮影モードに切り替えたうえで、シャッターダイヤルをBの位置まで回転させる。ただし1秒の位置からBに回すには、マウント下部にあるリセットボタンを押しながらロックを解除する必要がある。ちなみに絞り優先オートモード時はシャッターダイヤルがB以外のどの数値に設定されていても無効となる。
マウント下部に設けられたB(バルブ)ロックリセットボタン。この小さなボタンを指で押さえながらシャッターダイヤルをBまで回してバルブ撮影モードに切り替える。通常のシャッタースピードに戻す際はリセットボタンを押す必要はなく、そのままシャッターダイヤルを回して任意のスピードに合わせればよい。
電池室はカメラ底面にあり、コインで蓋を回し開けて電池を入れる。電池は1.5VのSR44を2個使用する。互換性のあるLR44電池でも駆動させることは可能だが、電池の消耗が早いので継続して使用するのであれば、やはりSR44をお勧めしたい。なおOM-2シリーズおよびOM-4シリーズでは電池が消耗してしまうと、レリーズボタンを押してもマウント内のミラーが上がった状態で固定される仕様となっている。その場合は新しい電池に交換したうえで、バルブロックボタンを押しながらシャッターダイヤルをBに合わせると、ミラーが下りリセットがなされ、再び撮影が可能となる(OM-2Nではモード切り替えレバーをバッテリーチェックの位置にスライドすることでもリセットが可能)。このバルブロックとリセットの方法はあまり知られていないため、ミラーアップしたまま動かなくなると故障してしまっていると勘違いしてしまうことも少なくない。
OM-2のマウント部とミラーボックス。カメラ本体のサイズからするととても大きい。それによりミラーボックス内のミラーも大きなものが採用されており、ファインダーの明るさに寄与するとともに、望遠レンズ使用時のミラー切れが発生しにくい構造とされている。さらにミラーが駆動する際に発生するショックを吸収するエアダンパーを採用するなど、当時の他の一眼レフカメラとは比較にならないほど徹底的に振動と動作音を低減しているのもOMシリーズの特徴のひとつだ。
ファインダー内部の様子を撮影。OM-2のファインダー視野率は97%、倍率は0.92倍(50mmレンズ・無限遠)と当時の他社ハイエンド機と比べても遜色がない。実際にカメラを構えファインダーを覗くとその広さと像の大きさに驚くほどだ。個人的にはこのファインダーの素晴らしさだけでも、OM-1/OM-2をオススメしたいくらいだ。ファインダー左端には露出情報が表示される。マニュアルモードでは内蔵露出計と連動してプラス/マイナスのスケールと指針が、オートモードでは設定した絞り値から導き出したシャッタースピードを指針で指し示してくれる露出表示に切り替わる。
ファインダー内に像を写し出すフォーカシングスクリーンはユーザー自身で交換可能。フォーカシングスクリーンは撮影する被写体に合わせてさまざまな種類が用意されており、交換はマウントから直接行える(OM-1,OM-3,OM-4と共通)。フォーカシングスクリーンを交換するだけで、ファインダーの見え方が大きく変わりピント合わせも効率良く行えるなど実用性は極めて高い。筆者は標準のスプリットプリズム(中央部優先位相差式)ではない全面マットのスクリーンに交換することで中央部以外でもピント合わせを行いやすくしている。しかしすでに販売終了から長い年月が経っているだけに、もうこれらを個別に手に入れるのは難しいだろう。
OM-2の背面。裏蓋の中央にはメモホルダーが用意されている。ここには使用中のフィルムの種類を忘れないように、紙箱の蓋などを差し込んでおく。デジタルカメラと違い、基本的にはいちど装填したフィルムは撮影終了後に取り出すまでは確認できないことから考え出された工夫である。
OMシリーズの一眼レフカメラで使用するレンズは、ごく一部の製品を除いてマニュアルフォーカス専用のレンズである。金属製の鏡筒にラバー製ダイヤパターンの滑り止めが設けられたフォーカスリング、手動で操作する絞りリングは1絞りごとのクリック感もしっかりしている。これらリング類はいずれも適度なトルクと指の自然な可動範囲に沿って配置されており操作感は極めてよい。さらに見た目的にもクラシカルでデザイン的に魅力が高い。OMシリーズ用のズイコーレンズには希少価値の高い特殊なレンズもあるが、実は一般的なレンズであっても優秀な性能のものが多い。そしてその割には比較的手に入れやすい価格で中古市場に存在していたりもする。
OM-2の絞り優先オートには、世界初となった画期的な露光制御方式が採用された。「TTLダイレクト測光」と呼ばれる方式だ。通常一般的なカメラでは、カメラに内蔵もしくは外付けされた露出計で、事前に計測した明るさの記憶を元に、絞り値とシャッタースピードを組み合わせて露光を行う。ほとんどの被写体においてはこの方式でも大きな明るさのズレとはならないが、これがシャッターを開けてカメラが露光を行なっている最中に急激に明るさの変化が起こってしまうと、それに対処することはできず適切な露光状態とはならない原因となる。
そこで考え出されたのが、露光中にフィルムに届いた光の量をリアルタイムに計測して最適な露光時間となるように調整する仕組みだ。具体的にはレンズを通ってカメラ内のフィルムにあたり反射した光を、ミラーボックス内のセンサーで拾いリアルタイムに計測。それを元にフィルムの露光状況を推察してシャッターのスピードを調整するというものだ。この方法であれば露光中に急激に明るさが変化したとしても、即対応が可能となり適切な露光量とすることができるという訳だ。
OM-2のダイレクト測光では、レンズを通ってきた光が開いたシャッターの先にあるフィルム面にあたり、そこから反射された光の量をミラーボックス内のセンサーで拾い計測する方法を取っている。ただしシャッタースピードが高速な場合、実際にはフィルム面はシャッター幕の先幕と後幕の隙間でしか現れずほとんど光を反射する間もない。そこで高速シャッター時にはフィルムの代わりにシャッター幕による光の反射を利用する必要がある。しかし実際にはフィルムとシャッター幕では光の反射率が異なるため、正確に光の量を測ることができないという問題がある。そこでシャッター幕自体に独自に編み出した黒白のドットパターンを印刷し反射させることで、フィルム面と同等の反射率としているとのことだ。その開発過程ではオリンパスの設計者は世界中で発売されていたフィルムを取り寄せて、すべての反射率を測ったうえでドットパターンを作成したという逸話があるほどだ。なんともはや、地道な努力の賜物だろうか。なお、この説明用写真ではドットパターンを撮影するためにBロック状態にしたミラーボックス内を撮影している。したがって通常使用の範囲では、ユーザーがドットパターンを目にすることはない。
シャッタースピードをBに設定しシャッターを開放した状態でフィルム室側からミラーボックス内を見たところ。下部の左右に大きな光センサーがあることがわかる。このセンサーでフィルム表面から反射してきた光を測定し、ここで得られた情報を基に実際の露光時間を決定する。
ダイレクト測光の効果を説明するために夜景撮影でテストを行った。街から離れた岬の突端に建つ展望台。周囲には遠く離れた位置にある街灯から流れてくる光しかなく、肉眼ではほとんど展望台の建物が見えないほどの暗い状況下だ。これをOM-2の絞り優先オートモードで撮影した。
左は周囲の明るさのみで撮影した写真。絞り優先オートで102秒まで露光がなされた状態。真っ暗な状況だが102秒の長秒露光によって、展望台の姿が浮かび上がっている。一方、右は同じカメラ設定のままで撮影を開始したものの、撮影を開始してからおよそ30秒後に車のヘッドライトを点灯して展望台を照らしたもの。一般的なオート露出での撮影では、撮影開始後は被写体の明るさが変化しても、いちど設定された露光時間は変わることがないため、結果的にはヘッドライトの強い明るさで被写体が露出オーバーとなってしまう。だがOM-2のダイレクト測光では露光中の明るさの変化に露光調整機能が追随することで、結果的に被写体が適正露出となったと判断された42秒で露光が中断された。このことからも、ダイレクト測光では露光中もリアルタイムにフィルムに届く光の量を測定し、その情報を基に露光時間を調整していることがわかるだろう。
OM-2に搭載されたダイレクト測光は、ストロボ撮影での調光でも威力を発揮していた。オリンパス純正の対応ストロボと組み合わせることで「TTL調光システム」とも呼ばれるオート撮影が可能となった。それまでストロボ撮影においてはマニュアル設定で光量と絞りを調整するか、ストロボに搭載された外部オート機能を使用してのオート撮影が一般的だったのだが、OM-2に搭載されたダイレクト測光の機能を活かすことで、ストロボの瞬間光であっても撮影時にレンズを通過してきた光の明るさを直接測光することで、リアルタイムに調光がなされ簡単に適正露出を導くことができるようになった。このTTL調光システムの登場によって、それまでは非常に難しかったストロボでのマクロ撮影などの分野に技術革新をもたらしたという。現在ではこのストロボのTTL調光方式は多くのメーカーのカメラが採用しており一般的な方式となっているが、当時このダイレクト測光という測光方法を初めて実用化したOM-2は、まさにエポックメイキングなカメラとなったのだ。
OM-2に実際にフィルムを詰めてスナップ撮影を行った。事前にカメラの露出精度などを確認することができていなかったため、全ての撮影は絞り優先オートモードでの撮影に、筆者の経験則から露出補正を加えて撮影している。また使用したフィルムは新品の製品(Kodak Color Plus 200)に加え、筆者が長年ストックしていた古い高感度フィルム(FUJICOLOR SUPER HG 1600)も使用して撮影した。そのためカラーバランスが偏っていたり、粒子が荒いものも含まれているが、それらもフィルム撮影における意外性と捉えて作品作成をおこなっているので、これらはあくまでも参考として捉えていただきたい。
*OM-2で撮影したネガフィルムを現像後にデジタル化(カメラのキタムラ フィルム現像&スマホ転送サービスを利用https://www.kitamura-print.com/column/special/film/utsurundesu/#tokupripack)
今回紹介したオリンパスOM-2は、発売からすでに50年近くという月日が過ぎているカメラだが、開発時に掲げられた明確なコンセプトとユーザーターゲットの選別により、とても個性的なカメラとして仕上がっている製品だ。もちろんそれは現在においても十分に通用する魅力といえる。何より、男性はもちろんのこと、女性の手にも無理なく収まるほどのコンパクトさと、複数のレンズと一緒に持ち歩いても苦にならない軽さは、何ものにも代えられない自由さに繋がる。同時に金属外装のカメラが持つメカニカルかつソリッドなデザインは、人間工学に基づき配置されたという各部の操作感と合わさることで、クラシカルなカメラを所有するという満足感にも繋がるはずだ。
なおOM-2は1979年にマイナーチェンジ版のOM-2Nとなったのち、1984年に発売された新たなモデル「OM-2SP」に置き換えられるまで、9年ほどの長期間で販売されたことから、年数が経ってはいるがそれなりの個体数がまだ中古市場には出回っているものと考えられる。さすがに完動品は少なくなっているだろうが、シャッタースピードや露出計のバラつき程度であれば、シビアな撮影でさえなければまだまだ楽しめるはずだ。
実は今回のレビューで使用しているOM-2自体も、筆者自身がカメラのキタムラの中古販売店頭にてたまたま見つけたものだ。実はその際、OM-2はミラーアップしたままの状態であったのだが、試しにBロックを解除したところミラーが下りそれ以外はほぼ良好なであったので購入して自宅に持ち帰ったのだ。その上で電池を入れてみたところ問題なくシャッターも作動させることができた。もちろんそれなりに整備は必要であったが、みなさんも時々店頭で掘り出しものがないかを探してみたり、常にネット上での販売情報などに注目してさえいれば、まだまだ程度の良い個体に出会える可能性はあるだろう。これまでOMシリーズに興味がなかった方も、まずは見た目の格好よさから手にしてみてはいかがだろうか。その上でたまたまうまく動いてくれそうなOM-2に出会えたならば、ぜひ撮影にもトライしてみてほしい。そして時には酒でも飲みながら各部を弄んでいただきたい。そんな楽しみ方もオトナならではのカメラの嗜み方だと私は思う。
■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員
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以前の記事では、筆者のメイン機として現在使用中のソニーα7R Vの風景写真撮影で使用する際の便利な機能などを紹介しました。
今回は、約1年以上α7R Vを実際に風景撮影で使用してきたことで、新たに気づいた便利な機能や役立つ活用方法を紹介したいと思います。
前回の記事でもα7R Vの特徴の一つとしてボディ内手ぶれ補正の進化を紹介しました。しかし、カタログスペック上で8段の手ぶれ補正が可能とは言っても、購入時はまだ半信半疑の部分があり、実際にはまだまだ三脚を使う場面が減ることは無いと考えていたことも確かです。
ところが何度か実際の撮影場面で手ぶれ補正を有効にして撮影してみると、意外とその効果は絶大なことに気づきました。特に純正レンズを使用している際は手ぶれ補正が想像以上にとてもよく効いているように感じます。
例えば、風景撮影ではよくあるような、少し絞って被写界深度を深めに撮りたいシーンで、どうしてもシャッタースピードを遅くしなくてはならない場合があると思います。
今までこういう場合は、ブレないように三脚を使用して撮影をするのがセオリーでしたが、α7R Vであれば、1/4秒くらいまでなら安心して手持ち撮影を行うことができています。
また、手持ち撮影をしようとした場合、筆者の場合はF5.6くらいで撮影することが多かったのですが、これもF9程度までは躊躇なく絞って撮ることができるようになり、かなり撮影の幅が広がりました。
(手ぶれ補正の効き具合は使用レンズ、焦点距離にもよって異なります)
実際に手持ちで撮影した作例です。
冬の朝、霧氷で白くなった木々の撮影を行いました。
撮影ポイントを散策しながらの撮影の場合、気になった場所である程度絞っていてもブレを気にせず手軽に手持ちでテンポよく撮影できるのは大きなメリットだと思います。
三脚から解放されることで、構図がより自由になるのがメリットです。
風景撮影をしているとありがちですが、一瞬偶然の良い光が差し込む瞬間にいまシャッターを切りたいと思うことがあります。
今までは撮影しようと三脚を準備していて、せっかくのチャンスを逃がすなんていうことも多かったのですが、カメラをさっと出して撮影できることでこういったチャンスも逃すことが減ったように思います。
α7R VではフルタイムDMFが使えるようになったことで、これまで拡大AFでは合焦が難しいようなポイントでも簡単にピントの微調整ができるようになりました。
そのため、風景撮影においてもAF・MFを柔軟に切り替えながら撮影できるため、筆者の場合はこれまで以上にAF、拡大AFを活用するシーンが増えたと思います。
また、フォーカスエリアはスポット枠を使うことが多いのですが、このフォーカス枠が画面内にあると少々邪魔に感じることもあります。
実はα7R Vではこのフォーカスエリア枠をAF合焦後に自動で消すことができます。
かなり地味ですが、パネルやEVFではなるべく余計な情報を出したくない場合も多いので、便利な機能です。
ただ、残念なのがMF時は消すことができないようなので、この点はMF時もカスタムキー等で消せる仕組みがあったら良かったなと思います。
●設定方法
メニューから「AF・MF」設定を選択します。
「フォーカスエリア」設定を選択し、
その中にある、「フォーカスエリア自動消灯」を「入」にします。
また、再生時にはどこにAFでピントを合わせたかが分かりやすく枠表示をできるようになりました(再生設定⇢再生オプション⇢フォーカス枠表示から設定できる)。筆者の場合、撮影直後に再生して、ピント位置のブレを確認しながらまた撮影することが多いため、以前よりも確認が楽になりました。
以前の記事でも紹介したとおり、α7R Vでは動画性能も大幅にアップしています。
特に8K動画も撮影可能なので、風景写真撮影をしていると、「このシーンを動画でも撮っておきたいなぁ」と思うことがよくあります。
その場合は、静止画・動画のモード切り替えダイヤルが便利なのですが、実際は静止画用の設定と動画用の撮影設定が異なることが多く、切り替えダイヤルを動画に設定したとしても、シャッタスピード、ISO、AF等を動画用に設定し直し、また写真撮影時に元に戻すのがかなり手間です。
その際に便利なのが、静止画・動画の独立設定です。静止画と動画の設定項目を独立に記憶させておくことで、ダイヤルの切り替えだけですぐに動画を撮影、また簡単に静止画設定に戻すことができます。写真撮影中でも、気軽に設定を切り替えて動画を撮影し、また写真撮影に戻すことができるのです。
写真撮影中に動画も撮る場合は、この静止画・動画独立設定を設定しておくことをオススメします。
●設定方法
具体的な設定方法ですが、メニューの中の「セットアップ」「操作カスタマイズ」を選択します。
チェックした設定が静止画モード・動画モードで独立設定となります。
どの設定項目を独立にするかを決め、チェックします。
選択可能な項目は以下の8つです。
・絞り
・シャッタースピード
・ISO感度
・露出補正
・測光モード
・ホワイトバランス
・ピクチャープロファイル
・フォーカスモード
特に動画モード時はシャッタースピードとISO感度の他に、ピクチャープロファイル、フォーカスモードも異なる場合が多いので、これらを独立設定にしておくと便利だと思います。
●アイカップ
α7R Vの標準のアイカップの場合、かなり目をEVFに密着させないと隙間から光が入り込んでしまうことがあります。風景撮影で三脚を使いながらEVFを覗く場合には目を密着させることが難しい場合もあるため、その場合は光が入らないように手で覆ったりもしていましたが、正直不便に感じていました。
この問題を解決するために、目の周りを覆う部分が大きいタイプのものがおすすめです。
https://shop.kitamura.jp/ec/pd/4548736120549
EVFに目を密着しなくても光をしっかり遮ってくれるため、かなり撮影が楽になりました。
欠点としては、アイカップが嵩張るのでカメラバッグに収納する際に邪魔になってしまう点です。
筆者の場合はアイカップを裏返しにすることでコンパクトにして収納しています。
また、アイカップが大きすぎてパネルに干渉して見にくいことがあるのですが、α7R Vの場合はパネルを引き出すことで干渉を避けることができます。
α7R Vで撮影した風景写真の作例をいくつか紹介したいと思います。
今回は筆者のメイン機として約1年以上風景写真撮影で使用中であるソニーα7R Vについて、実際に撮影で使用してみて気づいた便利な使い方や設定方法を紹介しました。
実際の風景写真撮影でα7R Vを使ってみて感じたのが、以前までは不便に感じていた細かい点が改善されているということ。一つ一つは地味ながらも快適に風景撮影ができるカメラだと思います。
是非この記事の内容を参考にして風景写真撮影に役立てていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
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皆さんこんにちは。今月のshasha写真寸評は冬の撮影がテーマ。ご応募いただいたみなさまありがとうございました。たくさん写真をお送りいただいたのですが、その中から9枚を選んで寸評を行いました。
●良かった点
広角レンズを使ったダイナミックな作画で風景の広がりを描いています。「ハーフNDフィルターの使用」「カメラの明暗調整機能の活用」「撮影後のレタッチ」これらのいずれかを使っていると思われますが、空と地上の明暗差を上手く整え肉眼で見た風景の感動を伝えています。
●アドバイス
「雪を纏った岩を前景に入れましたが比率が多かったように思いますがいかがでしょうか?」と作者さんからコメントをいただいています。確かにそのように感じますが、特に「画面右下の黒い部分が多い」のが気になっているのだと思います。私も「岩を入れる比率はこれくらいで良い、でも画面右下の黒い部分」が、もう少し何とかなればと感じました。この写真からトリミングをして黒い部分を減らせばよいと考えがちなのですが、そうするとせっかくの広角レンズのダイナミックさが薄らいでしまいます。そうならないようにするには以下3つの選択肢が考えられますので、ご参考になさってくださいね。
【1】もう少し前に出て岩に近づき黒い部分を減らす
【2】同じ場所でカメラを高くして画面の上下幅を増やし黒い部分を減らす
【3】レタッチで右下と中央の岩のディテールを出す
ベストは【2】か【3】なのですが、私はこの場所で撮影したことがなくハッキリとしたことが言えません。
状況が許せばということでお考え下さいね。
●良かった点
シンプルな構図でまとめられており、雪原にたたずむ樹の様子を上手く描いています。真っ白な空間の中、樹の下に落ちる影がアクセントになっています。
●アドバイス
主役の樹をもう少し左に配置すると良かったと感じます。シンプルな構図だけに3分割構図を意識するとよいでしょう。それから写真がやや暗く感じました。粉雪の舞う天候の中、撮影条件としては今一つだったのかもしれませんが全体を明るくして雪の白さを強調。グレーに写っている全体が明るくなれば作品としても成立すると感じました。天候に合わせて撮り方や露出補正を柔軟に考えると良いでしょう。それからもう一つ。この作品は「樹を主役」に扱っている意味合いですね。それは良いとして、他に樹を小さめに扱った「広い空間が主役」の構図も一緒に撮っておきましょう。
●良かった点
素晴らしい雲海との出会いでしたね。背景の山並みを見せつつ、主題のお城はハッキリと見えるタイミングを待ちシャッターを切られています。連なる雲海の奥行きを縦構図でまとめたところも秀逸です。
●アドバイス
明るめに調整して雲の白さを出せばさらに良くなります。雲海の露出は「順光」なのか「逆光」なのかによって判断すると良いでしょう。この作品は「順光」。作品自体は肉眼で見ているよりやや暗めに写っていると思うのですが、それを肉眼で見ている風景の明るさに近づけるようイメージしましょう。逆に「逆光」の場合は光と影を描くために暗めにまとめることがポイントです。
●良かった点
滝の奥、木々への着雪が美しいですね。モノトーン調でまとめられた作品は水墨画を思わせるようです。
●アドバイス
滝の流れに対するシャッタースピードは良いのですが、降りしきる雪の模様が煩雑になってしまい主役の滝が霞んでしまいました。水の流れ自体はもっと低速シャッターでも問題ないので1秒~2秒くらいにシャッター速度を設定、雪の模様が消える程度にすれば滝が引き立ち、さらに静寂が感じられる様な雰囲気に仕上がるでしょう。
●良かった点
鹿が木の葉に飛びつくシーンを逃さず瞬発力よく捉えられています。鹿の扱いは小さいながらも、背景が雪景色で明るくシルエットになるため上手く主役に視線誘導ができています。画面上部の木が黒々としていることから降雪の様子が映えました。
●アドバイス
やや露出が暗い印象を受けました。雪の白さが出るよう撮影後で構いませんので、もう少し明るめにレタッチしてみてください。降雪でかすんでいる場合どうしてもメリハリ感に欠ける写真になってしまいがちなのですが、それで改善できます。全体を明るくしても鹿は木陰の暗い所にいるのでシルエットの印象が弱くなってしまうことはありません。それから鹿が左向きの方向性を出していますので右側をトリミングして鹿の位置が画面中央より、やや右側に位置するようトリミングすればもっと写真が引き締まりますよ。
●良かった点
ブルーの湖面の色がよく出せており雪景色と相まって寒さが伝わってきます。太陽が低い時間帯の撮影により光と影が入り組み、特に水面に落ちる影模様が画面にリズム感を作り出しています。
●アドバイス
日なたと日陰の明暗差が大きく、その状況を生かし切れていないと感じます。露出調整が難しいシーンなのですが、画面右側の積雪部分を主役と考えもっとアンダー露出にすれば、より陰影が引き立ち作品が締まった印象となりますし湖面のブルーも強調されます。それから画面左側の山の稜線の入り方が中途半端に見えます。画角を広くして稜線を入れ、しっかりと青空を見せられればなお良かったでしょう。もしくは青空をカットしてしまうのもアリです。
●良かった点
穏やかな天気の気持ち良い山岳写真です。しかし画面右側の急な登攀の跡を見ると、ここまでたどり着くことが容易でない険しい冬山である事がわかります。右下の雲海がそのスケール感と高さをより印象付けていますね。実際の稜線と影の稜線、その2本のラインの取り入れ方が良くシンプルな構図でも飽きさせず、人物をあえて小さめに見せたところもグッドです。
●アドバイス
空の面積をもう少しトリミングで減らせば稜線が天を衝くイメージになり、高度感がより強調されます。その他は申し分ありません。センサーにゴミが付着していると思われますのでメンテナンスしておいて下さいね。
●良かった点
広角域24mmで大楠を見上げ、その大きさを表現しています。降りしきる雪が黒っぽい背景のおかげで上手く描かれました。フラッシュを使用しているとの事ですが、その点について詳しくは後述いたします。
●アドバイス
画面左上の白い空が雪の印象を弱めています。5:4の比率でトリミング、空の部分を極力カットすれば雪が協調されますし、画面が引き締まります。もしくは撮影時に状況が許すなら、もう少し左側に動いてアプローチすればカメラの3:2比率でも空の面積を減らせたと思われます。それからフラッシュを使用する場合ですが、絞りを開け気味にしておくのがおすすめです。本作品では16まで絞っている事からよく見るとフラッシュの当たった部分、雪の前ボケが硬い印象です。焦点距離24mmから考えるとパンフォーカスにする場合でも絞りは5.6~8程度で十分です。絞りを開けて雪の前ボケをもっと柔らかく描けばなお良かったでしょう。
●良かった点
柿の背景に木が生い茂っている箇所を選ぶ事で、雪の存在感が増しました。寂しげになってしまいがちな冬の風景に鮮やかな柿の実が彩りを加えています。
●アドバイス
背景がやや煩雑な印象を受けました。周辺の状況によるのですが、左右もしくは上下に高さを変えカメラを構える位置を探ってみましょう。背景の枝を上手く外すことが出来たなら、よりスッキリとした画面構成になったと思われます。また、柿が大きくなっても良いので焦点距離の長いレンズを使い、背景をぼかすのもアリですね。それから雪がわずかにブレており点になりきっていません。ISOを高く設定して、もう1段階ほどシャッタースピードを速くして雪を写し止める。もしくはISOを低く設定して雪を線で描く。そのどちらかにするとよいでしょう。複数枚シャッタースピードを変えて撮っておられるとの事ですので別カットを探してみて下さいね。
今回の写真寸評いかがでしたか?暖冬傾向もあり年々冬景色を撮影するのが難しくなっているように感じます。
しかし条件に恵まれない時ほど人とは違う写真を撮るチャンス。細かなシーンにも目を向けて独創性のある作品を生みだしましょう。前回の寸評と同じく、ご紹介する写真がご応募作品の内の一部となってしまいましたが、今回寸評できなかった方、申し訳ありません。引き続きテクニック記事と連動する形でこのような企画を行なっていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師
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ツバキは1月から4月にかけて開花する花で、ツバキ科ツバキ属の常緑樹です。日本原産の花で古来よりなじみ深く、『万葉集』にも「つらつら椿つらつらに」と言葉のリズムを楽しみつつ、大きく赤いツバキが点々と咲く春を思った歌が登場します。花色は赤が主で、白、ピンク、斑入りなどがあり、品種改良が盛んです。同じツバキ科のサザンカと見分けがつきにくいのですが、サザンカは秋から冬にかけて咲くのに対し、ツバキは冬から春です。また、サザンカは花びらが一枚ずつ落ちますが、ツバキは花ごと落ちます。サザンカの花芯は広がっていますが、ツバキは筒状です。花を見かけたら、ぜひ、ツバキかサザンカか、見分けてみてください。
ツバキが飛び出したように見えますね。これはイルミネーション撮影で使われる「露光間ズーム」というテクニックを使っています。露光中にズームを広角から望遠にズームすることで画角が変化し、白い部分が放射状に写るのです。手動でズーム操作をするため、シャッター速度がある程度遅くないと撮れません。薄暗い日を狙うか、NDフィルターで光量を落としてください。ここでは0.5秒間に広角から望遠へとズームしました。ブレを防ぐためにも三脚は必須です。全体的に画角が変化しているのですが、白い部分は明るく目立つので、効果が感じられやすくなります。このテクニックを使うときは曇り空を入れて撮るといいでしょう。
「乙女椿」という品種は“千重咲き(せんえざき)”と呼ばれ、多くの花びらが重なるのとともに、ツバキの特徴でもあるシベが花びらに隠れています。丸型で整った花びらが美しく、その重なりだけを切り取りました。バラでもこのような撮り方をすることがありますが、背景は少しも入れずに花びらだけで構成するにはクローズアップする必要があります。通常のレンズで寄れないときはマクロレンズがあるといいですね。また、花びらの重なった部分は陰になりますが、直射日光が当たるような状況では陰がキツく感じます。日陰か逆光になるような向きで咲いている花を選ぶといいでしょう。
草花の作品では背景に花の彩りをぼかして入れることが多いのですが、木の花は周囲の花との密度が少ないものが多く、いつも背景作りに悩みます。そこで、ここでは木漏れ日の丸いボケを入れました。ただの緑の背景よりも輝く木漏れ日があることで要素が増え、作品の印象も明るくなります。花と重なるようにボケを配置したのには理由があり、花に視線を行きやすくするためです。ひとはシャープな部分や明るい部分に視線が行くので、ピントを合わせた花と明るいボケを重ねることで、より見せたい部分に視線が行きやすくなります。木漏れ日のボケは重ねるだけではなく、対角側に配置することでバランスを取ることもあります。いろいろと試してみてください。
木漏れ日に続いて、背景選びに困った時の選択として黒バックがあります。中途半端な葉っぱや枝のボケよりも、真っ黒な背景は深みがあり、被写体を浮かび上がらせる効果があります。まるでスタジオで撮影したみたいに見えますね。日の当たった花に対して日陰を背景にすると、明暗差が生じて黒バックになります。ここでは逆光側の幹を背景にしました。黒い面積が多いので露出はマイナス0.7EV補正で適正露出となりました。幹に光が当たれば薄茶やグレーのように明るく写りますが、逆光では幹が陰になるので黒く写るのです。単純な背景だからこそ、花を真ん中に入れてインパクトを強めました。
前の黒バックの写真と同じエリアで撮影したのですが、こちらはその逆で、白バックです。花は日陰で背景が日向だったので、花よりも背景が明るい状況です。露出は花に合わせてプラス3.3EVという大幅な補正をかけているので、背景は明暗差から真っ白になりました。写真ではあまり見かけませんが、無背景でやわらかな世界は日本画の花鳥画に似ています。花を左、幹を右に入れて左右のバランスを取っています。しかし、花が向いている方向を空けるのが基本ですから、ここでは本来左に空間を作るのですが、早春の儚い雰囲気に合わせて、花が向いている方を切り詰めて、窮屈なフレーミングにしています。
ツバキとサザンカの見分け方として、花の落ち方の違いを紹介しました。サザンカは花びらが一枚ずつ落ちていくのに対し、ツバキは花ごと落ちます。ツバキは花びらと雄しべがくっついているので、落ちるときは花全体が一気に落ちるのです。花ごと落ちる姿が首切りの様子と重ねて不吉とされますが、それは近代から広まったようです。江戸の武士は一気に落ちる姿をむしろ潔しと思っていたとか。どう見るかで印象は変わるものですね。落ちた花ですから、旬を終えているはずですが、外見では痛みがなく綺麗な花も見られますので、それを探して写しました。花の周囲を暗い色でまとめることで、ツバキの花だけが浮かび上がるようにしています。
草花に比べると、ツバキをはじめとした木の花は密集度があまり高くありません。そのため、背景を彩りで埋めることは難しいものです。枝の先にたまたま綺麗な花壇があるならそれを活かすこともできそうですが、そう都合よく色のある被写体がないことがほとんどです。そこで、多重露出を使って花の彩りを重ねてみました。核となるツバキの写真はシンプルに写し、重ねた方のカットはレンギョウとサクラをぼかしたものです。黄色とピンクがちょうど半々になるように配置し、大きくぼかしました。ぼかす度合いを変えたり、重ねる色を変えたりしてバリエーションを増やしてみるといいでしょう。
神奈川県の鎌倉は一年を通じて花を楽しめるお寺が多数あります。お寺によって花の種類は異なりますが、ツバキは多くのお寺で見られます。カメラ片手に花のお寺めぐりも楽しいものですよ。苔むした石鉢に竹樋から水が流れていました。それだけでも風流なのに、そこにツバキが浮かべられていました。庭師の方が飾られたのでしょうか。波紋がわかるように真上から狙いました。花と竹樋とは高さの差があるので、花にピントを合わせると樋はボケますが、程よいボケ具合なのでかえって目立たなくなって好都合でした。花を終えても、まだ美しさを残すツバキならではの姿だと思います。
ツバキは昔から愛されている花なので身近な場所で見られますし、品種も多様です。和の風情を感じながら愛でるといいでしょう。しかし、被写体として、木の花は枝の処理をうまくしないと背景が煩雑になるという難しさもあります。枝の重なりが少ない枝先の花を選ぶことと、すぐ後ろに枝があるとボケにくいので、背景が遠くになるようなポジションを選ぶといいでしょう。今回ご紹介したような白バックや黒バック、木漏れ日のボケなども取り入れてみてください。ツバキに姿が似ているサザンカの作品もいずれお見せしたいと思います。お楽しみになさっていてください。
写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。
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シグマから意欲的な超望遠単焦点レンズが登場しました。その名は「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」。スポーツラインに属する圧倒的高性能かつ耐候性能を有したアクティブなフォトグラファー向けのシグマらしいレンズに仕上がっています。
「500mm」の超望遠レンズを頭の中に思い起こしてください。それはきっと大きくて長く、そしてとても重量級のレンズを想像することでしょう。持ち運びも大変で、取り扱いにとても神経を使う一本をイメージしたのではないでしょうか?また、他メーカーから登場しているライトウェイトなレンズも存在しますが、特定の条件下で発生する独特の描写が気になっているフォトグラファーも多いことでしょう。
この「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」はそれらの問題を高次元でクリアした、シグマの技術力が結集した最新の超望遠単焦点レンズになっているのです。
「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」はレンズ構成14群20枚。特殊低分散ガラスFLD3枚、SLD2枚を採用しています。加工精度のとても高い大口径の特殊低分散ガラスを複数枚採用することによって、回折光学素子を使用せず、高い描写性能を実現しているということです。同時に大幅な軽量コンパクト化も達成し、取り回しの良さをも手に入れています。Lマウント版の「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」は最大径x長さが107.6mm x 234.6mmで、質量は1,370gと気軽に携行できるサイズ感になっているのがうれしいですね。これならば野生動物を撮影しに山へ分け入るときや、ブラブラと500mm超望遠スナップで長時間歩くときでも疲れ知らずですね。
もちろんオートフォーカスと手ブレ補正機能も素晴らしいものになっています。オートフォーカスはリニアモーターHLAによって応答速度が高速なので、スポーツや野鳥などの撮影に最適です。
そして最新の手ブレ補正アルゴリズムOS2採用によって5段分もの威力を発揮。低照度での環境下はもちろん、モータースポーツなどの流し撮りにも対応し、「Sports」ラインの名にふさわしい性能となっています。もちろん高いビルドクオリティとともに防塵防滴性能も有しています。あらゆるシチュエーションにおいて超望遠撮影が楽しめるレンズになっていると言えます。
今回は「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」をLマウントの「SIGMA fp」、「SIGMA fp L」、そしてパナソニックの「LUMIX S5」に装着してブラブラ撮影を楽しみました。軽々と500mmで超望遠域スナップ撮影を存分に堪能できました。オートフォーカスも高速かつ正確で、手ブレ補正もよく効き、気持ちよいシューティングとなりました。
街角に駐輪中のロードバイクを狙いました。そのフレームの質感や使い込まれたサドルの描写がいい感じです。ヘルメットに写り込む店先の様子までこのレンズは写しとっています。
「500mm」という焦点距離はまさに異次元です。遠い場所から被写体をググッとフレーム内にたぐり寄せることが可能です。「遠い目線」で街を歩けば思いがけない光景があなたの一枚になることでしょう。
運河に係留中の屋形船を狙いました。フォーカスも気持ちよく高速で決まり、舳先から船室の細かい描写も圧巻ですね。70-200mmクラスのサイズ感からは想像もできない絵を楽しめます。
公園のベンチで休憩中、ふと気になって向かいにあるカフェの窓に「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」を向けました。すると美しいワイングラスがファインダー内に飛び込んできたではありませんか。超望遠でのスナップは楽しいですね!
浅草寺の仲見世をビルから見下ろしてみました。観光客で賑わうその様子をグーっと遠近感を圧縮してキャプチャーできました。行き交う人々の表情まで「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」は解像してくれました。
海に沈まんとする夕陽にカメラを向ける外国人観光客。その姿をはるか後方から撮影しました。強力な反射光でもクリーンでヌケ感のある描写がこの「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」の性能を物語っていますね。逆光や点光源にも強いので、日の出や日没、夜間の飛行場などでも活躍することでしょう。
高齢者で賑わう巣鴨商店街を訪れました。大勢の訪問客に揉まれながら歩いていたのですが、パッと一瞬だけ立ち止まって「SIGMA fp L」のシャッターを切りました。商店街のゲートをイージーに撮ったカットですが、ピントもバッチリで手ブレもなし。シャープさと色再現性も文句なしという感じですね。頼もしいレンズです。
皇居脇に生える木々の間から夕陽を狙いました。フレアやゴーストを恐れることなく、イメージどおりにシャッターを切ることができる回折光学素子不使用レンズ「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」の威力を垣間見ることができました。
夜、丸の内。とても素晴らしい効きの手ブレ補正機能のおかげで500mmという超望遠レンズでもスナップ撮影ができてしまうのです。背景に写る点光源のボケも自然でいい雰囲気です。このレンズは「500mm」レンズのフィールドを大きく広げてくれる存在だと言えるでしょう。
こちらに向かってくる江ノ電を連写で狙いました。パナソニック「LUMIX S5」と「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」は確実に合焦し続け、シャープなカットを提供してくれました。Lマウント版はシグマ製テレコンバーターに対応しているので、より遠い被写体でも迫力あるカットを手にすることができるはずです。
レンズ構成:14群20枚(FLD3枚、SLD2枚)
画角:5.0°
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
最小絞り:F32
最短撮影距離:320cm
最大撮影倍率:1:6
フィルターサイズ:Ф 95mm
最大径✕長さ:Ф 107.6mm x234.6mm
質量:1,370g
※数値はLマウント用です。
※長さはレンズ先端からマウント面までの距離です。
付属品:ケース、レンズフード(LH1034-02)、フロントキャップ(FRONT CAP LCF-95mm III)
リアキャップ(LCR II)、三脚座(TS-151)
このレンズは日常的に持ち歩ける500mm超望遠単焦点レンズと言えます。イメージ的には「SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports」クラスという感じです。ですので気軽にカメラバッグに入れて携行し、人と違った異次元のスーパーテレフォトの世界を味わうことができる一本になっています。
「軽くて小さいけど使いこなせるか不安」という心配も無用です。小気味よく決まるオートフォーカスに、ファインダー像もビシッと静止する手ブレ補正機能とで、ビギナーフォトグラファーでも安心して超望遠撮影を楽しめることでしょう。心地よい操作感の絞りリングや、アルカスイス互換の三脚座など使いやすさも満点です。
一度カメラに装着してこのライト感を味わってほしいものです。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。
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ユーザー登録が楽しくなってくると、つい忘れてしまいがちなことがあります。
ひとつはデフォルトの意義。メーカーがカメラを作って設定を決めるとき、不特定多数の人たちが扱いやすく、そのカメラと仲良くしやすいように、いくらか意地悪な言い方をすれば「無難」にしてあるはず。
そのままで自分にピッタリということは難しいかもしれないけれど、初期設定の理由を見失わないようにしたいと思います。そのカメラを使う意味が薄れてしまうと勿体ない。
もうひとつはメインユーザーの設定。ユーザー登録は、特定の被写体や条件に合わせてチューニングするので呼び出すときに早くて便利な反面、なんでも撮れる万能の設定から遠ざかっていくことが多いです。スナップシューターであるGRが条件を選ぶようだと本末転倒。不意にチャンスが訪れ、事前に準備できないのがスナップの定義だから、基本はシーンタフネスに優れた設定にしておきたいところ。
これらを頭の隅に置いておき、GR IIIとGR IIIxで共用できる理想の設定を求めて、常にアップデートしたいと考えています。
ここからは夢で、いつかその設定を外部ファイルに書き出せるようにして、世界のみんなとシェアできるようになったらと願っています。スウェーデンで雑貨を撮っている人が作った設定を使い、姉妹都市である愛知県岡崎でポートレートを撮るとか。あるいは旅先に合わせてインストールできたら楽しそう。
詳しくは前回の記事を読み直していただくとして、GR IIIxの3つの設定を振り返ると、U1がメモ感覚で素早く撮れるスクエア&クロスプロセス、U2はソフトモノクロ、U3はミックス光や都市夜景に合わせたスタイリッシュなトーンで、わりに作り込んだ変化球が中心になっています。
GR IIIは伝統的なGRの直系なので、広角レンズの魅力が活きるハイコントラストなモノクロは入れたいところ。でもこれはU2に回します。
U1はマイブームによって理想を探し求めて変化してきたので順に紹介します。
今はGR IIIxのU3に入れてあるレトロをベースにした設定は、もともとGR IIIから始めました。しばらく撮っているうちに狭い画角のほうが扱いやすいと思って移植したかたちです。
レトロは広い画角になってしまうと世界観を濁らせるものが入ってしまいがちで、28mmよりは40mmのほうが楽に使えると思います。
スマートフォンのプロセッサーはすごいですよね。強烈な逆光でもシャッターを押すだけ。それを見て「おっ、いいじゃん、せっかくだからGRでも」と持ち替えて、そのまま撮ったらまずまともに写りません。そこで「スマホ最強!おっきなカメラなんて時代遅れ!」と言われるようなら、反論したいことがあるので後ほど。
まずはHDRの効果を弱めて記念写真に使えるくらいにしたい。そこでレンジの広さだけを活かして作り込んだ設定がこんな感じ。
上に書いた逆の考えをすれば、スマートフォンは繊細な表現に向きません。1/3段の露出補正、100Kの色温度の違い、1度の画角の変化、そこで勝負できない。GRはせっかく「小さいのに高画質」をウリにしているんだから、短所を消すのではなく長所を伸ばそうと思い直します。
ポジフィルム調を追い込んで、シャドウ域のボリュームを広げつつ色調を好みに調整。しばらく使ってみて気に入ったので、メインユーザーの設定に昇格させました。いまのGR IIIの軸です。
メインユーザーに本格派の王道を入れたので、その対比として個性的で強いものを。映画「トゥモローワールド」を見直して思いついたはず。ブリーチバイパスほど極端じゃないけれど、現実味がなくて暗く、被写体とフィットしたとき重厚でカッコいいです。
GR III/GR IIIxはキー(明るさの基準値)を変えられるため、自分がよく撮る光に合わせて露出補正なしでビシッとハマるところを探しました。平均測光ではなくスポットや中央重点も試したのですがキーを変えるほうが安定していて使いやすかったです。ハイライトは硬くして暗いトーンのなかにアクセントができるよう狙っています。ジョニ・ミッチェルの曲から「Both Sides Now」と名付けました。物事の両面、光と影、悲しみと喜び、みたいな。
世界的なロックバンドU2のレコードジャケットは、アントン・コービンという写真家が撮っています。初期の頃は増感して粒子が荒れたモノクロがトレードマークになっていて、ソリッドなサウンドとアイルランド出身ならではの重い雰囲気とマッチ。とくに「Rattle and Hum / 魂の叫び」は、「おおっ、GRのハイコントラスト白黒みたい!」(本当は逆)と心躍るほどカッコいいですからサムネだけでも是非。
デフォルトが流石の安定感なのでそのままでもいいですが、感度を上げて絞り込んでパンフォーカス気味に撮れるようにしつつ、露出を細かく狙えるようスポット測光にしてみました。画像加工系アプリなどで提供されているものも含め、いろんなメーカーのハイコントラストなモノクロを使ってみて、GRは二階調じゃなく強いコントラストのなかに見えるグレーが美しいと感じたので、そこの狭い領域を活かしたいと思って微調整。
ほとんど無敵でじゃんじゃん撮れましたが、ときどき「これオレの写真かな・・・」と不安になりました。そこで設定は残しつつハードモノトーンをメインに。
最近のモノクロ映画で気に入った「Belfast」から名前をもらいました。銀塩の再現というよりはデジタルならではの良さを追求したトーンで、往年のスナップ写真のような構図、光の捕まえ方、カラーとミックスするセンス、もちろん映画としても、すごくよかったのでおすすめです。
GR IIIは自転車で旅に出るとき持って行くことが多く、レンズが格納されて小さいからバッグどころかケースもキャップもいらず、上着のポケットに入れておけます。自転車にまたがったまま片手で起動してシャッターが切れるため快適。後で知ったのですが自転車乗り(ローディと呼びます)にはGRファンが多くてSNS用のタグもあるそう。
コンパクトカメラを一台だけポケットに入れて日帰りの旅をして、プリントされた写真をアルバムに貼っていく・・・そんな雰囲気を目指して設定を決めました。ポジフィルム調の彩度を上げてキーを下げています。
気に入っていたのに長く使いませんでした。コロナ禍のモヤモヤが染み付いていて、マスクを外すタイミングで何かを変えたかったんでしょうか。この気軽さがスタイルとエクリチュールの違い(前回の記事を参考に)で、スタイルを変えるには覚悟と時間が必要なのに、これなら服を着替えるように交換できるところが魅力です。
気分を変えてネガフィルム調にしました。GRのイベントで公開したので、そのときのものを載せておきます。名前は大好きな曲から。
28mmと40mmはまるっきり個性が違うというほど遠くなくて、プライマリが28mmならサブは50mm、もし40mmがプライマリならサブは24mmのほうがバリエーションは豊かになるように思います。28mmと40mmは少しだけ重なっていて使い方次第ではかなり似せられる。
そのおかげでどちらかだけでも不満なく扱えるわけですが、二台あるならそれぞれのGR IIIの個性を引き出してやり、一台だけで持ち歩いているときにもいろんな写真が撮れるようにという狙いがあります。一台でも完結していて、でも二台が合わさると相乗効果が生まれる。
世界に一台だけ、理想のGRに仕上がったぞ!
これで究極の二台持ちができる~
と思っていたのに壊してしまい、リセットされて戻ってきました。この連載の初回を読み直してください。呆然として、こんなに悲しい思いをするくらいならデフォルトのまま使おうかと迷ったくらい。その失望が記事を書くきっかけになっています。
これで完結編ですから最初から通して読み直して、何か参考になれば嬉しいです。ぜひ自分だけのGRに育てて、楽しくスナップを撮ってください。何も設定を変えなくても手に馴染んできたら、それだって自分だけのGRに育ったということです。
■写真家:内田ユキオ
新潟県両津市(現在の佐渡市)生まれ。公務員を経てフリー写真家に。広告写真、タレントやミュージシャンの撮影を経て、映画や文学、音楽から強い影響を受ける。市井の人々や海外の都市のスナップに定評がある。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞に寄稿。主な著書に「ライカとモノクロの日々」「いつもカメラが」など。自称「最後の文系写真家」であり公称「最初の筋肉写真家」。
富士フイルム公認 X-Photographer・リコー公認 GRist
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トキナーから発売されている超望遠MFミラーレンズ「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」は、超望遠であるにも関わらず、長さが僅か168mmと超コンパクトなマニュアルフォーカスのレンズです。しかも、重さは約725gと信じられない軽さ!今回は、ピントを合わせる楽しさを実感できるレンズ「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」で撮影した野生動物写真とともに、その魅力をたっぷりご紹介したいと思います。
レンズの低価格化を実現するために「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」は、非常にシンプルな作りとなっています。レンズには三脚座が付いていないので、カメラボディー側の三脚座を使用します。フードはねじ込み式で、フードとレンズボディー共にアルミ軽合金を採用しており、軽量化と同時に堅牢性も意識した作りとなっています。
マニュアルフォーカスのレンズはフォーカスリングの滑らかさや、トルクの重さがとても重要です。フォーカスリングが軽いとピントを合わせる際、ピントが定まらなかったり、フォーカスリングに少し触れただけで、大きくピントが動いてしまったりと、精密なピント合わせが迅速に行えない要因となります。
「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」のフォーカスリングは適度な重さがありながらも、非常に滑らかに動作するため、野生動物をマニュアルフォーカスで追い続ける際も、一度外れたピントの立て直しを精密かつ迅速に行うことができるので、マニュアルレンズの醍醐味でもある「ピントを自分で合わせる楽しさ」をより一層味わうことができます。
フードはねじ込み式となっています。素材はレンズボディーと同じアルミ軽合金製のため、カメラバックに他機材と収納する際、機材同士が干渉して傷が付かないようにする着意が必要です。
マニュアルフォーカスの「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」は手ブレ補正が付いていません。超望遠のレンズでもあることから、様々なブレに対しては非常にシビアです。そのため、三脚撮影が推奨されます。
また、電子接点がないのでカメラがレンズを認識しないため、カメラの設定の「レンズなしレリーズ」を「オン」にしなければシャッターが切れません。事前に設定変更をしましょう。
シャッターを切る際にも、ブレを起こさないように細心の注意が必要です。そのため、三脚とリモートレリーズ等を併用し、様々なブレによる影響を最小限にすることが重要です。
超望遠の「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」はAPS-Cのカメラでは35mmフルサイズ換算1350mmとなります。しかも、これだけ超望遠でF値11固定なので、皆さんが気になるのはその「解像力」ではないでしょうか?
ニホンキジのホロ打ちを「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」で撮影しました。これだけシャープな解像力を提供してくれましたが、このレンズの価格を考えれば大変満足できる内容だと思います。
F値11固定の深い被写界深度を効果的に活用するために、キジの大きさを加味して、適切な距離を取ることにより、キジの瞳を起点として被写界深度内にキジ全体を収め立体感のある写真が撮影できました。
近距離の撮影でもF値11固定の被写界深度により、被写体の顏全体をフォーカスしてくれるので、顏のしわや細部の毛並みまで忠実に表情を作ることができます。
遠距離の撮影では、F値11固定の深い被写界深度の効果で平面的に写真を撮影することができます。「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」の特性を活用して古来の日本画や掛け軸のように、平面に描かれた花鳥風月をイメージした作品を撮影してみるのも良いのではないでしょうか。
近年オートフォーカスの著しい進化で、「ピントは全てカメラ任せ」になり、「ピントが合わないのはメーカーや機材のせい」とされる一方で、マニュアルフォーカスはピントの照準を野生動物の素早い動きに、いち早く自分で合わせ続けながら撮影するため、ピントの良し悪しは自分の「腕」に委ねられます。
一発勝負のゲーム性があり「撮れるか?撮れないか?」適度な緊張感を味わうことができるのも、マニュアルフォーカスの面白さです。
陽炎や水蒸気の影響で描画性能が不安定になる条件でも、「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」で撮影した写真は、荒れることなく、柔らかくふんわりした個性的な写真が撮影できます。悪条件を上手くソフトフィルター効果に変換してくれるので、諦めることなく楽しく撮影ができました。
「SZ900mm PRO Reflex F11 MF CF」は反射式光学系を採用したミラーレンズのため、特有のリングボケを楽しめることが魅力の一つです。
うるさい背景でも「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」のリングボケを活用することで、リズムや流れで背景をまとめてくれるので良い効果を発揮してくれます。
野原に佇むニホンザルを撮影しました。背景には満開の桜を入れたので、ポップなピンク色のリングボケになってくれました。野原にも光が当たり、沢山のリングボケが発生して不思議な写真になりました。
シンメトリーのタイミングで水面のキラキラを「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」で撮影しましたが、動きのある水面のリングボケは歯車のようになりました。背景の状況でリングボケも様々な表情を見せてくれるので、撮影していてとても楽しいです。
授乳するニホンザルの親子のポートレート。
この場合も背景のガチャつきを、丸みのあるリングボケを活用して幾何学模様に変換することで、被写体を際立たせる効果が生まれました。
美しいリングボケが手軽に楽しめる「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」の活用法を、撮影した野生動物写真をご覧頂きながら解説いたしましたが、いかがだったでしょうか?
同レンズのコストパフォーマンス抜群の価格や解像力をはじめ、「機材性能と撮れ高」だけを重視した近年の無機質な野生動物撮影から脱却し、マニュアルフォーカスで自分の「腕」を信じ、ピントの照準を合わせ続けて撮影する「不便な楽しさ」をご理解頂けたかと思います。
誰でも簡単に不自由なく機材性能だけで野生動物が撮影できる昨今だからこそ、アナログの原点に立ち返り、「撮れるか?撮れないか?」やってみないと分からない肩の力を抜いた「本気の職人撮影」を楽しんでみるのも、近年の高性能撮影機材の「有難み」を実感する上で非常に良いのではないでしょうか。
ゲーム性のあるマニュアルフォーカスの「難しいが撮れた時に100倍嬉しくなる」撮影にあなたがはまるのも時間の問題です。(笑)
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師
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2015年に発売された「SIGMA dp3 Quattro」は、被写体の質感を驚くほどリアルに描き出し、その場の空気まで圧倒的な解像力で表現する、Foveonセンサー搭載のレンズ一体型カメラです。
残念ながら現在は販売終了となっておりますが、中古市場でも根強い人気の本機の魅力を、スナップをご覧いただきながら紹介いたします。
dp Quattroシリーズには、画角の違う4機種がラインナップされています。dpの後の数字が小さいほど広角、大きいほど望遠になります。「SIGMA dp0 Quattro(35mm換算約21mm)」「SIGMA dp1 Quattro(35mm換算約28mm)」「SIGMA dp2 Quattro(35mm換算約45mm)」「SIGMA dp3 Quattro(35mm換算約75mm)」。
筆者がdp Quattroシリーズで一番最初に手に入れたのが、ラインナップ上の最望遠画角の「SIGMA dp3 Quattro」です。その理由として、どちらかというと広角よりも望遠画角が好みということもありますが、Foveonセンサーによる浮き出るような立体感を、望遠画角の大きなボケがさらに際立たせてくれるのではないかという期待があったのと、一番近接撮影ができるからです。
本機の魅力は、とにかくその描写性能に尽きます。今まで写っていなかった色が写っている!と、妙な日本語が飛び出してしまうほどに、構図内の被写体を細かいグラデーションで繊細に色付けしてくれます。
動物の毛並み、芝生や葉っぱ、木のささくれの質感、金属とプラスチックの温度まで、豊かな階調で描き出します。特に白とび、黒つぶれギリギリの階調の粘りは素晴らしく、本機を持つとしっとりとしたアンダー露出のカットが多くなるほどです。
搭載されているレンズはSLDガラス1枚、非球面レンズ1枚を含む8群10枚の構成で、絞り羽根枚数は7枚。レンズ一体型の本機ですが、別売りの本機専用の1.2倍テレコンバーター「CONVERSION LENS 1.2X FT-1201」をレンズの前面に装着すれば、描写性能そのままにさらなる倍率を楽しむこともできます。今回は身軽なスナップをテーマに、テレコンは使用せずに撮影していますが、バッグに忍ばせておくと楽しいアイテムです。
ピント合わせは基本的にはAFで行いますが、控えめに言って、少々おっとりとしたAF性能です。走っている子供を撮るよりも、顔しか動かさずに草を食べるヤギを撮るほうが向いています。だから、撮れるものだけ撮ればいいと割り切れるほど、他に類を見ない画を生み出すカメラだと断言いたします。
本機の得意な表現のひとつに、細かい線の描写があります。この赤い飾りの玉の部分は、細い糸を巻き付けたものでしたが、拡大して見ると、その細い糸の一本一本が、色潰れせず描かれているのに驚かされました。
いわゆる高級コンデジと言われる部類の本機ですが、屋外での背面の液晶画面は見やすいとは言い難く、SIGMA dp Quattroシリーズ専用のビューファインダー「LCD VIEW FINDER LVF-01」を装着することで、視認性はぐっと上がります。
ですが筆者は、本機を使うときは不便を楽しむをモットーとしています。撮影時はフィルムカメラで撮影している気分で、多少見にくくてもざっくりと構図の確認をする程度に留めて、家に帰って大きなモニターで見て「おおー!いい感じに撮れてる!」と驚くひとり遊びをしています。
このススキのカットも、風と太陽の強い沖縄の海辺という条件下で、ピントの打率を上げるために、いつもの倍以上の枚数を撮るという手法で手に入れたカットです。
本機はAFもですが、どんなに高速のメディアを使っても、記録もおっとりとしています。1枚撮影するとゆっくり丁寧に記録をするので、連写なんて以ての外です。いいんです。このススキの穂の柔らかな手触りを感じさせる質感を得られるのであれば、このカメラで撮れるものを撮ることが楽しいのです。
逆光時にはレンズの性能も相まって、ふんわりとした優しさを感じさせる繊細な描写が美しい本機は、順光時には同じカメラとは思えないほど、ドラマティックな描写を生み出してくれます。
さみしげに枯れたハイビスカスを、それでも落ちずに粘る力強いイメージのまま撮影してみました。太陽の光が濡れたような艶かしさを出してくれて、ドラマティックな仕上がりとなりました。
カラーモードをサンセットレッド(-1)にすることで、よりコントラストを強調しています。
おっとりとしたAFなので動きモノは苦手ですが、カメラと被写体との距離が前後しない、このようなシーンではそれほど問題なく撮影できます。園内で購入した餌のお陰で、鯉の目線ももらえました。
ISO感度はあまり上げるとノイズが乗ってしまうので、筆者は使うとしてもISO400くらいを上限としています。それ以上のISO感度を使用するときは、ノイズ表現を楽しむくらいの気持ちで使用します。
本機の特徴のひとつとして、マクロモードが搭載されており、最短撮影距離22.6cm、最大撮影倍率1:3の撮影が可能です。
こちらは、オリオンビールを注いだグラスの表面の泡を撮影。スペックだけを見ると、それほど寄れないように感じるかも知れませんが、実際に撮影すると、かなり被写体に近付いてもシャッターが切れると体感できると思います。細かい泡までしっかり写っていて感動しました。撮影後は筆者が美味しくいただきました。
旅先の食事の写真は、スマホでは何を食べたかわかるように全体をはっきりと、その他のカメラではムード重視の写真を撮ることが多いです。冷める前にササッと撮影。撮影後は温かいうちに、美味しくいただきました。
本機を購入するときに、一緒に購入して欲しい物があります。予備のバッテリーです。この繊細で美しい画を紡ぎ出すために、カメラのなかで色々と頑張っているのでしょう。バッテリーはすぐに無くなります。1日外で撮り歩くときは、予備バッテリーを3個ほど持ち歩くと安心でしょう。
fpシリーズと同型のバッテリー「Li-ion Battery Pack BP-51」なので、fpとfp Lも所持している筆者の家には、数え切れないほどのバッテリーがあります。
中望遠画角と筆者の好みのため、寄りのカットが多くなりましたが、風景の描写ももちろん美しいです。Foveonセンサーがそこにある色情報を、偽色を混ぜないで正確に記録してくれるので、珊瑚の有無によって変わる海の色味を忠実に再現してくれています。
水面の情景や反射なども、Foveonセンサーのお得意な表現のひとつです。ちなみに、手ブレ補正機能などもついていませんので、しっかりとグリップして撮影しましょう。グリップ部分にバッテリーが入る構造で、丸みと厚みのあるデザインですので、大きな手の方でも握りやすいと思います。
太陽が反射した雲のグラデーション、それらを映す水面、深みのある色味。すべてを筆者好みに仕上げてくれた一枚です。早起きが報われました。高コントラストの被写体は、アンダー目に仕上げるとぐっとムードが良くなります。
車や鉄柵などの金属的な物の冷たい感触、その日の気温、街の空気感など、撮影したときを思い返せるほどの情報を、1枚の写真として仕上げてくれるのが、本機の最大の魅力とも言えます。
本機を使うときはRAWで撮影して、専用のソフトウェア「SIGMA Photo Pro」で現像しています。露出は撮影時そのままのことが多いですが、カラーモードを色々と変えて遊べるので、撮影時の気分と現像時の気分が変わっているときは、仕上がりのムードを変えて楽しんでいます。が、このソフトウェアも動作がおっとりとしていますので、コーヒーでも飲みながら、ゆったりとした気持ちで現像するのをお勧めします。
青と赤の発色がわざとらしくなく、自然に綺麗なんですよ。普段はピンク好きの筆者ですが、本機で撮影するときは、青と赤の被写体を好んで選んでいる気がします。
街角の何気ないスナップも、ボケが綺麗なので自然と捗ります。赤茶色の錆は、Foveonセンサーがお得意とする被写体でもあります。
カメラによってはディティールが潰れてしまうような瓶も、丸みのある柔らかなラインと少しベタベタとした質感まで、とても丁寧に描いてくれています。
筆者お得意の水族館での使用感はどうというと、色の表現は一生これで撮りたいと思うほど、信じられないほどリアルに、そこにある色味を描いてくれます。ただ、高感度が厳しいカメラなので、明るめの水槽に限ります。
丁寧で繊細な描写で、被写体の質感と温度をも伝えてくれるリアルな画を生み出す本機は、スペックだけでは計り知れない魅力があふれています。便利な最新機種を使っている方は、多少のもどかしさを感じるかも知れませんが、それを楽しむことができたら、このFoveonセンサーの魅力的な写真を自分のモノにすることができます。ぜひ、キタムラの中古製品にアンテナを張っておいてください!
焦点距離:50mm(35mm判換算:約75mm)
絞り値:F2.8~F16
絞り羽根枚数:7枚
レンズ構成枚数:8群10枚
撮影範囲:22.6cm~∞、LIMITモード
(マクロ、ポートレート、風景、カスタムより選択可能)
最大撮影倍率:1:3
大きさ:161.4mm(幅) ×67mm(高さ) ×101.8mm(奥行)
質量:465g(電池、カード除く)
撮像素子:FOVEON X3ダイレクトイメージセンサー (CMOS)
撮像素子サイズ:23.5×15.7mm
有効画素数:約29MP
記録媒体:SDメモリーカード / SDHCメモリーカード / SDXCメモリーカード/ Eye-Fiカード連動機能搭載
記録方式:ロスレス圧縮RAW(14-bit)、 JPEG(Exif2.3)、 RAW+JPEG
JPEG画質:FINE、 NORMAL、 BASIC
アスペクト比:21:9、 16:9、 3:2、 4:3、 7.6、 1:1
電源:専用リチウム充電池(Li-ion Battery Pack BP-51)
撮影可能枚数:約200枚(バッテリーパック BP-51使用、25℃時)
付属品:レンズキャップ / ホットシューカバー / ストラップ / バッテリーパックBP-51 / バッテリーチャージャー BC-51
バッテリー チャージャー用ACケーブル / USBケーブル / 使用説明書
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。
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今回は、今までとはちょっと違った機材選びのお話です。オールドレンズや古いカメラなどの入手方法は、店頭の中古カメラコーナーで買ったり、オークション・フリマなどを活用して購入したりします。そういった際によく「ジャンク品」という言葉を見かけます。「ジャンク品」と呼ばれるモノは非常に安かったりしますが、ジャンクと言うだけあって、不動品であったり傷・カビなどがあったりするものが多くなかなか手を出しにくいモノです。
とは言えたまには掘り出し物もあったりするので、筆者はお宝探し感覚でよくジャンクコーナーを物色したりしています。今回はジャンクコーナーで手に入れた格安オールドレンズで撮影したものを紹介いたします。
お店にジャンクコーナーがあると吸い寄せられるように立ち寄ってしまい、お宝さがしのような感覚でいろいろ手に取って見てしまいます。ジャンクというだけあって、不動品や程度の悪いものもありますが、たまに自分が欲しかったものに出会ってしまうと、それがジャンク品であっても無性に手に入れたくなります。
ジャンク品にカテゴリーされているものは、「返品・交換不可」が大前提になっているので購入は自己責任のもとで対応しなければなりません。また写りや状態は全て個体差が非常に大きくなります。
そこで、例えばレンズであればマウントアダプターを持参して自分のミラーレス機に装着して、その場で撮影してある程度の状況を確認することもお店によっては可能だったりします。少しでもジャンク品を確認して購入したい人は、そういったお店を選ぶと少し安心です。
ジャンク品でもフィルムカメラなどは、実際に撮影テストはできないのでジャンク品を購入するには少々ハードルが高いアイテムです。
筆者がよく訪れる「新宿 北村写真機店」の3Fにはジャンクコーナーがあり、バスケットで売られているジャンク品からショーケースに並べられているジャンク品まで様々なものがあります。バスケットへ造作に入っているジャンク品に手を出すのは少々難易度が高いですが、ショーケースに並べられているジャンクレンズなどは、訳あり商品でカビやチリ、ホコリ混入などがあるものがほとんどで比較的手が出しやすいジャンク品です。初めての方でも手を出しやすいのではないでしょうか。
筆者が今回入手したジャンク品のレンズは、ペンタックス「SMC Takumar 55mm F1.8」です。外観は非常に綺麗なレンズなのですが、レンズにカビやチリ、ホコリの混入ありのジャンク品で購入価格はなんと2,200円という超お手頃価格でゲットしました。
今回はジャンク品で購入したレンズ「SMC Takumar 55mm F1.8」と、手持ちのオールドレンズ「Super Takumar 55mm F1.8」後期型で撮り比べをしてみました。
ともにタクマーの名前を持っている焦点距離55mmのレンズです。55mmのタクマーレンズは中古市場では非常に多く見られるレンズなので、比較的手ごろな値段で購入する事が可能なレンズです。またジャンクコーナーでも見かけることが多いレンズです。市場では「Super Takumar 55mm F1.8」の方が人気があり、「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が人気も薄く価格も安く売られていることが多いようです。
ではこの2本のレンズのどんな違いがあるのか撮影をして比べてみました。あくまでもジャンク品で個々のレンズの状態や程度は異なるので、その点はあらかじめご了承ください。ジャンク品で安く購入したレンズでも、その個性や状態を上手く活かせれば、お得にフォトライフを楽しむ事ができます。
2本のレンズを撮り比べする前に、スペックの確認をしてみました。
Super Takumar 55mm F1.8 後期型 | SMC Takumar 55mm F1.8 | |
焦点距離 | 55mm | 55mm |
レンズ構成 | 5群6枚 | 5群6枚 |
開放絞り | 1.8 | 1.8 |
最小絞り | 16 | 16 |
フィルター径 | 49mm | 49mm |
絞り羽根枚数 | 6枚 | 6枚 |
最近接距離 | 0.45m | 0.45m |
マウント | M42 | M42 |
最大径x長さ | 57mm x 36mm | 59mm x 38mm |
重量 | 約215g | 約201g |
発売 | 1965年 | 1972年 |
比較してみた表で見ても、2本のレンズの基本的なスペックは同じですが、この2本の違いはレンズのコーティングとレンズの材質の違いにあります。「Super Takumar 55mm F1.8」後期型は、ちょっと特徴があるレンズで別名「アトムレンズ」と呼ばれています。この「アトムレンズ」というのは放射性物質を含んだレンズの総称です。レンズに使用されていた「酸化トリウム」は、レンズの屈折率の精度をあげる効果がある為描写力が上がったり、色収差のない画像を得たりする事ができます。しかし「アトムレンズ」にも欠点もあり、経年劣化によりレンズが黄ばんでしまう症状がでているものが多く見受けられます。
対して「SMC Takumar 55mm F1.8」は、レンズに高性能のマルチコーティング「Super Multi Coating」がされており、逆光時の性能などが向上しています。描写的には「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が発色良く現代的な写りをすると言われています。
実際にほぼ同じ条件下で撮り比べてみました。1枚目が「Super Takumar 55mm F1.8」で2枚目が「SMC Takumar 55mm F1.8」で撮影したものになります。それぞれのレンズの個体差もあるのですが、ほぼ同じ描写をしています。よく見ると「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が、やや発色が良い感じが見受けられますが、正直その差はほとんど無いと言っていいでしょう。ともに50年以上経過したレンズのため黄変やコーティングの劣化があり、写りそのものは大きな違いを見いだせなくなっています。
こうやって撮影した画像を比較して見てみると、ジャンク品で購入した安価なレンズの実力も侮れない感じです。どっちのレンズを選ぶかはレンズの外観の好みで選んでも良いのではないかと思えてきました。
お手頃な価格で購入ができるジャンク品は、実際に撮ってみないとそのレンズの実力を計ることができないですが、どんな風に写るのか予想しながらレンズを探して選んでみるのも楽しみの一つかもしれません。
実際にSuper Takumar 55mm F1.8で都内スナップ撮影をしてみました。写りそのものは、非常にニュートラルでオールドレンズらしい落ち着いた描写です。あいにくの曇り空の日の撮影でしたので、逆光などのシチュエーションがなくフレアーやゴーストを発生させた撮影ができませんでしたが、下の写真でも分かるように輝度差の激しい箇所(上部の窓の部分)には、色収差(パープルフリンジ)が盛大に発生しています。
中心部から左の玉ボケや下のほうにある玉ボケをよく見てみると、色収差が発生しています。このあたりはオールドレンズらしいものとは言え、少し好き嫌いがはっきりしそうな症状です。
ここからは、ジャンク品で購入したカビありレンズ「SMC Takumar 55mm F1.8」でスナップ撮影したものになります。レンズ周辺部にカビによる曇りがあるレンズですが、絞り開放で撮影しているので描写への影響はほとんど分からない状態で撮影ができています。マルチコーティングの劣化が程よいニュートラル感を醸し出し、オールドレンズらしい味わいが感じられます。
下の写真の東京駅の天井ドームは、「Super Takumar 55mm F1.8」と同じ条件で撮影したものです。上部窓ガラスの部分に発生している収差(パープルフリンジ)が「Super Takumar 55mm F1.8」同様に発生しており、「SMC Takumar 55mm F1.8」の描写は「Super Takumar 55mm F1.8」と瓜二つです。
水族館の中の暗い水槽でクラゲとイルミネーションの玉ボケを撮影してみましたが、大きなボケを演出できる明るい単焦点レンズは、やはり重宝します。ジャンク品で2,200円で購入したレンズでここまで撮れれば大満足です。
今回の場合カビの影響は見られませんでしたが、レンズの後ろ玉にカビやホコリ、傷などがあった場合にはボケの中にその影響がでてしまう場合もあるので、被写体によっては注意が必要になります。
実際に格安ジャンク品の難ありレンズを購入して撮影してみましたが、状態によっては遜色なくオールドレンズを楽しむ事もできるものもあったりします。レンズ一本一本今まで過ごした環境が違うので、それぞれが違う個性をもっているものと考えていいかもしれません。オールドレンズを楽しむ選択肢の一つとして、ジャンク品のレンズを掘り出して、自分なりに撮影を工夫してみるのも楽しい撮影方法ではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという有り難い企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。現行品からヴィンテージまで取り扱いのあるヴィンテージサロンの品物から、今回はどんなライカを見せてもらえるのか楽しみです。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店でライカフェローの肩書を持つ丸山さん。いわゆる“通好み”のヴィンテージライカに関する豊富な知見を、新宿 北村写真機店のスタッフに伝授する立場でもある丸山さんが、カウンターにそぉっと出してきてくれたのはブラック仕上げのライカM4でした。
「こちらになります」と、言葉少なめに差し出されたライカM4のブラックペイント。ヴィンテージライカの中でもすこぶる人気の高いモデルですね。普段からポーカーフェイスの丸山さんですが、今日はなんだか微妙にハイテンションな気もします。ではまず、カメラの簡単な解説を済ませてから、ディテールにどっぷりハマっていきたいと思います。
ライカM4は、M型ライカ初号機であるライカM3のファインダーを簡略化し、倍率を0.72倍として広角レンズ使用時の利便性を向上させたライカM2の後継機にあたる機種です。ライカM2ではフィルムカウンターが剥き出しだったのをライカM3と同等の仕様に戻すとともに、フィルム巻き戻しノブをクランク式に改良。フィルムパトローネに直結する軸をそのまま上に持ってくるとファインダーブロックと干渉するので、クランクの部品が斜めになっているのが特徴です。通常はクローム仕上げですがブラックのモデルも存在します。
光沢感のあるブラックのラッカー仕上げされたライカM4は、クローム仕上げのモデルと比べると控えめな印象でありながら独特の凄みのようなものを感じさせてくれます。全体的に黒くて目立たないのですけれど、シャッターボタンの外周にある指皿のパーツはギラギラと光るクローム仕上げ。このライカM4はクロームのモデルを後から誰かが黒く塗って、指皿のところで疲れ果てて塗らずに組み立てたのではと疑いたくなりますが、ここはクローム仕上げで正解だそうです。
ライカM4の製造が開始されたのは1966年ですが、その翌年の1967年にはブラックペイントのモデルが登場しているそうです。前機種のライカM2は、ごく少数ですが1966年までブラックペイントのモデルが製造されているので、そのあとをライカM4が引き継ぐかたちですね。とはいえ塗料や下地の処理が向上したからか、ライカM2のブラックペイントほど塗装が全面的に剥がれた機体はあまり見かけません。
この3台の黒いライカM4、微妙に仕上げが違うのがわかるでしょうか? シャッターダイヤルの部品がペイントのものもあれば塗料の厚みを感じさせないブラッククローム仕上げのものもあり、初期モデルでは仕様の変更幅が大きいとのことです。いずれにせよライカM4のブラックペイントの製造期間はあまり長くなく1971年に製造中止となり、黒いM型ライカの系譜は次期機種のライカM5に受け継がれます。
とはいえライカM5のブラックはガンメタルっぽいブラッククローム処理で、塗料を吹き付けたものではありません。ブラッククローム仕上げのライカはライカM4を母体とするKE-7Aという軍需モデル500台、民間用200台が1972年に作られ、その後ライカM4のブラッククロームも3000台程度が製造されます。ブラッククロームのライカM4には50周年記念モデルなどもあり、その後に登場するライカM4-2、ライカM4-Pにもブラッククローム仕上げは踏襲されていくことになります。
黒く塗られたライカM4に話を戻しましょう。この2台はブラックペイントのライカM4ですが、左のモデルが最初機の1181番台と呼ばれるもので黒く塗られたライカM4の中でも骨董的価値が高いものだそうです。写真の機体は何と11番目のブラックペイントだそうで、ストラップ釣り金具も前機種のライカM2ブラックペイントと同様に黒くペイントされていたようですが現在は真鍮の地金が見えています。巻き戻しクランクもすべて真鍮製でブラックペイント仕上げです。
それに対して右の1969年製モデルではストラップ釣り金具がステンレス製でペイントされておらず、巻き戻しクランクもよく見ると指で引き起こす部分だけがペイントで、Rと矢印マークが刻印されたパーツはブラッククローム仕上げになっているんですね。わずか数年の間に、各部品に用いる金属素材を変更していったことがディテールの差を生み出しています。
クローム仕上げのライカよりも、ブラックペイントのライカは手にしたときのカメラとの一体感が強い気がします(個人の感想です)。ライカM4ブラックペイント発売当時の日本語カタログを丸山さんに見せていただいたのですが、そこには『M4ブラックは目立たない。手に握って小さく、重さまで軽く感じるから不思議だ。ピント合わせは一度でピタリ。念を押す気が起こらない。巻き上げレバーも指に吸い付く』と使用感が記載されています。
重さまで軽く感じるかどうかは別にして、やはり黒く塗られたライカには特別な雰囲気があり、それが撮影者に何らかの影響を及ぼすのは確かだと思います。このことに加え、ペイントのすれ方から自分が手にする前のオーナーがどのようにこのライカを扱ってきたのか、カメラの持ち方や使い方の癖がペイントの擦れから読み取れるのも興味深いところです。
さて、このライカM4ブラックペイントと組み合わせるといい感じになるレンズといえばどんなものがあるでしょう?と丸山さんにお見立てをお願いしたところ、出てきたのは標準レンズのズミルックス50mmF1.4でした。ズミルックスというのはライカのレンズの中で開放F値が1.4のものを指すシリーズ名で、F2であればズミクロンでズミルックスはそれより1段口径の明るいレンズですね。初期のズミルックス50mmF1.4はその容姿から“貴婦人”と呼ばれているそうで、ここに登場した貴婦人はクロームでなくブラック仕上げです。
「35mmの広角ズミルックスも全長が短くてライカM4と組み合わせると格好いいですが、この50mmもボディに取り付けるといい表情になります。年代的には1964年製なので、すこし先輩のレンズです」とのこと。丸山さん推しのコーディネート、かなり粋な感じです。
「写真を撮る道具として判断するなら、ライカM4は巻き戻しクランクを搭載してフィルム装填も素早くできる仕様なので使うのにバランスがいいカメラだと思います」と、ご自身も黒塗りのライカM4オーナーである丸山さんは語ります。ライカM4ブラックペイントが生産完了した1971年以来、黒く塗装されたライカは2000年にライカM6ミレニアムモデルが登場するまでのおよそ30年間封印されていた仕様であり、ライカM3、M2及びM4のブラックペイントは骨董的な価値が付加されて現在では取引されているようです。
そんな骨董的価値のあるライカを持ち出すのは危ないのではという問いに対し、「レアなライカは存在をあまり知られていないから、むしろ赤いバッジのついたライカよりも狙われにくいです」とのこと。レアすぎて目立たないライカを持って街に潜む。ライカM4ブラックペイントは、そんなことができたらいいなと夢想させてくれるカメラでした。
■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカM4ブラックペイント 1181512 価格6,996,000円
・ズミルックス50mm F1.4 ブラックペイント 価格4,070,000円
※価格は取材時点での税込価格
■ヴィンテージサロン コンシェルジュ:ライカフェロー 丸山 豊
1973年生まれ。愛用のカメラはM4 ブラックペイント
■執筆者:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第3回として、Hasselblad(ハッセルブラッド)と富士フイルムから生まれた中判カメラGX645AF Professional(以下GX645AF)とともに、6×4.5cmフォーマットの魅力を紐解いていきたいと思います。
中判カメラとは120フィルムと言われる、写ルンですなど一般的に使われる135フィルムと比べ、大型のフィルム(ロールフィルム)を使うカメラを指します。今回紹介する6×4.5cmにはGX645AFやPENTAX 645シリーズなどがあり、6×6cmは真四角サイズでHasselbladや二眼レフがあります。6×7cmといえばバケペン(PENTAX 67)が有名ですよね。6×8cm、6×9cmは過去、富士フイルムからGWシリーズカメラが出ていたことで有名です。単純に写るフィルムの領域が大きく、引き延ばしてプリントをしてみた場合にもとても精細な描写を得ることができるという特徴があります。
120フィルムの歴史は古く、誕生は1901年にまでさかのぼります。最初に使われたカメラはKodak社のブローニーカメラで、そのカメラの名前を取って今でも120フィルムを「ブローニーフィルム」と呼んでいます。この時期のカメラの主流は6×9cmで、中判フィルムカメラのフォーマットの中でも最も大きな部類に入るものでした。1920年代に入り、標準的なフレームは6×6cmが主流になります。いわゆる蛇腹カメラや二眼レフカメラが台頭してくる時代です。二眼レフで有名な機種と言えばローライフレックスがありますが、本機は1929年に登場し6×6cmの正方形フォーマットの確立に貢献しました。
今回取り上げる6×4.5cmフォーマットは中判フィルムの中では小さいフォーマットとなり6×9cmのおよそ半分の面積になります。ですが、135フィルムと比較するとなんと2.7倍もの面積となり、写真の解像度や詳細感、暗い部分から明るい部分まで写る広いトーンレンジには圧倒されることでしょう。特にフィルムの値段が上昇しつつある昨今、6×4.5cmフォーマットはフィルム1本で15~16枚撮れるとあって非常に経済的だと考えます。しかも2023年10月にはなんとLomographyの120フィルムが10~30%ほど値下げとなるなど、後押しもバッチリ。6×4.5cmフォーマットに限らず、中判フィルムを始めるチャンスが到来していると言えるのではないでしょうか。
星の数ほど中判カメラはありますが、ここで取り上げるのは非常にマニアックなカメラ、GX645AFです。これは富士フイルムが2003年に発売したカメラで、Hasselbladと共同開発して生まれたまさに夢のようなカメラです!カメラ界のクロノ・トリガーと言ったところでしょうか(古い?)。Hasselblad銘ではH1という名前でリリースされており、こちらはHシリーズとして長年後継機が作られ続けていましたが、最終モデルのH6Dシリーズも2022年に生産終了となっています。
2003年のフィルムカメラは、その歴史の中でも最後期にもあたり、デジタルカメラの波がすぐそこまでやってきていた時代です。20年以上と年数は経っているカメラになりますがAF性能、正確な測光、素早いレスポンスなど、どれをとってもストレスを感じることが少ないカメラだと言えます。そもそもがプロのスタジオ撮影の現場などを支えたカメラでもあり、各パーツが分解でき、それぞれで購入できる、また、デジタルバックをつけてデジタルカメラ化することができるなど、まさにフィルムとデジタルの進化の過程にあるカメラと言うことができるでしょう。そのスペックは次の通りです。
富士フイルム GX645AF Professional
形式 | 6×4.5cm判レンズシャッター式AF一眼レフカメラ |
使用フィルム | 120ロールフィルム16枚撮り、220ロールフィルム32枚撮り |
レンズマウント | GX645専用マウント |
使用レンズ | スーパーEBCフジノンGX645AF HCレンズ |
ファインダー | 交換式AEファインダー、視野率:97%(フォーカススクリーン上で100%) |
フォーカシングスクリーン | 交換式ブライトアキュートマットD全面マット式(標準装備)、 方眼マット式(別売)※アキュートマットは、ミノルタ株式会社の登録商標です。 |
シャッター | 電子制御式レンズシャッター、18時間~1/800秒 |
露出制御 | プログラムAE、絞り優先AE、SS優先AE、マニュアル露出 |
測光方式 | TTL測光(スポット測光、中央部重点測光、平均測光) |
露出補正 | ±5ステップ(1/3EV刻みに切り替え可能) |
多重露光 | 可能 |
オートフォーカス | TTL位相差検出方式 |
ISO設定 | ISO6~6400 |
内蔵フラッシュ | TTL調光自動制御 |
セルフタイマー | 電子制御式、2秒~60秒 |
データ記録 | 画面外の撮影データ写し込み(最大37文字) |
ミラーアップ機能 | 有り |
電源 | リチウム電池CR123A 3本 |
本体外形寸法 標準セット | 145.0×130.0×200.0mm |
質量(重さ)標準セット | 1940g(F2.8/f80mmレンズ込み、電池、フィルム別) |
GX645AFを支えた要因のひとつにHCレンズシリーズがあります。標準レンズHC80mmF2.8は小型ながら高い描写性能を誇るレンズで、富士フイルムが誇るスーパーEBCコーティングが施されたものになります。中古で購入する場合、このレンズがついてくることがほとんど。35mm換算で50mmとなる標準レンズですので、使いやすく筆者もこれ1本のみを使用しています。今回の作例はすべてこのレンズでの撮影となるので、購入時の参考にしてみてください。
実は富士フイルム公式からGFX用にH MOUNT ADAPTER GというHCレンズをGFXボディにつけるためのアダプタが発売されており、MFにはなってしまうもののGFXでもその描写を体験することができます。すでにGFXをお持ちの方も資産を活かせるのはメリットだと考えています。
まずはポートレートメインの作例を見ていきましょう。F値はF5.6を中心に開放F2.8からF11程度までさまざまに撮っています。
GX645AFを購入する場合は中古品になるので、購入方法やモデルの違いについても解説していきます。先に触れたようにGX645AF及びH1の二機は名前こそ異なりますが同モデルで、フィルム以外にもデジタルバックの利用も想定されています。最も安価かつ台数が多いのはGX645AF及びH1となり、マイナーチェンジとして2005年に発売されたH2も市場ではよく見かけることができます。H3からはH3Dとなり、基本的にデジタルバックと一体になっています。GX645AFは第一世代のみで修理受付なども終わってしまっており、不具合が出た場合、そのパーツを中古市場から購入することでリカバリーするという運用になります。特にファインダー内表示(SS、絞り値、露出補正値等)の液晶が劣化しやすいため注意が必要ですが、グリップ部分にすべての情報が表示されるため困ることはありません。その他パーツの故障はあまり聞かないので、購入時はファインダーの状態はよく確認しておきましょう。
GX645AFとH1/H2についてはデジタルバックを使った利用も可能です。使用できるデジタルバックで代表的なものにフェーズワンのデジタルバックP25があります。2005年に発売、2200万画素で16bit記録ができるコダック製CCDセンサーを持ち、センサーサイズは48×36mm。GFXやHasselblad Xシリーズのラージフォーマットセンサー44×33mmよりも若干大きなセンサーを持つのも魅力です。その他IQシリーズというデジタルバックも使用可能で、より大きなセンサー(645フルサイズ)を使うことができます(その分価格は非現実的にもなってしまいますが…)。デジタルで使うのも悪くないですが、やはり20年ほど前のデジタルバックとなるのでレスポンスや高感度耐性は現在のカメラと比べると雲泥の差。筆者のおすすめはあくまで120フィルムでの利用ですので、参考程度に捉えていただければと思います。ここからはスナップや風景を中心に、中判フィルムがもたらすその描写力を見ていただきましょう。
Hasselbladから1億画素のラージフォーマットミラーレスカメラ907X & CFV 100Cも発売され、デジタルとともにフィルムの利用も見直されている昨今、6×4.5cmは枚数が多く撮れるという意味でも最もおすすめの中判フォーマットと考えています。ラージフォーマットと比べてもサイズが大きく、その描写の違いを肌で感じることができます。中判フィルムの価格が下がった今こそ始めるチャンスです!GX645AFやH1はやや入手しにくいところもありますが、富士フイルムGS645シリーズやPENTAX 645シリーズなど入手しやすい機種も沢山ありますので、是非使ってみてください!これらについては後ほど記事にしたいと思っています。
また、2024年5月には国産中判フィルム展という筆者も出展する写真展も都内で開催されますので、是非足を運んでみてください。実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!
■写真展情報
国産中判フィルム写真展
開催日時:2024年5月31日(金)~6月3日(月)
場所:Hubase
東京都文京区水道2-13-4ビクセル文京103
http://lili-hanare.com/
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。
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植田正治という写真家の不思議な魅力について、ときどき考え込んでしまうことがある。なぜ、私たちはその作品世界に惹かれてしまうのだろうか。生涯を「アマチュア」写真として生きた植田の作品は、時間や場所を超え、今なおファンを獲得し続けている。豊かな創造性の秘密に触れたくて、その歩みをこれからたどり直してみようと思う。
「子狐登場」をはじめ、この時期には、家族を被写体に仕立てた作品が目立つ。その理由として、植田は家族というのは最も身近で「一番簡単に頼めるモデル」 だからと語っている。この頃の娘や息子たちの年齢が、植田がモデルにすることを好んだ「可愛い盛り」に達している。
ただ、写される側にとって、モデルを務めるのはなかなか大変だったようだ。娘の和子は、この頃の植田は「みんなが揃って暮らしていることを、とても大切にして」 いて子どもたちに「いつも楽しいことを提供して」くれたが、写真を撮るときだけは「真剣で容赦がなかった」と振り返っている。
代表作のひとつ、ローライオートマットで撮られた「パパとママと子どもたち」をめぐる話はそれをよく物語っている。家族6人が、砂浜で一列に並んだこのユーモラスな作品には、絵柄違いの2点が存在している。
ひとつは、植田と紀枝が両脇に立ち、自転車にまたがった長男の汎を中心に4人の子どもを間に配置したもの。もうひとつは、やや右寄りの中央に立ち三男を肩車した植田を中心としたイメージだ。この2枚、よく見るといずれも家族で幾何学的な造形を描いている。人物の頭を線で結んでいくと前者は上に広がる弧を描き、後者は右向きの矢印のかたちが浮かぶ。さらに後者では、植田が子どもたちより半歩前に出ていて、家族を引っ張る存在として強調されている。いずれも、きわめて念入りに作られた構図であることは間違いない。和子の著書によれば、撮影前日の夜、植田は熱心に絵コンテを描いていたという。
「パパとママと子どもたち」の初出は『カメラ』1949(昭和24)年10月号で、前者のイメージがここに掲載されている。「綴り方 私の家族」と題された娘の和子の作文(綴方)と対になったユニークな誌面構成で、クレジットも「文・植田カコ、写真 植田正治」となっている。作文の内容は撮影の様子を書いたものだ。
その日、私(カコ)が学校から帰宅すると、みんなで写真を撮るから”浜辺に行こう”と母に促される。だが父がカメラを構えてもなかなか構図が決まらず、兄弟たちはふざけて撮影がはかどらない。その間、私は右手でランの花を掲げたままじっとしていなければならない。すっかり疲れてしまった……。他愛ない話だが、そこがかえって微笑ましい。
ただし、これには植田の手が加えられている。そう指摘したのは、2013(平成25)年に東京ステーションギャラリーでの「植田正治のつくりかた」展を担当した学芸員の成相肇だ。成沢は、植田家では父母のことを「パパ、ママ」ではなく「おとうちゃん、おかあちゃん」と呼び、また和子を「カコ」と呼ぶものもいなかった。作文のなかには兄弟の愛称も書かれているが、それも植田がこのページのために考えたものだという。
確かに、当時は父母を「パパ、ママ」と呼ぶ家族は全国的に見ても少なかったはずだ。だが、この呼称を使うことで生活感が脱臭され、田舎でも都会でもない、いわば無国籍的で愛すべきフィクションが立ち上がっている。植田はいつも現実の暮らしから、もうひとつの世界を紡ぎ出そうとするのだ。
「パパとママと子どもたち」を見ていると、2008(平成20)年に発売されたベストセラー写真集で後に映画化もされた浅田政志の『浅田家』(赤々舎)を思い起こされる。こちらも家族全員で撮られた演出写真だからだ。父母と兄弟の4人で、消防署員、ヒーローショーのキャスト、任侠の一家などさまざまなシチュエーションをユーモラスというより、コミカルに構成している。
これら「なりきり」シリーズのなかで、最も目を引くのは父の存在感ではないだろうか。息子たちより小柄で人柄も良さそうな父が、コメディリリーフとして輝くことで、本書をいっそう親しみやすいものとしている。じっさいの浅田家においてその父がどのような存在であるのか、私は知らない。ただ写真学校を卒業したばかりの次男からの求めに応じ、与えられた役割を快く引き受け、ほどよいノリを見せる人なのだ。
この点が、植田の写真と好対照をなしている。植田が演じた「パパ」は妻の助力を得て家族の先頭に立つ人であり、2000年代の浅田家の父は、子どもの意見を尊重し受容する人なのだ。ふたつの家族関係の違いは、もちろんそれぞれ固有のものではあろうが、同時に時代の違いでもあるように思う。でなければ浅田政志の仕事があれほど共感を集め、全国的な支持を得ることもなかっただろう。
この時代に家族で写真を撮ることの価値を示した浅田は、2022(令和4)年の読売新聞の取材※で「家族写真のコツは?」と聞かれてこう答えているのが印象的だ。
「撮る前にどんな写真にするか、話し合うことが大事。いきなりお父さんが「今から玄関で撮るぞ」と言っても、他のメンバーの気持ちが温まっていないとうまくいかない。お子さんがアイデアを出したらそれを採用すると子供はがぜんやる気になる。」
植田は子どもたちにとって愉快な父であったが、撮影は「真剣で容赦がなかった」し、指示通りにいかないと怒ることもあった。もちろん写真作家と、一般家庭での趣味の撮影とを比較するべきではない。ただ、いずれにしても今ではあまり好まれない態度だと思う。しかし、ファンタジーの世界を作るために傾けたそのストレートな情熱に私などは“植田正治の時代”というものを感じてしまうのだ。
さて、この時期の植田作品を印象づけるもうひとつの要因は、やはり「砂丘」というロケーションだ。植田がここを天然のホリゾントに見立てて写真を撮り始めたのは1949年頃からの数年間と、わりと短い。この年、全山陰写真家連盟が塩谷定好を会長に結成され、結成記念撮影大会が砂丘で開催されている。もちろん植田も参加しているから、これを機に、演出写真の最良のモチーフとして、砂丘を発見したのではないかと思える。
それまで砂丘に目を向けなかった理由のひとつは、物理的な遠さにあった。植田の暮らす境港は県の西北端にあり、砂丘は逆で東端に位置している。距離にして100kmほどで現在でも車で2時間ほどもかかり、当時では往復するだけでも一日仕事にならざるを得ない。その距離を植田はせっせと通い「妻のいる砂丘風景」や「砂丘ヌード」といった作品を発表したのだった。
鳥取砂丘で撮られたもののなかに「土門拳と石津良介」など、土門拳を写したものが数枚ある。いずれも1949(昭和24)6月1日前後に撮影されている。一方、土門もこの日に、植田をモチーフに「モデルのいる植田正治像」を撮っている。鳥取砂丘に報道写真家の土門が来たのは、この年に『カメラ』誌の編集長となった桑原甲子雄による引き合わせだった。銀龍社で植田と同人だった桑原は、戦後のアマチュア写真界には社会的な志向を持った力強い写真が必要だと考え、その柱として土門拳の起用を考えていた。
ただ、土門にアマチュア写真界との接点は少なかった。戦前はアマチュアとプロの間に交わりは少なく、両者が接近するのは、報道写真がアマチュアにも奨励されるようになった1940(昭和15)年前後からだ。それでも太平洋戦争中の『写真文化』誌などで土門は鮮烈な印象を残していたのは間違いない。
そんな土門をアマチュア写真界に馴染ませようと、桑原はアマチュア写真の盛んな大阪を手始めに中国地方の各地を巡り、各地の有力な写真家との交流を重ねることにした。この鳥取砂丘での撮影で土門はかなり苦戦しつつも、岡山の石津良介や緑川洋一も加わって和やかに進んだようだ。このときの様子は『カメラ』1949年12月号に特集されている。
この企画で注目したいのは、撮影会の夜に旅館で行われた、土門を囲んだ座談会「新しき写真への道」だろう。ここで土門は、植田と緑川について、目に見えるものだけを撮る「自然主義的なカメラの対象以外の世界が、写真にありうるという最も近代的な方法論に立っている」と評価している。ただ、横に広がる平面的な構図は立体感を欠き、それは「日本人共通の特徴であり、弱点」だと指摘し、山陰地方の海辺に暮らす植田の写真には、それが明確に表れているのだと言う。さらに、その上で土門はこうアドバイスをする。
「植田氏の場合、彼の抒情は甘いと思う。文学青年的甘さを楽しんでいる。もっと理知的な世界への追求によって大人になってもらいたい」
これに植田は圧され「僕の場合、大向こうを意識すぎたため、植田的世界に安住していたといえるかも知れない」と答えるにとどまっている。
じっさい植田はこのような評価をどう思っていたのか。素直に受け入れる人ではなかったはずだ。土門に対する答えは『カメラ』12月号と同じ時期に出た、さきに引用した『写真と技術』の一文に込められているように思える。あの「鹿爪らしい、深刻ぶった写真が、芸術写真という事になって居るなら芸術という言葉をあっさり返上して、僕は、大いに芸術でない写真を制ります」という言葉の中に。
ただ、土門の登場はアマチュア写真界の風景を一変させていく。1950年からは『カメラ』の月例コンテストの審査員を務め、その選評や記事を通じて読者を感化した。例えば日本の現実を直視し「絶対非演出の絶対スナップ」でこれを表現せよ、また自分自身を「近代芸術の戦士」として自覚せよと熱く書いている。社会運動と写真表現を結び付ける「リアリズム写真運動」が始まり、ことに若い写真家たちに大きな影響を与えていった。東松照明、川田喜久治といった名前も、熱心な月例投稿者として誌面を飾っている。
リアリズム写真はプロとアマとが並列した関係でアマチュア写真界が、報道写真家であるプロの指導を仰ぐという上下関係という構造に変化する大きな転機でもあった。そのなかで植田は大きな寂しさを抱えたに違いない。後に植田はこのように振り返っている。
「私の演出写真は、戦争の激化で一度、そして、このリアリズムの嵐の中で、二度目の中断をよぎなくされ、しばらくはわが風土の中で、子供たちを撮りつづけた。」
確かに植田は作品制作の手を止めず、カメラ雑誌での発表や写真集もコンスタントに続けていった。この言葉どおり、境港周辺の風景のなかで子どもを撮ったり、出雲地方の民俗をテーマとしたシリーズに取り組んだりしている。それらの作品を見ると、演出を拒否するリアリズム写真を自分の方法論で掴まえ直し、写真にとってのリアルとは何かを実践的に探究した軌跡だと思える。
そして、この実践が1960年代後半に評価を受ける。若い世代の編集者や写真家たちが植田正治を再発見し、海外にも紹介していくことになるのだ。
【次回へつづく】
※「読売新聞オンライン」2022年4月22日掲載「映画のモデルになった浅田政志さんの作品、どうしたらこんな楽しい写真が撮れるの?」https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220422-OYT1T50092/
■執筆者:鳥原学
1965年、大阪市生まれ。近畿大学卒業。ギャラリー・アートグラフを経てフリーになり、おもに執筆活動と写真教育に携わっている。著書に『日本写真史(上・下)』(中公新書)、『教養としての写真全史』(筑摩選書)などがある。現在、日本写真芸術専門学校主任講師、武蔵野美術大学非常勤講師。2017年日本写真協会賞学芸賞受賞。
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ニコン NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは、2022年2月に発売されたNIKKOR Zレンズ初の単焦点超望遠レンズである。レンズ名に「TC」の名が刻まれているとおり、鏡筒内には半埋め込み式の1.4倍テレコンバーターが内蔵され、レバー操作ひとつで560mm f/4に変身する画期的なレンズだ。発売からすでに2年が経過しているが、Zレンズならではの先進的な技術を多く取り入れ、後に続くZ超望遠レンズの先駆けといえる存在でもある。
400mm f/2.8の明るい大口径超望遠レンズなので大柄ではあるものの、質量は2950gと3kgを切っており高い機動性を誇る。先代にあたるニコンFマウントのAF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VRの質量は3800gなので850g軽量化されている。さらにZマウントの400mm f/2.8には1.4倍テレコンも内蔵されているので、Fマウントの400mm f/2.8 + 1.4倍テレコンの組み合わせからはさらに190g、トータルで1kg以上も軽量化されていることになる。また重心が従来の400mmレンズよりも手前側にあるため、手持ち撮影時には数値以上に軽く感じレンズを振り回しやすい。
右手側の操作系としては内蔵テレコンバーター切り換えスイッチがあり、レバーを上げると400mm f/2.8、下げるとテレコンが入り560mm f/4となる。このレバーはカメラを構えた状態で右手中指および薬指で操作できる位置にあるので、ファインダーを除いた状態でも瞬時に切り換え可能だ。内蔵テレコンバーター切り換えスイッチの脇にはメモリーセットボタンがある。このボタンを長押して任意の場所にピント位置を登録しておくと、Fnリング等で瞬時にピント位置を呼び出すことができる便利な機能だ。
左手で操作する部分としては、手前側からフォーカスモード切り換えスイッチ、フォーカス制限切り換えスイッチ、L-Fn(レンズファンクション)ボタン、フォーカスリング、コントロールリング、Fnリング、L-Fn2ボタンが並ぶ。とくに操作する機会が多い部分には3本のリングが並ぶが、それぞれの形状が異なるため、ファインダーを覗きながら手探りでも操作できるよう工夫されている。欲を言えば、超望遠レンズの手持ち撮影時は左手でレンズ先端側を持つと安定するので、その状態で操作しやすくなるようフォーカスリングはもっとレンズ先端側にあってほしいものだ。
19群25枚の光学系には蛍石レンズ2枚、EDレンズ2枚、スーパーEDレンズ2枚、SRレンズ1枚と高級硝材をふんだんに使用し、Sラインの超望遠レンズの名に恥じない画質を実現している。描写は絞り開放から極めてシャープで、野鳥であれば羽毛の一本一本、飛行機であれば金属の質感を余すところなく繊細に描写してくれる。また新コーティングのメソアモルファスコートも採用しており、ナノクリスタルコートを凌駕する耐逆光性能を持つ。
流氷の海を舞うオオワシ。雲で多少減光されてはいるものの、画面内に太陽を入れてもフレアやゴーストなどの有害光は目立たたず、耐逆光性能の高さが見て取れる。
湖面を漂うオオハクチョウ。Sラインの単焦点レンズならではの透明感と鮮鋭感ある描写。レンズが軽いため機動性が高く、カメラを水面スレスレまで下げることができた。
400mm f/2.8というレンズに求められるもの、それはなんといっても明るさである。飛行機写真であれば薄暮の時間帯や夜間の撮影、野鳥写真であればとくに森林性の野鳥撮影時である。400mm f/2.8の明るいレンズであれば薄暗い撮影条件下の撮影においてもブラさず撮るのに十分なシャッター速度が得られたり、むやみにISO感度を上げずにノイズの無い繊細な画質が得られる。400mmというのは超望遠撮影にはやや物足りなく感じることも多いが、本レンズはワンアクションで560mm f/4に切り替え可能なので、状況に応じて明るさを取るか焦点距離を取るか瞬時に選択できるのだ。
日没後、伊丹空港を離陸するボーイング787。機体側面が残照の空を反射する。刻一刻と露出が厳しくなる時間帯だが、f/2.8の明るさのおかげでISO200という低感度で撮影できた。
大口径超望遠レンズの醍醐味といえば、なんといってもとろけるようなボケ味である。林内の小鳥を撮る場合などでは、同じ400mmでもf/5.6などの小口径超望遠レンズではある程度大きく撮影することはできても、周囲の枝などがあまりボケないため画面全体が煩雑になりやすい。その点400mm f/2.8であれば周囲の枝がフワッとボケるので、主役である鳥を浮き上がらせられる。そのぶんピントはシビアにはなるが、Z 9やZ 8のAF性能をもってすれば問題にはならない。むしろレンズが明るいことでAF速度面でも精度面でも有利といえよう。
小首をかしげるヤマガラ。森林性の野鳥を撮る場合、悩ましいのは背景処理である。NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sなら抜群の鮮鋭感とボケ味で主役である野鳥を引き立ててくれる。
本レンズのAF駆動にはシルキースウィフトVCM(SSVCM)を採用しており、他のZレンズに採用されているステッピングモーター(STM)と比べるとより高速・高精度・静粛なピント合わせが可能だ。2024年2月時点でこのSSVCMを使用するのは本レンズとNIKKOR Z 600mm f/4 TC VR Sの2本のみのハイエンドモーターである。
イタヤカエデの樹液が凍って氷柱になった。この氷細工をホバリングで舐めるハシブトガラの動きはほんの一瞬。SSVCMによるAF駆動はそのシャッターチャンスを逃さなかった。
本レンズには1.4倍テレコンバーターが内蔵されているが、Z TC-1.4xとZ TC-2.0xの外付けテレコンバーターも装着可能だ。内蔵テレコン無し+Z TC-1.4x併用時は560mm f/4として、Z TC-2.0x併用時は800mm f/5.6レンズとなる。内蔵テレコン有り+Z TC-1.4x併用時は784mm f/5.6として、Z TC-2.0x併用時は1120mm f/8レンズとなる。
薄暗い林床で木の実を食べるシロハラ。野鳥撮影では焦点距離の長さと明るさのバランスがとても重要で、ひとつの目安は800mm f/5.6である。本レンズは内蔵1.4倍テレコン+Z TC-1.4xの組み合わせか、内蔵テレコン無し+Z TC-2.0xで800mm f/5.6 レンズとして使える。
ブルーインパルスは編隊を組んでいれば400mm単体でも十分楽しめるが、ソロ機の撮影では500mm以上は欲しくなる。この撮影時はZ TC-1.4xを装着しておき、いざというときには内蔵テレコンを併用して784mmとしても撮影していた。
F-2B戦闘機を560mmで撮影。飛行機撮影では脚立に乗って撮影することが多く、テレコンバーター着脱には機材落下のリスクが伴う。テレコン内蔵レンズならそんなリスクも無いし、埃が舞う屋外でレンズ交換する必要も無い。
発売当時、NIKKOR Zレンズの将来を占う超望遠レンズ第1号としての責務を背負って登場したNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S。実際に使用してみるとその比類無き解像力、ボケ味といった画質はもちろん、内蔵1.4倍テレコンの便利さは期待以上のものであり、Fマウントレンズからの大幅な進化を実感したものである。実売約160万円※の高額レンズではあるが、我々超望遠ユーザーにとっては納得いく性能の1本といえる。
※記事公開時点でのカメラのキタムラ販売価格
(c)Koji Nakano/写真の無断転載禁止
■写真家:中野耕志
1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、専門誌や広告などに作品を発表。「Birdscape~絶景の野鳥」と「Jetscape~絶景の飛行機」を二大テーマに、国内外を飛び回る。著書は「侍ファントム~F-4最終章」、「パフィン!」、「飛行機写真の教科書」、「野鳥写真の教科書」など多数。
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今回セレクトしたカメラは、1961年に発売されたハーフサイズのフイルムカメラ「ヤシカ ラピード」です。当時大ヒットした「オリンパス ペン」(1959年発売)に対抗して作られたと言われているカメラです。
カメラは独特な縦型のデザインで、縦型にカメラを構えることでハーフサイズカメラでありながら、フルサイズカメラと同様な横位置写真を撮れるようになっているのが大きな特徴になっています。少し不思議な感じのデザイン「ヤシカ ラピード」の魅力と写りをご紹介します。
筆者がこのカメラに魅せられたのは独特のデザインにあります。「ヤシカ ラピード」の取扱説明書の最初のページには、「ポケット用ラジオに似た可愛らしさと、メカニックな感じを持ったデザイン、スケッチでもするように気軽に写せるカメラ・・・」と紹介されています。 可愛らしさを感じるかというと少々違うような感じもしますが、メカニカルなデザインはとても魅力的に感じるポイントです。
扱いやすさという点においては、残念ながらライバルとして想定されていた「オリンパス ペン」には及ばないと感じています。そういった事もあり、現在の中古市場で「オリンパス ペン」シリーズを多く見かける事ができますが、「ヤシカ ラピード」を見かけることはなかなかありません。そして程度の良いものを見つけるのも少々難しい状態です。
「ヤシカ ラピード」はフイルムが縦送りのハーフサイズのカメラです。昨今フイルムの値段も高騰しており、ハーフサイズのカメラはフルサイズと比べて2倍の枚数を撮影できるので、コストパフォーマンスが高い点も魅力のポイントになります。ただ「ヤシカ ラピード」は、この点については少し注意が必要になってきます。
撮影した枚数を表示する「フイルム枚数計」は、0~37枚まで黒色、38~64枚まで緑色、65枚以降は赤色と色分けされていますが、取扱説明書には、「20枚撮りフイルムを使用した場合は37枚まで撮影でき、36枚撮りのフイルムを使用した場合は65枚以降の赤色まで撮影できます」と記載されています。
この説明からフルサイズの2倍の枚数は撮影できない事がわかります。この要因は、フルサイズ巻き上げ部にスプロケットギアがなく、太目の巻き取り軸にフイルムを巻いていくために、撮影枚数が進んでいくほどコマの間隔が少し広がる現象が発生します。そのため単純に2倍の枚数は撮れないという欠点を持っています。
使用フィルム | 35mmフイルム |
画面サイズ | 24mmx17mm |
レンズ | ヤシノン 28mm F2.8 |
シャッター速度 | 1秒~1/500秒、バルブ、M、X |
露出計 | セレンメーター |
フイルム感度 | ASA(ISO) 10~800 |
ピント合わせ | 0.8m~無限 |
大きさ | 幅 68mm X 高さ 130mm X 奥行 50mm |
質量 | 約553g |
発売当時の価格 | 11,800円 |
発売年 | 1961年 |
※カメラの大きさ・重量は筆者機材の実測値になります
「ヤシカ ラピード」での撮影の際には、いささか面倒なところがあります。その原因の一つに露出計受光面がカメラの上部にあることが挙げられます。この当時のカメラの多くは、レンズの周りなどのボディ前面に露出計受光面が設定されており、被写体に向いて露出を計る事ができるようになっているのですが、「ヤシカ ラピード」はカメラの上部に配置されているので、露出を計測する際には、カメラ上部の露出計受光面を被写体に向けて、カメラ前面にあるメーターの針が示す露出のLv数を読み取る事が必要になってきます。撮影する際に、ひと手間余分にかかってしまう感じがあります。
実際に撮影する手順としては、
1. フイルムをセットしISO感度を設定する
2. シャッター速度調整ノブを動かして、使いたいシャッター速度を合せ指標▲印に合せる
3. 露出計受光面(カメラ上部)を被写体に向けてメーターの針が指した数字(Lv数)を読み取ります
4. 絞りリングを回してLv目盛り合せ窓の数字を、先ほどの数字(Lv数)に合わせます
5. これでシャッター速度、適正露出にあった絞りが設定されます。
6. 次に距離調整リングを回して、目測でピント合わせをしたらシャッターを切ります
7. フイルム巻上げレバーを引っ張り、次のシャッターをセットします
適正露出を合わせるまでにやや手間がかかるのと、慣れていない人では目測でピントを調整するのが難しいかもしれませんが、少し絞りを絞って被写界深度を深くして撮影した方が失敗は少なくなりそうです。
「ヤシカ ラピード」を持って上野・浅草をぶらぶら歩きながらスナップ撮影をしてみました。使用したフイルムは、感度400の「ILFORD XP2 SUPER 400」。白黒フイルムでありながらC-41プロセスで現像できるので、カメラのキタムラの店舗でカラーフイルムと同等にスピード現像が可能な便利なフイルムです。
今回このフイルムをセレクトしたのは、スピード仕上げが可能な白黒フイルムという点。そして「ヤシカ ラピード」が発売された1961年の頃、まだカラーフイルムの普及は10%以下で白黒フイルムが一般的な時代であったので、その時代の雰囲気を味わうために「ILFORD XP2 SUPER 400」をセレクトし白黒で撮影をしてみました。また今回の記事に使用する為に、現像後のフイルムはスライドコピアを使用してデジタルカメラで複写したものを使用しています。
実際に撮影して気にいったシーンを見つけても、設定する項目が多くすぐに撮影する事は難しいので、シャッター速度は1/125秒で固定しながら絞りを設定して、目測で距離を設定するような撮り方をしています。
それでも操作する場所がレンズ周りのダイヤルに集中しているので、合わせる指標を間違えて悪戦苦闘することが多くあり、そういった不自由さも撮影の楽しさとして受け入れる懐の深さが試されるカメラです。
撮影したものから何点かピックアップして今回掲載していますが、60年以上経過した年代相応の劣化をしているカメラなので、写りとしてはこのぐらいの程度という感じです。順光で絞りをある程度絞れば、それ相応の写真を撮れる状況ではありますが、さすがに逆光には弱く厳しい結果となりました。
白黒フイルムでレトロな雰囲気の街を撮影することで、現代の風景なのになんか1960年代の風景を撮った写真のように見えるのは不思議な感じがします。
「ヤシカ ラピード」は決してキレイに写せるフイルムカメラではありませんが、その独特なデザインは現代では多くの人をひきつけるモノを持っているカメラです。持っている喜びと、コンパクトカメラでありながら一枚一枚様々な設定工程をこなしながら撮影するのは、非常に楽しく感じる事もできます。
筆者の持っている「ヤシカ ラピード」は、撮影稼働できる状態ではありますがファインダーのブライトフレームはかなり見えにくい状態になっていたり、フイルム巻き上げの皮ストラップの劣化があったり、近いうちに切れてしまうのではないかとひやひやしながらフイルムの巻き上げをしています。発売から60年以上経過しているカメラなので、ある程度の劣化は仕方ないにしろこれ以上劣化しないように大切に扱いながら、フイルム撮影を楽しみたいカメラの一つです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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皆様こんにちは!国分です。
今回は、昨年に新しく出たKODAK EKTAR H35Nを使った作例の記事になります!
新しく出た機能や、撮影した時の印象についてもお伝えしていきたいなと思いますので是非ご覧ください。
こちらが今回使った本体です。色はシルバーを選びました!見た目もレトロで可愛いです…!
以前、ハーフカメラの楽しさを伝えるために1つ前の機種、KODAK EKTAR H35の記事を書かせていただきましたが、
今回はKODAK EKTAR H35の後継機、KODAK EKTAR H35Nの作例を載せていきたいと思います。
まず、6色のラインナップに加えて「スターフィルター」、「三脚ソケット」、「バルブシャッタースピード」、「ガラス素材を含む新レンズ搭載」などの新機能が追加されました!
単四電池を使うフラッシュ機能もそのまま付いていて、ハーフカメラとしてはかなり高いポテンシャルですよね。
機材についてはKodakさんのご厚意でシルバーをいただきました!
軽量でありながらデザインも可愛いので、持ち運ぶのにより気持ちも高ぶります。
やっぱり新しいカメラやレンズを手にしたら、まず散歩や近所散策は写真好きあるあるじゃないでしょうか。笑
操作性は前のH35とほとんど変わらず、軽さやボタンの押しやすさは健在でした。
こういった光と影も足を止めてついつい撮っちゃいますね。
壁に当たる光や差し込む光、影の形など色々と撮りました。
こちらも散策中に撮影した1枚で、逆光のゴーストも良い塩梅で美しくてお気に入りです!
また偶然にコマかぶりしてしまいましたが、この化学反応がフィルムカメラの良いところですよね。
何気なく撮った写真が現像してみたら、かけがえのない1枚になることもあるのでデジタルカメラにはない体験があります。
撮影時のピントは以前から変わらず目測ですが、距離感が被写体と合った時の臨場感もとても心地よいと感じます。
それから、新しいH35Nはガラス素材を含む新素材のレンズになるので、写りも以前より ”もったり感” はなく、クリアに写る印象です。
先ほどお話しさせていただいた新機能のうち、一番使いやすい「スターフィルター」の機能を使ってみました。
通常のカメラでクロスフィルターを使うには、フィルターの付け替えなどが必要ですがワンタッチで切り替えられるのが嬉しいです。
操作としてはレンズ横のレバーを上げ下げしてクロスフィルターON・OFFを切り替えられます!簡単…!
西陽のような強い光だとくっきり出るので、フィルムカメラ初心者の方でも簡単に印象的な写真が撮れると思います。
(逆光を見る際は無理のない範囲で、目の負担に気をつけてくださいね!)
また、チェキフィルムの光沢の反射でもフィルタ―効果を小さく感じることが出来ました(笑)
このくらい光量が少ない限定的なシチュエーションでも使えたので、水辺の反射にも良さそうです。
まだ海などに持っていったことがないので、今度持ち出してみようと思います。
今回は新作のKODAK EKTAR H35Nの作例を載せてみました。
他にも使っていない機能が沢山あるので、使ううちに深掘りしてまた撮影し載せていこうと思います!
また予告となりますが、次回はカメラ作例ではなくフィルム作例の記事になります。そちらもお楽しみに!
それでは。
写真家:国分真央
1990年 東京都生まれ。映像制作会社や写真事務所を経て独立。2020年に東京都から山梨県に移住する。書籍の表紙や広告写真、CDジャケットなど幅広いジャンルで活躍中。独特な色合いと自然が溶け込むような写真が特徴で、独自の世界観を作り上げる。近年はフィルム写真での撮影にも力を入れ、執筆活動も行っている。
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私が24mmという画角のレンズに初めて触れたのは、九十年代の終わりのことです。大学に通う写真学生だった頃でした。大学の実習では焦点距離50mmのレンズを用いることが必須でしたので、初めてその画角で撮影したときには、24mmは日常の光景を迫力のある「写真」に変えてくれる、魔法のようなレンズだと思ったことを覚えています。当時、カルチャーやファッションの雑誌で活躍していたフォトグラファーには、あえて広角で人物を切り取るスタイルが流行っていて、その影響も大きかったのだと思います。ダイナミックな都市風景や、大胆なアングルと組み合わせたそれらの写真は、私にとって当時のポップカルチャーを体現するような映像表現でした。どう切り取っても雑誌で見る写真のようにはうまくいかないなかで、24mmから得られる映像は、これが撮ろうとしていた「写真」だと感動した記憶があります。
その時には深く考えていませんでしたが、今思うと24mmという広角レンズが描き出すダイナミックな遠近感と、自分の視覚では観察しきれない情報量の多さが、きっと自分の想像を超えた世界のように見えていたのだと思います。それは、28mmよりもずっと刺激的なものでしたし、50mmでは得られない自由さがあったようにも思います。加えて、その当時は安価なレンズを使っていたこともあり、今の高性能なレンズにはあまりない周辺画像の歪みや滲みなどの収差も、より躍動感を強調するエフェクトのように感じられていたのではないでしょうか。その映像が、当時の自分には標準的な画角では得られない視覚的な快楽を生み出していました。
そんなわけで、24mmを手に入れてからというもの、手当たり次第それ一本でなんでも撮っていたのですが、当然得られる快楽には限界があるというもので、一通り撮った頃には、標準レンズを使いこなすことの重要性が分かり始め、また50mmを常用するようになります。しかしながら、その後もカメラバッグの交換レンズ群には、常に24mmを入れておくことが多かったように思います。
今でも、35mmや50mmで精緻に、自らの観察力をフルに生かして撮影するようなスタイルに疲れてくると、24mmに付け替えてその解放感を求めることは多くあります。軽やかで、自由。理性的にフレーミングを行う厳密な撮影のまるで反対側に、私にとっての24mmは位置しているように思います。もちろん、建築を撮影するときなど、物理的に必要な画角を得るために24mmを選ぶときもありますが、24mmは本来的に感性を最大限に解放するために選び取る画角であるという思い込みが、今も私には強くあるのでしょう。
今回使用した、収差が少なく画面周辺まで高い画質を維持する、NIKKOR Z 24mm f/1.8 Sという現代的なレンズにおいても、その画角の持つ特徴は変わらないように思います。もちろん、昔のレンズで見られた周辺部の収差などは補正されている分、ある種のジャンク感や、粗野なスピード感のようなものはありませんが、クリアな映像のなかにも学生時代に感じた24mmの解放感は十分に残されています。
今回は、一ヶ月ほどの間、久しぶりに24mm一本で日々のスナップを行ってみることにしました。普段は40mmか50mmのどちらかを使っているため、「24mmだけで行こう」と決めただけでも、なんとなく軽やかな気分になるから不思議なものです。
カタログに掲載されたMTF曲線を見ると、絞り開放から画面周辺まで高い結像性能が実現されていることが示されています。この曲線を見るだけでも、昔のレンズのように画面周辺に向かって急激に解像度が低くなるというようなことはないことがわかります。実際に写した写真を眺めてみても、画面周辺まで像が流れることなく細かいディテールが再現されており、まさに自らの視覚を超えて映り込んでくる面白さそのものは、当時自分が使っていた安価なレンズとは比べ物にならないレベルになっていることが分かります。
例えば、絞り込んで撮影した雪や氷の写真では、その細かな描写から得られる映像のダイナミックさがより強く感じられるのです。画面周辺までシャープに描かれることで、遠近感の強さと共に、圧倒的な情報量が画の迫力そのものとなって再現されているのだと思います。
最短撮影距離は0.25mになっており、最大撮影倍率は0.15倍。絞り開放で接写撮影を行うと、シャープなピント面に対して滑らかな背景ボケが得られます。近い距離での撮影で得られるダイナミックな遠近感というのは、24mmで得られる映像の特徴のひとつであり、被写体が非常に印象的に描かれます。特に人物や動植物を写すと、伸びやかで力強い感覚が強調されるのがわかるでしょう。少しデフォルメされた感覚というのは、28mmではその効果が弱いですし、20mmなどでは逆に強すぎまるように感じられます。このあたりの空間描写というのは、24mmという画角でしか得られない絶妙な遠近感によるものだと言えます。
狭い室内などでは、多くの情報を取り込んだ広角らしいフレーミングが可能です。上の写真では、光が映り込んだ手前の携帯電話から、犬、人物、背景へと画面の奥行きが収められています。ブラインドから差し込んだ印象的な光が差し込む背景も含め、室内の光の移ろいが広く伸びやかに描かれています。広角レンズでは、斜めの構図を用いると躍動感が強調されますが、このようなシチュエーションでは、水平を保つことで非常に静かで落ち着いた表現が得られることがわかります。
逆に斜めの構図を生かし、ダイナミックに撮影することで、ラフでスピード感のある映像が得られた上の写真を見てみましょう。これは首都高速道路を走る車の助手席で撮影したものですが、夕暮れの光がフロントガラスに反射し、滲むような反射が現れ、斜めの線による躍動感が強調されています。光の滲みと、遠くまで細く連続的に線を伸ばす街灯のシルエットが、画面にリズムを与えています。画面周辺に向けて暗く落ちていく夕暮れの空も印象的です。ガラスを通している分、細部の描写は甘くなりますが、私が学生の時分に感じていた広角の解放感のようなものの正体が、この写真にはよく写しだされているように思います。
24mmレンズ一本でしばらくの間撮っていましたが、当時感じていた視覚的な快楽は、今も変わらず感じられるようです。それはやはり自らの視覚を超えた映像が得られる喜びであり、レンズを通して見ることの面白さなのだと思います。私が、これが「写真」だと思った、その理由がこの面白さであり、カメラを持って世界を眺めることの興味深さなのでしょう。
広角と言えば、今や20mmや17mm、あるいは12mmといった超広角レンズを常用する方も多いのではないかと思います。周辺まで歪みの少ない現代のレンズでは、もちろんそれらのレンズから得られる映像は、より広角の特徴を生かしつつクリアな写真が撮影できる良い選択肢だと思いますが、少なくとも私にとっては24mmというレンズの魅力は、現代でも全く色褪せないものだと思います。自分の視覚を超えた感覚が得られつつ、直感的で自由なフレーミングとアングルを実現できるこのレンズは、今でも「写真」に向かう好奇心を思い出させてくれるものでもあるのです。
■写真家:大和田良
1978年仙台市生まれ、東京在住。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。2011年日本写真協会新人賞受賞。著書に『prism』(2007年/青幻舎)、『五百羅漢』(2020年/天恩山五百羅漢寺)、『宣言下日誌』(2021年/kesa publishing)、『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(2022年/インプレス)等。最新刊に『Behind the Mask』(2023年/スローガン)。東京工芸大学芸術学部准教授。
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こんにちは。大橋愛です。昨年末、アフリカエコレースの準備のお手伝いでフランスに行ってきたので、その時に撮ったスナップを紹介します。お供に連れて行ったのはキヤノン EOS R8。約461gという軽量ながら高画質で写しとることができるフルサイズミラーレスカメラです。普段は一眼レフを使うことが多い私ですが、このミラーレスはどんな使い心地だったのか??フランスでの生活とともにお話ししていきたいと思います。
フランスの24時間耐久レースで有名なルマンから1時間ほど、田舎町Telochéを基点に後半はモナコまで、今回約1000キロの車移動!!移動はほとんど車、しかも観光地じゃないので、なんだかフランスで生活するような旅でした。目的はアフリカエコレースに出場する選手のご飯やお洗濯や買い出しのお手伝いなので、アフリカに向かうフェリー乗り場(セット港)まででお別れです。
スナップを撮るときには歩いて被写体を探してっていう人が多いけれど、私は車の移動中からも窓を開けて撮影したり、撮りたいものがあればなんでも撮っていたような気がします。でもこう撮ったら綺麗とか面白く見えるとかでなく、本当に自由に日記を書いたり、友達にこんなに面白かったんだってお喋りするようにシャッターを切りました。
好きなように好きなものだけ撮っていたけど、写真をまとめるとやっぱりこれが私の目なのかな??って感じるところがありますね。無意識に端っこを注意していたり、東京では撮らないけどちょっと子供を撮影してみたり。ワンコや子供を撮るのはどの国もなかなか難しいけど、やっぱり良い表情が撮れたりいいタイミングで撮れると、人を撮るって面白いなって思います。R8はサイレントシャッターモードがあることも、そんなふうに思わせてくれたひとつかもしれません。
モナコから近いマントン。すぐそこはイタリアです。
冬のフランスは南でも雲が厚い日が多くなかなかカラッと晴れませんが、港から見る街並みはカラフルで伝統的なレンガ作りや可愛い建物が並んでいます。海の穏やかな波と建物の両方を入れて撮るにはもう少し広いレンズが良いかな??と撮影している時には思いましたが、写真を並べてみるとちょうどいいと思えました。肉眼ではやはりもっと広く調整してしまっているので、広角に慣れてしまった自分を少し反省しました。
これは革を使った椅子の張り替えをしてくれる工房に行った時に、サンプルで飾ってあったもの。
カラフルでとても可愛く、店内はそんなに明るくなかったので感度を上げて撮影したカットです。ズームしてみても革のテクスチャーが出ているし、色のコントラストもいい感じに出ています。
海外に行くと本当に色の組み合わせが勉強になるなと思います。お店の壁面も家具や洋服まで、こんな組み合わせが合うのか!!と思うことがありますが、着物の色の組み合わせにも通じるなと考えることもあったり。こちらの写真は赤と紫の壁もインパクトがあるけど、ちょうどよく白の車を入れて、そしてまたちょうどよく黄色のフォークリフト!!とてもいいバランスで写真的なものが撮れた1枚です。
今まで行けば撮れるものって避けてきましたが、コロナで行けなくなるなんて考えもしませんでした。だからカメラも軽くなったけど、私の撮り方もとても軽くなったって自分で感じました。なんでも綺麗で、なんでも興味深く、なんでも新鮮に見えるので、カメラは軽いものを選んで本当に正解!機材と気持ちがリンクすると、なんて心地よいんだ!!って思いました。
だから、逆にじっくり撮影する被写体は重いカメラやフィルムにして正解だったんだって、考えさせられた旅でもありました。
ちょうどクリスマスシーズンで、お城のあちこちがクリスマスの飾り付けで素晴らしくてキラキラしていました。でもこの傾いたもみの木が考え事をしているみたいで、とっても可愛く見えました。
ちょうど年越しの31日に南のセットという港町で1泊しました。夕飯を食べて帰り道まだまだあちこちのお店が開いていて、あちこちから音楽が聞こえて、みんな飲んだり踊ったりしているカフェがあり、これが大阪だったらカウントダウンで海に飛び込む人がいるかな??なんて少し期待しつつ、2件目のカフェで友人とお酒を飲んで踊って、案の定次の日の朝が辛かったことを、この写真は静かに思い出させてくれます。
ルマンのクリスマスマルシェに行った時。教会の見学に行ったり古い街並みを見たり夕飯の買い出しをしていたら、少しお腹が減ったので蕎麦粉のクレープを食べた時に撮影させてもらったカットです。フードトラックだからキッチンがめちゃくちゃ高いのだけど、R8はバリアングル式なのでモニターの向きを変えると両腕を伸ばした高さまで撮影することができるので、焼いている手元まで入れて撮影することができました。また食べたいな。
滞在していた田舎町の唯一のスーパー(コンビニくらいのサイズ)。小さなスーパーだけどフルーツがめちゃくちゃ豊富!!冬は日本と同じでみかんにそっくりなオレンジがとても美味しいのです。必要な個数だけで売ってくれるのも、とってもありがたい。
Telochéのベルエール通り(Rue de Bel air) に長く滞在していましたが、名前の意味の通り美しい空気の場所で、街並みも綺麗でお庭もみんな綺麗にお手入れされていました。けれども、やはり冬だから花はあまり見かけることができなかったのですが、散歩中このバラが小さく咲いていてハッとして撮った一枚です。赤の微妙なグラデーションが心地よく、背景のなだらかなボケ具合もフルサイズならではでないでしょうか。
少し離れたお家で一際すごかったお庭。あちこちから車で見に来る人もいたり、これが個人宅なんてびっくりです。よく見るとクマさんの家だったり、ちゃんと場所ごとにテーマが感じられてパワーを感じるディスプレーです。毎年楽しみにしている人がたくさんいるんだろうなと感心しました。これは撮らずにはいられません。
ここでは買いませんでしたが、やはりパン屋さんはどこも可愛いし素敵な外観、内装をしています。そしてどこも美味しいのです。日本はお米がどこも美味しいのと一緒ですね。外から見ると建物同士が繋がって見えるし昔の長屋方式なのかな??素朴で可愛い建物はどこを切り撮っても絵になるから困ります。シムカ1100も止まっていて、本当に可愛いし困ったものです。
ルマンという街は24時間耐久レースで街中を走ったり、ちょうど去年は100周年だったので大きなイベントがあったり、博物館には歴代の優勝した車が展示してあります。車のペイントもとても個性的で刺激的です。ジャン・ロンドーが運転した車両。イナルテラ・LM。
丸の中をよーーーく見てください。小さな子供と男性が写っていて、彼はこれからアフリカのレースに向かうライダー。こんなお守り靴下があれば頑張るしかないですよね。写真ってすごいパワーがあるし、やっぱりいいなって思います。
この人はトマチェックさん。とても大きなトラック、カミオンのドライバー。しかも一人で運転してナビもしてタイヤがパンクしたら大きなタイヤも一人で交換するのです。この写真からは大きさは分からないけど、とっても穏やかで笑顔が素敵な方です。
スケボーしてた人に声をかけて撮らせてもらったら、ワンコも降りてきました。飼い主が運動神経いいとワンコも運動神経いいのですね。この後すごく褒めてもらってとても喜んでいました。私もうちの犬に会いたくなってしまったよ。トラッキング性能のおかげで、ワンコにもちゃんとピントを合わせ続けてくれました。
サポートの車もやはり砂漠や、岩のたくさんある凸凹道も走るのでそれなりの整備が必要です。準備をしていると雨上がりの水たまりに映った車がカッコよく見えました。泥の質感もリアルです。
時間軸で書いていないのであっちこっち行っているみたいに見えますが、そんなに移動はしていません。この写真はルマンに時々行って買い物をしていると素敵な光に出会える時があった、その時の一枚。格子状の階段に光が差してとてもグラフィックな影ができて、ヨーロッパっぽい強い光を忠実に再現しています。
ガラスが割れているのを見るとオノヨーコさんの「A HOLE GO TO THE OTHER SIDE OF THE HOLE」を思い出します。
街中の光や人や建物も素敵だけど、田舎町はやはり木々の生命力が感じられて好きです。雨が降って土や埃の匂いがすると思ったら、木や落ち葉のいい香りも心地よく漂ってきました。雨上がり、散歩をしていると枝が春の準備をしているようでした。
朝はお天気が悪いと9時頃にならないと陽が出ません。陽に照らされると濡れた土が霧になり幻想的な風景が見られます。深呼吸をすると、とっても冷たい空気を肺に入れてスキッと目覚めます。この木々達も同じように深呼吸をしているようです。
数日泊まっていた友人の家の窓からの風景がもう懐かしいです。雨が降っても絵になるし暗い部分のカーテンのディテールも綺麗なグラデーションになり、弱い光で湿度のある好きなカットが撮れました。カーテンを開けて毎日この景色が見られるなんて本当に贅沢。
最後はこのカットって決めていました。20日の滞在中で、この日だけ夕焼けが見られたのです。驚くほど赤く焼けてエプロンをつけたまま近所で撮影をしました。近所の奥様も窓から顔を出して見ていたので、撮ったものを見せたら「綺麗ね」と褒めてくれましたよ!!街灯の星も光って本当に綺麗でした。
三脚があった方が良かったな??と思うことも何度かありましたが、今回はなんでも好きなものを撮って楽しむ、そして撮りたいものは考えないで撮るって決めていたので、三脚を立ててじっくりっていうのはしなくてよかったです。
毎日持ち歩いても苦にならないサイズと重さ、これって本当に大事。でもバッテリーが小さいから、ゴリゴリ撮影したい人はスペアのバッテリーは絶対に必要です。
携帯でも十分と考える人もいるかもしれないけど このR8はミラーレスで軽いし、フルサイズなのでなんと言っても画質が良い。そして一眼カメラはこちらで機能をコントロールできるのが楽しい!!
旅する人や、webで記事を書く人、ルポライターさん、自分で何か作って発表している人、一眼カメラを使ってみたい!!と思っている人におすすめのカメラです。
■写真家:大橋愛
神奈川県生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。写真作品活動のほか、企業広告、雑誌、出版等の分野で活動。個展、グループ展多数。写真集『お裁縫箱』、HeHeより発売中です。
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2024年2月15日に発売となる、パナソニックのLマウント交換レンズLUMIX S 100mm F2.8 MACRO。〝フルサイズミラーレスカメラ専用の世界最小・最軽量〟といわれる機動性を活かした、多彩なシーンで活躍する中望遠単焦点マクロレンズです。普段使いでも楽しめるマクロレンズとして魅力的な本レンズをいち早く使わせていただいた感触をお伝えします。
LUMIX S F1.8シリーズのデザインとサイズ感を踏襲したLUMIX S 100mm F2.8 MACROレンズは、本体サイズ73.6(最大径)×約82(全長)mm。質量は約298gと、マクロレンズとしては驚くほど小さく軽いレンズに仕上がっています。
新しい光学設計と新開発デュアルフェイズリニアモータの採用により、動体追従に優れた高速・高精度なAF性能と、静粛性に優れたAF動作性能を両立。従来のリニアモーターと比べ、ユニット単体で約50g以上の軽量化と、サイズを約半分に抑えたことで小型化に貢献しています。
撮影可能範囲は撮像面から0.204m〜∞、画角は24度、最大撮影倍率1.0倍、F1.8シリーズ同様のフィルター径67mm、マイナス10℃の耐低温設計、フードロック機構も健在です。
鏡筒にはフォーカスリミットが装備され「FULL/0.5m~∞/0.204〜0.5m」と、被写体に合わせたフォーカス範囲での撮影が可能。等倍の近接撮影だけでなく、焦点距離100mmの中望遠レンズらしいポートレートやスナップ、目の前の小さな被写体から遠景まで、被写体を選ぶことなくオールマイティに対応できます。
マクロレンズとは思えない軽さのLUMIX S 100mm F2.8 MACROは、LUMIX S5IIにマッチする重心バランスでとても取り回しがよく、身近な環境で撮影するのにも適していると思い、手はじめにご近所散策に出かけました。冬から春に移り変わる穏やかに晴れた初春。出合う被写体に足を止め、まずはマクロレンズとしての魅力と、中望遠レンズとしての距離感を掴んでみます。
細く小さな枝葉。黄色と緑の共存。背景の軽やかな淡いボケの描写もイイ感じ
等倍撮影時は手元でフォーカスリミッターを切り替えるのもスムーズです
陽だまりの中で毛繕い。中望遠レンズの邪魔しない距離感がいい
ボケの形もボケ量も魅力的です。逆光でのフレア、ゴーストもほとんど気になりません
15m位の高木を見上げると枝に群がる鳥たち。枝の先端までビシッと写し込んでいます
池の畔から鴨たちを。5~7mの距離が狙いやすい
遠景を狙い、そのまま手元の小さなものまで撮影できる利便性と、マクロレンズであることを意識せず撮影が楽しめる。コンパクトで、使いやすさと気軽さを兼ね備え、普段使いもいい感触。「出かけるのが楽しいマクロレンズ」というのがファーストインプレッションです。
微細なフォーカシングが必要なマクロ撮影において、ピント面はかなり薄く精密な印象です。コントラストの高いシーンや、ワーキングディスタンスの取り方によっては多少AFの迷いが生じるものの、デュアルフェイズリニアモータによる高速・高精度なAF性能を随所で感じることができます。正確なピント合わせは見事で、しかも、三脚なしで撮影できてしまうという嬉しさ。
マクロレンズ特有の美しいボケ表現を楽しめることはもちろんですが、淡く透き通るような優しさと、透明感を感じられます。
おうちだからこそ楽しめる撮影がテーブルフォトです。最短撮影距離が0.204mということもあり、毎日の食事・カフェでのテーブルフォトなどを魅力的に撮影することができます。
こちらも、本来三脚を使って撮影することの多い被写体ですが、LUMIX S5IIの強靭な手ぶれ補正と、マクロレンズのワーキングディスタンスの短さが活かされ、テーブルに肘を当てカメラをホールドすれば撮影ができてしまうという感覚です。等倍の近接撮影では、素材の質感をしっかりと写し込むことができます。
焦点距離100mmの単焦点レンズとしても扱いやすいLUMIX S 100mm F2.8 MACRO。近接撮影だけでなく、軽量さと機動性を活かし、歩きながらの撮影や、ふと足を止めた瞬間を切り取るスナップ撮影に心地良さを感じます。
AFレスポンスはマクロレンズとは思えないほど素早く、精緻な描写はスナップ撮影に最適です。背筋を正すかのような真っ直ぐな切り取り、画角の狭さを感じさせない奥行きのあるボケ、解像感あふれる描写に、被写体が生き生きと写し出されます。
これまでスナップ撮影では広角レンズばかりを愛用してきましたが、LUMIX S 100mm F2.8 MACROでの撮影は、中望遠レンズでのスナップ撮影を見直すきっかけになってくれる気がしました。
中望遠レンズ100mmでのポートレート撮影は、モデルとのコミュニケーションがとりやすい1~2mでバストアップショットが狙いやすく、ニーアップ、ウエストアップはさらにその前後1~2mの距離で撮影しやすさを感じます。威圧感なく自然な表情を捉えるのに適した焦点距離は、ペットや子どもを撮影するのにもちょうどよい距離です。
モデルさんの周囲には、滑らかでしっとりとした雰囲気のボケが生まれ、モデルが浮き立ちます。ハイライトのツヤが美しく、シャドウトーンは柔らかな立体感があり、髪一本、一本の質感まで伝わるキレのある細やかな描写が非常に魅力的です。マクロレンズにありがちな、ボケて全体的に柔らかい写りになるのではなく、精細感とヌケ感が気持ちよく、シャープさを損なわないため、精悍な印象を受けました。
LUMIX S5IIのフォトスタイルの色をも素直に引き出してくれました。撮影カットごとの差異が少なく安定感があります。また、室内・屋外でも周辺の光源、時間帯による色もほどよく影響し、周囲の環境、雰囲気を活かした撮影に向いています。撮影していて感じたことですが、どんなシーンでもわざわざ誇張しない、嫌味の無い写りがLUMIXらしさといえるでしょう。その半面で、自分好みのリアルタイムLUTを当てて使うことを考えられているようにも感じました。
正直なところ〝小さくて軽いは正義〟ということをマクロレンズでも感じるとは思いませんでした。撮影中には、新開発デュアルフェイズリニアモータの恩恵を感じ、「今まで苦労しながら撮影していたマクロレンズはなんだったのだろうか…」と思ってしまうほど的確なAF、等倍近接マクロ領域以外でも大いに活躍してくれ、日頃から持ち歩ける軽妙さで、とにかく使い勝手のいい一本です。
LUMIX S F1.8シリーズ愛好者ならもう一本揃えておきたいところであり、かくいう私も欲しくなってしまいました。
■モデル:@もくれん
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
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小型軽量で防塵防滴の頼りになる望遠ズームレンズを試しました。そのレンズは「HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR」です。ワイド端からテレ端までF4通しと使いやすく、「HDコーティング」採用なので優れた画質を得られ、なおかつテレマクロ的に使える優秀な一本でした。何よりも取り回しがバツグンなのがいいですね。
何といってもこのレンズのウリは機動性が優れているところでしょう。全長175mm、本体質量819g(フード付:859g)とコンパクトな設計で長時間の撮影や持ち歩きでも苦にならないサイズ感です。ズーム全域で開放F値は4となりますが、同じ焦点距離のスターレンズ「HD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AW」が約2030g(フード、三脚座含む)なので比較すると断然ライトウェイトです。
写りも納得です。高性能マルチコーティング「HDコーティング」を採用して、さらにレンズコーティング全体を最適化を施し、ヌケがよく逆光時でもゴーストやフレアの発生を抑えた高い描写性能を有しています。レンズ構成は14群20枚となっており、特殊低分散(ED)ガラス3枚と異常低分散ガラス2枚を採用。色収差や歪曲収差、コマ収差を良好に補正しています。
オートフォーカスもキビキビと動作し快適です。レンズ内超音波モーター(SDM)を搭載しているので、高速かつ静かなピント合わせを実現しています。動体でもススッと合焦可能でした。
またワイド端とテレ端で最短撮影距離0.95mを達成しているので、テレマクロ的に使えるのもとても便利ですね。そして防塵防滴構造になっているので、雨やホコリに見舞われる過酷な環境下でも安心して被写体に向き合えるレンズに仕上がっています。
レンズ鏡筒側面には「AF/MF切替えスイッチ」と「フォーカスレンジリミッター」を装備。無限~2m、2m~0.95mで制限をかけることが可能です。
それでは軽量コンパクトなこのレンズを「PENTAX K-3 Mark III」に装着して撮影を楽しんでみました。このAPS-Cフォーマットのカメラに装着すると、107~322mm相当(35ミリ判換算)となるので、よりテレ側での撮影が有利になりますね。
新年のどんど焼きでのカットです。ワイド端で撮ったものですが、ヌケ感がよく実にクリーンな印象です。
同じ位置からテレ端にズーミングして、さがっているダルマにフォーカスしました。このレンズはその質感と色合いをしっかりと捉えてくれました。笹の葉や穂先まで精細に描き出していますね。
土手に登って燃え尽きつつあるどんど焼きと遠くの富士山をフレームに入れ込みました。炎の色合い、集まった人々の様子、滲む富士山までイメージどおりの写りになっています。ズーミングも実にスムーズで使いやすい印象です。
川面を泳ぐ水鳥を狙いました。「HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR」はオートフォーカスがとても静かで高速です。スッと合焦してくれるのでシャッターチャンスを逃しませんね。
このレンズは小型軽量なのでとても取り回しが良好です。望遠ズームレンズというと「重い」「長い」というイメージがありますが、このレンズはそれがありません。遠くの被写体を意のままに引き寄せて、望遠レンズ特有の描写を存分に楽しむことができるのがうれしいですね。
河川敷にあった標識を撮りました。長い年月の間、風雨にさらされ、経年劣化していますが、「HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR」は克明にその様子をキャプチャーしてくれました。文字のかすれ、ヒビ割れ、変色の様子がとてもリアルです。
走行中の電車を狙いました。オートフォーカスは確実にしっかりと合焦し続けてくれました。ボディのラッピングが鮮明に読み取れますね。「HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR」は鉄道だけでなく、スポーツや生き物、ポートレートなど動きのある被写体でも活躍してくれそうです。
寺社にあった龍と玉に迫りました。このレンズはワイド端とテレ端で最短撮影距離0.95mとなっており、APS-Cフォーマット機の「PENTAX K-3 Mark III」だと、よりテレマクロ的に被写体を大きく撮れます。しかもご覧のとおり、石材のざらつき感や玉のクリア感がとてもいい印象です。幅広いシチュエーションで使えるレンズと言えます。
軽量でコンパクトなレンズなので、街中でカメラに装着していてもあまり目立ちません。ブラブラと歩いていて気になった被写体を発見しても、自然かつスムーズに撮影を楽しむことができました。レンズ鏡筒もスリムなので威圧感も少なく、人物撮影でも自然な表情を引き出せそうですね。
焦点距離 | 70-210mm 35ミリ判換算値 107-322mm相当(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時) |
開放絞り | F4 |
最小絞り | F32 |
レンズ構成 | 14群20枚 |
画角(対角) | 34.5°-11.8° (ペンタックス 35ミリフルサイズ一眼レフカメラ装着時) 23.0°-7.7° (ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時) |
マウントタイプ | KAF4 |
最短撮影距離 | 0.95m |
最大撮影倍率 | 0.32倍 |
フィルター径 | 67mm |
光量調節方式 | 電磁絞り 完全自動絞り |
絞り羽根枚数 | 9枚 円形絞り (F4-F9.5 ) |
絞りリング | なし |
三脚座 | なし |
レンズフード | PH-RBP67 (付属) |
レンズキャップ | O-LC67 (付属) |
レンズケース | S100-200 (別売) |
最大径 x 長さ | 約78.5mm x 約175mm |
質量(重さ) | 約 819g (フード付:約859g) |
使用温度 | -10~40℃ |
使用湿度 | 85%以下(結露しないこと) |
同梱アクセサリー | レンズフード PH-RBP67、レンズキャップ O-LC67、レンズマウントキャップK |
その他 | HDコーティング SP(Super Protect)コーティング WR(防滴構造) クイックシフト・フォーカス・システム (QFS/M) SDM (超音波モーター) フォーカスレンジリミッター |
このレンズはズバリ「機動性」が素晴らしいです。スリムで軽いので、常に携行しても苦にならないサイズ感が魅力ですね。ふだんは「Limited」レンズでの撮影がメインでも、やはりこの望遠ズームレンズがあると表現の幅がグンと広がることを実感しました。特に「PENTAX K-3 Mark III」に装着すると107~322mm相当(35ミリ判換算)になるので、肉眼を越えた領域での撮影が可能になってきます。それでいてヌケ感が高く、防塵防滴性能を有しているのですから、あらゆるフィールド、シチュエーションでの活躍が期待できるでしょう。テレマクロ的に活用できるのも見逃せません。スナップから風景、運動会、ペットの撮影まで、きっといい写真を手にすることができることでしょう。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。
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こんにちは! ShaSha編集部です。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
ShaShaはご存じのとおりカメラやレンズなどの機材、また撮影方法などを写真愛好家の皆さまに紹介するサイトです。毎日更新される記事内では、少し難しい専門用語がたくさん飛び交っていますね。もちろん内容をすぐに理解できる写真上級者の方も多いかと思いますが「それってなんのこと?」と、?マークが出ている読者の方もいらっしゃると思います。
このシリーズではそんな初心者の方に、つまずきがちな写真用語をわかりやすく解説していきたいと思います。「なんとなくはわかってはいるけど……」という方も、用語をきちんと理解できると写真生活がますます楽しいものになるはずです。
もちろん中・上級者の方も、おさらいに是非読んでみてくださいね。
カメラを持ってぶらぶらと歩いているとき「あ、あれ面白いな!」と思ってパチリ。でも、見た感じのように写真が撮れていない…。みなさんはこんなふうに感じたことはありませんか?「私ってセンスないのかも?」いえいえ、そんなことはありません。
きっと、これいいな!と思った被写体をそのまま撮っていることが多いのではないでしょうか。しかし、画面の中の被写体の配置や自分が撮る位置を少し変えるだけで、写真がぐっと良くなってくることがあります。
良い被写体を見つけたら、次にそれを写真でどのように表現するかが大事になってきます。これまでは絞りやシャッタースピードなどカメラの基本的な操作を紹介してきましたが、先月の「光」同様、さらにプラスαの撮影方法を紹介します。
今回は少しの工夫で写真をより魅力的に見せるための、基本的な構図、アングル・ポジションについて学んでいきましょう。
例えば集合写真を撮るときは、横位置で撮ることが多いですよね。画面の中に多くの情報を取り入れることができますし、左右の広がりを表現したいときにも向いています。風景写真や街中のスナップ写真なども、横位置のものが多いように感じます。
逆に縦位置の写真は何かを強調したいとき、例えば高さや奥行きなどを表現したいときに向いているでしょう。大きなタワーや樹木の高さを出したいときには、縦位置で撮るとその迫力を表現できます。またポートレートでは、なるべく被写体の魅力を表現するために大きく写し、さらに被写体以外の情報を極力なくすために、縦位置で撮ることが多いと思います。
このように、まずは被写体の何を表現したいかを考え、横位置で撮るか縦位置で撮るかを決めていきましょう。
構図とは、画面の構成のことです。ShaShaの記事を読んでいて「自分もこんな風に撮ってみたい!」と撮影してみても、なんだか作例と違う…。なぜでしょう。プロの写真家が撮る作品は、何を伝えたいのか一目でわかるものが多いと思いませんか?写真家は被写体をどのように表現するかということを常に考えながら撮影していますが、その一つに構図があります。
基本的な構図には、このようなものがあります。
画面を縦、横に三等分した構図です。この線の交差したところにメインの被写体を持ってきます。または2:1の比率で被写体をどちらかに配置すると、とてもバランスが良く感じます。どこに持ってくるかは被写体の向きなどを見て、その時々で判断しましょう。似たもので「黄金比」という約5:8の分割点に被写体を持ってくる、絵画の基本的な構図もあります。
画面の上下、または左右を真ん中で分ける構図です。シンメトリーが強調されて視覚的に安定感が出ます。まっすぐに伸びる地平線や空と山並みなどの遠景を表現する時に効果的です。
日本の国旗の日の丸のように、画面のど真ん中に被写体を配置する構図です。単純な構図と言われがちですが、主役に存在感を持たせたい時や、魅力を最大限に引き出したい時は抜群の効果を発揮します。メインの被写体を大きく写して、ほかの被写体をなるべく入れないようにすると、より際立ちます。
画面を斜め二つに分けて、対角線上に被写体を配置する構図です。写真に奥行きを出したり、動きをつけたい時などに意識したい構図です。しかし無理やり斜めに撮ると違和感が出ますので注意しましょう。
少し変わった構図を一つ紹介します。メインの被写体の周りに、額縁の枠で囲ったように別の被写体を入れる構図です。四方を囲っていなくても大丈夫。枠を入れることでメインの被写体がより際立って見えます。
ローアングル、ハイポジションといった用語はご存じでしょうか?アングルとは、カメラを傾ける角度のことで、上に向けるとローアングル、下に向けるとハイアングルとなります。似た言葉で、ポジションという用語があります。こちらは被写体に対してのカメラ位置のことで、姿勢を低くして撮ればローポジションから、手を高く上げてカメラを目線の上の位置に持ってきて撮ればハイポジションからの撮影となります。
▼アングル
▼ポジション
次の写真を見てください。同じ被写体を撮ったものですが、印象が違うと思いませんか?それぞれのポジションやアングルで撮ったものです。
●ローポジション・水平アングル
たくさんの落ち葉をアイポジション(目の高さ)から撮影。きれいではあるけれど、少し物足りないような…?
ローポジション・水平アングルで撮った落ち葉。地面すれすれの位置から撮ったことで、前後にボケができて一面に枯れ葉が落ちている雰囲気が出ました。
●ハイポジション・ハイアングル
目の前に紅葉した葉があり、眼下には落ち葉が流れる川がありました。いつもどおりアイポジションで撮ってみましたが、なんだか背景が雑然としています…。
腕を高く上げてハイポジション・ハイアングルにて撮ったことで、背景がほとんど池だけになり、画面がすっきりしました。液晶がバリアングル式のカメラだと便利です。
●ローポジション・ローアングル
かわいらしい花が咲き始めていたのでアイポジションで撮影してみました。しかし、背景の枝ぶりが少し雑多な感じ…?
ローポジション、ローアングルから撮ったことで冬の青空が背景となり、すっきりと爽やかなイメージになりました。同じ場所にある花を撮ってもこんなにイメージが変わるのですね。
アイレベルや水平アングルで普通に撮ってしまいがちな被写体でも、このようにカメラの向きを上下させたり自分が撮影する位置を変化させることで、より被写体の魅力を引き立たせることができます。
こちらではシチュエーション別に、こんなふうに構図してみるとさらに効果的という作例をいくつか紹介します。
●向いている方向にスペースをつくる
動いている被写体のまわりに空間を作ると、画面に動きが出てきます。さらに進行方向にスペースをつくると、写真に物語性を感じさせることもできます。
●迫力を出すために画面からはみ出させる
被写体の迫力や勢いを出したい時に、意図的に画面からはみ出させる方法です。画面に収まるように撮るよりも、羽を広げようとする鳥の迫力を感じませんか?
●ぽつんと感を出すために余白をつくる
少し寂し気な感じを出したい時には、メイン以外の被写体を排除して小さく写してみましょう。ツバキがひとつだけ落ちてしまって、ぽつんとした感じが出ています。
画面構成を工夫したり、アングルやポジションを少し変えるだけで、写真がいきいきしてくるのがわかりますね。いつも同じような写真しか撮れないという方は、少しアングルを変えたり自身が動いてポジションを変えるだけでも構図が変わってきて、新しい気づきがあるかもしれません。あとは、被写体の何を表現したいかということを感じることが大事ですね!
いかがでしたか? 理解できた方も、そんなこと知っているよという方も、なにかしら参考にしていただけたら幸いです。
それでは今日も楽しく撮影に出かけましょう! カシャカシャ!
2024年、1月。
新年のはじまり。
私の住む小さな海まちの小さな山の上には、菜の花が満開。町のいたるところに菜の花が咲いている。冬のキリっとした寒い風に吹かれながら、その鮮やかなイエローの花びらを揺らしている。そんな美しいイエローカラーを見ていると、寒い冬だけれどとても暖かい春のような気分になる。
この「ライカとカレー」の連載がスタートしたのは、2020年7月のこと。今から約3年半前。ライカの知識0からスタートして、いろいろなカメラと旅をして、今回は13回目の連載回となる。いろいろなライカと旅をしてきたなあ。
ちょっと並べてみよう。
こうやって並べてみると、本当にいろいろと旅をしてきたなあと自分でもびっくりする。
そして。
連載9回目の時、人生初、ライカのボディを購入した。マイライカ。
購入したカメラは、M11。迷いに迷って、M11を選んだ。
色も迷った末に、やっぱり自分が直感的に好きだと思うシルバーカラーを選んだ。
ライカM11が私のもとにやってきてから早1年経つ。
今日はライカの気分だなあ。
そんな気分の時、防湿庫からライカを取り出して撮影をする。大体、プライベートでのんびりとした時間を過ごしたいときだ。大きな撮影が終わった時や、忙しい日々を乗り越えたとき、ゆっくりとした気持ちでシャッターを切りたい、そんなとき、ライカを持ち出して写真を撮ってきた。
私にとってのマイライカは、癒しの一日にシャッターを切る、そんなカメラのようだ。
さて。
ライカM11については、以前旅して書いた記事がある。2回分。Vol.9とvol.11の回、ライカM11について書いている。そちらを読んでほしい。
上記記事も記載しているが、ライカM11が発売になったのは、2022年1月。
ライカM10と比べて大きな変化としては、2400万画素から6030万画素へと大きく画素数が増えたこと。そして、従来のM型カメラの定番であったベースプレートが無くなったこと。ベースプレートを取り外して行っていたバッテリー交換やSDカードの抜き差しも大分簡単&スピーディーに出来るようになった。さらに、バッテリー容量は、従来よりも容量が64%アップし、同時にカメラ全体の消費電力も抑えているため、より長時間の撮影が可能に。また、SDカードスロットに加えて、大容量64GBの内蔵メモリーも搭載し、M型カメラとしては初めてSDカードと内蔵メモリーの記録媒体へ同時に画像データを記録することが可能になった。
簡単にまとめると、軽量化・使い易さアップ・さらに高画素・内臓メモリー搭載・バッテリー持ちも良くなった、ライカ新型フラッグシップのデジタルレンジファインダーカメラだ。
筆者にとって特に気に入っている点は、液晶画面をタッチしてサクサクと設定できるところ、デジタルズームが1.3倍と1.8倍が利用できるところ。デジタルズームは、レンズを変えることなく倍率を変えて撮影できるので、とても気に入っている。そして、充電方法。USB Cタイプで充電できる。コードさえ持っていれば、旅先でも気軽に充電できるところが、ライカという高級なカメラだけれどもフットワーク軽く撮影できるので嬉しい。
そして、レンズもマイライカ。
ズマリット 50mmf1.5だ。ソフトフィルターをかけたような、柔らかい表現がとても人気のオールドレンズだ。解放F1.5で点光源に向かって撮影すると、大きな虹のようなフレアが写ることが最大の特徴。
さらに。外付けファインダービゾフレックス2をつけての撮影。こちらもマイライカ。
撮る作品を目で確認しながら撮影したい、ピントをしっかりと確認したい、という気持ちから、ビゾフレックス2を購入した。ビゾフレックスのファインダーを覗いてシャッターボタンを半押しすると、実際に撮れる露出で写る景色を確認することが出来る。ビゾフレックス2を覗いて撮影すると、液晶を見るよりも、はるかにピントが確認しやすい。
この「ライカとカレー」の記事のクライアントさんは、カメラのキタムラさんだ。そのカメラのキタムラさんの社員さんのKさんから、いつも記事の執筆依頼がくる。以前、新宿北村写真機店を訪れたとき、Kさんにお会いして、撮影をした。メールから想像していた真面目でとっても優しいKさんそのままの方が現れて少しお話しした、ということを記事に書いたことがある。
そのKさんからの今回のご依頼は、
「ぜひ、山本さんのお店を撮ってほしいです。」とのこと。
山本さんのお店。
そう、実は筆者山本、昨年、今住む小さな海まちに小さなお店なる空間を作った。
その空間は、写真とスパイスカレーの空間PEANUTSuuと言う。ピーナッツぅ、と読む。
以前から、写真で人が集うことが出来るスペースをつくりたいなあと思っていた。そして、7年前から本気で学んでいるスパイス料理を出すことが出来る空間があったらいいなあと思っていた。さらには、写真を展示できるギャラリーがあったらいいなあと思っていた。そんないろいろな思いが叶う空間がポッと出てきたのだ。
この空間気になるなあと思って仲良しの不動産屋さんに「気になる~」とメッセージを送ってみると、あれよあれよという間に、物件を借りることになり、工事がスタートし、空間が出来上がった。そして、昨年10月から、PEANUTSuuがスタートした。
写真教室の教室として使用したり、月に3日間だけOPENするスパイスカレー店として営業したりしている。写真展も開催している。
ちなみに。
PEANUTSuuの名前の由来の一つは、PEANUTSuuがある小さな海まち二宮町の特産が落花生、ピーナッツなのだ。町のあちこちに落花生屋さんがある。だから、PEANUTSuuのスパイスカレーは、ピーナッツを隠し味に入れている。本当の大きな由来はまた別にあるのだけれど。それはお会いした方に直接お話ししますね。
では、今回は、PEANUTSuuのある二宮町を旅しよう。そして、PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影しよう。
あれ。
でも。
この連載のタイトルは、「ライカとカレー。今日はどの駅で降りようか。」だ。
二宮町を旅するだけじゃ、駅も電車も利用しない。
さあ、どうしよう。
そうだ。
PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影するなら、スパイスを購入するところから撮影しよう。
さあ、いつもスパイスを購入するお店がある新大久保に行こう。
私は、月に1回くらい、新大久保に行きたくなる。
あの空気感が、好きなのだ。どうしても、好きなのだ。
人の渦、アジアのカオスのような場所、インドやネパールを肌で感じることが出来る場所を歩くのが好きなのだ。スパイスの匂いが漂う、あの街の香りが好きなのだ。あの街の中で、狭いスパイス店の棚に所狭しと並ぶスパイスたちを見ながら、たまにインドの店員さんに「ナニサガシテイマスカ~」と話しかけられながら今回はどのスパイスを買おうかなあ、そんな時間を過ごすのは、私にとってこの上ない至福の時間。
そして、もう一つ、楽しみがある。
新大久保には、無数のアジア料理店が立ち並んでいる。
インド、ネパール、タイ、韓国などなど、アジアのフード勢ぞろい、というくらい、お店がぎゅぎゅぎゅ―――っと並んでいる。今日はどこに行こうかなあ。そんなことを考えながら、行きの電車の時間を過ごすのも、幸せな時間。
JR東海道線で品川駅に向かう。山手線に乗り換えて新大久保へ。
今日は、ネパール料理を食べよう。
きた。
私のオアシス。
あああああああ。
この空気。
まるで本当にその国にいるような現地感。
目星をつけていたネパール料理屋さんに入ると、もう14時近くだというのに、席はほぼ満席。私以外は全員ネパールの人かな、と思うくらいネパールの方が多い。店員さんがネパールの方なので、みんな母国語で注文している。
私は、ネットで見てこれにしようと決めていた「モモ入りトゥクパ」を注文。モモもトゥクパもどっちも食べたかったからちょうどいい。モモはネパールの餃子のこと。トゥクパは、チベットやネパールなどで食べられるうどんのようなラーメンのようなもので、汁の中に麺が入った食べ物のこと。訳すと、餃子入りスパイスうどん、のようなものだ。
お客さんが帰っても、すぐに次のお客さんが入ってくる。相変わらず満席なる店内をいろいろ眺めながらモモ入りトゥクパを待つ。赤ちゃんを連れたネパールのご夫婦、お友達大勢で宴会をしているイケメンネパール男子たち、お友達とチョーミン(焼きそば)を食べる女子たちなどなど。まるで本当にネパールにいるみたいだなあ。そんなことを思いながら待っていると、モモ入りトゥクパが到着した。ネパールで食べたトゥクパやモモに近く、とても美味しかった。食後はミルクティ、チャイを飲んだ。
ズマリット 50mmf1.5の最短撮影距離は100cm。テーブルの反対側の端っこの角に置いて、ファインダーで覗いている体を後ろにのけぞらして撮影。
スパイス店も、数件はしごして、山のように購入。
いつも行く店は決めているのだけど、今回はあっちの店もこっちの店も入ってみようとドキドキしながら入店してみた。すると。いつも行っているお店よりも、このスパイスはこっちの方が美しい、これはここの方が安い、この店はクレジットカードが使えるなど、いろいろな発見があって楽しかった。決めることもいいけれど、新しいを感じることも大切だなあ、そんなことを思いながら興奮なるスパイス購入は終了。
今回も、肩が痛くなるくらいの重さのエコバッグを掲げて電車に乗り込む。
ああ興奮した。
ああ楽しかった。
私のオアシス新大久保よありがとう。
またすぐに来るからね。
帰りがけ、次に行くお店を選びながら歩いた。
次は、マレーシア料理だ、な。
さあ、二宮に帰ろう。
スパイスも購入したし、まずは、PEANUTSuuのある二宮町を歩いてみよう。
みなさんに、1月の二宮町をご紹介したい。
JR二宮駅から徒歩5分のところに入口がある小さな山 吾妻山の頂上には、お正月前から菜の花が咲いている。1月の中頃は、満開。
さあ、吾妻山に登ってみよう。
今回は、駅から25分くらいあるいたところにある中里口という登山口から登ることにした。
あ、猫さん。
こんにちは。
梅が咲いていたり
水仙が咲いていたり
ミツマタが咲いていたり
春はすぐそこ。
そんな景色をのんびりと歩いた。
頂上だ。
あ、メジロさん。
太陽がキラキラとしていて
菜の花がふわりふわりと揺れていて
鳥たちが鳴いていて
人々が笑っていて
ああなんて気持ちがいいんだろう。
楽園のよう。
もう何度来たか分からないくらい訪れているこの場所。
何度来ても、毎回思うのは、楽園のよう、ということ。
ありがとう、二宮。
ありがとう、吾妻山。
ズマリット 50mmf1.5は、ソフトフィルターのような柔らかな描写が特徴でもある。解放F1.5あたりで撮影していると、ふわふわでピントが合っているのか合っていないのか分からないくらいの柔らかな写真になる。私は、全開に柔らかい描写よりも少し引き締めて撮影したいと思い、JPEG設定のフィルムモードをビビッドに設定した。そしてさらに、フィルムモード設定の中で、コントラストとシャープネスを+1、などにして少しボディ内で調節して被写体によって変えながら撮影した。
あまりにも気持ちがいいので、芝生の上に布を敷いてごろんと横になった。
しばらく、ぼおっと青空を眺めていた。
遠くのお隣のグループのお話が聞こえてくる。
4~5人くらいのグループの中で、男の人が美味しいおかずの作り方を力説している。かれこれ30分くらいその男の人が一人で同じ話を何度も力説していた。おしゃべり好きな人は、やっぱりずっと話しているんだな、そんなことをぼおっと考えながら空を眺めていた。
さあ。
お昼ごはんを食べよう。
今日のお昼ご飯はビリヤニ。
ビリヤニは、インドの炊き込みご飯。
そう、PEANUTSuuで2月に出すことになっているお昼ごはん。
南インドのスパイスを効かせた炊き込みご飯の中には、二宮町らしくピーナッツとミカンが入っている。別添えで、ピーナッツソースが染み込んだ手羽先焼きPEANUTSuuチキン、スパイスピクルス、菜花のスパイス炒めが入ったピクニックBOXだ。
宣伝になりますが、2024年2月10日(土)~12日(月)10:00-14:00、PEANUTSuuにてビリヤニテイクアウトBOXを販売します。題して、「PEANUTSuuビリヤニ ”二宮菜の花BOX”」。
菜の花を見ながらビリヤニ、いかがですか。
みなさまのお越しをお待ちしています。
PEANUTSuu
我ながら、「美味しい!」と心の中で叫びながら完食。
帰るころには、富士山の上に、雲がにょきっとかかっていた。まるで、ちびまる子ちゃんの花輪くんの髪型みたいだなあ、そんなことを思いながらシャッターを切った。
菜の花と富士山を同時に見せたいとき、かなり絞って撮影した。F16くらいまで絞って撮影した。ズマリットは特に柔らかい描写なので、離れた被写体を同時に見せたいときは、F8とかではなく、思い切って絞ることが必要。
写真とスパイス料理の空間PEANUTSuuは、JR二宮駅北口から歩いて5分のところにある。
北口駅前に立っているオリーブの木を撮影してPEANUTSuuに向かう。
ズマリットは、開放F1.5で点光源に向かって撮影すると、虹のようなフレアが描かれる。このレンズの最大の特徴でもあるところ。
でも実は、この写真、ちょっと工夫して撮影している。
お気づきの方はいるだろうか、この写真、90度左回転してある。
青空に輝く虹のようにフレアを入れたかったので、オリーブの木の下部分にフレアを入れて撮影した。それを左側に90度1回転してみると、このような虹がかかったオリーブの木になった。
点光源から、円を描いて出現するフレアで、遊びながら撮影した。
てくてく。
駅から5分歩くと、菜の花色のイエローの外壁の建物が見えてくる。
PEANUTSuuだ。
小さな花壇には、菜の花が咲き始めている。
鮮やかなブルーカラーの壁。
晴れた日に輝く二宮の海をイメージして色を選んだ。
ギャラリーはこんな感じ。
もちろん、厨房もある。
チラリ。
厨房は、意外に広い。
通常は、私とスタッフ2名、合計3名でスパイスカレーを調理&盛り付けしている。そして、営業日以外は、スパイス料理の研究をしている。
PEANUTSuuの目の前の通りは一応二宮の銀座、駅前通りなので、人通りはたくさんある。そして、バスがビュンビュンと走っている。
この日はスパイスカレー営業日ではなかったけれど、せっかくなので、スパイスカレープレートを作った。
通常、このようなプレートでお客様にご提供している。
メインのカレーはPEANUTSuu Chicken Curry(ピーナッツぅチキンカリー)、ダル(お豆のカレー)、ラエタ(ヨーグルトサラダ)、サブジ(野菜の炒め物)、副菜などがのったプレート、1日30食限定、でご提供している。
PEANUTSuu Chicken Curryは、二宮町の人気の落花生屋さんのピーナッツを隠し味に入ったPEANUTSuu特製カレー。その他ダルやラエタ、サブジなども二宮町や西湘の素材をふんだんに使用している。
10月にOPENして数回営業しているけれど、このPEANUTSuuを目指して全国からお客様が来て下さる。関東圏や近隣県からだけではなく、東北や関西や山陰、九州からも。写真教室の生徒たちや、写真家山本まりこのファンでいて下さる皆様が駆けつけて下さっている。さらには、二宮町の方や、西湘の方、スパイスカレーの噂を聞いてきて下さる方も沢山来てくださっている。おかげさまで予約席は、予約開始から1時間ほどで毎回満席に。感謝、感謝、感謝の日々です。
この「ライカとカレー」を見たという方も、来て下さったら嬉しいな。
もし来てくださったときは、ぜひお声をかけてくださいね。
2月は、2月10日(土)~12(月)でビリヤニテイクアウトをします。
3月は、3月8日(金)~10(日)でOPEN予定です。
ぜひ、お待ちしています。
ライカとカレー、初めてのマイライカでの撮影となった今回。
愛する海まち二宮と、そして、自分で作った空間PEANUTSuu、そして、PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影した。読んで下さっている皆さまが、楽しんでくれていたら嬉しい。
ライカで撮影すると毎回思うことがある。
撮影しているその時よりも、パソコンでじっくり写真を確認しているときに、その美しさに惚れ惚れする、それが毎回なのだ。
例えば、菜の花の鮮やかなイエローも、パソコンの大きな画面で確認したとき、なんて美しいイエローなんだろう、そう感じた。吾妻山の木々の間にきらめく光も、大きな画面で見たときに、ドキドキした。
何だろう、それは、撮影の余韻のようなものが写っているのを感じるから、なのかも知れない。シャッターを切る瞬間、誰もが興奮するあの瞬間、その時に感じていたあの煌めく思いが、パソコンの大きな写真を見た瞬間にぶわっと蘇る、そんな感じなのだ。少し忘れかけてしまっていたあの時の感動が、画面を見た瞬間に呼び覚まされるというような。言葉にならないような不思議な感情が写っている、と言うか。でもそれは、ライカというカメラで撮った時にしか感じていない特殊な感情でもあるのだ。
これを読んでいる皆さんにも、ぜひ味わっていただきたい、そう思う。
たくさんの場所に旅をし、撮影し、執筆してきたこの「ライカとカレー」。
いつか写真展を開催してみたいなあ、本も出版したいなあ。そんなことをぼおっと考えたりしています。
さあ。
次はどの駅で降りようか。
ライカと一緒に。
■撮影協力
写真とスパイスカレーの空間「PEANUTSuu」
神奈川県中郡二宮町二宮1135-4
PEANUTSuu
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
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いつ頃からだろう、仕事のあとに食べる甘くて美味しいものが楽しみのひとつになったのは。
昔ながらの喫茶店や、新しくオープンしたオシャレな内装のカフェで食べる美味しくて可愛らしいスイーツたち。頑張った自分へのご褒美だからと気になるお店を見つけると、スマートフォンの地図アプリにピンを刺して、いつか訪れる日を心待ちにしていました。
誰かとご飯やお茶をする機会が失われた2020年の新型コロナの流行。先の見えない不安な日々の中で、心の支えになったのはいつか行きたいと思っていたお店の存在でした。コロナが落ち着いたら、もう少し我慢したらきっと行くんだと思っていたある日、行きたかったお店のひとつが閉店したことを知りました。いつかがもう来ないこと、それがこれからも起こるかもしれないと思った時、コロナ禍でやりたいことができました。
そうして始めた一人カフェ巡り。最初は自宅から自転車で行かれる範囲の地図アプリに収集していた行きたいお店を訪れ、行った記念に写真を撮ってスイーツを堪能して帰る。あくまでお客さんとしてお店の邪魔にならないように、でもせっかくなら写真はしっかり撮りたいし、と次のお店を選びつつ、自分なりの撮影ルールを決める時間が楽しくて、しぼんでいた心が少しずつ元気になっていくのを感じました。
この度、私の心もおなかもまんぷくにしてくれた可愛くて美味しい存在をお裾分けする展示を目黒のJam Photo Galleryで開催します。私の美味しい記憶をお菓子好き、写真好きな人たちと共有できたら嬉しいです。
■日時:2024年2月13日(火)-25日(日)
■時間:12:00-18:00(日曜17:00迄) 月曜休廊
■会場:Jam Photo Gallery
https://www.jamphotogallery.com/
〒153-0063
東京都目黒区目黒2-8-7 鈴木ビル2階B号室
→地図はこちら
目黒駅より徒歩5分
目黒通りを山手通り方面に権之助坂を下り 目黒川を渡ってすぐ右側のビル
目黒通り沿い もつ焼き『ひろや』の2階
■費用:入場無料
■ワークショップ
金森流のカフェでのスイーツ撮影術をお伝えする「まんぷく図鑑の作り方」
2/18( 日 )17:00-18:30【満席】
2/23( 金祝 )10:30-12:00【満席】
※各定員6名 参加費 5,500円(お菓子代込み)
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。雑誌やwebマガジンなどでの撮影・執筆のほか、フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。個展・企画展多数。
HP:https://note.com/kanamorireina/
Instagram:https://www.instagram.com/kanamorireina/
Twitter:https://twitter.com/kanamorireina
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マイクロフォーサーズ規格の利点を活かした強力な手ぶれ補正や、レンズ表記の2倍になる望遠性能、そして小型軽量なシステムで野鳥撮影に人気のOM SYSTEM。こと、AI被写体認識AF(鳥)、通称「鳥認識AF」の飛躍的な向上もあり、OM SYSTEM OM-1の発売以降、フィールドで使用する方を見かけることも増えたように思います。
そんな中登場したOM SYSTEM OM-1 Mark IIは、バッファメモリの増設による高速連写機能の強化に加え、AFアルゴリズムの見直し、手ぶれ補正の効果増、ダイヤルの素材見直しなど、OM SYSTEM OM-1からのブラッシュアップを図ったカメラです。
同時に発表された「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS」は、35ミリ判換算で300mmにはじまり、M.ZUIKOレンズの中で最長となる1200mm相当までもの焦点距離を備える他に類を見ないユニークな超望遠レンズです。野鳥撮影での使用を考えているユーザーも少なくないと思います。
今回は実際に国内で撮影してきた鳥たちをご紹介しながら、「新×新」システムをレビューしていきます。なお、本稿中の写真はすべて撮って出しのjpegデータです。
新たに軍艦部に「OM SYSTEM」を冠したOM SYSTEM OM-1 Mark II。被写体検出AFに人物が追加、さらにライブND128、ライブGNDという魅力的な機能が追加されています。
野鳥撮影で使用する機能については、OM SYSTEM OM-1からガラッと変わったというほどではありませんが、2000万画素の高画質、防塵防滴性など重要な部分はしっかりと引き継がれています。その上で、各ダイヤルの素材が指掛かりの良いものに改良されたほか、静音高速連写SH2の連写速度設定およびシャッター速度下限の拡張、AFや手ぶれ補正のアルゴリズム見直しに伴う性能向上などの進化が見られます。中でも目を引くのがバッファメモリの増設に伴う高速連写可能枚数の増加で、jpegでは最大219枚、RAWで最大213枚までの連続撮影が可能になりました。高速連写やプロキャプチャーモードを多用しても、書き込みを待たされる心配がなくなります。
AFについては、OM SYSTEM OM-1で定評のあった高速・高精度のAFをもとに、アルゴリズムの見直しで枝の中にいる鳥の合焦精度が上がっているとのことです。枝先を移動することの多い、小鳥の撮影で進化を実感できます。
ボディと同様、注目を集めているのが新レンズM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISでしょう。150mmから600mm(35ミリ判換算300-1200mm相当)までの4倍ズームで、特に望遠端の1200mm相当という数字はユニークです。テレコンバーターにも対応し、最大2400mm相当での撮影が可能です。
大きなズームリングがありますが、公式にも、直進式または回転式のズーム方式と表記されており、レンズ先端を掴んで前に押し出すことによる素早いズーム操作が可能です。レンズ先端を持つスタイルは、そのまま安定感のある構え姿勢になるので、この仕様は歓迎です。レンズの片面のスイッチを使用することで、移動中にレンズ自重で伸びてしまうことを防げる仕様になっています。
OM-1 Mark IIとの組み合わせでは、広角端(300mm相当時)に7.0段分、望遠端(1200mm相当時)に6.0段分の補正効果になります。これは「5軸シンクロ手ぶれ補正」に対応したことが大きく、手ぶれを防いでシャープな像を得ることに寄与することはもちろん、ファインダー像の安定にもつながるので、ピント合わせや構図決めの面でも有利です。
これまで野鳥撮影では、鳥との距離が遠く、十分な大きさに写せる機会は限られるため、なるべく長いレンズを使い、その距離を埋める必要があると説明することが多くありました。野鳥への不要なストレスを少しでも軽減するため、鳥との距離を保ち、不用意な接近をしない意識を持ってほしい、という意味合いもあります。実際、150-600mmの1200mm相当域を持ってしても鳥が小さい、というシーンもあった一方で、これ以上無闇に長いレンズを使用しても空気の揺らぎの影響が大きくなり、シャープな像は望めないことを思うと、このレンズで実現された1200mm相当という望遠効果は、現実的に野鳥撮影で活かせる最大値という感想を持ちました。ここから先は、観察力を鍛え、鳥にストレスを与えずに近づく努力をする領域かと思います。
雪原で羽繕いしていたタンチョウを、低い目線から撮影しました。手前に雪をボカして入れたこと、暗い背景を選んだことで、タンチョウの白さを際立たせました。距離を保ちつつも十分な大きさに写すことができました。姿勢を低くしたことで、鳥の警戒心が薄れた面もあります。手ぶれ補正の効果で安定感があるので、手持ち撮影でも望んだアングルを得ることが容易です。
次の作品は雪の降る中、森で出会ったアカゲラです。手持ち撮影ができる最大のメリットは、鳥たちの姿を探してフィールドを歩ける自由度にあると思います。
OM SYSTEMユーザーにはお馴染みですが、OM SYSTEM OM-1 Mark II+M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISの組み合わせもIPX1相当の防塵防滴性を備えているので、雨雪も安心です。レンズ前玉にはフッ素コーティングがなされているので、水滴もブロワーで簡単に落とせます。
うまく先回りして待つことができたので、思ったよりも近くにアカゲラがやってきましたが、ズームを引いてうまく画面に収めることができました。
M.ZUIKOレンズらしく、近接撮影性能も優れています。最短撮影距離は、600mm(1200mm相当)時に2.8m、このとき0.20(0.39)倍のテレマクロ撮影が可能です。150mm(300mm相当)時には、最短撮影距離0.56m、0.35(0.7)倍のテレマクロ撮影が可能になります。野鳥撮影でピントが合わず困るシーンはなさそうですが、近すぎて合わない場合はズームを引けばいいだけです。
こちらは水辺で休むオオハクチョウをクローズアップにしたものですが、クチバシの質感がよく表現されています。AI被写体認識AF(鳥)を使用しているので、目の周辺に合焦しています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS(以下150-600mmと表記)と、既存の超望遠M.ZUIKOレンズシリーズとの違いが気になる方も多いかと思います。実際に使用してみて、評価基準になりそうな点を上げていきます。
収納時のイメージで比較対象のレンズを並べました。いずれも三脚座は含んだ重さです。
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(以下100-400mmと表記)に対しては、焦点距離の差はもちろんとして、ボディとの協調が可能な「5軸シンクロ手ぶれ補正」の有無が大きな差になります。焦点距離が長い方が手ぶれも大きくなるのが原則ですが、5軸シンクロ手ぶれ補正の効果は素晴らしく、望遠端同士でファインダーの安定感を比べると、レンズまたはボディいずれかの手ぶれ補正が利用可能な100-400mmよりも、150-600mmに分があります。レンズの重量が許容できるか否かがポイントになります。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO(以下300mm PROと表記)に対しては、100-400mm同様に重量がまずポイントになるでしょう。加えて、シャープネス、ズームの必要性、明るさが比較基準になるかと思います。300mm PROは、M.ZUIKOレンズシリーズの中でも最高の光学性能を持ち、2倍テレコンを使用して35ミリ判換算1200mm相当にしても、シャープネスが高いのが特徴です。ただし、この時のF値は8になるので、特に高速なシャッター速度が必要なプロキャプチャーモードやSH連写を多用するのであれば、150-600mmの方が有利に思えますが、テレコンバーターのつけ外しで解決できる点でもあるので、むしろ300-600mm相当域のズームを必要とするか否かがポイントになります。
最後の比較対象、同社のフラッグシップであり、筆者のメインレンズでもあるM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO(以下150-400mm PROと表記)は、さすがに重量のバランスや各リング類の操作性、シャープネス・AFのレスポンスが優れています。インナーズームを採用した150-400mm PROに対し、繰り出し式を採用した150-600mmはコンパクトに収納・運搬できるメリットがある一方で、三脚使用時にはズーム域に応じてバランス調整する必要が出てきます。シャープネスやAFの感覚は、150-400mm PROに1.4倍のテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」を装着した際のシャープネス、および2倍のテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 2.0x Teleconverter MC-20」を装着したときのAFレスポンスが150-600mmの1200mm域に近いという印象で、決して悪いものではありません。
また、野鳥撮影では1000mm相当でも鳥が遠く感じることが多々あるので、さらに200mm分伸びる、1本で幅広くカバーできるというアドバンテージは150-600mmにあります。また、150-600mmを使用してみて感じるのが、周辺部分の減光のなさで、ズーム全域で安定しています。OM Workspaceなどの現像ソフトを使えば修正は可能ですが、価格差を考えても、撮って出しから完成度の高い150-600mmの画質は好印象でした。
下の写真は、150-600mmを使用して撮影したイソヒヨドリです。夕暮れの逆光で撮影したもので、背景には水面が煌めいていました。レンズによっては周辺の減光が目立ちそうなシーンですが、気になりません。顕著な色の滲みもなく、全体的に安定した画質が好印象です。
オナガガモの飛翔を静音連写で撮影しました。フラッグシップである150-400mm PROにはやや劣るものの、十分なAFレスポンスを有しているので、飛翔シーンの撮影も可能です。事前に飛ぶタイミング・ルートを予測し、やや遠くからAFで捉え始めると、よい距離に来たときの撮影成功率を上げることができます。連写可能枚数が大幅に増えたOM-1 Mark IIが活躍するでしょう。
1200mm相当とあって、ピント合わせはシビア。レンズ鏡筒の先端を持ってズームできる反面、そのままホールドした状態では手が届きにくい位置にピントリングがあるため、手持ち撮影時のフォーカスはほぼAFに頼ることになります。AFターゲット枠の切り替えを活用したり、ファインダーから目を離さない状態で扱える位置に「拡大」を割り当て、ピントの確認をしながら撮影すると良いでしょう。
高倍率ズームを使用する最大のメリットは、野鳥撮影では景色を取り込んだ広角気味の表現から、超望遠効果を生かしたアップまで、シームレスに撮影できる点にあります。特に、野鳥撮影では鳥を中心とした狭い部分のみに視線が向きがちですが、周囲を見渡すことで「鳥たちが暮らす景色」を表現するのに生かせる背景を探す目を持つと、表現が広がります。
1200mm域は画角も狭く、不規則な動きをする鳥を追い続けるのは流石に簡単ではありません。また、ズームを引いた方が、AFのレスポンスが向上する印象もあります。望遠端は、主に止まっている鳥や、ゆったりした飛翔を撮るときに使用し、動きの激しいシーンを狙う際にはややズームを引く、という選択肢を持ちながら使用すると良いと思います。
鳥が太陽の前を通過するなど、連写中に適正露出が変化するようなシーンではマニュアル露出を使って事前に露出を決めておくと失敗しませんが、途中でズーム操作をしてしまうと絞り値が変化しますので注意が必要です。
オジロワシが旋回しながら近づいてきたので、ズームを引きながら、ちょうど良いサイズに写るよう調節しました。ズームを引いたことで画面に収めやすく、それに伴ってAFの動作も安定するので、撮影の成功率を上げることができます。
刻々と空の色が変わる夕暮れ時に、マガンの群れがねぐらへと急いでいました。ズームを引くことで、群れの連なりや、ぼんやりと染まる空を取り込みました。鳥のシルエットは小さくても映えるので、ズームを引く表現を試みるのには良い対象です。
いかがだったでしょうか。進化したOM SYSTEM OM-1 Mark IIと、新たな超望遠世界を見せてくれるM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISの組み合わせが、様々な野鳥撮影のパターンに対応できるシステムであることが伝われば幸いです。マイクロフォーサーズの強みをさらに生かすシステムとして、お勧めできるセットのご紹介でした。焦点距離の幅はそのまま表現の幅と言い換えられるので、今後生み出される作品が楽しみです。
■写真家:菅原貴徳
1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、海洋学や鳥の生態を学んだ後、写真家に。野鳥への接し方を学ぶ講座を開くほか、鳥が暮らす景色を探して、国内外を旅するのがライフワーク。著書に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『図解 でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。
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前篇では私の商売道具であるカメラと腕時計の合わせ方=スタイリングについて紹介させていただきました。前篇で書いたように、私はティーンエイジャー時代からファッションが好きでした。とりわけ1990年代後半から2000年代前半に世界的なブームとなった「裏原系ファッション」にハマっていたのです。
ご存じの方も多いと思いますが、「裏原=ウラハラ」とは裏原宿のことで、原宿駅から竹下通りを抜けた原宿通りやキャットストリート周辺を指すことが多いです。DJ/音楽プロデューサー/デザイナーの藤原ヒロシさんが中心人物で、彼らのショップがこのエリアに集中していたことから、いつしか「裏原系」と呼ばれるようになりました。音楽とストリートカルチャーがバックボーンとしてあり、いまやディオールやルイ・ヴィトンといったハイブランドも取り入れるストリートファッションの一大ムーブメントとなりました。中でもブランド同士が組織の枠を飛び越えて取り組むコラボレーションが特徴的でした。そんなストリートファッションへの愛着もあって、私の腕時計選びは「コラボ物」が中心。今回はそのコレクションの一部をお披露目いたします。
前篇の記事でも、ライカ(Q2)と映画『007』の主演で知られる俳優のダニエル・クレイグ、そして写真家のグレッグ・ウィリアムズの特別コラボモデルを紹介。そして、『007』でダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが身に着けている「オメガ シーマスター ダイバー300M 007エディション」をライカQ2のコラボモデルに合わせました。
そんなコラボ好きの私が最近とくに気に入っている腕時計があります。ユニークなデザインでコレクターも多い「スウォッチ」の新たなコラボモデル「スキューバ フィフティ ファゾムス」です。スウォッチが新たにタッグを組んだのは、世界最古にして最高峰の機械式ウォッチメーカーである「ブランパン」。同じスウォッチ・グループだから実現できたコラボとはいえ、スタイリッシュながら手の届きやすい価格帯のスウォッチと「価格が二桁違う」超がつくほどの高級な腕時計ブランドとのコラボには、胸躍る驚きがあります。
そして、チョイスされたのがブランパンの中でも屈指の人気ダイバーズウォッチである「フィフティ ファゾムス」という点が、さらに心を湧き立てるのです。
スウォッチは機械式ではなくクオーツムーブメントを採用しているモデルが圧倒的に多いのですが、ブランパンは機械式ウォッチしか作らないブランドなだけに、搭載しているムーブメントもクオーツではなく自動巻です。また世界初のダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス」から派生したモデルとあって、91m防水を確保しているのも忘れてはならないポイントです。
新たに開発されたバイオ素材であるバイオセラミックのケースが特徴的な6色展開の「スキューバ フィフティ ファゾムス」シリーズから私が選んだのは「インディアンオーシャン」。くすんだグリーンのケースにブラックのベゼルは新鮮な配色です。前篇でも「ミリタリーが好み」と書きましたが、海中から引き揚げられた漁網をリサイクルして作ったNATOストラップは、グリーン、ブラック、オレンジの3色のラインが際立ち、その見事な配色のグラフィックに心を揺さぶられるのです。
●スウォッチ×ブランパン スキューバ フィフティ ファゾムス ケース径:42.3mm ムーブメント:自動巻 91m防水
実は「スウォッチ×ブランパン」には先駆けとなるコラボレーションがありました。ブランパン同様スウォッチ・グループの中核ブランドであるオメガです。そして、このコレクションはオメガの代表的なモデルである「スピードマスター」がベースなだけに、2021年のローンチの際にはソールドアウドが続出、いまも人気が継続しています。
スピードマスターは1960年代にNASAの公式ウォッチとして採用され、月面着陸した宇宙飛行士の腕に巻かれていた「ムーンウォッチ」として名高いクロノグラフ。とくにアポロ13号の乗組員の命を救った奇跡の物語は映画化され、多くの人々の脳裏に刻まれました。また、スウォッチ版のネーミングが「ムーンスウォッチ」というのも洒落が利いています。
シリーズには全11モデルがラインナップされており、惑星をモチーフにしたデザイン。私が選んだ「ミッション・トゥ・サターン」は6時位置に土星の環が描かれたモデルで、サンドベージュとブラウンが織り成す色のトーンがシックな趣きです。
コレクションのリリース時には、「腕時計史上、最もエキサイティングなコラボ」と世界各国で絶賛の嵐。スピードマスターをモチーフに多彩なバリエーションを展開しているだけでなく、ストラップに「OMEGA」「SWATCH」そして「Speedmaster」のロゴが大胆にレイアウトされており、このコラボのユニークさを物語っています。
●スウォッチ×オメガ バイオセラミック ムーンスウォッチ コレクション ケース径:42mm ムーブメント:クオーツ 3気圧防水
冒頭に書いたように、私は10代の頃から裏原系のストリートファッションにハマっていて、その中心人物だった藤原ヒロシさんを当時からリスペクトしていました。藤原ヒロシさんが主催する「フラグメントデザイン」がコラボしたナイキ、リーバイス、ルイ・ヴィトン等とのアイテムもこぞって購入。中でも気に入っているのが、2020年にリリースされたタグ・ホイヤーとのコラボモデル(世界500本限定)です。
タグ・ホイヤーは世界的な人気を誇るスイスのウォッチメーカー。とくにモータースポーツとの関係が深く、F1のモナコグランプリを始め、多くのカーレースでパートナーシップを組んでいます。また、モータースポーツで使用されるストップウォッチ付きウォッチであるクロノグラフモデルが高い定評を得ていることでも有名です。
そして、このコラボモデルはブラックの文字盤とベゼルにレッドのクロノ針がひときわ映えるアバンギャルドなデザイン。文字盤は装飾性を排し、あえて秒針を省いた「二つ目」のカウンターがクラシックさを演出しています。そして、文字盤上の4時と5時の間に「FRAGMENT」ロゴをレイアウト。ディテールの処理も抜群にうまいですね。
●タグ・ホイヤー×フラグメントデザイン ケース径:44mm ムーブメント:自動巻 100m防水
そして、最後にご紹介するのが、カシオの「G-SHOCK」です。私とG-SHOCKの出会いは偶然の出来事でした。高校生の頃、道を歩いていたら妙な形をした腕時計が道端に落ちていたのです。それを拾った私は交番に届けましたが、その後、落とし主が見つからず、数カ月後、そのG-SHOCKは私の所有物となりました。
そのような経緯があって、私はG-SHOCKの虜になっていきました。ただ、私は普段ほとんどG-SHOCKを身に着けません。撮影の仕事のときも、プライベートでも。着用せずに、ただコレクションするのが好きなのです。
そのため、私のG-SHOCKコレクションは木製の高級時計ケースに収めています。それも、入れっぱなしではなく、モデルを入れ替えて悦に入っています。実用時計であるG-SHOCKを使わずに飾るだけなんて……と奇妙に思われるかもしれませんが、そんなアンバランスさも気に入っているのです。
そして、G-SHOCKコレクションにおいても、私のコラボ好きの片鱗が垣間見えます。最近のコレクションでも日産GT-R(=写真左)や、ダウンジャケットで有名なイタリアのアパレルブランド「ヘルノ」(撥水性の高い「ラミナー」シリーズ)とのコラボなど、眺めているだけで楽しくなります。
では、時計ケースに収められたお気に入りたちをご紹介しましょう。右からダイバーズウォッチの「フロッグマン」イルカクジラモデル、初代フロッグマン限定モデル、初代モデルを復刻した40周年記念モデル クリスタライズド 、吉田カバン85周年記念のポーター×カシオ スペシャルエディション、シュプリーム×ザ・ノース・フェイス×カシオのトリプルコラボ、ポーター×カシオ コラボウォッチ…といった個性的な顔ぶれです。
今回は私のウォッチ・コレクションをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?時計選びの基準は人それぞれ。どんな写真を撮りたいか、どういったカメラなら撮れるか、どのレンズが最適なのか。撮影機材をチョイスするときの悩ましさと楽しさは腕時計でも同様です。「弘法筆を選ばず」とは言いますが、道具を選ぶ楽しさ、所有する喜びはまた格別なのです。
撮影・ShaSha編集部
■写真家:中西学
岡山県出身。一般企業に勤めながら、独学で写真&動画を始める。フリーランス転向後、2011年からは自らの個展も開催。いち早くドローン技術を取り入れ、日本の絶景写真を撮り始める。2020年開催の個展「躍動」では富山県高岡市の伝統文化やそれを後世に受け継ぐ人々を中心とした撮影を行う。富山に限らず、日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現するを常に意識し活動を行っている。2022年にはNetflixで展開中のULTRAMAN写真展「Inhnritance」開催。
Microsoft(MCT)
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
dji CAMP Specialist
SONYαアカデミー講師
FUJIFILM Xフォトグラファー
DavinchResolve18 Certifild Trainer
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こんにちは。kanakoです。
今回は「Kodak GOLD200」と「Kodak ColorPlus200」を使った記事です。これらのフィルムは暖色で黄色味が強いのが印象的で、パッと見は色味が似ています。こちらの2つのフィルムの使い分けについて書いていきます。最後まで見てもらえたら嬉しいです。では、さっそく見ていきましょう。
Kodak GOLD200 | Kodak ColorPlus200 | |
フィルムの種類 | 35mmカラーネガフィルム | 35mmカラーネガフィルム |
ISO | 200 | 200 |
製造国 | 米国製 | 米国製 |
撮影可能枚数 | 24枚, 36枚 | 24枚, 36枚 |
価格 ※価格は執筆時点でのカメラのキタムラ税込価格 | 2,250円(税込み) | 1,780円(税込み) |
特徴 | 暖色 ハイライト黄色 青や緑の彩度 屋外で使用できる 粒子が細かい シャープな写り |
暖色 ハイライト黄色 自然な彩度で癖が少ない 屋外で使用できる なめらかな粒子 淡い写り |
3年前までは、36枚撮りが700円程で購入できていたようです。現在はその当時の2倍以上の値段になっており、1枚1枚丁寧に撮影するようになりました。暖色で写りが似ているところがありますが、細かく特徴を調べてみると色彩や質感が違っています。
◇CONTAX T2
1990年に発売され、世界的に大ヒットし今も人気の高い高級コンパクトカメラです。このカメラはカール・ツァイスのレンズを備え、自動でフィルムの装填や巻き上げをしてくれます。チタン製の外装で、お洒落かつどんなシチュエーションも撮影することができ、使い勝手抜群です。また、フラッシュ撮影が可能で、暗い場所でも使うことができます。
◇Canon A-1
1978年に発売されたカメラで、AE-1に始まるAシリーズ一眼レフカメラの最高級機種と言われています。このカメラの一番の特徴が撮影モード(シャッター優先、絞り優先、プログラムAE)があり、失敗することなく撮ることができるカメラです。柔らかくしっとりとした質感が特徴です。ボディは黒色塗装仕上げでレトロ感を感じられます。
◇Kodak GOLD200
ハイライトの黄色、肌色や青・緑の彩度、シャープさが特徴です。その為、ポートレートや風景写真をCONTAX T2で撮影しました。CONTAX T2はシャープな写りが特徴で、よりこのフィルムを生かせると考えました。
◇Kodak ColorPlus200
ハイライトの黄色、淡い写り、自然な彩度で癖が少ないことから日常やスナップ写真に、より向いていると考えCanon A-1で撮影しました。Canon A-1は柔らかくしっとりとした質感でフィルムとマッチすると考えました。
では作例をご覧ください。
※カメラのキタムラで現像&データ化しました。
ハイライトの黄色味が暖かさをもたらす
朝陽や夕陽を撮ることが多いです。
湖を散歩していると、木々の間から水面に反射した西陽が綺麗でした。逆光での撮影でしたが、空も水面やハイライトの色味もしっかり出ています。
大好きな阿蘇で朝活をした時に撮影した1枚。
牛たちの左側から入ってきた光と草原の影が創り上げるワンシーン。強い光でも弱い光でもない程よい光の色加減が魅力的です。
自然な肌色
広大な景色を自由自在に切り取れるので海での撮影をよくしています。冬の海で百合の花を使って撮影しました。
肌色の発色(黄色)が綺麗で、ナチュラルな印象です。
左頬の色味も黒潰れせず色が残っています。
青や緑色の鮮やかな発色
(緑の色彩)
雪が降った日、湖に行くまでの道なりで撮影しました。山や家に囲まれた畑に雪が積もった野菜を見つけ、「なんかいいな」を残しました。
緑色の鮮やかさが、野菜たちを引き立たせてくれているように思いました。
(青のグラデーション)
湖を眺めていると泳いでいた紅白の鯉。
空を映す水面のグラデーションが滑らかで鯉への視線誘導をしているかのようです。
緑・赤・青と原色が集まった1枚ですが、全体の色味が調和しています。
シャープな描写で風景を切り取る
雪が降った朝、フラッシュを焚いて撮影しました。
木の間にはうっすらと石橋が見えます。
この日は、太陽の光もなく寒色の色味となりました。
雪や木、橋の輪郭まではっきりと写っています。
温泉街を車で走っていると見つけた景色。
山と家の高低差が面白いなと思い車を停め、撮影した1枚です。
山の細かい質感も繊細に表現しているシャープさに驚きました。
淡く柔らかみのある描写
初詣に行った際、門から見える景色に特別感を感じ、ピントを合わせ撮影しました。暖色で温かみのある描写が、日常を彩っています。
暖色寄りの写真が好きな方には、おすすめのフィルムです。
神社の門で見つけた光と影。
なかなかこの感じの光と影には出会えないので嬉しく感じ撮影しました。
光も影も柔らかく捉えられているのは、このフィルムならではの魅力かと思いました。
癖が少なく使いやすい
白系のワンピースを衣装として使うことがあります。
その洗濯ものを干していた時に撮影した1枚です。
室内の為、絞りは開放で撮影しています。
普段見過ごすような日常を大切にしたくなる写真です。
1900年頃に建てられた校舎。
止まった時間と進んでいく時間を撮影しました。
GOLD200と比較すると控えめな緑色が印象的です。
この時の空気感まで写し出しています。
この校舎で見つけた誰かが忘れたのであろう傘。
見た瞬間、傘を照らしているかのような不思議な感覚でした。
このフィルムは色味に癖がなく、スナップ写真も見たままを残してくれます。
ノスタルジックな色味でレトロ感を
喫茶店で食べるモーニングが好きで、喫茶店巡りをよくしています。
喫茶店の光は暖色な場所が強く、色かぶりをしてしまうことが多々あります。Kodak ColorPlus200だと、色かぶりすることなく撮影できます。
背景のボケ感も出したく、テーブルの端にプレートを置いて撮影しました。
レジ周りの背景までこだわりが詰まっている喫茶店。どこか懐かしさのある1枚です。
レトロ感のある場所にすごく合うフィルムだなと実感しました。
いかがでしたでしょうか?
今回は、『Kodak GOLD200とKodak ColorPlus200の使い分け』についてご紹介しました。
どちらも風景・日常・ポートレートなど撮影できる万能なフィルムです。
個人的にGOLD200で撮る自然な景色、ColorPlus200で撮るレトロ感が好きです。
その好きを分析していくと、『GOLD200のシャープさ、緑や青の発色、ハイライトの黄色味』『ColorPlus200の淡く柔らかい描写、ノスタルジックな色味』がワンシーンを創り上げているのではないかと考えました。
この分析したものを生かし冬の景色や冬の日常、スナップを撮影しました。
現像後、写真を見てみるとGOLD200では原色同士が集まった写真でも色味が調和されていることに感動しました。ColorPlus200では柔らかい描写がさらに日常に温かみを加えているように思いました。
是非、皆さんも使い分けを楽しみながら撮影なさってください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
■写真家:kanako
1995年生まれ、長崎県出身。2020年、Canon fotomoti×curbon主催の次世代スター発掘キャンペーンにて、次世代スターに選出。陰影をテーマとしたポートレートを中心に独自の世界観を演出している。
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皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。フィルムのヴィンテージ機から最新のデジタル機まで、M型ライカ各種を拝見してきましたが今日はどんなライカにお目にかかれるのか楽しみです。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの水谷さん。初対面で出てきた真っ赤なライカMデジタル(連載vol.001参照)には度肝を抜かれましたが、今回ご用意していただいたのはどんなモデルなのか気になります。おそらく水谷さんの得意ジャンルであるモダン・クラシック的なアプローチのセレクトなのかなと推測しつつ、カメラの登場を待ちます。
「こちらになります」と目の前に差し出されたカメラは、ブラックペイントのライカMPに見えました。でもライカMPはもう別のコンシェルジュの中明昌弘さんに見せてもらっている(連載vol.006参照)のでネタになりません。この前はライカM3に見えるけれどモダンクラシックの2006年製ライカM3J(連載vol.004参照)を出してきた水谷さんなので、これも一癖あるライカに違いない気がします。
このカメラはライカMPに見えるんですけれど‥。と心配しながら水谷さんの顔色を窺っていると、ゆっくりと説明を始めてくれました。これはライカMPクラシックセットと称されるモデルで、アジア圏でライカの代理店をしていた香港シュミットが2004年に企画してライカカメラ社に作ってもらったもの。なぜ2004年に発売されたのかといえば1954年にライカM3が登場してから50年の節目に当たる年だからだそうです。
このカメラ、最近のライカ製品にある赤いロゴもなくてヴィンテージの雰囲気ですけれど、21世紀のプロダクツだなと直感できるのはレンズ着脱マウントを固定しているビスの頭にプラスねじが使われているからなんですね。ライカM5までの時代では、プラスではなくマイナスねじが使われていました。マウント12時位置のねじは昔のライカでは蜜蝋のような素材で封印されて筆記体のLマークが記されていますが、それも省略されています。
ライカMPにあって本機にはないものとして筆頭に挙げられるのが電池蓋です。ライカMPクラシックは2003年に発売されたライカMPを母体にしながら、あえて露出計を抜き去ることでクラシックテイストを拡張していこうという目論みで作られたモデル。シャッター先幕には露出計の受光素子に反射光を届ける白丸のペイントも見当たりません。
クラシックテイストへのこだわりポイントとしては、フィルムカウンターが銀色の円盤に黒文字という通常のパターンではなく、黒地に白の数字が刻まれているところ。これはライカ初の直営店であるライカ銀座店のオープニングを記念して2006年に製作されたライカM3Jにも採用された特別仕様のパーツです。
「ブラックカウンターは古いライカのことを知っていくと一番憧れるディテールだと思います。というのも、ライカM3のブラックペイントのモデルにごく少数カウンターがブラックのモデルが存在するからです」と水谷さんが解説してくれました。香港シュミットにも古いライカに造詣の深い人がいてカウンターの色を指定したのかもしれませんね。ちなみにライカMPクラシックは、500セットの限定発売品だったそうです。
トッププレートの刻印は、LEICA CAMERA AGとあり、改行してSOLMS GERMANYと地名および生産国が記されています。ライカが株式会社になり、お馴染みのウエッツラー(ヴェッツラー)ではなくゾルムスに工場があった時代の製品であると分かります。普通のカメラファンならメーカーの本社の所在地がどこかとか、会社の登記がどうなっているかなんて気にしないけれど、ライカのファンはそんなことにも注意を向けたりするものです。
ホットシューの上部にはMPハイフンに続き500までの限定生産数に準じたナンバーが刻印されているのが写真左側にある通常のライカMPと異なる部分です。フィルム巻き戻しノブはライカM3最後期型にあやかった赤点2つの仕様で、フィルムが間違いなくローディングされていれば、巻き上げレバーを操作すると赤点がクルクルと回るので安心です。
ライカMPクラシックの後ろ姿を見てみると、一際目立つのが背蓋のパーツに貼り付けられた大きな銀色の円盤です。通常のライカMPでは露出計にフィルム感度を伝えるためのディスクが配備されている場所なのですが本機では露出計を排除したことによりその部品は不要なので丸い銀色の円盤で塞いでいることが独特の雰囲気を醸し出しています。
ライカM5の時代までは、こんな感じのディスクが背蓋にありました。でもそれには中心部にタングステン・デイライト・モノクロのアイコンで3分割された小径の回転盤があって、装填しているフィルムの種類と感度を矢印で示すことで忘備録の機能を果たしていたのですが、本機では中心部が空白になっていてISO(昔のASA=アメリカ標準規格)とDIN(ドイツ工業規格)のフィルム感度表記を換算するスケールだけが刻印されています。
ライカMPクラシックにおいて特筆すべきは、セットで販売されたレンズのスタイリングに尽きると思います。「初代のズミクロン50mmを彷彿させる引き締まったデザインで、このレンズだけでも欲しい人がいらっしゃると思います。フォーカスリングのローレットの切り方や、フィートのスケールの赤文字表記などに特別感があります」と水谷さんが力説するのも納得できます。球面のズミクロンM f2 50mmの当時の通常モデルと同じ光学系だけれどクラシックテイストで格好いい。初代のズミクロンにはあった無限遠ストッパーは装備していないのも実用的で好印象です。
このレンズの魅力を熱く語る水谷さんですが、個人的にはブラックペイントのボディーにシルバーのレンズを装着するコーディネートもお好きだそうで、そのあたりは次回以降にじっくりお話を聞かせてもらおうと思っています。
20世紀の終わりから2000年代の初頭は、ライカから数多くの限定モデルが頻発していた時代でした。香港シュミットからはこのライカMPクラシックが登場する前の1993年にトッププレートに東洋の干支のひとつである鶏を刻んだ酉年限定モデルや、1995年のドラゴン(この年の干支は龍でなく亥ですが)モデルなどが出されていたと記憶しています。
そのような限定モデルに特別な価値を見出すかどうかは個人の趣味の問題ですが、ライカMPクラシックとセット販売されたブラックペイントのズミクロンは魅力的ですね。水谷さんによると元ネタとなった初代の黒いペイントのズミクロン50mmが中古市場に出てくると440万円以上はするそうで、そんなこともあってこのセットは330万円なのね。と納得してしまうのが黒いライカや黒いライカM用レンズの恐ろしさなのだと思います。
■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカMPクラシックセット(中古A) 価格330万円
※価格は取材時点での税込価格
■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:水谷浩之さん
■写真家:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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キヤノンから2023年12月8日発売となった超望遠ズーム「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」。いままでいろいろな超望遠ズームを利用してきましたが、RFズームレンズで最長焦点距離(2024年1月現在)となる800mmまでカバーできることに魅力を感じ、さっそく注文。さいわい、発売日に入手できましたので、タンチョウの撮影を中心に一ヶ月ほど使ってみた感触をネイチャースナップ的視点からレポートしていきます。
800mmなんて、何に使うの?と思う方もいるかもしれません。でも、私にとって800mmという焦点距離は待ち望んでいたものでした。いきものの撮影をするときに一番気をつけているのが、いきものの行動を妨げないこと。適度に距離をおいて静かに撮ることで、いきものが自然な行動を見せてくれるようになるので、動きを視認できる程度ならいくら離れていてもいいのです。
▼画角比較
また、地元でライフワークとなっているタンチョウの撮影でも、タンチョウが遠くにいるときに良いポーズをすることもあり、もっと望遠が欲しいと思うこともありました。そんなシーンでは、今まで使ってきた望遠端600mmのレンズよりも200mm焦点距離が長くなったことでイメージ通りに撮れることも多いのです。
APS-Cとの組み合わせでさらに画角は狭くなり、フルサイズ換算では1280mm相当の画角が得られます。ズームであることで構図の微調整や風景的な撮影も可能で、まさにネイチャースナップにピッタリのレンズだと感じています。
手にした第一印象は、サイズの割に軽くてびっくりしました。実際には約2.05kgあり軽いとはいえないのですが、似たようなサイズのSIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSMは3Kg近くあり、RF200-800mm F6.3-9 IS USMは1kgほど軽いです。TAMRONのSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2とほぼ同じ重さですね。EOS R5と組み合わせてもホールディングバランスは良く、長時間の手持ち撮影も可能です。鏡筒が伸び縮みしてもバランスは変わらないです。
鏡筒のサイズはやや太めで、手が小さい私にとっては手持ち撮影で操作できるギリギリの太さというところです。ズームリングの回転角は180度近くあり、200mmから800mmまでワンアクションで回転させるのはちょっと厳しくズーム域の広さを感じます。
実際の撮影時には、おおよその目的となる焦点距離にしておいて、微調節して構図を整えるようにすると実用的です。400-800mmとか、300-600mmで使うような感じです。ズームリングの回転の重さは調整リングで「スムース」と「タイト」に変更出来ますが、私は軽く動かせるスムースの状態で使っていて、移動時にロック代わりにタイトにするようにしています。
操作スイッチはシンプルで、フォーカスモード/コントロールリング切り替えスイッチと手ブレ補正スイッチ、レンズファンクションボタンとなっています。特殊な撮影をすることがなければ、これらを切り替えることもない感じです。
▼レンズのサイズ比較
一番興味があったのが、800mmでの描写力。撮影現場でもこのレンズを持っていると、「写りはどうですか?」と聞かれることが何度かあって、皆さんも気になるところだと思います。
800mmでの開放絞り値はF9と正直明るいとはいえないので、基本的にいつも開放絞りで撮影することになります。また、これまで各社から出てきた超望遠ズームは600mmまでで、それを大幅に超える焦点距離を持つことで、ある程度は甘い描写だとしても仕方ないと考えていました。
でも、安心してください。
実際に撮影してみると望遠端800mmでも十分な解像力と描写性を持っていて、これまで使ってきた600mmクラスの超望遠ズームと同等かそれ以上の描写でした。
ただ、800mmなどの超望遠域での撮影では、被写体までの距離と空気のコンディションが重要で、画角が狭いからとあまり遠景を引き寄せて撮ろうとすると、空気の揺らぎによってピントのない像になってしまいます。空気の状態にもよるのですが、シャープさを求めるのであれば、せいぜい20~30m以内の被写体を狙うようにすることが必要です。
広角端200mmではかなり解像感も高く、風景を撮影したときにはLレンズと比べても遜色がない感じがしました。風景の望遠域から小鳥などを狙う超望遠域まで、十分な描写が得られる利用範囲の広いネイチャースナップ向きのレンズという感想です。
逆光時の撮影でもゴーストやフレアは出にくいものの、焦点域の関係でレンズフードが短いため、画角からギリギリ太陽が外れるようなときに強く出てくることがありました。必要に応じてハレ切りや延長フードを自作するなど対応が必要なこともあります。
最短撮影距離など近距離でもしっかりした描写をしてくれます。ただ、望遠から超望遠という焦点距離のため、被写界深度はかなり浅くなっていて、注意が必要です。逆に大きなボケを活かした画面構成をするには向いていますが、しっかりピント合わせをしないといけません。
焦点距離が長くなった分、カメラブレが起きやすくなってしまうので、手ブレ補正(IS)の効果も気になるところです。私は手持ち撮影が多いので、基本的にシャッター速度を速くするように設定していますが、800mmでの撮影では1/125秒程度以上のシャッター速度であれば、安定してブレを抑えてくれています。
それ以下になると、何枚か撮影しておけばぶれていないカットが得られるという感じでした。キヤノンからは具体的に何段分の手ブレ補正効果があるとアナウンスされていないので、過信せずに自分なりにブレにくいシャッター速度を調べておくと良いと思います。
ただ、タンチョウの飛翔シーンなど動体撮影では、ちょっと戸惑うことがありました。ISのオン・オフは切り替えできますが、ISモードの1と2の切り替えがなく、どうも動体撮影時にギクシャクしてしまうことがあるのです。とくに進行方向が一定ではない時が苦手な感じで、慣れが必要に思いました。ISが大きく働いたときは描写が甘くなる感じがありますが、このあたりは他社の手ブレ補正でも起きるので、よりスムーズに被写体を追えるよう練習する必要がありそうです。
RF200-800mm F6.3-9 IS USMはEOS R3の「流し撮りアシスト」や、EOS R7・EOS R8などの「流し撮りモード」に対応しているので、対応ボディを最新のファームに更新すればより快適に撮影できるものと思いますが、残念ながら記事公開時ではEOS R5は未対応となっています。
このレンズの本来の使い方とは違うかもしれませんが、ネイチャースナップで多用する望遠マクロ的な近距離側での撮影では、いくつか気になったことがありました。
まずは最短撮影距離が分かりにくいことです。焦点距離によって最短撮影距離が変化し、200mm時0.8m、800mm時3.3mとなっています。同時に距離目盛りが省略されているので、望遠マクロ的な撮り方をするときに被写体までの距離の判断がしにくいのです。
また、ミラーレス一眼全般にいえることなのですが、近距離のAFが苦手な感じがしていて、一度奥のものにピントが合ってしまうと手前のものにピントを合わせ直すのに苦労します。そのときは自分の足下にレンズを向けてピントを近距離側にしてからカメラを構え直すなどの対応をしているのですが、フォーカスリミッターやフォーカスプリセット機能があればもっと楽に撮影できるのに、と思いました。
レンズファンクションボタンにそのような機能の割り当てがないかと調べてみましたが、残念ながら無かったので、可能ならファームウェアのアップデート時に機能追加して欲しいところです。
EOS R5との組み合わせでは、カメラのグリップとレンズの隙間はかなり狭く、寒冷地での撮影で厚手の手袋をしていると指を入れるのがギリギリになります。中指が当たる感じがあり、あまり心地よい状態ではありません。知人が持っているEOS R3ではかなり余裕があったのですが、コンパクトなボディと組み合わせたときには窮屈になってしまうことがあると思います。
大きく移動する被写体を撮影しているときは、露出はマニュアルで設定することが多いです。オートだと背景の状態によって大幅に露出が変化して、失敗してしまうからです。RF200-800mm F6.3-9 IS USMは開放絞りで撮影することが多いのですが、開放絞り値が焦点距離によって変化するために一工夫必要です。
そんな時は、EOS R5では「C.Fn2」タブの「絞り数値変化時の露出維持」をオンにしておくのがおすすめです。ズーム操作に合わせて絞り値が変わった場合に、シャッター速度やISO感度をシフトして同じ露出を維持してくれます。変更するのはシャッター速度、ISO感度の他、シャッター速度とISO感度の両方をシフトさせることもできます。こうすることで、安心して開放絞りで撮影を続けられます。
最後に、これは仕方ないことですが、開放F6.3-9ということで暗いところでのAFはやはり苦手で、使うシーンを選ぶことも必要です。晴天時でも影ばかりの暗い森のなかではAFがうまく働かないことがありました。どのくらいの明るさまでAFが働いてくれるのか、皆さんそれぞれの撮影シーンのなかで把握しておくことは必要だと感じました。
800mmという超望遠の世界を手軽に持ち運べる画期的なズームレンズの登場は、また撮影領域を広げてくれました。いきものの撮影では、これまでよりも一歩引いた離れたところから撮影が可能となるので、いきものにストレスをかけずに自然な姿を撮らせてもらえるようになるはずです。
また、近づけないからと今まで見過ごしていた被写体を再発見するきっかけにもなると思いますので、被写体を限定せず、いろいろなところにレンズを向けてみると良いと思います。
まだ北海道は雪景色ですので、暖かくなったら花や虫などもこのレンズで撮って皆さんにお見せしたいと思っています。ぜひご期待ください。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。
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2024年2月1日〜 2月14日の期間中、新宿 北村写真機店 6F イベントスペースにて写真展「On The Water パラカヌーアスリートの素顔」を開催しています。水上では皆が同じ目線で、同じ感覚で、同じ時を共有することができ、”水上のバリアフリー” と表現されるパラカヌー競技。競技に打ち込むアスリートを撮影した、写真家 木下大輔氏に、パラカヌーとの出会いや、魅力、展示作品についてインタビューしてきましたので是非ご覧ください。
- 木下さんとパラカヌーの出会いについて教えてください
仕事の兼ね合いでドローンを使ったパラカヌー選手たちの撮影をしたのが最初の出会いでした。ドローン撮影では待ち時間があったので、空き時間に選手を撮らせてもらっていました。「後でプレゼントしますね」というような簡単な会話をしながら撮影し、後日プレゼントしました。写真はモノクロ写真だったので、新鮮に感じていただき喜んでいただけました。「この写真を使って写真展をやってみたら面白そうですね」というお話をしたのが写真展開催のきっかけでした。
- パラカヌーに出会う前はパラアスリートへの支援を行ったことがありましたか
それまではパラアスリートへの支援はしたことはありませんでした。オーシャンカヌーの選手と面識があったので、スポーツとしてのカヌーには魅力を感じていました。
前述のドローンを使った撮影で凄く気になっていたのが、健常者の方と一緒になってパラアスリートが漕いでいたので、パラアスリートの漕いでいる艇がわからなかったことです。撮影を進めていくにつれて艇の特徴が若干ですが異なることを知りましたが、それでも一見すると違いが分からないんです。パラアスリートたちが、艇に乗り込んでカヌーを走らせると、健常者と遜色なく水面を走っている。その様子を見て心が震えました。パラカヌー競技が”水上のバリアフリー” と呼ばれる由縁を理解した瞬間でした。
- どうしてパラカヌーへの支援をはじめたのですか
30代中頃に起業し、会社経営をするようになった時に、自分にはどのような社会貢献が出来るかについて考え始めました。そんな折に、写真を気に入ってもらい、「多くの人に知ってもらうために写真展をやりたい」と言われた時に、これは私にできる社会貢献ではないかと思いました。写真を通してパラカヌーの魅力を沢山の方に伝える事は、私が背伸びをせずにできる社会貢献だと気づき、取り組みました。
- 写真を使った社会貢献活動がどうして自分にぴったりだと思ったのですか
アートとしての写真への造詣を深めるために海外で過ごした経験や、デザイナーとしての実務経験から、写真が持つ力と向き合ってきました。また昨今取り組んでいる、「生きる」というテーマの作品制作がリンクし、写真がきっかけでパラカヌーに光が当たり、一人でも多くのファンや支援者、そして競技者がパラカヌーの輪に加わってもらえるお手伝いができれば、それは私なりの社会貢献活動になるだろうと考えたのです。
その第一歩として、写真展開催をご支援させて頂きました。その一環として先日行ったクラウドファンディングで支援金を集めながら、写真展の準備を進めてきました。
- どんなテーマで撮影された作品になりますか
「パラカヌーアスリートの素顔」と副題をつけたように、選手たちの表情にフォーカスを当てた写真を中心にした作品で構成しています。一般的なスポーツ報道写真とは違った切り口だと思います。
今、進行中の作品制作では水辺に集う人々を撮影しています。なぜ人々は水辺に集まってくるのかという事を考え、そこに集う人々のさまざまな人間模様を写しとっています。今回のパラアスリートたちの姿もその延長線上にあると考え、競技者として切磋琢磨している姿や、仲間と共にリラックスする姿などなど、その時々の選手の心情を捉えた作品になっていると思います。今回の作品で、一人でも多くの方にパラカヌー競技の魅力を伝えることができ、心が動いて欲しいと願って取り組みました。
- 写真展では作品を34点展示されると思うのですが、いくつかご紹介頂けますか
選手として企業に所属されている方もいれば、普段は普通に会社員として勤務する傍ら、休みをとって競技活動をされている選手もいます。今回は合宿や遠征に同行して撮影させて頂きました。
こちらの写真に写っている辰己選手は、とっても気さくに話しをした選手の一人です。夏はカヌーを、冬はスキーをしているアスリートです。健常者のカヌーとパラカヌーの違いは、若干の安定性が向上されている程度で、水面より下の艇の構造が異なっています。この写真からはその違いを判別することは困難です。健常者と障害者のボーダーを感じさせない水上の姿です。
こちらの写真に写る髙木選手はパラカヌーと車椅子ソフトボールの両方で日本代表に選ばれています。今年行われる世界最大のスポーツの祭典では正式種目ではありませんが、2028年のアメリカ大会ではカヌーと野球の二刀流での出場に期待しています!実現すれば凄い事ですよね!
筋トレの一幕ですが、下肢は不自由なのでトレーナーが台に押さえつけて固定しています。上半身だけを見れば健常者と遜色のない筋肉でした。トレーニングに打ち込む目線の先には、他を圧倒する鋭さを感じました。
こちらは日本代表選手の中では最年長の今井選手です。この写真、とてもお茶目だと思いませんか。これは、羽田空港の国際線ターミナルで撮影した、海外で行われる大会に出発する直前の写真です。「最後の日本食を何か買ってくるわ」と言って買い出しに行かれたので、おにぎりのような純和食を想像しているとまさかのメロンパン。「思わず。それパンなので日本食では・・・」とツッコミを入れ笑顔が溢れた瞬間です。この時初めて距離がグッと近づいた気がしたのを覚えています。選手団をまとめる強いリーダーシップを持ち、拠点のある香川では若手の育成もされておりパラカヌーの兄貴分的な存在です。
私と同い年で、選手と子育てを両立させている加治選手です。石川県小松市で行われた合宿中の一コマです。練習終わりに、素敵な笑顔を見せながら反省会をしている瞬間。子供を持つ同年代の親としては子育てだけでも大変なのに、日本代表選手として活躍する姿をみていると、到底想像できない努力と苦労があると崇高な美しさを感じます。
こちらの写真は鹿児島の合宿所でトレーニングを行っていた朝日選手です。艇庫への通路を車イスで進む姿と、そのあと車イスから降りてカヌーに乗り込むところを写したものです。交通事故で足を失ってからは、色々なスポーツを試してきたもののあまり長続きはしなかったそうです。そんな中パラカヌーだけは川や湖といった自然と触れ合える喜びと、沢山の方と知り合いになり繋がりを持てたことで、今でも情熱を持って続けることが出来ているのかもしれないと仰っていました。
今回ご紹介した選手はほんの一部で、皆それぞれに日々研鑽を積む選手たちが沢山いる競技になります。話を聞けば聞くほど魅力的な選手たちなので、もっともっと光を浴びて貰いたいと思います。きっと選手たちは表彰台の一番高いところでもっと輝いてくれると信じています。
今回の作品はモノクローム専用機のLeica M10 MonochromeとNoctilux-M 50mm F1.0(E58)を主軸にして撮影しました。モノクロ写真にはカラー写真にはない、想像する余白があると思っています。その余白に加え、レンズ独特の描写から心の表情や体温を感じてもられば幸いです。
また今回の写真展ではパラカヌーへの支援を目的としたグッズ販売を行っています。クラウドファンディングでは賄えなかった今回の写真展実施費用の一部にもなりますが、販売収益の多くは、選手の合宿・海外派遣費用の助成、また協会の活動費用に充当されます。これからのパラカヌーを応援する意味で是非ともご支援くだされば幸いです。
- これからどういった支援をしていこうと考えていますか
今年、パリで行われる世界最大のスポーツの祭典で、表彰台の一番高いところで笑顔を見せてくれる選手の姿が見れることを切に願います。またその瞬間を一人でも多くの方と共有したいと思いますので、また写真を使ったサポート活動を続けられればと考えています。
最初は社会貢献活動の一環として考えていましたが、今回の写真展開催に際し、「パラカヌーに興味を持ちました」「〇〇選手を応援したいと思います」などのメッセージを頂くと、今回の活動が少し役立てたのではないかと感じています。日本ではまだまだマイナースポーツですが、日本中から声援が送ってもらえるメジャースポーツに成長して欲しいと思います。そして、障害の有無に関係なく共に助け合える社会の実現に微力ですが関わっていければと思います。
一般社団法人日本障害者カヌー協会からのメッセージ
●事務局長 上岡央子氏
障害を持つ沢山の方にこの自由を体験してもらいたいという想いで1995年に協会が設立されました。レクレーションとしてのカヌーを普及しながら、2010年に国際大会にパラの部が採用されたことを機会に競技部門をつくり競技へも挑戦をスターとし、2017年に一般社団法人化しました。リオ大会で初めて総合国際大会に正式種目に採用され1名が出場を果たし、東京大会では6名が出場しました。そして、今年9月に行われるパリ大会への出場を目指し活動しています。●普及委員会副委員長 石原望氏
選手の合宿にサポートするスタッフとして参加して熱心に練習する風景を見せてもらったりすると、私のような選手ではない障害者も一緒に夢を見れるスポーツだと感じます。選手自身が感じるパラカヌーの魅力は勿論、それを応援する事で人生を豊かにしてくれる事も伝えて行ければと思います。
■木下 大輔氏プロフィール
1981 年 京都生まれ、東京を拠点に活動
デザイン会社にてグラフィックデザイナーとして勤務後、独立。グラフィックデザインだけでなく、自ら写真・動画撮影を行なうようになる。仕事を通じて、幼少期より好きだった写真表現の楽しさを再認識し、撮影からプリントまでが写真表現だと改めて考えるようになった。現在はプラチナパラジウムプリントでの作品制作をメインに写真作品の制作を行なっている。
2022 「Letter -私が誰かと繋がる方法-」弘重ギャラリー、東京
2022 「全日本モノクロ写真展 入賞」富士フィルムフォトサロン 東京、東京
2023 「神島写真塾 8 期生展」ピクトリコギャラリー、東京
2023 「第3 回 フォクトレンダー展 “Masterpiece”」新宿 北村写真機店、東京
2023 「第21回JPA公募展 優秀賞」東京都美術館、東京
2024 「On the Water」 日本障害者カヌー協会 主催 新宿 北村写真機店、東京
・日時:2024年2月1日 (木) – 2024年2月14日 (水) 10:00 ~ 21:00
※2月1日 (木) は関係者内覧のため一般公開は 15:00~
・場所:新宿 北村写真機店 6 F イベントスペース
・住所:東京都新宿区新宿3丁目26-14
地図はこちら
・入場料:無料
・主催:一般社団法人 日本障害者カヌー協会
・撮影:木下大輔
OM SYSTEMのフラッグシップ機であるOM-1が更なる進化を遂げ、OM-1 Mark IIとして登場する。ボディサイズやボタン配置は変わらず小型・軽量なスタンスもそのまま継承し、レンズを含むシステム全体がコンパクトなのでどこにでも持ち出せるカメラだ。外観やサイズは同じだがスペックは前モデルを遥かに凌ぐ能力をもっており、撮影者の想像力を掻き立て、カメラ1台で様々な表現をすることができる。
OM-1 Mark IIは「IP53」の防塵・防滴性能を有している。完全防塵である最高レベルが「6」なので、この「5」という数字がどれほど高いレベルの防塵性能なのかがわかるだろう。その次にある「3」は防水性能を表しており、垂直60度の範囲から落ちてくる水滴でも有害な影響がないことを表す。完全防水ではないものの、雨の中での撮影であれば気にすることなく撮影できるので、他のカメラでは故障を恐れて撮影できないような環境でもじっくりと構図を考えて撮影する事ができる。
下の写真は通常でも滝の飛沫がすごい場所なのだが、この日は大粒の雨も重なりひどい環境であった。通常ならカメラを出すのもためらう状況だが、OM-1 Mark IIであれば雨に恐れることなくじっくりと構図を考え撮影する事ができた。写真にはレンズについた雨や飛沫が多く写り込んでいる。
OM-1 Mark IIには最先端のコンピュテーショナルフォトグラフィ機能がいくつも盛り込まれている。今回のモデルには前モデルよりもさらに機能が1つ追加された。まずはこれまでの5つの機能を振り返る。
1つ目はハイレゾショット機能。
ハイレゾショットは8,000万画素の三脚ハイレゾショットと5000万画素の手持ちハイレゾショットの2種類があり、ボタン1つで通常撮影からハイレゾショットへの切り替えができるので気軽に使うことができる。ハイレゾショットは画素数があがるだけではなく、解像感が向上しノイズも抑えるので積極的に使用したい機能だ。今回のモデルから12bit設定だけでなく14bit設定での撮影もできるようになり、写真現像を行う人ならば14bit設定で撮影しておけば多少むちゃな現像をしても画像が破綻しにくい。
下の写真は三脚ハイレゾショットで撮影した8000万画素の写真になる。手前の砂粒の細かさや立体感を見事にとらえている。
三脚ハイレゾショットは8枚の写真を合成する事で作り出されるの、夜に撮影すれば比較明合成のように光跡を捉えることができる。
2つ目はライブコンポジット機能。
シャッターボタンを一回押すだけで、複数の長時間露光の写真を自動で重ね合わせてくれる。星や車の光跡を撮るのに非常に便利なうえ、撮影中は光跡の伸び具合もディスプレイに表示されていく。星の軌跡は方角や焦点距離で軌跡の長さが変わるが、ライブコンポジット機能を使えば誰でもイメージ通りの星の軌跡写真を撮ることができる。Photoshopなどのソフトがなくともカメラ内で画像を生成してくれるので、カメラを始めたての人でも簡単に撮れるのも嬉しい。
下の写真は15秒に設定したものを80コマ重ね合わせたものになる。合計20分の写真である。撮影後半に薄雲が出現し、これまで撮影した星の軌跡が消えそうであったため、途中で停止した。撮影の経過がその場で確認できるので非常に便利だ。
3つ目はライブND機能。
レンズ前面に設置するフィルターを使用することなく、カメラ1つでNDを使用したかのような写真を撮ることができる。レンズ前面に設置するフィルターでないので画質の劣化がなく透明感のある写真を撮ることができる。
ND濃度はND2~ND128まで選択可能。今回のモデルからND128が追加され、これまで以上に表現の自由度があがっている。ライブNDは濃度変更などでのフィルターの取り替え作業が必要ないので素早く撮影できるのも魅力だ。
こちらはND128を使用して海岸沿いの水の流れをとらえた。長時間露光で波を撮影すれば非現実的な表現ができる。
4つ目は深度合成機能。
マクロ撮影でよく使われる機能で、マクロレンズはピントの合う深度が非常に浅く、通常撮影であれば昆虫の目の先端にしか合わないほど浅い。昆虫の顔全体にピントを合わせるには、異なる焦点距離で撮影した複数枚の写真をPhotoshopなどで合成するのが一般的だ。
しかしOM-1 Mark IIであればシャッターボタンを一度押すだけで、カメラ内で瞬時に深度合成した写真を作り出してくれる。前モデルよりも合成処理能力が向上しているのでさらに精度の高い写真が撮れるようになった。
私はこの機能をマクロ撮影ではなく風景撮影でよく使用している。レンズから1番近い被写体が近すぎるとどうしても奥にある風景がぼやけてしまうのだが、そんな時はこの深度合成機能を使用すると近景から遠景までしっかりとピントの合った写真を作り出せる。
5つ目はHDR機能。
異なる露出で複数枚撮影することで、1枚では出せない広いダイナミックレンジを再現し、黒つぶれや白とびを抑えた写真を撮ることができる。明暗差のあるシーンで役立つ機能だ。自然な表現ができるHDR1と絵画調のHDR2から選択ができる。
今回、新たに追加された新しいコンピュテーショナルフォトグラフィの機能がライブGNDだ。風景写真を撮るものならば、一度はカメラ内でGND効果を与える事ができればいいなと考えた事があるのではないだろうか。そのあったらいいなが現実となりOM-1 Mark IIに実装された。減光濃度はGND2 / GND4 / GND8と3段階から選べ、グラデーションもSoft / Medium / Hardと3段階から選ぶ事ができる。日の出前や日没後などではGND2、太陽が入る構図ではGND8と使い分けができ、山波のある風景ではSoftを、水平線や地平線などまっすぐなラインの時はHardと、様々なシチュエーションに対応できるようになっている。
効果をかける領域もカメラのダイヤルで自由に傾きを調整できるので、実際のGNDフィルターと同じで自由度は高い。しかも、レンズ前面に設置するフィルターではないので装着などの面倒な作業が必要なく、太陽に向けた時のフィルター内での光の屈折もなく画質が劣化しないなどメリットも大きい。9種類ものGNDフィルター分の荷物も削減できるのも良い点だ。
下記の写真はライブGNDありとなしの比較写真になる。太陽が昇り出す前であったので一番効果の弱いGND2で緩やかなグラデーションのSoftを選択した。
GNDなしでは空が白とびし、雲のディテールも損なわれ朝焼けのオレンジ色も出ていないが、ライブGNDありのものはしっかりと再現できている。
▼GNDあり
▼GNDなし
OM-1 Mark IIになりこれまであった機能がさらに強化されている。プロキャプチャーモードでは遡り設定が99コマまで可能になり、決定的な瞬間をこれまで以上に撮り逃さない仕様になった。AFにはAI被写体認識AFに「人物」が追加。元々の被写体検知機能も向上している。
新機能として、カメラを縦位置に構えて撮影する事で縦位置動画として記録される縦位置動画機能の追加。スマートフォンアプリ「OM Image Share」を使えばその場でスマートフォンに転送し、そのままSNSに投稿ができるようになっている。さらに、ゴミ箱ボタンをMENUボタンとして設定できるなど撮影時の操作性も向上している。
前モデルではボディ単体で最大補正能力7段であった手ぶれ補正が、OM-1 Mark IIでは更に強力になり、最大補正能力が8.5段とさらに強力になった。ボディの手ぶれ補正段数が上がった事で手持ちハイレゾショットでの撮影時の合成精度もあがり、これまで以上に解像感と繊細な描写が可能になっている。下の写真は夜の9時ごろに手持ち撮影8秒で撮影をおこなったものだ。風が強い日でたまに身体をふられたりしたが、それでもこれほどシャープな写真を撮る事ができた。撮影していた筆者も驚かされた一枚だ。
今回アイスランドの旅で使用をしてみたが、OM-1 Mark IIだからこそ撮ることのできる写真が非常に多かった。アイスランドの自然は本当に過酷で-12℃の時もあれば大雪と強風でホワイトアウトの時もあり、かと思えば大雨にもさらされる。目まぐるしく天候が変化する本当に過酷な環境であった。しかし、カメラはそんな自然環境をもろともせず撮影する機会を与え続けてくれた。大雨や強風、マイナスの気温の中でフィルターを出しての撮影ならば諦めていただろうが、ボタンを押すだけでライブNDやライブGNDの機能を呼び出し、素早く撮影できたので諦めずに撮影する事ができた。
このOM-1 Mark IIはどのようなシチュエーションでも対応でき、イメージ通りの写真を撮る事ができる。「どこにでも持ち歩け、感じたものが思ったままに撮れる」というOM SYSTEMのブランドコンセプトを実現させている。過酷な環境になればなるほどその真価を発揮する、自然風景を撮るために最も適したカメラだと感じた。
■写真家:藤原嘉騎
米国 Walt Disney Company、 National Geographic とフォトグラファー契約を結び、世界を旅してまだ見ぬ風景を求め撮影を行っている。受賞歴にはNational Geographic Travel Photo Contest `People’ 世界2位。International Photography Awardプロ部門 `Nature’ 世界2位、 Tokyo InternationalFoto Award プロ部門 `People’ Gold受賞 など国内外のコンテストで多数の賞を得ている。 多くの企業から依頼を受け写真を提供すると共に、 国内外の新聞・書籍・雑誌など多くのメディアで活躍している。 元プロスノーボーダーという異色の経歴を持つフォトグラファー。
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特別その日のスケジュールも目的地を決めることもなく、気ままに彷徨い
なんだか良さそうだなと感じた景色を見つけたら自然の中に入らせてもらい、シャッターを切る。
目的地を決めていても道中で出会う興味を惹かれる景色に惹き寄せられて結局目的地に辿り着かない。
そんな日々が「写真家としての私」のライフワーク。
写真には撮影者が写り込むと考えていて、作品は私の内面そのもの。
言葉で何か伝えるよりも作品を見てもらえる方がより私らしい。私にとって写真撮影という行為は絵画を描くことと似ていて
自分のフィルターを通じて見た景色を残したい、伝えられればと思いシャッターを切っている。
足元に落ちている綺麗な造形をした葉、心地よい水の音を聴かせてくれる川
見つめているだけで元気をもらえる威風堂々と佇む樹木、日陰の中に見つけたほのかな光。
訪れるたびに違った表情を見せてくれる自然風景を被写体に私はこれからも心象風景を描き撮る。
■会場:OM SYSTEM GALLERY(旧 オリンパスギャラリー東京)
■住所:東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F
地図はこちら
新宿駅西口から徒歩5分
新宿西口地下ロータリー左側の地下道を都庁方面に進む。地下道上部に「エステック情報ビル」の表示あり。
都営地下鉄大江戸線都庁前駅から徒歩4分
B1出口から地下道を新宿駅方面に進む。地下道上部に「エステック情報ビル」の表示あり。
■日時:2024年2月15日(木)~ 2月26日(月)
■時間:10:00~18:00 ※最終日15:00まで
※休館日2月20(火)・21(水)
■費用:入場無料
■トークイベント(写真展作品解説)参加無料
2月17日(土)14:00-15:00
2月18日(日)14:00-15:00
■OM SYSTEM GALLERYのHP:https://note.jp.omsystem.com/n/n9c47f2daac84
1984年、岡山県生まれ。
写真・映像制作スタジオ はち株式会社代表。
地元広告写真スタジオで経験を積んだのち独立。
主に地元岡山県を被写体に「写真」の言葉にとらわれない写真表現を追求。
カメラ雑誌への寄稿やフォトツアーやイベントでの写真講師も務める。
著書に『図解で分かる名所の撮り⽅』(株式会社インプレス)
『⾵景写真の 7 ピース』(株式会社インプレス)など
TIFA 2022 プロフェッショナル部⾨ ⼊選
CPA 2023 Night Photography部⾨ 銀賞
ADC 102nd Annual Awards 銀賞・銅賞受賞
HP:http://www.takumakimura.com
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最近の動く被写体に対する性能進化は、被写体が動かない風景写真には関係ないと感じていませんか。
ところが、デジタル時代らしく手ぶれ補正とAF性能を信じて手持ち撮影する時、それらの進化は風景写真でも力を発揮するのです。
せっかく最新型のカメラを手に入れても、従来と同じ発想で撮影していてはワンパターンから抜け出す好機を逃すかもしれません。
今回は、私が使用しているSONY α7R VのAF性能を活かした撮影方法やリモート撮影についてご紹介します。
デジタルカメラの進歩はAF性能も飛躍的に向上しています。しかし、SONYの場合で言うところのリアルタイムトラッキングや瞳AFは動かない風景用ではないと、従来通りのシングルスポットAFで撮影されている方もいるのではないでしょうか。
この方法、手持ち撮影が可能な場合は撮影効率が悪いのです。
残念ながら富士山に瞳はないので瞳AFは使えませんが、被写体が明確な場合は最新のリアルタイムトラッキングがとても有効です。
次の3枚はSONY α7R Vのリアルタイムトラッキングを使ってアングルを変えながら連続撮影したものです。緑の四角形がリアルタイムトラッキングのフォーカスポイントを示しています。
私の場合、「カスタムキー/ダイヤル設定」で背面の「AF-ON」ボタンに「押す間トラッキング+AFオン」を設定して使っています。(「押す間トラッキング」としているのは、リアルタイムトラッキングは電池の消耗が早いので必要な時だけ起動させるためです)
手持ちで富士山の山頂付近にフォーカスポイントを持っていき、親指で「AF-ON」ボタンを押し続ければ、ズームしてもアングルを変えても距離を変えても縦構図を横構図にしても、フォーカスポイントが富士山に食い付いてくれるのでいちいちピントを合わせ直す必要がありません。
従って、「AF-ON」ボタンを親指で押しながらシャッターボタンを押すだけで縦横、アングル違いやズーム違いなど全ての構図を一気に撮影する事ができます。フォーカスミスも撮影時間も最小限で済むので、日の出の瞬間などごく短いシャッターチャンスでも最大限の構図バリエーションを得る事が可能です。
メーカーや機種、被写体によって異なりますが、リアルタイムトラッキングに相当する機能が備わっていれば風景写真にも試してみてはいかがでしょうか。
ブラケット撮影と言えば露出ブラケットが一般的ですね。
カメラを三脚に固定し、レリーズを取り付けて、2~3枚露出を変えて撮影し、後でブレがなく適正露出の一枚を選択する。大量に撮った割には構図バリエーションがワンパターンになりがちかもしれません。
しかしミラーレス時代になってEVF(ファインダー内液晶)で露出を確認しながら撮影できるようになったため、特殊な場合を除き露出ブラケット撮影をやめても問題ないと言えます。
しかも、デジタル時代の通常撮影では、三脚を使うより手持ちの方が効率的で豊かなバリエーションを得る事ができると言えます。
ここでは、同じ構図で数枚撮る露出ブラケットの代わりに、構図バリエーションを増やすことができるアングルブラケットとズームブラケットという発想をご紹介します。(アングルブラケット、ズームブラケットは造語で一般用語ではありません)
今年はお正月前後に日の出を撮影された方も多いと思います。
写真は昨年12月下旬に精進湖で撮影した日の出の一枚です。
逆さ富士が綺麗だったので、最もバランスが良くて歪みも少ない日の丸構図で撮影しました。額装して飾るのに良いかもしれませんが、スマホの待ち受けや年賀状には使いにくい構図です。
三脚で撮影しているとカメラを横から縦にしたり構図を変えたりと設定に手間取ってしまい、日の出の最高の瞬間に横構図一枚だけで縦構図を撮りきれなかった、どんな構図を撮っておけば良いか悩んで結局一つの構図しか撮っていなかった、ということもあるのではないでしょうか。
こんな時、私はアングルブラケットという発想で撮影します。
まず、手ぶれ補正とAF性能を信じて手持ちします。
露出ブラケットで2~3枚撮る代わりに、アングルを変えながら2~3枚を1セットにして連続撮影するのです。
最初に上の写真のように基本構図(今回は日の丸構図)を撮り、次に下の写真のように画角を変えずに(ズームせずに)アングルを変えて撮影します。
この時、前述のリアルタイムトラッキングを使えばAFさえもカメラ任せで撮影者は構図だけに集中して一気に連続撮影できます。
間髪入れずにアングルをもっと上にして3枚目を撮影。
このような感じで2~3枚撮影します。間髪入れずにカメラを横にして同じように2~3枚のアングル違いを撮影します。
この方法だと、日の出の瞬間でも迷うことなくスピーディに縦横それぞれ2~3枚のバリエーションが得られます。
上の3枚では2枚目は富士山中心付近にゴーストが目立ちます。しかしアングル違いの1枚目と3枚目はあまり目立ちません。同じ構図で複数枚撮るよりも様々な失敗リスクを減らす効果も期待できます。
このようにアングルブラケットという発想を取り入れてから構図のバリエーションが広がったのは言うまでもありません。
(どんな場合もアングルブラケット撮影が有効というわけではありません)
次にズームブラケットという発想をご紹介します。
この一枚は完璧な逆さ富士と朝日で雲が色付いている場面を撮影したものです。
まず、最もバランス良く雲が入る上下対照構図で手持ち撮影しました。
この時もリアルタイムトラッキングを使えばさらに効率的になります。
次にズームインして朝焼けの雲をより大きくした構図で撮影。
リアルタイムトラッキングを使えばズームしてもAFの調整は不要です。
次にズームアウトし広角で一枚。
このようにズームで画角を変えながら2~3枚連続撮影します。
このルーチンをズームブラケットと呼んでいます。(どんな場合もズームブラケット撮影が有効というわけではありません)
アングルブラケットやズームブラケットを取り入れることで構図のバリエーションが増えるだけでなく、撮り忘れ構図も少なくなります。
しかも3枚目のように広角でも撮っておくことで、次の3枚のようなトリミングでさらに豊富な構図バリエーションを得ることもできます。
広角で撮った3枚目を16×9 にトリミング。
上下対照の縦構図でトリミング。
さらに、空を多く入れたバランスの縦構図でトリミング。
アングルブラケットにズームブラケットを組み合わせて撮影した作例をもう一つご紹介します。
広い高原の中で富士山を背景に輝くススキと2本の木立が印象的だった部分を切り取ります。
ズームブラケットの発想で富士山の裾野が広く入るようズームアウト。
リアルタイムトラッキングを使えばズームしてもAFの調整は不要です。
さらにズームアウトして印象的な空を入れます。
うっすらと出ていた暈(ハロ)が最大に入るよう、今度はアングルブラケットの発想でカメラを上に向けて一枚追加。
バリエーションを意識して撮ったはずが、もっと空を広く、もっと被写体を大きく撮っておけば良かったということもあるのでは無いでしょうか。
ここでご紹介したアングルブラケットやズームブラケットの発想は被写体が明確でシンプルな構成の場合に特に有効で、それぞれ横構図、縦構図とルーチン的に撮影することで短時間に撮り忘れなく構図のバリエーションを揃える事ができます。
デジタルカメラの進化はカメラそのものの機能にとどまりません。
例えば、SONY「Creator’s App」をスマホにインストールすることで、少し離れた場所からもカメラのほとんどの機能を設定して快適なリモート撮影ができます。
三脚位置が高すぎたり後ろに立つスペースが無いためモニターを見る事ができない、リモコンシャッターだと絞りやシャッター速度を変更できない。そんな時、最新のリモート撮影機能があれば撮影を諦めなくても良いのです。
下のスクリーンショットはCreator’s Appを入れたiPhoneでα7R Vをリモート撮影した時のものです。
太陽が眩しくて富士山の方向やモニターを見るのが辛いのですが、リモート撮影すればスマホの画面を見ながら撮影できるので目を痛めることもありません。
Creator’s Appの場合はスクリーンショットに表示されているフォーカスポイント、撮影モード、ISO感度、ホワイトバランスなどカメラの基本設定はほぼ全て設定できます。さらにMENUを開くとその他ほとんどの機能も設定する事ができます。
カメラの撮影モードを「M」マニュアルに設定していても、リモート撮影時のみ「絞り優先」などに変更することさえできるのです。
ズームレンズの画角を変える以外は離れた場所でもスマホで撮影できるので、とても重宝しています。
(この時使用したFE 24-70mm F2.8 GM II は電動ズームではないため)
しかも、スマホにJPEGのログが残るように設定すれば、いちいちカメラからダウンロードする事なくSNSにアップすることもできるのです。
まさに、デジタル時代の恩恵と言えるでしょう。
メーカーや機種によって異なりますが、リモート撮影機能があれば試してみることをおススメします。
※リモート撮影であっても、撮影禁止、侵入禁止、撮影マナー上問題がある場合などはルールに準拠する必要があります。
▼スマホを縦に使用した場合
▼スマホを横に使用した場合
▼JPEGのログ記録画面
さて、「デジタル時代の発想転換でワンパターンから脱却|vol.2進化する機能を風景撮影にも活用してみる」というテーマで「風景撮影に使うAFモードの概念を変えてみる」、「ブラケット撮影の概念を変えてみる」、「リモート撮影のススメ」と三つご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。機会があればぜひ実践してみてください。
■写真家:TAKASHI
2011年から富士山をメインテーマに風景写真を撮り続ける富士山写真家。主な所ではNational Geographic Traveler誌の2018年6/7月号表紙に採用されSony World Photography Awards 2018日本3位受賞、WPC 2022 (ワールドフォトグラフィックカップ)で日本最高得点を受賞。作品は世界各国のT V番組・写真集・専門誌・カレンダーなどで数多く紹介・掲載されている。
2019年1月銀座ソニーイメージングギャラリー、2020年1月銀座MEGUMI OGITA GALLERY、2023年3月あさご芸術の森美術館、他で写真展を開催。透明感のある美しいカラー、ダイナミックなコントラストのモノクロ、深みがあり記憶に残るブルーインクシリーズと多彩な作品を世界に発表し続けている。
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OM SYSTEMからマイクロフォーサーズのミラーレス一眼カメラ「OM-1 Mark II」を2024年2月23日に発売するとアナウンスがありました。今回はそのOM-1 Mark IIの魅力や進化、どういった方にお勧めのカメラなのかOMデジタルソリューションズ株式会社 マーケティング担当の方に話しを伺ってきましたので是非ご覧ください。
― OM-1も凄く人気のカメラで、非常に沢山の方に選ばれる完成度の高いカメラだと思います。更なる高みを目指す上でどんな想いを持って開発されたのですか
新エンジン・新センサーを搭載したOM-1は大変ありがたいことに多くのお客様から多くの支持をいただき、2022年12月に「日本の歴史的カメラ」やデジカメWatchアワード2022 1位に選ばれるなど名誉ある賞を数多く受賞いたしました。しかし私たちはお客様に、もっと特別な撮影体験を提供したいという思いを強く持っておりました。そして新製品OM-1 Mark IIではOM-1から飛躍的な進化を遂げ、唯一無二の撮影領域をさらに拡大させています。OM-1 Mark IIは「どこにでも持ち歩ける」「感じたものが思ったままに撮れる」という価値をお客様に提供いたします。
― 特におすすめしたい撮影フィールドはありますか
OM SYSTEMはカメラを通じて心豊かになる体験を提供し、世界中の人々のアウトドアライフバリューを高めます。私たちは小型軽量システムを軸とし、強力な手ぶれ補正、安心安全の防塵防滴・ダストリダクションシステム、お客様の撮りたい一枚をサポートするコンピュテーショナルフォトグラフィ※を強みとしアウトドアフィールドにおいて、お客様がより豊かな撮影を実現できるように取り組んでいきます。特におすすめしたい撮影ジャンルは自然風景・野鳥・ネイチャーマクロです。
※コンピュテーショナルフォトグラフィ:従来PCを使うなど後工程で行っていた処理を、最新のデジタル技術を駆使して表現力を拡大
― OM-1からの進化点を教えてください
たくさんありますが、ここでは4点に絞ります。
まずはAF性能の向上です。様々な被写体においてAF精度が向上いたしました。被写体追尾能力と合焦率が向上し、狙った一瞬を逃しません。被写体を遮るものがあっても検出した被写体にピントがしっかり合います。さらにAI被写体認識AFに「人物」が追加されました。ディープラーニング対応により検出率を向上させ、横向き、後ろ向き、目や口が隠れていてもピントを合わせられます。
続きまして、世界で初めてOM-1 Mark IIに搭載されたライブGND(グラデーションND)です。明暗差の大きな撮影シーンを美しく表現し、誰もが一度は経験したことある逆光のお悩みを解決してくれる革新的な機能です。
さらに、手ぶれ補正です。ボディー内手ぶれ補正がさらに進化し、従来の8.0段から世界最高、最大8.5段の手ぶれ補正を実現しております。
最後に操作性ですが、ダイヤル表面に施されたエラストマー加工により、より指にかかりやすく、滑りにくくし、お客様がより撮影しやすいように改良いたしました。またゴミ箱ボタンをメニューボタンとして割り当てることが可能になり、右手でのメニュー操作も可能になっています。
OM-1 Mark II | OM-1 | |
撮像センサー | 有効画素数約2037万画素4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサー |
有効画素数約2037万画素4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサー |
画像処理エンジン | TruePic X | TruePic X |
サイズ | 約134.8mm(W)×91.6mm(H)×72.7mm(D) | 約134.8mm(W)×91.6mm(H)×72.7mm(D) |
質量 | 599g | 599g |
最大撮影コマ数 | (JPEG LF)約219枚 (RAW)約213枚 | (JPEG LF)約94枚 (RAW)約92枚 |
プロキャプチャー モード |
最大99コマ | 最大70コマ |
ファインダー形式 /撮影倍率 | 有機EL・576万ドット/約1.65倍 (35mm判換算:約0.83倍) |
有機EL・576万ドット/約1.65倍 (35mm判換算:約0.83倍) |
液晶モニター | 3.0型2軸可動式液晶/ 162万ドット | 3.0型2軸可動式液晶/ 162万ドット |
手ブレ補正 | 5軸手ぶれ補正8.5段 5軸シンクロ手ぶれ補正8.5段 | 5軸手ぶれ補正7段 5軸シンクロ手ぶれ補正8段 |
AI被写体認識AF | 人物 / 動物 (犬、猫) / 鳥 /車、オートバイ / 飛行機、ヘリコプター / 電車、汽車 | 動物 (犬、猫) / 鳥 /車、オートバイ / 飛行機、ヘリコプター / 電車、汽車 |
ライブND | ND2~ND128 | ND2~ND64 |
ライブGND | ND2~ND8 | ー |
ハイレゾショットRAW記録bit数> | 12bit / 14bit | 12bit |
― どんな方に使ってもらいたいですか
全員と言いたいところですが、特に自然環境下=アウトドアフィールドで撮影することが多い方にはぜひ使っていただきたいです。レンズ含めて小型軽量システムを実現しておりますので、どこにでも持っていくことができます。さらに防塵・防滴性能(IP53対応)があるので、雨が降っても機材の故障を心配せずに安心して撮影することができます。最近では、複数のマウントを所有し被写体や用途に応じて、機材を選ばれる方が非常に増えてきました。日頃フルサイズを使用している方も、機動性が必要なシーンはOM SYSTEMで撮影されるなど、使い分けをされる方が増えております。
― 従来モデルでは被写体の手前に草や木があるとAFが迷ってしまうことがあり、今回はそこを改善されたとお伺いしたのですが、具体的にどのような調整を行われたのですか
OM-1のアルゴリズムをベースに、S-AF、C-AFともにさらにAFアルゴリズムと被写体検出のアルゴリズム(主に、人物、鳥、犬・猫)の両アルゴリズムをそれぞれ改善し、組み合わることで、ピントの歩留まり向上を図っています。
― 被写体が人物だった時のAF性能はどのくらい向上していますか
OM-1 Mark IIでは、特に被写体検出技術が大きく進化しています。従来の顔・瞳検出をAI被写体検出として刷新しました。これにより人物の検出性能が格段に向上しています。
より小さい人物や瞳、様々な顔の向きや角度でも、安定して検出し続けられるようになりました。さらにマスクや眼鏡(サングラス含)などの装飾品のある顔も安定して検出します。
通常のポートレートはもちろんですが、風景+人物などのシーンで人物のサイズが小さい場合でも検出可能です。今まで以上に色々な場面でAF性能をいかした人物撮影を楽しんでいただけるようになっております。
また従来からの被写体検出(鳥、犬・猫)でも、検出は頭部を優先、検出枠サイズの最適化、トラッキング性能全体の安定化を図っています。
― 高速連写性能について教えてください
裏面照射積層型 Live MOS センサーと 画像処理エンジン TruePic X が、圧倒的な連写性能を実現しております。AF/AE追従で 50コマ/秒、AF/AE固定で 120コマ/秒の高速連写が可能です。素早く動く被写体の瞬間をとらえます。
また、移動速度の速い被写体も確実に追い続けられるよう、連写SHではファインダー像の消失がないブラックアウトフリー表示に対応し、被写体を画面内の狙った位置で確実に追い続けることが容易になりました。さらにOM-1 Mark IIではAF/AE追従高速連写(SH2)で16.7fps、12.5fpsが追加され、被写体やシーンに合わせた連写が可能になります。25fps以下の連写時に最低シャッター速度1/160まで対応しております。
― 自然風景や星景写真を手持ち10秒でも撮影できるとお伺いしました
従来のジャイロセンサー及び加速度センサーに対して、センサーからの出力データに含まれるノイズ成分を除去する処理を行う事で、従来の8段から最大8.5段の補正が可能になりました。遅いシャッター速度を手持ちで撮影できることはもちろんですが、三脚が使えないような場面や手持ちで自由なアングルで撮影をしたい場面で、今まで撮れなかった新しい画角での写真撮影が可能です。また超望遠レンズ使用時もぶれにくくなりますので野鳥撮影も快適に撮影していただけます。この強力な手ぶれ補正により、お客様に新たな撮影領域を提供します。
― ハイレゾショットで更に美しい写真を撮れるようになったということですが、14bitで撮影出来ることでどのくらいの画質向上が期待できますか
ハイレゾ14bitRawでは、撮影後の編集耐性が向上しています。また、手持ちハイレゾにおいては解像力を高めるような処理を施しています。
― 新たに搭載された内蔵NDフィルター「グラデーションND (GND)」フィルターについて詳しく教えてください。
当社のカメラにはコンピュテーショナル フォトグラフィという多彩な撮影機能がございます。従来PCを使い、後工程で行っていた処理を、最新のデジタル技術を駆使してカメラ内で処理します。
「OM-1 Mark II」では新たに風景撮影に革命を起こす機能が搭載されました。それがライブGNDです。ライブGNDは複数枚の画像を高輝度部と低輝度部で異なる合成を行い美しい作品に仕上げ、グラデーションNDフィルター効果をカメラで自在に操ることができます。GND段数やタイプ毎にフィルターを購入せずに、カメラの機能(デジタル処理)でGND効果を活かした撮影が楽しめます。フィルターの運搬・脱着の手間なく、快適に撮影できます。GND段数(GND2~GND8)、フィルタータイプ(境界線の幅 Soft / Medium / Hard)を選択でき、境界線の位置と角度をダイヤルとボタンで自在に設定、ライブビュー画面でGND効果を確認しながら撮影することができますので、柔軟に自分のイメージ通りに撮影することができます。朝日や夕焼け空のような地上風景との明暗差が大きな撮影シーンで、ライブGND撮影が威力を発揮します。
―「ライブND」もND128まで広がったということですが、どのようなシーンで効力を発揮しますか
OM-1にも搭載されていたライブNDもND64⇒ND128と進化いたしました。
ライブNDとは一言でいうと、NDフィルターがなくても、NDフィルターを使用したような効果を楽しめる機能です。複数の画像を合成して疑似的に露光時間を延ばし、高輝度下でもスローシャッター効果を簡単に実現いたします。NDフィルターの装着の手間が省けるうえに、NDフィルターを取り付けられない超広角系のレンズでも高輝度下におけるスローシャッター効果を実現できるのです。また、撮影前にライブビュー上でスローシャッター効果の確認ができます。短いシャッター速度を複数枚合成することで1画像分のシャッター速度を実現しているため、減光がなくノイズを低減する効果もあります。
「OM-1 Mark II」は「OM-1」と同様に、多くのお客様の撮影をより豊かにしてくれるカメラであると確信しております。手ぶれ補正がさらに強力になったことで、従来三脚が必要だった撮影シーンも手持ちで撮影することができ、決定的な一瞬を撮影しやすくなっています。
さらにライブGNDの登場により、雄大な自然風景を美しく彩るでしょう。一歩外を出ると足元から広大な空まで美しい景色、決定的な一瞬がたくさんあります。ぜひ皆様、「OM-1 Mark II」を持って、素敵な瞬間を探しに行きませんか。
URL:https://jp.omsystem.com/campaign/c240130c/
■概要:登録期間内に「OM-1 Mark II いいね!キャンペーン」サイトにて必要事項を入力し、対象商品をご購入のうえ、「OM-1 Mark II 発売記念キャンペーン」に応募された方を対象に、もれなく1万円分の VISA ギフトカードをプレゼントいたします。
■対象機種:OM-1 Mark II 各キット
■いいね登録期間:2024年1月30日(火)~2月22日(木)
購入対象期間:2024年2月23日(金)~4月10日(水) ※応募は4月23日(火)まで
URL:https://jp.omsystem.com/campaign/c240130a/
■概要:対象期間中にOM-1 Mark II(各キット)を購入し、
お申込み頂いたお客様にバッテリー(BLX-1)を1個プレゼント
対象レンズをご購入し、お申込み頂いたお客様に最大4万円のギフトカードをプレゼント
■対象購入期間:2024年1月30日(火)~ 2024年4月10日(水)
応募期間:2023年1月30日(火)~ 2023年4月24日(水)
当社指定商品を買取り査定額より20%UPで買取り実施中です。詳しくはこちらからご覧ください。
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GRが美味しくなる魔法のレシピ!
みたいなことを書こうと思っていますが、その前に少しだけ難しい話に付き合ってください。これからの写真ライフにすごく役立つことを約束します。
80年代に活躍したフランスの批評家ロラン・バルトは、写真のような作品を三つに切り分けました。魚を皮と身と骨に分けることで、種類によってどんな違いがあって、どこが食べられて、どんな調理がいいか、わかりやすくなりますよね。外観を眺めているだけだとわかりにくいことは多いです。
まず土台になる「ラング」は、みんなで共有できる価値観。バルトはインターネットの時代まで生きられませんでしたが、SNSのフォーマットや、こういった写真がカッコいいといった流行や環境も含めてよいでしょう。
次にそこで発表される作品を二つに分けました。先にある「スタイル」は、長い年月や経験によって形成されたもの。写真だったらセンスやその人の好み、服に置き換えると体型などもそうですね。
その上に「エクリチュール」があります。ハードなモノクロだとか、カラーネガっぽいとか、ローキーとか、そういったものはみんなここ。これらをスタイルだと考える人は多いですし、ピクチャースタイルという言葉もあります。◯◯さんらしいスタイルですね、と呼ばれるものはここに含まれるのが常識。でもそれだと曖昧になるところを、バサっと二つに切り分けたところが画期的。
エクリチュールなんて交換可能で、けれどもそれはやがてスタイルに影響を与えていくんだと。逆の考えをすれば、ちょっと借りて真似できるものはスタイルじゃないってことです。ハイキーばかりで撮っていると、そのうち被写体や言葉遣いまでそれっぽくなっていきますよね。でもずっと好きで撮っている人と何かが違う。
写真を見るときも、エクリチュールの奥にあるスタイルを見ることが大切というわけ。
バルトの凄さは、この言い方を定着させたい気持ちがないところ。バズらせようと狙ったわけではありません。みんなが常識だと思っているせいで見えづらくなっていることを、新しい考えを試すことでクリアにしたい。本職は言語学者ですから包丁の代わりに言葉を使います。
ここから本題。今回はGRのユーザー設定を使いこなす提案ですから、二台で6つのエクリチュールを持ち歩くと考えるといいです。いくらでも交換可能で、けれども使っているうちに作品そのものや、やがてはその人らしさに影響を与えていきます。
ぼくはドラクエのようなRPGで仲間を引き連れて歩き、得意な能力でチャンスに立ち向かうイメージで使っています。「ジョジョの奇妙な冒険」におけるスタンドや、旅行先に持っていく着替えなど、自分の好きなものに置き換えて考えてください。交換すると印象が全く変わり、自分自身の気持ちまで変えてしまうほど力があるものです。
これまでの記事でも書いたように、GRの長所は最初の一枚までの速さに集約されています。キャップがいらない格納されたレンズ、起動のシンプルさ、焦って持ってもホールディングが安定するデザイン、シンプルな操作系・・・。
それだったらまずは究極的に早く撮れる設定を作っておくと便利ですよね。
GR IIIとGR IIIxを二台持ちする人は、どちらがプライマル(優先的)で、どちらがセカンダリー(サブ機)になるか考えてみてください。「40mmのほうが離れて撮れるから先でしょ」「いやいや28mmのほうがラフに撮れるから先だ」、それぞれ考えがあります。ぼくは28mmのほうが早く使えますが、40mmのほうに「最も早く気軽に撮れる設定」を入れてあります。
そのため今回はGR IIIxから解説していきます。GR IIIがプライマルだという人は、設定の意図を参考に置き換えてください。
これならスマホでいいかな、と思って撮ったものが、後になって見直すときいちばん楽しいって悔しいですよね。もっと高画質だったら細かいところまで見えて、質感まで伝わってくるのに。じゃんじゃん気軽に撮ってこそのGRじゃないかと思います。
そんなメモ感覚の使い方に合わせてクロスプロセスを。イメージコントロールのなかで、露出や光源の影響を受けづらく、コントラストが高いため小さくなっても印象が強いトーンだから。逆に言えば繊細なコントロールに向きません。
プログラムAE、WBは日中光、ISO感度が最大6400のオート、AFはピンポイント、もしピントが抜けても奥に合うようフルプレススナップを3.5mに。SNSにも使いやすいよう(縦横で迷うこともない)1:1のスクエアにして、50mmにクロップ。一歩踏み込む必要もなくなります。シャープネスかクラリティを使ってサイズが小さくなってもぼやけないようにしたいのですが、効果は限定的に思えます。
洗練されていて、ずらっと並べたときに美しく見える印象から「Minimalist」と名付けてあります。名前をつけると忘れにくくなるので、被写体の名前でもいいですが、こんなふうに使いたい、こんな写真が撮りたい、という願いを込めるのがおすすめです。
U2というと熱唱型のボーカルとディレイの強いギター、ヒリヒリするような硬いモノクロを想像してしまうのは、長くロックを聴き続けてきたからでしょうね。
でもまあモノクロはカラー以上に自分らしいトーンがあると便利なので、ここに入れておくのはおすすめです。
GRは伝統的にハイコントラストなモノクロに人気がありますが、40mmのほうならソフトモノクロをぜひ。28mmのようにワイドだと、被写体の幅があって光源が入ることもあり輝度差が高いため、コントラストが高いほうがカッコよくしやすいですけれど、40mmならそれに縛られることもありません。モノクロに限らずトーンは柔らかくするほうが硬くするより面倒で、使っている人も少ないから個性も出ます。
40mmだとボケも出ますがソフトモノクロだとメリットが少ないため、プログラムAEにして被写界深度優先にします。ノイズが気にならないからISO3200に設定しておくと安心。露出はコントロールしたいのでスポット測光、ただでさえ軟らかいシャドウをさらにマイナスにして、広がったところを使うため-2/3に。フレーミングのとき、一箇所だけ光っているもの(窓とか反射とか)を入れるとかっこいいです。
ジム・ジャームッシュという映画監督の名作「Down by law」から名付けました。
夜景というか夜の街を撮るのが好きで、以前はサイバーパンクふうの設定を作り込んでいましたが、飽きるのが早かったです。そこで新しい設定を作ることにして、選んだのはレトロ。ポジフィルム調のほうが露出補正やホワイトバランスの変化に自然に対応できるのですが、そちらはユーザー設定を使うまでもなく常用しています。
レトロの彩度を引き上げ、シャドウを引き締めて街の灯りとコントラストが付きやすくしています。夜はホワイトバランスを下げたほうがクールになるため、自分がよく撮る街に合わせて設定するのがおすすめで、ぼくは3700Kあたりが好きです。WBシフトや色相で色合いを作るのもいいですが、シーンタフネスが犠牲になるかもしれません。
ニコラス・レフンが撮る映画の夜景が好きなため「Refn」と名付けてあります。
余談ですが、ハリウッドを志す若者たちにカラーグレーディングを教えるとき、レフンの代表作「ドライブ」を使うことが多いらしいので、自分らしいトーン、流行のトーンについて興味があったらぜひ見てみてください。ティール&オレンジの色合い、冒頭の夜のシーン、エレベーターの中でのライティング、いずれも10年くらい経った今でも感動するレベルです。
今回でGRを育てようシリーズ完結を目指していたのに長くなってしまいました。ロラン・バルトのこと書いたの余計だったかもと思うのですが、流行をみんなで追いかける風潮のなかで、自分らしさを見失ったときや、人の写真を見ていてもっと深く読めるようになりたいと思ったとき、かならず役立つはずです。
とくにGRはイメージコントロールが充実しています。気軽にそれらを変えて、それでも簡単に変わらない「自分の本当のこだわり」を見つけるために参考になれば。
次回こそ完結編、GR IIIのカスタムです。
■写真家:内田ユキオ
新潟県両津市(現在の佐渡市)生まれ。公務員を経てフリー写真家に。広告写真、タレントやミュージシャンの撮影を経て、映画や文学、音楽から強い影響を受ける。市井の人々や海外の都市のスナップに定評がある。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞に寄稿。主な著書に「ライカとモノクロの日々」「いつもカメラが」など。自称「最後の文系写真家」であり公称「最初の筋肉写真家」。
富士フイルム公認 X-Photographer・リコー公認 GRist
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2017年5月に発売された初代α9は、僕にとって衝撃でした。
なかでも、アンチディストーションシャッター、ブラックアウトフリー、AFの追従性能、の3つは驚愕でした。α9の登場以前は一眼レフ機とミラーレスは棲み分けて共存していくであろうと思っていましたが、α9の登場によって、一眼レフはフイルムカメラと同じ運命をたどり、次の時代はミラーレスに変わっていくであろうことを確信しました。
その後α9 IIが出て、α1が出て、スピード系のαとフラッグシップモデルはアンチディストーションシャッターが当たり前になり、動いている野鳥を電子シャッターで撮影してもほとんど歪まないのが普通になりました。将来的にはグローバルシャッターの時代がくるであろうけれど、まだまだ先の話だろうと漠然と思っていたら、想像以上に早いタイミングで出ました!世界初のグローバルシャッター方式のミラーレスカメラとして、α9 IIIが2024年1月26日に発売されました。
演算処理を超高速にすることによって、歪みを極限まで抑えるアンチディストーションシャッターに対して、グローバルシャッターは全画素を同時に露光、読み出しを行います。これによって、高速で動く野鳥などを撮る場合でも歪みは完全になくなり、「ゼロディストーション」で撮影することができます。
はじめ高速連写120コマ/秒と聞いた時に「そんなに必要か?」と思ったのが正直な感想でしたが、使ってみると、予想以上に大きな効果を発揮してくれました。ドライブモードのHi+を120枚/秒に設定したものと60枚/秒に設定したものをいろいろと撮り比べ、撮影結果を比較すると、思っていた以上に大きく異なる結果になりました。
たとえば、野鳥が目に瞬膜をはる瞬間などは、60枚/秒に設定すると狙って撮ることができず、結果的にその瞬間が偶然に1枚写っていたこともあった程度です。一方、120枚/秒に設定すると、プリ撮影の効果もあって、その瞬間を2枚撮影することができました。
撮影後のセレクトは大変ですが、瞬間を確実にとらえることが極めて容易になりました。あとは野鳥の観察力が高まるように訓練して、「次」を読むことができるようになれば、撮れたも同然の時代になったと言えるのではないでしょうか。
AFの追従性能はα1、被写体認識AFの精度ではα7R Vがそれぞれいちばんだと思っていたのですが、α9 IIIのAF性能は両方の良いとこ取りをしたようなイメージです。特に被写体認識AFの精度は本当に素晴らしく、認識が難しいと言われているサギの仲間のような首が長い鳥でも瞳を高精度に認識、その後、責任をもって合焦してくれます。
また、僕は鳥がいる風景をライフワークにしているので、短めのレンズで周囲の風景も大きめに取り入れ、鳥を小さく写すことが多々あります。そんな時でも高精度に認識、合焦してくれるのは、個人的に本当に有り難いのです。このカメラでぜひとも試していただきたい機能なので、たくさんの人に体感していただきたいです。
グローバルシャッターになり、瞬間を歪みゼロで撮れるようになったけれど、その代償として、解像性能が犠牲になっていないのか、と思った人もいらっしゃるかもしれないので、今回、解像性能の検証もしてみました。
レンズは全てGマスターを使ってテストしたこともあって、必要にして十分な解像性能である、というのが僕が出した答えです。α7R Vのような高解像モデルのカメラと比べると、少しマイルドな印象はありますが、それでも、合わせるべき位置にピントを合わせて、ブレないように撮れば、写真展で使うような大きなサイズでも余裕をもって鑑賞できるだけの解像性能があります。
以下2点、検証結果をご覧ください。
α9 IIの発売が2019年でしたので、後継のα9 IIIがもうすぐ出るであろうことは予想していましたが、まさかグローバルシャッターになるとは思っていませんでしたので、大きな、大きな衝撃でした。
お財布にやさしいカメラとは言えないかもしれませんが、このカメラでしか撮れない瞬間は確実にありますので、皆様も試してみてはいかがでしょうか。僕もこれから、このカメラを使って、どんな瞬間が撮れるのかを想像すると、とてもワクワクしています。
■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『写真は「構図」でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)など。 最新刊は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)。
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『【初心者必見】新宿 北村写真機店 ジャンクフロアスタッフが教える「ジャンクカメラとレンズの見るべきポイント」』は名の通り、カメラ初心者の方でもジャンクカメラやジャンクレンズを安心してご購入できるように、魅力や選ぶ際のポイントを新宿 北村写真機店のジャンクフロアのスタッフに聞くシリーズです。
前回は新宿 北村写真機店のジャンクフロア担当の山下さんに、「そもそもジャンクカメラとは?」や、ジャンクカメラの魅力・ジャンクのフィルム一眼レフやオールドレンズの選び方を教えてもらいました。
ジャンクの意味や、カメラのキタムラではどのような商品がジャンクと呼んでいるかは前回の記事に載っていますのでぜひこちらもご覧ください。
今回は第2弾として、ジャンクのデジタル一眼レフカメラの選び方や注意点を聞き、実際に筆者もジャンクのデジタル一眼レフカメラとレンズを購入して撮影してきました。
デジタル一眼レフカメラ(以降「一眼レフカメラ」)は手軽に扱えるエントリーモデルから高性能なプロフェッショナルモデルまで幅広いことに加えて、鏡やプリズムの反射によって被写体の動きがリアルタイムで見える光学ファインダーが特徴的なカメラです。
シャッターを押したときに「カシャッ」とミラーが上がるときの音はカメラファンの心を掴み、ディスプレイに美しい写真が表示されファインダー越しの景色がより美しく感じるのは一眼レフカメラならではの楽しみといえます。
しかしミラーレスカメラの性能がここ数年で一気に進化。これまで一眼レフカメラにはなかった機能も搭載されるようになり、販売台数の変動や町を歩く人のカメラを見るとミラーレスカメラが主流になったと感じます。
これまで一眼レフカメラを使用していたユーザーもミラーレスカメラへ乗り換えをした方も多く、若い方を中心に「初めて購入したカメラはミラーレスカメラ」というSNSの投稿も良く見かけるようになりました。
筆者もその一人で元々は一眼レフカメラユーザーでした。しかし2018年に発売されたソニーα7IIIの瞳AFに衝撃を受け、当時使用していたニコンの一眼レフカメラD750を売却しα7IIIを購入しました。
それから月日が経ち「やはりミラーが上がるときのあの高揚感はまた味わいたい」と感じましたが、「高いカメラをもう1台買うのはちょっと、、」と思う日々。そんな時にジャンクなら更に安く買えるということに気が付き、ジャンクのデジタル一眼レフカメラを購入しました。
D750とα7IIIのレビュー記事も公開しています。
前回のフィルム一眼レフ編でもお伝えしましたが、ジャンクカメラ・レンズは価格が安いという最大の魅力があるものの、返品や交換ができません。また、デジタルカメラはフィルムカメラよりも電子部品を多く使っていることからより慎重に吟味が必要です。
山下さんにジャンクのデジタル一眼レフカメラ・レンズを選ぶ際のポイントを聞きましたので、ぜひご購入時の参考にしてみてください。
1.記録メディアを確認
デジタル一眼レフには現在も主流となっているSDカードの他に、コンパクトフラッシュなどあらゆる記録メディアが使われていました。既にSDカードを持っている方の場合、コンパクトフラッシュを採用しているカメラを購入すると記録メディアを別途購入する必要があるため事前に確認しましょう。
もちろん購入前に自身のSDカードを持参し確認するのもOK。きちんとカードに記録されるかをテストするついでにカードの規格があっているか確認することで記録メディアの間違いを防げます。
※ジャンク製品のためエラーが発生し、SDカード内の記録が消去される場合もございます。データ消去の補償などはございませんので事前にフォーマット済みのSDカードを持参するようにしましょう。
2.バッテリーの状態をチェック
“デジタル”のカメラなので、バッテリーや電池を使います。バッテリーは個体差がとにかく大きく、バッテリーの消費状態によっては撮影時にもかなり影響がでるため確認をしましょう。
確認方法は、充電式のバッテリーを使用する機種であれば数回シャッターを切ってみましょう。急激にバッテリーの残量表示が下がるようであれば、バッテリー性能が低下している可能性があり、フル充電をしてもすぐに撮影ができなくなる可能性があります。
また、バッテリーを平らなところに置き、浮いている部分がないかを確認するのも大切です。バッテリーが膨らみ置いたときに浮くようであればバッテリーが劣化していると言えるでしょう
エントリーモデルであれば、キヤノンのデジタル一眼レフ”EOS Kissシリーズ”がおすすめです。最近のモデルであれば、以前までのミドルクラス以上(あるいは相当)の基本性能があります。また、多少古くてもスナップであれば特に不便さを感じませんし、小さくて軽いためおすすめです。
何よりもキヤノンのデジタル一眼レフはAFフィルムカメラ時代からのレンズがほとんどそのまま使えますし、レンズの流通量や種類も豊富なのが魅力です。
1.光に向けてクモリや大きなカビが無いか確認
これは前回の「フィルム一眼レフカメラ編」でも同じ内容をお伝えしましたが、デジタル一眼レフ用のレンズも同じく重要なポイントです。
大きなクモリやカビは写真にうっすら膜がかかったような印象になります。天井のライトに向けるとレンズが良く見え、うっすら白く膜がかかっているものや蜘蛛の巣のようなカビがびっしり入っている場合は他のレンズを選びましょう。
2.AF(オートフォーカス)のレンズはAFがしっかりと動くか確認
大きなクモリやカビが無ければ、実際にボディにつけてAFや絞りが動作するか確認しましょう。撮ってすぐ確認できるのがデジタルの良さなので、撮影して再生するまで一連の動作をしてみて気になる点がないかしっかり確認しましょう。
特にフィルム時代のレンズはボディ側が対応しておらず、AFが効かないものやレンズ自体を認識しないものも一部あるため注意しましょう。
デジタルはフィルムと違いISO感度をある程度幅広く調整することが可能です。そのため単焦点レンズにこだわることなく、F値が少し暗いズームレンズでも自身にとって気持ちよく撮れる画角(写る範囲)を優先するのが良いと思います。
もちろん単焦点レンズも良いので、自身の好きな画角がある方は単焦点レンズを使うのもおすすめです。その際はセンサーサイズに対応したレンズかをしっかりと確認することもお忘れなく。
今回実際に筆者が購入したジャンクのデジタル一眼レフカメラとレンズで写真を撮ってみました。
購入した一眼レフカメラはニコンのD5200。レンズはキットレンズでお馴染みのAF-S DX Zoom-Nikkor 18-55mm f/3.5-5.6G EDと、単焦点レンズのAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gです。
筆者が初めて購入した一眼レフカメラがD5200のレンズキットなので、今回購入したボディとズームレンズのセットは当時購入したものと同じ内容です。手に持つと、どこか懐かしくてそれだけでも購入して良かったと思いました。
※カメラ・レンズともにそれぞれ個体差があり同様の描写でない場合がございます。予めご了承ください。
D5200の状態はミラーにカビがあることとフラッシュが発光しないことがあります。
しかし私が今回購入したD5200に求めたのは、「休日の日中にお散歩がてら一眼レフカメラならではのミラーが上がるシャッター音とヌケの良いファインダーを楽しみたい」ということだったためこれらの状態であれば全く問題ありません。
レンズの状態はズームレンズ、単焦点レンズのどちらもレンズ内にカビとゴミ、ホコリが入っている状態です。
AF-S DX Zoom-Nikkor 18-55mm f/3.5-5.6G EDはキットレンズとして手に取った方も多いと思います。単焦点レンズや開放F値が低めな大口径レンズと比較すると大きなボケは作りづらいですが、非常にコンパクトかつ手振れ補正が入っていることが魅力です。
青空が映えるカラーもシャドーが締まっているモノクロ、どちらも良い写りをしていると感じました。
お次のレンズはAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G。こちらも以前筆者が所有していたことのあるレンズで「キットレンズの次は単焦点を買おう!」と思い購入した記憶があります。
当時購入したレンズは後に「三次元的ハイファイ(高再現性)」の設計思想により誕生したAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gを購入するための下取に出したので手元にありません。しかし再び手にしてみるとコンパクトで扱いやすい最高な入門レンズの一つだと感じます。
開放F値が低いこともありますがカビやゴミも写っておらず、筆者としては納得のいく描写をしてくれました。
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gは先ほどのレンズと同じニコンFマウントですが、FXフォーマット(フルサイズセンサー)に対応したレンズです。そのためDXフォーマット(APS-Cセンサー)採用のD5200に装着すると焦点距離が1.5倍、35mm換算で75mm相当と写る範囲が狭くなるので購入時は気を付けましょう。
ポートレートや主題が決まっているような写真では非常に活躍してくれるのですが、もう少し広い画角のレンズが欲しいという方は、ニコンDXフォーマット(APS-C)対応のAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gがおすすめです。
今回はジャンクのデジタル一眼レフカメラとレンズの選ぶポイントや注意点をお伝えいたしました。
ここ最近デジタルの撮影はミラーレスカメラを使用した撮影が多かったため、一眼レフカメラでの撮影は久しぶりでした。撮影する時点ではどのような写真になるか分からないのはフィルム一眼レフも同じですが、撮影した後に再生ボタンを押してどのような写真になっているか、「もう少しこうしてみよう」と確認しながら追い込む工程も久しぶりだったので逆に新鮮でした。
過去に一眼レフカメラを使用していた方も初めて購入したカメラをもう一度使ってみると、シャッター音や上記のような工程の懐かしさはもちろん「今の自分がどれだけ上手く使えるのか?」と挑戦してみるとより楽しく撮影できることでしょう。
今回取材した新宿 北村写真機店をはじめ、ジャンクを取り扱っているカメラのキタムラ店舗ではご購入前に実際に手に取ってご確認いただけます。お伝えしたポイントを参考にぜひ自分にあった一品を見つけてみてください。
■新宿 北村写真機店のHPはこちら
ネットで中古の在庫を確認
新宿 北村写真機店では中古カメラ・レンズの一部をネットで公開しています。ぜひこちらもご覧ください。
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去年の夏頃だったか、ふと防湿庫の奥に眠っていたEOS 5D Mark IIIを取り出してみた。作品制作のメイン機材を中判デジタル・PENTAX 645Zに置き換え、仕事での撮影は専らSONYのミラーレスを使用するようになってからは出番がめっきり無くなっていたのだ。
久しぶりに手にすると、こんなにもずっしりと重厚な感覚だったのかと相当ヘビーに使ったカメラのはずなのに驚いてしまった。記憶の中のEOS 5D Mark IIIはもっと軽くて、モノとしての存在感は希薄だったのだ。
こいつを眠らせておくのは勿体ない。それからちょくちょく持ち出すようになり、まだまだ現役で使えるポテンシャルを感じている。発売から10年以上経った今、あらためて再評価したいと思う。
ちなみに今回の作例の大半は筆者の愛用レンズ「EF50mm F1.2L USM」で撮影したものである。この大口径レンズの味も同時に紹介していきたいと思う。
繊細な描写が特徴のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、2012年に発売されたEOS 5D Mark III。ミラーレスから写真に入った人からするとオールドデジカメの分類になってしまうのだろうか。しかし実際に使えば、こいつから古臭さを感じることはないとすぐに分かるはずだ。
「地球の光をすべて受け止めるために」というキャッチコピーからも、キヤノンが本機に込めた意気込みを感じる。すべての光・・・いやぁ光と影の芸術と言われる写真だけに、このフレーズだけで何かものすごい写真が撮れる頼もしさを感じてしまうのは筆者だけではないはずだ。
初代EOS 5Dによって長く待ち望まれていたフルサイズ一眼は一般的なものになった。筆者はEOS 10Dからキヤノン機を使っていたが、2005年、EOS 5Dの登場には胸躍るものがあったのを今でも鮮明に覚えている。
昨今のデジタルカメラはスチールに関して言及すると、新機種によって圧倒的な進化があるということはほぼなくなってしまった。言い換えればそれだけ成熟してしまったということなのだが、当時は新機種が出るたびに画期的な進化があった。大袈裟に聞こえるかもしれないが、初代EOS 5Dの登場は新時代の到来であったのだ。
筆者はEOS 10Dを本格導入しようとレンズ数本・ストロボ・メディアを揃えるために、当時システムを組んでいたミノルタα-9と10本ばかしのレンズ、Konica HEXAR RFなど多くの機材を下取りに出した。こんなにフィルムカメラが高騰することを予見できていたらと思うとまったく涙ものである。まだ中古で1GBのCFカードが一万円超えの時代であった。
筆者は初代EOS 5Dをダイヤルがおかしくなるほど使い倒し、EOS 5D Mark IIが出てすぐに購入した。画素数は1280万から2110万へとアップしたものの、どうにも出てくるデータに馴染めなく初代EOS 5Dを買い足してIIIが出るまで使っていた。
初代EOS 5Dで撮影しA2サイズのバライタ紙にプリントアウトしたものを取り出してみたが、初代が生成するデータは今からすれば解像感はやや足りないものの、数値では図れない独特の階調性があり個人的には名機だと認定している。その感覚はどこかフィルムに通じるものがあるかもしれない。
ただ、こればかりは仕方ないがカメラとしての古臭さは否めない。そういった意味では、5DシリーズはEOS 5D Mark IIIでようやく完成された感がある。Wi-Fiによる快適なテザー撮影をしたい等の細かいニーズを除けば、今でも十分に使えるポテンシャルを持ち合わせている。
EOSシリーズ特有の背面ダイヤルによる露出補正、しばらくぶりでも2、3枚撮っていればすぐに使い倒していた頃の感覚が蘇る。優れたインターフェースは手が覚えているものだ。その洗練された操作感がEOS Rシリーズに引き継がれているのが何よりの証拠だろう。EOS Rユーザーはもとより、他メーカーユーザーも説明書など見ずともすんなりと使えるはずだ。
メニューを覗いてみるとAFの細かい調整やレンズごとのピント微調整などカスタマイズの幅も広い。ここ最近カメラを始めた人であれば、10年前にここまで完成されていたのかと驚くかもしれない。
一眼レフの「レフ」はレフレックス、つまり反射をあらわす。レンズに入ってきた光がミラーによって反射し、ペンタプリズムを通って撮影者は目の前の景色を覗くという構造である。
EVFがどんなに進化してもやはり一眼レフとは見え方が異なる。これは好みの問題かもしれないが、筆者はEVFだとどこか「映像化された景色」を見せられているようで、被写体との間に一枚壁があるように感じてしまう。被写体としっかり対峙しようとするには一眼レフが合っているように思うのだ。
ミラーレスの利点はその名の通りミラーボックスがないことによる小型化が大きいと言えるが、ミラーがあることによる違った撮影体験というものもある。
機能的なことだけを言えばミラーをなくすことの恩恵はとても大きく、カメラの進化をみればそのほうが自然だと筆者も思うが、いかんせん使うのが人間である以上、常にスペックや数値だけでは語れない要素が多くあるのだ。
とにかく軽いカメラが良い、カメラ選びにおいてその点を第一に重視するのであれば残念ながらこのカメラはおすすめ出来ない。しかしフィルムカメラと同様、多少重いからこそ得られるものもある。ずっしりと手に伝わる重みは、撮影する意気込みを与えてくれる。860gという重量でありながら、撮影時にはさほど気にならない絶妙な重量感なのだ。
語弊を恐れずに言えば、写真表現において所詮カメラはデータ生成機でしかない。デジタル時代、その画質というものは生成されたデータだけでなく、いかにそのデータをPhotoshopなどのソフトウェアで完成させるかという比重がより大きくなった。つまりEOS 5D Mark IIIはまだまだ進化し続けるのだ。
非常に素直で編集しやすいRAWデータだと感じるが、それゆえに撮影時の背面モニターに表示される色調がやや味付けされて見えるのはEOS 5D Mark IIIの欠点かもしれない。もちろん表示画像のカラー調整はできるが、パソコンに取り入れたものと一致させるまではいかない。他が細部までよく出来ているだけに悔やまれる点だ。
暗所撮影に関して、今回のようなf1.2という大口径でなくても暗部に強い為困るということはないだろう。ただ、一眼レフの特性上ファインダーの明るさはレンズのf値によるので注意が必要だ。あと一点、メディアはSDカードとCF(コンパクトフラッシュ)カードの一枚ずつなのでSDの2枚挿しはできない。
取り回しが良く、上質なRAWデータが得られる一眼レフがここまで手軽な値段でゲットできるので是非使ってみてはいかがだろうか。ミラーレスとはまた違った体験が得られることは間違いない。正直このカメラが持つポテンシャルと中古市場での価格が釣り合っていないとさえ感じる。
これは筆者の推測だが、この時代の一眼レフ人気が今年あたり出てきそうなので買うなら今だ。
■写真家:新納翔
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングにて写真集を上梓する。2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として活動をしている。日本写真協会(PSJ)会員。
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LUMIX G9PROIIは自ら「瞬撮フラッグシップ」と謳う通り、マイクロフォーサーズ規格のセンサーを搭載する静止画フラッグシップカメラとして2023年10月に発売されました。先代G9 PROの発売から約5年、Gシリーズでは初めて像面位相差AFを採用した意欲的モデルです。ヒコーキ撮影を含む動体撮影において重要視されるカメラの性能に、AF性能、手ぶれ補正の性能、連写性能など挙げられますが、そのどれもが先代よりもパワーアップ。さらに一瞬を捉えやすく進化しています。
マイクロフォーサーズ規格が望遠側を多用するヒコーキ撮影にフィットしている点として挙げたいのが、35mm判フルサイズセンサー搭載カメラに比べレンズの焦点距離が約2倍になること。今回はLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 II ASPH./POWER O.I.S.を多用しましたが、このレンズを開放F値そのままに200-800mmの画角のレンズとして使用できることに大きなメリットを感じました。
LUMIX G9PROIIのカメラサイズは134.3×102.3×90.1mm。本体重量は約575gで先代(約586g)とほぼ同様です。先代から大きく変わったのはカメラ本体のデザインで、Sシリーズの人気機種であるS5IIのデザインやボタン配置などを踏襲したボディを採用。LUMIX G9PROIIとS5IIを二台持ちし、それぞれの強みを活かして交互に撮影する際など、操作性が近く便利です。
マイクロフォーサーズ搭載機ながら、ボディは小さすぎず大きすぎずちょうど良い感じ。とくにヒコーキ撮影においては望遠~超望遠レンズを多く使うため、しっかりと握れるボディと動く機体を追いかけやすいカメラとレンズのバランスの良さを頼もしく感じました。
シャッターボタンの横にはホワイトバランス、ISO、露出補正の3つのボタンを配置。ファインダーで機体を追いかけながらこれらのボタンで数値を操作でき、非常に便利です。コンパクト性を追求するあまり、ボタンやダイヤル同士が接近しすぎて操作しにくいということもありません。手持ちでカメラやレンズを動かすことの多い動体撮影においても、非常にハンドリングしやすいカメラです。背面モニターはフリーアングル式を採用。水面リフレクションなどローアングルの撮影もやりやすくなっています。ヒコーキ撮影をする際にもっとも馴染み深い場所として空港の展望デッキが挙げられますが、こちらでよく見るワイヤーフェンスにレンズが干渉しにくいサイズ感というのもメリット。静止画のみならず動画の撮影もしやすくなっています。
カメラの心臓部には新開発、有効画素数約2521万画素Live MOSセンサーを搭載。フルサイズセンサーに比べ小さなマイクロフォーサーズサイズのセンサーは、被写界深度が深くフォーカスが合っているように見える範囲が広くなるため、ヒコーキ撮影にピッタリといえます。主に機体のみで写真を構成する場合、ディテールがどれだけ精細に描写されているか解像感が重視されることも多く、これはメリット。遠くの機体と遠くの背景を組み合わせることが多く、どちらかというとボケ味よりもカリカリ感を重視するからです。
「COLORS OF LUMIX」を謳うLUMIXのカメラだけあって、階調性豊かで色の出方も素直な印象。撮影後に現像などで手を加えずともレンズ性能をしっかり引き出す高品質な画を堪能できます。LUMIX G9PROIIには手持ち撮影可能な「ハイレゾモード」を搭載。駐機している機体など、最大約1億画素相当の生成画像で機体のディテールをさらに精細に表現できます。
LUMIX G9PROIIにはダイナミックレンジブーストが装備されます。ダイナミックレンジはセンサーサイズの大きさによるところが大きく、35mm判フルサイズセンサーに比べマイクロフォーサーズサイズのセンサーはやや不利ですが、この機能によりフルサイズセンサー搭載機並みのダイナミックレンジ、ハイライトやシャドー部分の階調を実現しています。
GH6ではISO800など高感度から作動していましたが、LUMIX G9PROIIではISO100から作動。とくにこちらから機能を作動させる必要はなく、シーンに合わせてカメラが自動でダイナミックレンジブーストを作動させてくれます。高感度域の画質にも進化を感じます。輝度ノイズ、カラーノイズともに先代より目立たず、使えると思える感度が一段分は上がった印象です。
LUMIX G9PROIIのヒコーキ撮影的に最大のトピックは、LUMIX Gシリーズ初の像面位相差AFを搭載したこと。とくに夜間など低輝度下で動く機体を撮影する時、AFの食いつきや追従性が大幅に進化した印象です。いくら良いセンサーを積んでいても、AFが被写体を捕まえてくれずピンボケ状態の画を記録していては意味がありません。ヒコーキを含む動体撮影では一瞬の捕捉をAFに任せる機会も少なくないため、この大幅なAF性能の進化には手放しで喜べます。
向かってくる機体への追従性なども問題ナシ。非常に精度の高い合焦性能を発揮してくれます。残念ながらヒコーキの認識にはまだ未対応ですが、リアルタイム被写体認識AFも進化。人物や動物に加えて、動物の瞳や車、バイクの認識にも新たに対応しています。
連写性能はメカシャッター使用時は最高約14コマ/秒(AFS/MF使用)。電子シャッター使用時は最高約75コマ/秒(AFS/MF使用)となっていて、どちらも先代よりコマ数がアップしています。電子シャッターの進化、コマ数の多さに驚かされますが、メカシャッターのコマ数にも驚かされます。ひと昔前は超ハイスペックカメラに搭載されていたようなコマ数が、このクラスのカメラにまで装備されています。
G9 PROIIにはSHプリ連写記録という機能を装備。これは、シャッターボタンを半押しした状態でカメラ内に記録が開始されていて、シャッターボタンを全押しした状態から遡って記録がされているという機能です。ヒコーキ撮影では、真っ暗な中で月に機影が刺さるシーンなどで重宝。ここでは、機体の主翼にヴェイパーが発生してからシャッターボタンを押しても、ヴェイパーが発生し盛り上がった瞬間をしっかり記録できていました。LUMIX G9PROIIでは、1.5秒、1秒、0.5秒とさかのぼれる時間の設定が可能。この機能により、以前は捉えるのが難しかった画を容易に捉えることができるようになりました。
ボディ内手ブレ補正の効果は先代の6.5段から8段にパワーアップ。対応するレンズとの協調補正では最大7.5段の補正効果を得ることができます。望遠域の手持ち撮影が多いヒコーキ撮影においてもこの手ブレ補正効果は必要十分。シャッタースピードを稼げない時間帯での撮影、流し撮りなどで効果をしっかり体感することができます。静止画だけでなく、LUMIXが得意とする動画でも手ぶれ補正の効果は大。電子手ブレ補正などにより手持ちで走り撮りをした時に大きな効果を体感することができます。
35mm判フルサイズセンサーに比べ2倍相当の画角を得られる点、被写界深度が深めでかための表現をしてくれる点などマイクロフォーサーズ規格自体がヒコーキ撮影に適しています。さらにLUMIX G9PROIIでは待望の像面位相差AFを搭載しヒコーキ撮影を含めた動体撮影によりアジャストしてきた印象。先代から連写性能や手ぶれ補正機能の強化など、今までは難しいと感じることが多かった「瞬間」の切り取りを容易にしてくれたカメラ。ぜひ、撮影者自らが「おお!」となるような一瞬を切り取り、感動していただきたいと思います。
■写真家:A☆50/Akira Igarashi
またとない一瞬を追い求めヒコーキ、車中泊、下道を駆使して全国を放浪する瞬撮系航空写真家。幼少の頃より山下清画伯に憧れる。雑誌、WEBなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどのオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。
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高性能なミラーレス用交換レンズを開発し、個性的な写りで人気を集めている中国深センの光学メーカーブランド「TTArtisan(ティーティーアーティザン)」。今回はLUMIX S5IIとともに、非日常的な撮影体験ができるTTArtisan Tilt 50mm f/1.4 ティルトレンズ(Lマウント)を使い様々なシーンを撮影し、その魅力を探ってみました。
TTArtisan Tilt 50mm f/1.4ティルトレンズは、光軸のチルト(±8°)とレンズ自体に15度ずつ回転する機構を採用した、大口径の標準マニュアルレンズです。鏡筒部の二カ所にあるネジのロックを緩めてレンズ先端を傾けることで、光軸を意図的にずらし、ピントが合う範囲を自由に操ることができます。レンズが斜めに傾いたり、回転したりと、見た目にも不思議な機構を利用することで、幻想的な表現を楽しめるというものです。
レンズを手にすると、ひんやりとする金属製で、重量は安定感のある約450g。フィルター径は62mmとあり、一般的なレンズフィルターも使用可能です。
電子接点を持たないフルマニュアルレンズですが、比較的リーズナブルな価格でティルト撮影が体験でき、開放F1.4のボケも存分に楽しめます。絞りリングとピントリングは、動画撮影の繊細なピント合わせや、ズームの動きをコントロールする為に使うフォローフォーカスギアに対応しており、動画撮影用途にも向いています。
撮影時、カメラ側の設定ではマウントアダプターなどを使用する時と同様に「画質」-〔FOCUS〕から「フォーカス/ピーキング」を「ON」にし、「設定」-〔AF〕メニューで「フォーカス/レリーズ優先」に設定して撮影しています(LUMIX S5IIの場合)。
ティルト(tilt)とは、「傾ける」という意味があり、通常は光軸と平行なものを、わざと傾けてずらすことによってレンズの光軸に上下の角度をつけて使用します。被写体に対してピントの位置とぼかしたい方向を決めることで、効果的に見せたいものをコントロールできるのがティルトレンズです。
絞り開放でも近景から遠景までピントを合わせることができるほか、一ヵ所だけピントを合わせ、その他の部分はぼかした写真に仕上げることができるというものです。
▼レンズ回転0°での使用例
ティルト角度(レンズ先端)が左右に動くためタテにピント位置があります。
▼レンズ回転90°での使用例
ティルトの角度が上下に動くため横にピント位置があります。
ティルトと回転角度を組み合わせ、レンズを上下左右に動かしながら遠近感を調節することで、奥行きのある被写体や、高所から狙う風景に対し、幅広くピントを合わせたり、逆にピント面を極端に狭くし、その他の部分はぼかすことでミニチュア風(ジオラマ風)の撮影ができます。
▼絞りによる描写の変化
カメラ本体に内蔵されているデジタルフィルター(エフェクト・加工)などでもよく見かける表現方法ですが、実際にレンズで光軸を傾けることにより遠近感が強調され、ミニチュアのようなシーンを再現することが可能になります。開放F1.4での撮影時はその効果が顕著です。
夜景撮影の場合、光源を周辺に位置させることでグルグルとしたボケが生まれ、周辺減光によってトイカメラのような雰囲気を生み出し、ミニチュアの効果が高まります。
ティルトとレンズの角度を変えずに正位置で使用すれば、開放F1.4の明るさの標準レンズです。普段使いできる明るい単焦点レンズということになります。マニュアルフォーカスのため、いわゆる「置きピン」を活用し、一定の距離で被写体を捉えればスナップ撮影も可能に。
撮影していて開放F1.4ではあまりにも被写界深度が浅すぎると感じたら、絞りをF2以上に調整すると雰囲気のよいボケを残しながら深度が深くなり、ピントも合わせやすくなります。ティルトの角度によっては、ピント面がハッキリと見えにくい場合もあり、被写界深度目盛よりもファインダーやモニターでフォーカスピーキング表示を確認しながら使うのがおすすめです。
最短撮影距離は50cmと、昨今のレンズと比較すると少々遠めの近距離撮影になりますが、普段目にする被写体には撮影しやすい距離です。普通のレンズのように前後をぼかすだけではなく、ティルト角度によって視線を誘導することができます。
本来、料理メニューなどの撮影は、手前から奥までぼかさずにハッキリと写すためにティルト機構を使いますが、あえて一部分だけを強調する使い方も雰囲気があり、好ましい仕上がりです。
花などを撮影しても、一部分をクローズアップした見せ方ができ、開放F1.4のボケは柔らかい輪郭の玉ボケと、滑らかで淡く優しいトーンを生み出します。日差しが乱反射して入り込むフレアも本レンズの魅力です。
美しい円形ボケ、輪郭ボケ、流れるボケ、にじむようなボケと多様なボケが一度に堪能できるTTArtisan Tilt 50mm f/1.4 ティルトレンズ。ファインダーをのぞき、好みのボケが出る位置にピントをコントロールしていると、様々な形に変化していくボケの美しさに息をのみます。
また、マニュアル操作と重めのトルクが動画撮影にもふさわしいと感じ、手持ちで動画撮影にもトライ。じんわりとフォーカシングしていくと、街中ですれ違う人々が柔らかいトーンの中に消えていくかのような、ムードと余韻を感じることができました。フォローフォーカスギアを使い、本格的に動画を撮影される方にも使い勝手がよさそうです。
レンズの使い方のコツをつかむまでに少し時間がかかることは否めませんが、何度も繰り返して使うことで、自分の撮影したいシーンに合わせた使い方が発見できるおもしろさがあります。F1.4による明るさも、多様なボケも、柔らかいトーンも、他にはない表現力を持ち合わせている魅力的なレンズです。
普段動画撮影を頻繁に行わない私ですが、LUMIX S5IIの強力な手ぶれ補正もあり、直感的に「このレンズなら普段から動画撮影ができるかも」と感じました。MFレンズならではの楽しさが凝縮している1本です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
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アロエは南アフリカに分布する多肉植物です。日本人の我々にも馴染みのある植物ですが、観賞用よりも食品や化粧品に使われることで有名です。ギザギザのある肉厚な葉が特徴的で、植物園はもちろん民家の庭先でもよく見かけます。南アフリカの植物なので寒さには弱いのですが、日本では太平洋側の暖かな海岸で野生化し、群生している姿も見られます。しかし、一般の方には葉の部分のイメージが強く、花の印象が薄いのではないかと思います。暖かな地域の植物ですが、意外にもアロエの花の開花期は12月から2月ほどの冬期で、長く伸びた茎の頂点に赤い房状の花が咲きます。今回はアロエの中でも、もっともメジャーなキダチアロエの花をご覧いただこうと思います。真っ赤な花色とユニークな形を活かして撮影に臨んでみましょう。
12-40mmの標準ズームの広角端12mmを選択しました。広角系の画角で花を見上げることで遠近感が高まり、空へと伸び上がる力強さを表現することができます。また、見上げるだけではなく、花に近づけば、より迫力が増したように見えます。近寄りすぎると背景が入らず、かえって平面的になってしまうこともあるので、寄ったり退いたりしながらバランスの良いポジションを探しましょう。また、青空を背景に入れたかったので、順光を選びました。逆光とは違って、背景が濃い青色になることと、花の色が強く出るので、広角特有の迫力のある画面にもマッチします。
40-150mmの望遠ズームの望遠端150mmでクローズアップしました。望遠ズームでも最望遠でピントが合うギリギリまで迫れば、花を大きく写すことができます。このようにアップで写すことによって、房状の花が密集した形のおもしろさを感じます。また、ここでは前ボケを入れているのですが、ふんわり感を出す、主役の一部を曖昧にするといういつもの使い方にプラスして、花の輝きをぼかして入れるという役割があります。左下に丸ボケが見えていますが、これは主役よりも手前側にある丸ボケです。主役のアロエが逆光で輝いていますが、前ボケになる花も同様の光が当たっています。その花が前ボケになれば輝きのある前ボケが入るというわけです。
基本的に赤色はマイナス補正が必要な色です。アロエは赤色なので補正なしかややマイナスの補正をかけることが多いです。しかし、背景の色によっても左右するので、画面全体の色や光を見て判断しましょう。写真のような花に日が当たった鮮やかな赤、背景が日陰の黒といった極端なシーンではマイナス2EVの補正が必要になります。普段の撮影ではあまり大幅なマイナス補正をかける機会がないかもしれませんが、数字にとらわれず、出来上がった写真の明るさをみて判断して微調整を行いましょう。デジタルカメラの場合は撮り直しができますし、ライブビューで撮影すれば明るさを確認しながら撮影できるので便利です。
前の作品とはたった3分差しかなく、ほぼ同じ場所で撮影しているのですが、雰囲気がガラリと変わりましたね。こちらはプラス1EV補正をかけて、明るい印象に仕上げました。少しアングルを変えただけで、背景に入ってくるものが変わります。背景の色が変われば最適な露出補正値も変わってきます。また、逆光ではハイキーもローキーも狙える場合があるので、ハイライトを活かしてローキーに、逆光の輝きを活かしてハイキーにもバリエーションを増やすことができます。ソフト効果のあるアートフィルターを使用することでも明るく柔らかな雰囲気を出すことができるので、シーンによって使ってみるのもいいですよ。
日が陰り始め、高い位置にある花だけに光が当たった状態。低い位置にある葉は影になってすでに暗くなっています。花だけが明るく、鮮やかな姿が目を引きました。ここで花の部分だけをクローズアップしてしまうと、花にだけ光が当たっていることが伝わりません。そこで、影になった葉の部分を大きく入れ、日が当たった花と対比させました。暗い部分があるからこそ、光が当たった部分が目立ってくるのです。ここで葉にも光が当たっていたら花は目立たなくなりますし、花以外に鮮やかな色があると視線が分散してしまいます。葉や空が暗く、地味なほど赤い花が引き立つのです。
アロエの花に迫りました。下段から房状の花が次々に咲いていくのですが、花の先端部分が開いて、雌しべと雄しべが姿をのぞかせます。アロエの花をクローズアップするにしても、ここまでアップで写した作品はなかなか見ませんが、花の間から見た姿が可憐だったので、可愛らしく撮りました。小さな花のクローズアップとなるとマクロレンズが1本あると便利ですね。通常のレンズでは迫れないほどの倍率での撮影が可能で、近接撮影時の画質もシャープなものがほとんどです。被写体に迫ることで大きなボケも得られるので、写真のように花と花との距離が近くても大きな前ボケを作ることができます。
日が沈むと、ほんのりと空が赤色に染まり始めました。空の色が映って海も赤く見えます。雲がなかったので、期待するような夕焼け空とはいきませんでしたが、淡い感じがとても素敵でシャッターを切った一枚です。辺りはかなり暗かったのですが、アロエの赤色もうっすらと感じられるようなトーンが残っていました。派手目な花だからそこ、この淡い光の中でも存在感が出たのかなと思います。アロエが日本的な植物ではないので、ちょっと海外の風景にも思えてきますね。アロエはそんな不思議な魅力を持った植物です。
夕暮れの写真を撮影した後に撮っているので、かなり暗い状態で撮影しました。それでも空にほんのりと明るさがあったので、アロエをシルエットで撮ってみました。形が特徴的な花はシルエットにしても、その花が何なのかわかりますね。ここで初めての試みをしたのですが、シルエットの写真で画像合成(多重露出でもOK)をするとどう写るのか。一枚はピントを合わせて、一枚はピントをぼかして撮りました。するとシルエットの黒い部分にぼけた明るい部分が染み込むように滲み、ソフトな印象に仕上がりました。ぼかしすぎると明るい部分が侵食し過ぎてしまうので、ちょっとぼかすのがポイントです。
アロエは真っ赤な花の色を鮮やかに見せるのもいいですが、ハイキーに仕上げて淡く写すのも意外性があっていいと思います。群生しているところでは冬の澄んだ青空を入れて全体を写したり、前後にボケを入れて密集感を出すこともできます。海岸沿いで見られるアロエは背景に海を入れるのもいいでしょう。日没後の姿をシルエットで写すという変わり種もありましたね。好きな撮り方、イメージというのがあって、いつも同じような撮り方をしてしまいがちなのですが、今までにない撮り方を試してみると発見があります。もちろんボツ写真になることは多いですが、とにかく挑戦することが大切です。新たな年を迎えて、みなさんそれぞれの新たな花へのアプローチを探してみてください。
写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。
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今回紹介するのはリコーGR IIIとGR IIIxです。発売日はGR IIIが2019年春、GR IIIxが2021年秋で、ふたつの大きな違いはレンズです。ともに新設計レンズでGR IIIは18.3mm(35mm換算で約28mm相当)、GR IIIxは26.1mm(35mm換算で約40mm相当)です(細かい仕様は下記の表を参考にしてください)。
注目したいのはGR IIIxのレンズで、GRシリーズとしては初の標準レンズとなります。フィルム時代には21mmレンズのリコー GR21というモデルが存在しましたが、それ以外はフィルム時代からずっとレンズは28mm(35mm換算相当画角を含む)というのがGRの定番でした。
GR III | GR IIIx | |
レンズ構成 | 4群6枚(非球面レンズ2枚) | 5群7枚(非球面レンズ2枚) |
焦点距離 | 18.3mm(35ミリ判換算で約28mm相当) | 26.1mm(35ミリ判換算で約40mm相当) |
撮影距離範囲(レンズ先端から) | 標準:約0.1m~∞マクロモード:約0.06m~0.12m | 標準:約0.2m~∞マクロモード:約0.12m~0.24m |
クロップ(35mm判換算) | 35mm、50mm、オフ | 50mm、71mm、オフ |
外形寸法(幅×高×厚) | 約109.4×61.9×33.2mm | 約109.4×61.9×35.2mm |
質量 | 257g(バッテリー、SDメモリーカード含む) | 約262g(バッテリー、SDメモリーカード含む) |
ボディの厚みや質量の違いはレンズの違いからくるものです。使っているときはわかりづらいので、リングキャップの色を変えて分かりやすくしています。
GRとGR IIのボディーサイズはほぼ同じで、GR IIIでボディーサイズが少し小さくなりました。特に横幅が小さくなってさらにサイズ感がよくなり、手のひらに収まるしっくり感が増しました。最も嬉しいのは手ぶれ補正機能とダスト除去機能の追加です。GRでは画質が良いために微ブレが気になることがあったので、手ぶれ補正機能のおかげで安心感が上がりました。
画素数はGRやGR IIの1620万画素から2424画素にアップしています。液晶モニターがタッチパネル式になったことも、AFの測距点を画面タッチで選べるのでとても便利です。あとはちょっと細かい話ですが、画像設定とエフェクトモードが統合されてイメージコントロールという名称になり、メニュー構成も変更されて初めてでも素直にダイレクト操作がしやすくなった印象があります。
※微ブレとは、カメラ内の小さな振動などでもおこるとても小さなブレです。
GR IIIでもクロップ機能を使えば、35mm換算約35mm相当や約50mm相当の撮影はできます。しかし、実際の描写ではGR IIIxの方がよりしっとりとした優しさを感じます。これは焦点距離が長くなってボケやすくなっているというのも関係していると思います。
GRシリーズは上着のポケットに忍ばせておける気軽さがあって、連写できるというのも大きなポイントです。しかし、その速写ではカメラが安定していないことも多いので、そのときに嬉しいのが手ぶれ補正機能です。確かにISO感度をあげて高速シャッターになるようにすれば良いという考え方もありますが、個人的には撮影時には被写体に集中できるように、カメラの設定はできるだけプログラムオートやISO感度オートにしているので、手ぶれ補正機能の恩恵を感じています。
GR IIIxの40mm相当の画角は使いこなしがいがありますが、気軽に瞬時に使うならGR IIIの28mm相当の画角の方がラフに使いやすいところがあります。そのレンズも進化していて、優しい感じのイメージコントロールとの相性が良くなっています。
GR IIIとGR IIIxの進化はカラーバランスが安定したことも密かなポイントです。ソフトモノトーンにはあまり関係ないですが、柔らかい印象のイメージコントロールを使うときはその安定性がほのかな色の再現を助けてくれます。
GRシリーズといえばハイコントラスト白黒と新たな強さハードモノトーンも外せません。ハードモノトーンは撮影条件によっては赤外フィルムを使ったような印象になります。ケイタ流クロスプロセスはちょっと印象が変わりましたが、これは先ほど書いたカラーバランスが安定したことも影響があると感じています。
個人的な話ですが、GR IIIの発売当初はクロスプロセスの設定がなくとても残念な気持ちになったのを覚えています。それからはチャンスを見つけてはクロスプロセスの復活を嘆願しており、ファームウェアのアップデートでそれがかなったときの喜びはひとしおでした。
気軽に持ちだせて強さを表現しやすいのがGRシリーズだと思います。そこに優しさを感じるソフトモノトーンやちょっと不思議なトーンを再現してくれるハードモノトーンなど新たな楽しみが増えました。そんなカメラシリーズは定番だけでなく自分なりの使い方も試してください。クロスプロセスの設定をブリーチバイパスとレトロに変更したケイタ流はそんな一例で、そのチャレンジを受け止めてくれるのが小さな巨人・GRシリーズの強みです。
以前作ったKeiチャンネル GR IIIxの紹介です。
写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」というフィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。
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ティーンエイジャーの頃からファッションに関心が高かった私は、プロのフォトグラファーになっても、ジャケットとパンツをコーディネートするように、その日に使うカメラにどんな腕時計を合わせるか――日々、楽しんでいます。昔からカメラ好きは時計好きとよく言われますが、私の場合はカメラのボディにカスタムを施したり、腕時計のストラップを替えたり、ファッション的な要素をさりげなく取り入れるのがポイント。今回は4パターンのスタイリングを初披露させていただきます。
カメラと腕時計のスタイリングで大切にしているのは親和性です。その最たる例がこのコンビネーション。私は英国情報局秘密情報部(MI6)に所属するスパイ、ジェームズ・ボンドを主人公とする映画『007』シリーズが大好き。とりわけ前作まで主役を演じていた6代目ボンド役のダニエル・クレイグの大ファンです。彼が主演した5作品は何度も見直すほどの熱が入っています。
だから、ダニエル・クレイグと写真家のグレッグ・ウィリアムズがコラボした「ライカQ2」の特別モデル(世界限定750台)にはぞっこん。このライカを持って撮影に出るときに合わせるのは、オメガの「シーマスター ダイバー300M 007エディション」。これ以外あり得ないくらいの相性です。
このQ2前面に位置する「Leica」ロゴはそれまでの同ブランドに存在しなかったゴールドとブラックのコンビ。操作部分の数字や文字、ストラップをかけるアイレットにはゴールドが使われており、特別なリュクス感が漂っています。
一方、2021年公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に合わせてリリースされた「シーマスター ダイバー300M 007エディション」は、文字盤のインデックスやベゼルの数字を彩っているトロピカル・ブラウンがヴィンテージの趣きを醸し出します。どこかレトロな雰囲気と機能的ながら高級感を醸し出す佇まい。ライカとオメガという全く異なるブランドにもかかわらず、「ジェームズ・ボンド」という稀代のキャラクターがひとつの世界観を作り上げるのです。
また、ダニエル・クレイグ自身が元々ライカの熱狂的なファンであり、もうひとりのコラボ相手である同じくライカのヘビーユーザー、写真家のグレッグ・ウィリアムズの2人が、この特別モデルのデザインにアイデアを出したというストーリーに気持ちが高まります。
このシーマスターのケース素材は軽量ながら堅牢なチタン。同様にチタンを採用したメッシュタイプのブレスレットもスタイリッシュで気に入っています。そして、ライカQ2が水滴の侵入を防ぐ特殊シーリングを施しているのに対して、シーマスターはダイバーズウォッチに相応しい300m防水。機能性の高さも競い合っているというわけです。
実はこのシーマスターの文字盤上に「007」の文字がありません。そのため、「007」エディションだと気づかない人が少なくない。ところが、裏を返すとケースバックに小さく「007」のロゴが刻まれています。こんなさりげないディテールが気に入っているのです。
●オメガ シーマスター ダイバー300M 007エディション ケース径:42mm ムーブメント:自動巻 300m防水
私はスチル写真だけでなく、ムービーも撮るビデオグラファー。動画撮影の際に愛用しているのがソニーの「ZV-1」で、誰でも簡単にVlog(Video Blog)が撮れるように設計されたコンパクトデジタルカメラですが、ワンタッチでボケ感を調整できるなど、小さいサイズながら便利な機能が満載です。
まさにVlog時代の申し子ともいえる「ZV-1」を携えて出かけるときは、スマートウォッチであるファーウエイの「ウォッチバズ」で決まり。最初に紹介したライカとオメガが高級感溢れるハイブランドだとしたら、この組み合わせの共通点は最新テクノロジーでガジェット的な楽しみ方ができること。気軽に扱えることも魅力で、出動頻度が高い組み合わせでもあります。
「ZV-1」のボディにデザート迷彩のスキンシールを貼り、「ウォッチバズ」のストラップはレザーからラバーに替えて、自分流にカスタマイズしています。昔から軍モノが好きなので、カメラや腕時計にもミリタリーのテイストを盛り込んで楽しんでいるのです。
このスマートウォッチ、一見したところオーソドックスな姿なのですが、実は身体の状態をモニタリングして健康データをチェックできる優れモノ。睡眠の質、血中酸素レベル、ストレスなどスマホ用アプリと連動させて管理することが可能なのです。
さらに驚きなのが、小型のワイヤレスイヤホンを内蔵していること。イヤホンはマグネット吸着式で、ケースの内部に収納したまま充電。取り出しもスムーズで、使いたいときにはすぐに装着できるのは非常に便利。こんな腕時計、ほかにありません。
●ファーウエイ ウォッチバズ ケース径:47mm ムーブメント:クオーツ
ソニーのミラーレス機「α7R V」とレンズ「Gマスター」の組み合わせは「最高峰」の名に恥じません。そんな最高峰のボディ&レンズに相応しいのは、チューダーの「ブラックベイ クロノ S&G」。このブラックベイはチューダーのフラッグシップ・モデルであり、ストップウォッチ機能を備えたクロノグラフはスポーツウォッチの中でも最高峰といってもよいでしょう。まさに、「α7R V」と「Gマスター」で撮影する日に、これ以上ふさわしい腕時計はありません。
また、S&GつまりS=ステンレスとG=ゴールドというモデル名の通り、この腕時計はステンレススチールとイエローゴールドのコンビ仕様。ダイヤルやベゼルのタキメーター刻印、そしてリューズにはイエローゴールドが採用されています。イエローゴールドはプレミアム感があるのですが、ブレスレットまでコンビ仕様だと、ラグジュアリー過ぎる印象も。そのため、コンビのブレスレットをNATOストラップに付け替えています。この方がスポーティだし、イヤらしくならないという意図があるのです。
「α7R V」はフルサイズミラーレスαの高画素モデルRシリーズの5世代目であり、現行モデル。有効約6100万画素は4代目からそのままに「AIプロセッシングユニット」を搭載したことで、被写体検出の精度がアップ。対する「ブラックベイ クロノ S&G」も41mmのケースにクロノメーター認定の高精度ムーブメントを搭載。しかも、200m防水という高スペックを誇ります。この組み合わせは完璧です。
●チューダー ブラックベイ クロノ S&G ケース径:41mm ムーブメント:自動巻 200m防水
かなり高い頻度で行動を共にするのが、富士フイルム「X-H2」とルミノックス「ネイビーシールズ」のコンビです。とにかく、両者とも使い勝手がいい。スペックが高く、使いやすい上に、サクッと手に取って撮影に行ける手軽さが気に入っています。
「X-H2」はフルサイズではなくAPS-Cサイズのセンサーながら、4020万画素を誇る「Xシリーズ」のフラッグシップ。40コマ/秒の高速連写中もAF/AE追従できるスペックの高さが特徴です。
そして、腕時計はルミノックス「ネイビーシールズ」をチョイス。ルミノックスはミリタリーウォッチで名高い米国ブランド。アメリカ海軍特殊部隊などで採用されている“本物”のミリタリープロダクトです。このモデルは、オールブラックの精悍さが魅力ですが、オメガのような高級ウォッチではなく、気軽に扱えることもヘビーローテーションの所以かもしれません。
スチル写真にも動画撮影にも便利なオールマイティさが魅力の「X-H2」に対して、「ネイビーシールズ」も機能性では引けを取りません。ダイバーズウォッチらしく、200m防水性能&逆回転防止ベゼルを搭載。そして、何と言っても最大の特徴は自己発光システム「ルミノックス・ライト・テクノロジー」で、ボタン操作や外部の光源なしで約25年間、針や文字盤、ベゼルの数字が発光し続けます。これは、腕時計の世界でも唯一無比の機能です。
また、ここでも私のカスタマイズ好きが顔をのぞかせていて、オリジナルはラバーベルトでしたが、私はカーキのNATOストラップに替えることで、ゴツさをおさえています。
●ルミノックス ネイビーシールズ ケース径:45mm ムーブメント:クオーツ 200m防水
このように、今回は4パターンの「カメラと腕時計のスタイリング」をお見せしました。撮影の内容に合わせてカメラとレンズを選ぶように、身に着ける腕時計をスタイリングする楽しみをそこに加えてみる。撮影とはコミュニケーションです。もし、被写体となるモデルがカメラと腕時計のスタイリングに気づいてくれたら、しめたもの。そこから会話が始まり、やわらいだ関係性が築ければ、もっと質の高い写真に仕上がるかもしれない。みなさんも「このカメラだから、あの腕時計」の妙味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
撮影:ShaSha編集部
■写真家:中西学
岡山県出身。一般企業に勤めながら、独学で写真&動画を始める。フリーランス転向後、2011年からは自らの個展も開催。いち早くドローン技術を取り入れ、日本の絶景写真を撮り始める。2020年開催の個展「躍動」では富山県高岡市の伝統文化やそれを後世に受け継ぐ人々を中心とした撮影を行う。富山に限らず、日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現するを常に意識し活動を行っている。2022年にはNetflixで展開中のULTRAMAN写真展「Inhnritance」開催。
Microsoft(MCT)
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
dji CAMP Specialist
SONYαアカデミー講師
FUJIFILM Xフォトグラファー
DavinchResolve18 Certifild Trainer
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皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。前回は1958年製のライカM2ブラックペイント(連載vol.005参照)という博物館級の大物でしたが、ヴィンテージサロンにはもうすこしカジュアルな品物も沢山あります。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの中明昌弘さん。前職はプロのカメラマンだった彼が前回お薦めしてくれたのはデジタルの現行機種ライカM11でした。今回も実用的でありつつこれぞライカというセレクトをしてくれるのではと期待しつつ、カメラの登場を待ちます。
「こちら、ライカMPです」とカウンターの上にカメラを置きながら微笑む中明昌弘さん。ライカMPはドイツのライカカメラ社が製造している35mmフィルムを使う現行のレンジファインダー機です。布幕横走りの機械式フォーカルプレーンシャッターを搭載していて、フィルム巻き上げはレバー式。フィルムの巻き戻しはレトロなノブ式になっています。
ファインダーの倍率は0.72倍なので、肉眼で見るより少し縮小された視界の中に交換レンズに応じた撮影フレームが浮かび上がります。以前はファインダー倍率に0.85倍と0.58倍が用意されていて選べたのですが、現在は0.72倍のみが販売されています。この倍率は1958年に登場したライカM2から連綿と受け継がれているお馴染みのものですね。
ライカMPはブラックペイントの施されたクラシカルな外観ですが、フィルム巻き上げレバーを操作して横走りのシャッター先幕を露出させると、測光用の白いペイントが見えます。この白い部分にレンズから来た光線が反射して、その光をシャッター幕に向けて底面に設置されている受光素子がキャッチして、ボディに内蔵した露出計に反映させるしくみ。これは1984年に登場したライカM6以来の伝統的な方式です。
「僕は露出計の入っていないカメラの方が玄人(くろうと)っぽくて好きなんですけれど、実用を考えると露出計はあった方がいいですよね。今はフィルム代も高騰しているので、露出計は昔よりもさらに必要になっていると思います。適正露出だったか心配でもう一回撮っておこうというのも防げます」と中明昌弘さんは露出計の有効性について語ります。
ライカにはMPという名前のカメラがこのモデルより前に存在していたので、おさらいをしておこうと思います。ライカMPという名前で最初に発売されたカメラは、1956年から1957年にかけて400台ちょっとが製造されたもの。これはライカM3をベースにして、バルナックライカ時代にあった迅速フィルム巻き上げ装置であるライカビットをM型用の底蓋サイズに拡張したアクセサリー、ライカビットMPに対応させた特殊モデルでした。
それから約半世紀が経過した2003年の初頭に、ライカM6をベースにしてクラシカルな外装にしたライカMP6というブラックペイント仕上げのモデルが400台の限定数で発売され、同年にライカMPが通常モデルとして登場したという次第です。似たような名前のデジタル機でライカM(Typ240)の外観を変更したライカM-Pが2014年に上市されましたが、こちらはMとPの間にハイフンが入ります。
ライカMPには、20世紀に発売されていたM型ライカのデザイン要素が散りばめられています。巻き上げレバーは指の当たる部分まで金属素材で、これはライカM3、その改造モデルである元祖ライカMPおよびライカM2を想起させるもの。その後のライカM4からM7までは指当てにプラスチックの可動式パーツが採用されていますが、それはあえて踏襲していないレトロなスタイルです。
指皿がクローム仕上げでピカピカ光っているのはライカM4ブラックペイント仕上げへのオマージュかと思います。フィルムの巻き戻しはクランクではなくノブ式で中心軸に赤いドットが2つ入れてあるのは、ライカM3の最後期のバージョンにあやかったもの。ちなみに最初は横線が刻まれていて、そのあと赤点1個の時代があって最終的に赤点が2個になりました。こういうディテールの変化をたぐる楽しみがライカにはあります。
この写真のシルバーのカメラがライカM-Aで、ブラックのカメラがライカMPです。おおよそ同じ外観ですが、シャッター速度ダイヤルのB(バルブ)表示のところにOFFと併記されているのがライカMPで、内蔵露出計の電源を切るためのもの。ライカM-AはライカMPから露出計を抜いたモデルだから玄人っぽくて中明昌弘さん好みだと思うのですが、実は露出計が内蔵されているライカMPのオーナーだそうです。
その理由は、2023年の3月に誕生した息子さんと同じ製造年・製造月のライカMPと偶然にも出会ってしまったから。そうなると露出計が入っているとかいないとかの問題ではないですよね。「そのMPは息子が大人になったらプレゼントしようと思っています。使ってペイントを剥げさせるか、メチャクチャきれいな状態で保とうか、いまだに悩んでいます」とのこと。
ライカMPに似合うお薦めレンズを尋ねると、定番の標準レンズであるズミクロンM f2/50mmを見立ててくれました。「これは現行品のフード内蔵モデルです。今となってはごく普通のスペックですが、ライカMPは1/1000秒までのシャッターなので開放F値はF2で十分です」とのこと。オーソドックスな組み合わせで、落ち着いた雰囲気です。
ちなみに中明昌弘さんが個人的に使っているライカMPにもズミクロン50mmをつけているそうですが、現行品ではなくフードが脱着できる3世代目のタイプだそうです。その理由は、自分の生まれ年の1988年製のレンズだから。「子供の生まれ年のライカMPに自分の生まれ年のズミクロン50mmをつけて、親子セットにして使っています(笑)」いろんな時代のカメラボディとレンズを組み合わせて楽しめるのもライカも魅力の一つですね。
2024年の現在でも35mmフィルムを使うレンズ交換式のレンジファインダーカメラが新品で入手できるというのは素晴らしいことだと思います。2003年に登場したライカMPは20年以上のロングセラー。あえて初期型のライカMPを探しているお客さんも存在するそうで、その理由は現行のグッタペルカ風の貼り革よりも初期型のザラっとした感触の梨地っぽい貼り革が好みだからとのこと。カメラの手触りって結構大事だと思います。
ライカMPはブラックペイントのモデルに関してはゆっくり時間をかけて使い込んで真鍮の地金を出して自分のカメラに育てていく楽しみもありますし、シルバーもブラックも親から子に受け継ぐという夢を叶えてくれる気がします。それがデジタルカメラだと「お前が生まれた年の最新機種だよ」と手渡されても子供はリアクションに困ってしまいますよね。
■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカMP ブラックペイント
・ライカ ズミクロンM f2/50mm
■ヴィンテージサロン コンシェルジュ:中明昌弘
1988年生まれ。愛用のライカはM7 ブラッククローム
■執筆者:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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「風景写真をビフォー・アフターで学ぶ」シリーズの第5弾となります。このシリーズでは、完成された写真だけでなく、完成に至るまでの写真もご紹介しながら、どのようなプロセスで作品を追い込んでいくのか、その思考回路をご紹介いたします。今回は「厳冬編」をお届けしたいと思います。
「厳冬」という名の通り、美しい雪景色が見られるのは最も冷え込む時期で、二十四節気における大寒は1月20日から2月3日頃までとされております。日本では1902年に北海道旭川市で最低気温-41度が観測されましたが、大寒にあたる1月25日のことでした。今年は暖冬と言われていますが、北海道や東北地方、本州の日本海側や山間部にて積雪が見られますので、この時期ならではの雪景色をぜひ撮影に行きましょう。
厳冬の風物詩といえば、やはり迫力満点の樹氷でしょう。樹氷とはオオシラビソなど針葉樹の葉に氷と雪が付着して大きく育ったもので、怪獣のような出で立ちからスノーモンスターとも呼ばれ親しまれています。近年は冬の気温が上がり、大きく育った樹氷が少なくなってきましたが、蔵王や八甲田山などの樹氷原が有名です。有名な場所だけでなく、降雪する標高の高い山では現れることがありますので、意識して探してみることが大切です。
また、キラキラと輝く繊細な美しさが魅力の霧氷は、シラカバなどの広葉樹にみられます。樹氷と違って溶けやすく、冷え込んだ早朝から午前中に狙うのがおすすめ。太陽の暖かい日差しにハラハラと舞い散る様子は、まるで桜が散るように情緒あふれる光景です。
樹氷や霧氷が見られなくても、白い雪原は冬らしい美しい風景を奏でてくれます。冬の撮影は寒いですが、暖かく着込んで一歩外に飛び出してみましょう。
厳冬の風景を撮影するときは、凍傷や転倒、車の立ち往生などに注意が必要です。撮影に行く前に装備を揃え、充分な準備をしましょう。衣類は保温効果が高く着脱しやすいフリースやダウンを重ね、歩行時や室内に入る際に体温調節がしやすいようにしましょう。下半身も冷えやすいため、ダウンパンツがおすすめです。
足元はスノーブーツや冬用長靴を履くと、暖かくて撮影に集中できます。氷瀑など大変すべりやすい水辺などへ行く際は、アイゼンを用意しましょう。長靴の靴底にスパイクがついているものも便利です。
新雪の上を歩くなら、埋没防止のためにスノーシューやかんじきを用意しましょう。行動範囲が広がり、雪深い樹氷原も歩くことができます。ただし、初心者は単独行動を避け、雪原のどこに危険が潜んでいるかを現地の人やガイドから学びましょう。
車はスタッドレスを履いた四輪駆動車がベストですが、あまり頻繁に冬山へ行かない場合は、撮影地周辺にあるレンタカーもおすすめ。冬用の装備がされた車を借りることができて安心です。非常食も準備し、決して無理をしないように撮影を楽しみましょう。
撮影の準備が万端にできたら、思いっきり冬景色を楽しみましょう。初めて訪れる場所は、撮影会やスノーシューツアーなどに参加すると良い場所に案内してもらえます。
まずは晴天の日の狙いですが、青空に樹氷を重ねるように撮影すると、白さが際立って印象的に仕上がります。カメラ位置を低く構え、超広角レンズで少し見上げるように撮影しましょう。
樹氷は標高の高い場所にできるため、晴れている日は遠くの風景を見渡せることも多いでしょう。背景に山々を添えることで、雄大な環境を物語ることができます。さらに樹氷の迫力を演出するために、太陽の光を活用していきたいと思います。
先ほどは太陽を右にする位置で、サイド光で撮影をしていました。上の写真は左側に回り込んで、太陽を正面にして逆光で撮影しています。太陽を光条にするために絞り込み(光条が出やすいレンズですので絞り値はF8に設定)、縦位置構図にして雪原に落ちた濃い影を構図に入れました。そうすることで太陽の力強いエネルギーをアクセントに添え、樹氷のパワフルさを演出しています。雪原の影も、強い光を強調する名脇役です。
次に、曇天の日の狙いについてお話ししたいと思います。樹氷は大量の積雪によってできるため、現地では吹雪や曇天が多いもの。太陽の光が弱い真っ白な樹氷原は、撮影中にも構図が確認しにくいうえ、立体感が乏しく見えがちです。
上の写真は樹氷原を遠くから切り取ったもので、白い空と雪原が一体化しているようにぼんやり見えています。この時は、画作りモードであるフィルムシミュレーションをPROVIA(スタンダード)に設定して撮影していました。
はじめに、撮影中に構図がわかりやすいようにフィルムシミュレーションを変更します。コントラストが強く、輪郭がくっきりと見えるCLASSIC Neg(クラシックネガ)に設定。他のメーカーのカメラでは、風景などに設定してもよいでしょう。現場でコントラストを高める画作りモードに変更することで、樹氷の造形が確認でき、構図を追い込むことができます。
次に立体感を出すために、奥行きが感じられる場所を探します。上の写真では、中央に林の隙間が伸びる場所を選びました。形の良い樹氷が近くにあれば、超広角レンズでぐっと近づいて、手前に大きく配置してもよいでしょう。そして、ぼんやりと雲間からのぞく太陽を入れると、いっそう遠近感が強調されます。
それでも立体感を感じにくい場合は、自宅に帰ってRAW現像でコントラストを高め、明瞭度をプラスにすることで、樹氷の造形を際立たせることができます。
よく冷え込んだ晴れの日、早朝に現場に向かうと一面の霧氷が広がっていました。美しい霧氷を目の前にするとやみくもに撮ってしまいがちですが、落ち着いて設定や構図を確認しながら撮影しましょう。
上の写真は手前の木、奥の林の霧氷を撮影したものですが、どちらにも光が当たって白く重なっており、霧氷の繊細な枝先が見えにくくなっています。そこで、手前の木を主役にし、枝先の霧氷を目立たせられないか考えました。
上の写真は、手前の木の霧氷がより目立つように、暗い山肌を背景にできる場所に立って撮影しています。そうすることで、逆光に煌めく繊細な霧氷の美しさが際立ちました。ビフォーの写真は雪原の入れ方も中途半端だったのですが、こちらはしっかりと構図に入れることで雪深い森の霧氷を演出することができました。
晴天の日に霧氷を撮影する際は順光も魅力的ですが、逆光で狙うことで、ダイヤモンドのように輝く霧氷を捉えることができます。太陽が低い時間帯に狙うことで、山肌の青い影を背景に活かすことができるので、撮影しやすいでしょう。
曇天の日の霧氷はどんよりと灰色に見えるため、比較的撮影が難しい被写体です。そのようなときは狙いを変えて、繊細な樹氷の造形に着目してみましょう。遠くの山肌を望遠レンズで切り取るのもよいですし、曇天の白い空を背景にして、冬の静けさを物語るのも魅力的です。空を背景にする際は霧氷が暗く写りがちですので、露出を+1~2EVなどプラスに補正して撮影しましょう。
上の写真はカラマツの枝先を狙ったものですが、要素が少なく単調で、面白みに欠けてしまっています。
こちらは左側のカラマツ、右側のシラカバの霧氷の造形を見せたいと思って撮影しました。二本の間に黒くがっしりとした針葉樹を入れることで、繊細な広葉樹の枝先と対比させて、互いに造形を引き立て合っています。
また、下の方に雪原の優美な曲線を入れて構図を整えました。そうすることで奥行き感や場所の雰囲気が伝わり、静寂な雪景色を演出しています。
最後に、曇天の雪原の写真を印象的に見せるRAW現像をご紹介したいと思います。上の写真は、曇天の夕暮れにホワイトバランス「晴れ」で撮影したものですが、どんよりと暗く雪原の色も紫色がかっています。そこで、露出を明るく調整し、雪原の色を白色に近づけるRAW現像を行うことにしました。
RAW現像ソフトはAdobe社のCamera Rawを使って調整しています。まず全体を明るくするため「露光量」をプラスに動かします。左上の木の幹が黒く重たく感じたので、「シャドウ」をプラスして明るく軽やかな印象にし、右側の低木を目立たせました。
次に、雪原の白色を美しく出すために色合いを調整しました。「色温度」を右側に動かして青みを抑え、「色かぶり補正」を左側に動かして赤味を抑えることで、全体に紫がかった色味を取り除きました。
そうすることで、真っ白な雪原のキャンバスに、木々たちの姿を優しく描くことができました。このような完成イメージをもって撮影に挑むことで、曇天の雪原でも無限の画作りができるはずです。
厳冬の撮影は億劫になりがちですが、勇気をもって踏み出せば、見たことのない冬だけの絶景が待っています。私は沖縄生まれで雪に馴染みがありませんでしたが、その日その日で姿を変える刹那な美しさに、すっかり虜になりました。
そして厳冬の撮影を快適に行うために、しっかりと暖かく着込んで撮影に挑みましょう。安全と健康第一で冬の撮影を楽しめるヒントになりますと嬉しく思います。
本年もカメラと共に、素晴らしい風景と出合えますように!最後までご覧いただきありがとうございました。
■写真家:萩原れいこ
沖縄県出身。学生時代にカメラ片手に海外を放浪。後に日本の風景写真に魅了されていく。隔月刊「風景写真」の若手風景写真家育成プロジェクトにより、志賀高原 石の湯ロッジでの写真修行を経て独立。志賀高原や嬬恋村、沖縄県をメインフィールドとして活動中。撮影のほか、写真誌への寄稿、セミナーや写真教室等も行う。個展「Heart of Nature」、「地獄」、「羽衣~Hagoromo~」などを開催。著書は写真集「Heart of Nature」(風景写真出版)、「風景写真まるわかり教室」(玄光社)、「美しい風景写真のマイルール」(インプレス)、「極上の風景写真フィルターブック」(日本写真企画)など。
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こんにちは、フォトグラファーの鎌田風花です。今回はモノクロ撮影について作例を交えながらお話ししようと思います。
私自身、以前まではモノクロ撮影というと少し敷居が高いような…何となく難しそうなイメージを持っていました。ですが、コツを掴むと白黒で写す世界も写真表現の幅が広がって楽しい!昨年からNikon Z fでモノクロ写真をたくさん撮るようになり、そんな風に思うことが増えました。モノクロ撮影の楽しさを体感してくださる方が一人でも増えるといいなと思いながら、この記事を執筆しています。
世界は色で溢れています。そんな世界をなぜモノクロで…?と思われる方も多いはず。
確かに色があるからこそ伝わる写真はたくさんあります。なぜあえてモノクロで写真を撮るのかと言われると、シーンによってはカラー写真よりも雰囲気が出る場合があるからです。
そして色に対しての情報量がない分、より写真を撮ることに対してじっくりと向き合うことでクリエイティブな作品が生まれたり、カラー撮影では気付くことのできなかったものに出会ったりすることも。
何気ない風景でもモノクロで撮ると木漏れ日の美しさに気付かされました。白い扉だったので、より明暗がはっきりしました。
モノクロだからこう撮るべきという正解は無いと思っています。ただ、撮りやすくなるコツはいくつかあるのでモノクロ撮影初心者の方向きに、具体的に撮影ポイントを解説していきたいと思います。
どんなシーンでもモノクロで撮ると素敵に見える、というわけでもないのがモノクロ撮影の難しくて面白いところでもあります。カラーだからこそ、モノクロだからこそ写真に味が出るので、おすすめのシーンをいくつかご紹介したいと思います。
光と影がはっきりと認識できる晴れた日などはモノクロ撮影の絶好のチャンスです。
被写体の輪郭がはっきりしていると、色がなくても伝わりやすくなります。ガラスのドームに光が当たるように配置しています。モノクロ写真は写真の中で一番明るい部分(ハイライト)に目が行きやすくなります。
参考までに、あまり良くなかった例として下の写真を比較してみました。
色があるからこそ成り立つ写真ではないでしょうか。モノクロにしてしまうと、少し写真としてはぼんやりしてしまうように思います。
光の当たる部分がなぜか三角形になっていて面白い、と感じシャッターを切りました。光を見てほしかったので、カラーではなくモノクロで光を強調しています。
レトロな看板はモノクロで写すと味が出ます。空も綺麗だったので看板全てを写すのではなく、空で余白を作りました。
質感が分かりやすい被写体はモノクロに向いています。
ザラザラした表面の鉢植えを写すことで、カラーよりも質感を表現できることがあります。凹凸のある面を撮ると分かりやすいです。
Z fには静止画/動画セレクターというレバーにB&Wポジション(静止画のモノクロ撮影モード)も加わりました。
カラーとモノクロをワンタッチで切り替えることができるため、とっさのシャッターチャンスにも対応できます。以前よりも設定に費やす時間が削られ、直感で操作ができ、より撮影に対して集中できるところが実際に使っていて便利だと感じました。
また、Z fのモノクロは以前からあるピクチャーコントロールの「モノクローム」に加え、2種類の新しいモード「ディープトーンモノクローム」と「フラットモノクローム」が追加されました。具体的にどのようなシーンで使い分けるのがおすすめなのか、写真と一緒にご覧ください。
※ピクチャーコントロール:Nikonのカメラ機能で、写真の雰囲気を変えることができる画作り設定のこと
◇モノクローム
コントラストが高く、明暗がはっきりしているようなシーンに合います。
◇ディープトーンモノクローム
青は暗く、赤は明るく写る特徴があり、特に風景との相性が良いように感じます。絶妙なコントラストとダークトーンが写真を程よく引き締めてくれます。ディープトーンの作り出すしっとりとした雰囲気が好きなので風景以外でもよく使います。
◇フラットモノクローム
モノクロの階調が滑らかで、柔らかな雰囲気になるフラットモノクロームは優しく穏やかな瞬間を切り取りたい時に使用しています。
同じ写真で3つのモノクロを比較してみます。
同じモノクロ写真ではありますが、ハイライト部分、中間色のグラデーションやコントラストなどの描写がそれぞれ異なります。その時の光や状況に合わせて、どのモノクロが自分にとって表現したい写真に合うかを試してみてください。
また、RAWで撮影しておくとNikonの現像ソフトウェアである「NX Studio」で後から各モノクロへ変更することも可能です。もちろんカラーにすることも可能です。
シャッターチャンスはいつ訪れるか分からないものです。モノクロに慣れるまでは、いろんなシチュエーションを撮影してみてはいかがでしょうか。何気ない日常の中にも、モノクロで撮る楽しさを見つけることができます。
例えば、ティータイムもモノクロで写すことでカラーよりも湯気が分かりやすくなり、いつもよりお洒落な雰囲気に。
部屋に差す光でチューリップを撮影してみました。モノクロで撮ると情報量が少なくなり、伝えたいもの(ここでは影の印象)を強調することができます。
撮影をしていると、ここはモノクロで表現したいと感じる瞬間があります。光が綺麗だったから、レトロな外観だったから、など理由は様々。どうしてそのシーンをモノクロで撮りたいと思ったのか、それを深く考えることでより撮影に対して夢中になる楽しさがあります。モノクロ撮影で、写真の表現を広げる楽しさやチャレンジしてみたいと思う気持ちを持っていただけると幸いです。最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年)
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本格的な動画撮影をしたい方におすすめなソニーの「VLOGCAM」シリーズ。その中でもレンズ交換式で多様な表現を可能にしたのがこのZV-E10。優れたオートフォーカスと高性能な内蔵マイク、強力な電子式手ブレ補正によって快適なVlog撮影を可能とします。
ニコンFM2にインスパイアされたヘリテージデザインが特徴的なフルサイズ機。フィルムカメラライクなお洒落な見た目が所有欲を満たすとともに、Z 9やZ 8譲りの性能によってどんな被写体も逃さず撮影できます。
小さくて軽いカメラがいいけど、撮影の性能は妥協したくないという人におすすめなAPS-Cサイズミラーレス。最高約23コマ/秒の高速連写や、EOS R3のAF技術を継承する人物・動物・乗り物の被写体検出を備え、動きものも快適に撮影できます。
大人気機種Z fの外観にピッタリな40mm F2の単焦点がセットになったレンズキット。購入後すぐにスナップ撮影やテーブルフォトが楽しめます。Z 9と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を採用。被写体検出時の高い追尾性能を実現し、動く被写体にピントを合わせ続け、シャープに捉えることが可能です。
EOS RシリーズのスタンダードモデルであるEOS R6がモデルチェンジし「Mark II」へと進化。細部の使い勝手を向上させるとともに、最高約40コマ/秒の連写や鉄道・飛行機・馬も検出可能になったAFによって、さらに動体撮影に強くなりました。
世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスとして登場したα7Cの後継機。コンパクトなボディに最新機能を詰め込み、見た目以上の頼もしい性能を実現しています。フルサイズ機を常に持ち歩きたい、性能も妥協したくないというユーザーにおすすめです。
フラッグシップ機であるZ 9の性能はそのままに、ボディの小型軽量化を果たしたフルサイズミラーレス。静止画・動画撮影の両方で隙のない優れた性能を、より機動力高く持ち出すことができます。
コンパクトなボディに最上級の機能を詰め込んだマイクロフォーサーズ機のフラッグシップモデル。ハイレゾショットやライブND、ライブコンポジットなど表現の幅を広げる機能と、優れた手ブレ補正&防塵防滴性能が魅力の機種です。
EOS Rシリーズのエントリーモデルとして、初めてミラーレスカメラを手にする人におすすめなEOS R50。上位機種譲りのAF性能を持ち、エントリー機種とは思えないほど高性能な被写体認検出&追尾を実現しています。
ソニーのフルサイズミラーレスで最もスタンダードな機種と言えばこのカメラ。高精度なリアルタイムトラッキングで被写体を追い続け、静止画/動画ともに撮りたい瞬間を逃しません。
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InstagramやXをはじめ「どこかレトロっぽい描写がエモい」ということから数年前よりオールドレンズの人気が上がっています。特に焦点距離が50mm付近の単焦点レンズが人気で、旭光学(ペンタックス)のスーパータクマー55mm F1.8やNikon Ai 50mm F1.4、CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4などが有名です。
しかし、そういった人気なレンズは価格が上がり、状態の良いものからすぐに売れてしまうので「狙っていた商品がいつの間にか売り切れていた」ということもよくあります。
そんな時は一度ジャンクのコーナーを覗いてみると良いかもしれません。
- ジャンクとは?
ジャンクとは「そのままでは使用できそうにない物品」を指す和製英語です。1.6億人が利用する世界最大規模のマーケットプレイスe bayでは”Junk”よりも日本語で「部品取り」を意味する”For Parts”という言葉が良く用いられており、インテリアとしての購入や、自身が持っているものが壊れてしまった際に故障してしまったパーツを交換するために買われることが多いです。
カメラのキタムラでは中古商品の状態によってランク分けされています。新品同様(AA)、美品(A)、良品(AB)、並品(B)と続き、ジャンクコーナーには”難あり(C)”の一部商品や故障品(D)が主に陳列されています。
ジャンクは選び方や撮影時の使い方などを工夫することで、価格以上の満足感を得られることもあるのですが、「どうやって探せば良いか分からない」「どこを確認するか分からない」「ちゃんと写るの?」と思う方もいらっしゃると思います。
そこで今回は新宿 北村写真機店の3Fジャンクコーナーの山下さんに「フィルムカメラ初心者の方向けのジャンクの選び方や注意点」を聞き、実際に筆者もジャンクのカメラとレンズを購入して撮影してきました。
まずジャンクの魅力についてお聞きしたところ、2つのポイントを教えてくれました。
1.なんといっても販売価格が安い
ポイントの1つ目は「なんといっても販売価格が安い」ことです。
ジャンクは実使用に影響がある商品のため通常の中古価格よりも安い価格がつけられていることがほとんどです。
実は筆者も新宿 北村写真機店のジャンクコーナーで、スーパータクマーの55mm F1.8とPENTAX SLというフィルムカメラを購入しました。購入時はどちらも税込1,100円でしたが、特にレンズは状態によっては売価が数万円する商品でもあるので非常にリーズナブルに感じました。
2.「お宝探しの感じで選ぶのが楽しい」
ジャンクといっても商品の程度は個体差が大きいです。それがご自身にとって許容できるレベルかどうか?撮るときの工夫でカバーできるか?など考えながら商品を見ていると、自身にとっては気にならない故障品を見つけられることもあるそうです。
例えばフィルムカメラのボディで故障個所が「セルフタイマーのみ作動しないが他は問題なし」という商品を見つけた場合、自身がセルフタイマーを使用しない撮影であれば一気に魅力に感じますよね。価格も安いこともありお宝探しに似た楽しさがあります。
価格が安いという最大の魅力がありますが、返品や交換ができないジャンクだからこそ選ぶ時は慎重に選びましょう。山下さんにジャンクカメラ・オールドレンズを選ぶ際のポイントを聞きました。
1.完全機械式か電池式かを確認
フィルムカメラのボディには大きく分けて完全機械式と電池式の2種類があります。かなりざっくりですが機械式は電池が無くてもシャッターが切れるカメラ※で、電池式は電池がないとシャッターが切れないカメラだと思っていただければOKです。
※機械式カメラの中でも明るさを測る露出計を使うために電池を入れるカメラもあります。
電池が入っていない状態で、カメラを構えたときに右手の親指部分にあるフィルム巻き上げレバーを巻き上げてシャッターが切れれば完全機械式カメラです。
完全機械式カメラは電池式と比べて故障する部品が少ないため、購入後も故障するリスクが比較的少ないためおすすめです。
2.カメラの背面裏蓋を開けてシャッターを切ってみる
今度はカメラ背面の裏蓋を開けシャッタースピードを変えて何回かシャッターを切ってみましょう。シャッタースピードと連動していればシャッタースピードの数値が小さいときはシャッターの開閉が遅く、数値を大きくすると開閉が速くなります。
ASAHI PENTAX SP(ペンタックスSP)
ペンタックスSPは1964年に旭光学が発売したM42マウント対応の35mmフィルム一眼レフカメラです。まだ露出計が一般的でない時代の中、普及モデルクラスの価格帯でありながらもTTL露出計を搭載したことで絶大な人気を誇りました。扱いやすいカメラのため初心者からプロまで幅広く愛され、全世界で400万台以上販売したといわれる名機です。
レンズを選ぶときのポイント
1.光に向けてクモリや大きなカビが無いか確認
大きなクモリやカビは写真にうっすら膜がかかったような印象になるだけでなく、ピントを合わせるのも大変なのでなるべく避けましょう。天井のライトに向けるとレンズが良く見え、うっすら白く膜がかかっているものや蜘蛛の巣のようなカビがびっしり入っている場合はほかのレンズを選びましょう。
2.絞り羽根が動くかチェック ※できるレンズのみでOK!
レンズの後玉(カメラボディ側)にレバーやピンがあり、絞り羽根が動くレンズは絞り(F値)と連動するか確認しましょう。例えばニコンFマウントレンズであれば、レバーがついていることが多く、レバーを動かすとレンズ内の絞り羽根が動きます。この時にレバーが重く、絞り羽根の開きが遅い”粘り”があるものは避けましょう。
山下さんのおすすめレンズレンズはメーカーを問わず、50mmのF値の低い単焦点レンズが種類も豊富で一眼らしいボケ描写を楽しめるのでおすすめです。もしスナップを撮られる方であれば35mm、花を撮られる方はマクロレンズなど、撮影する被写体が決まっている方は撮影シーンにあったレンズを選ぶのが良いでしょう。
お使いのカメラボディと同じマウントでないと使えないので、マウントの確認もお忘れなく。
選び方のポイントを元に購入するにしても気になるのは「実際に使えるか?」ですよね。
今回は筆者が実際に購入したPENTAX SLとスーパータクマー55mm F1.8で実際に撮影してみました。
PENTAX SLの状態はスローシャッターが不安定で、カメラの中に余計な光を通さないためのモルトがボロボロでした(購入後にモルト交換済み)。レンズは内部にゴミやホコリが大量にあり、小さなカビもある状態です。
※カメラ・レンズともにそれぞれ個体差があり同様の描写でない場合がございます。予めご了承ください。
撮影した日はどんよりとした曇りの日でした。フィルムはフジフイルム業務用100を使用して撮影しましたが、ハイライト・シャドー共に描写してくれており、レンズ内のゴミやホコリ、カビによるクモリなども写っておりません。
特にヘッドライトや、ヘッドライトからグリルへつながるシルバーのフレーム部分などメタリックな質感をしっかりと表現しています。
2枚目は梅の花を撮影したものです。めしべの黄色や花びらのピンク、緑も色がしっかりとのっています。背景のボケもタクマーらしいボケ感で被写体をしっかりと引き立てています。
雲一つない青空で気持ちのよい日に青空をバックにしてヤシの木を撮影しました。空模様は良かったものの風が非常に強く少しピントが甘いですが、それでも葉の先端まで分かるほど描写をしています。
次はソニーのフルサイズミラーレスカメラ α7 IVにマウントアダプターを介してタクマー55mm F1.8を装着し撮影しました。
※ボディは完動品でジャンクレンズを使用して撮影した写真です。
タクマーといえば温かみのある赤いリングが出るゴーストが特徴ですよね。
上の写真は虹のようなゴーストですが角度によってはリング状の赤い輪のような形など、さまざまなタイプのゴーストが出て面白いため撮影中にゴーストが出る位置を探していました。
ここ最近のレンズはゴーストや逆光時に白っぽくなるフレアをカットするためのコーティング技術がより発達し「いかにゴーストのない写真が撮れるか」を目的に作られていることが多いため、ゴーストやフレアを出すことが難しいことも。。
ゴーストやフレアを表現の一つとすることで新しい作風を見つけられるかもしれませんね。
次は被写体の目にピントを合わせたカットです。ピント面のシャープさと、背景の大きなボケ感が被写体を引き立ててくれています。
撮影時のF値は開放の1.8で撮影したこともありますが、ゴミやカビが入っていることを忘れてしまうほどしっかり写っているという印象でした。
ミラーレスカメラにオールドレンズをつけて楽しみたいという方も多いと思いますが、今回使用したα7 IVはサイズ感もよく、ファインダー内でもピント位置を拡大して確認できることや手ブレ補正もついているのでマニュアルフォーカスレンズを初めて使う方でも簡単に楽しめます。
ジャンクと名前がついているものの、選び方や使い方を工夫することでジャンクでありながらも”動品”のような感覚で使用できる可能性を考えるとコスパは非常に良いと思います。
動品よりも価格が安い分、手に取りやすいので「これからフィルムカメラを始めてみたいけど高額で手が出ない」や「一本だけでもとりあえずオールドレンズを持っておきたい」など、カメラ好きの方はもちろん初心者の方にもおすすめです。
今回取材した新宿 北村写真機店をはじめジャンクを取り扱っているカメラのキタムラ店舗では、購入前に実際に手に取って確認ができるため、お伝えしたポイントを参考にぜひ自分にあった一品を見つけてみてください。
■新宿 北村写真機店のHPはこちら
ネットで中古の在庫を確認
新宿 北村写真機店では中古カメラ・レンズの一部をネットで公開しています。ぜひこちらもご覧ください。
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今回紹介するのはニコンZマウントの超望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」です。インターナルズーム機構採用の超望遠レンズで、機動性・操作性に優れ、幅広い焦点距離をカバーしてくれるだけでなく、プライスの面から見てもコストパフォーマンスが高くとても魅力的なレンズです。そんな本レンズの魅力とその写りをご紹介します。
ニコン「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」は、Zマウントで焦点距離180mm~600mmの超望遠レンズ。Fマウントで言えば「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」と同じジャンルの超望遠レンズですが、Zマウントになり機動性や操作性が非常に向上しています。
NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR
型式 | ニコン Z マウント |
焦点距離 | 180mm-600mm |
レンズ構成 | 17群25枚(EDレンズ6枚、非球面レンズ1枚) |
開放絞り | f/5.6(焦点距離180mm)、f/6.3(焦点距離600mm) |
最小絞り | f/32(焦点距離180mm)、f/36(焦点距離600mm) |
フィルター径 | 95mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 1.3m(焦点距離180mm)、1.36m(焦点距離200mm)、1.67m(焦点距離300mm)、1.94m(焦点距離400mm)、2.19m(焦点距離500mm)、2.4m(焦点距離600mm) |
最大撮影倍率 | 0.25倍(焦点距離600mm) |
手ブレ補正 | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:5.5段※CIPA規格準拠 VRモード:NORMAL/SPORT、三脚使用時ブレ補正:有り |
寸法 | 約110mm(最大径)×315.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約2140g(三脚座リングを含む)/ 約1955g(三脚座リングなし) |
発売日 | 2023年8月31日 |
レンズの外観は非常にシンプルで、スイッチ類も「フォーカス制限切り換えスイッチ」とAF/MFを切り替える「フォーカスモード切り替えスイッチ」、ボディ側から様々な設定を任意で割り当てられる4つの「L-Fnボタン」のみ。手ブレ補正に関してはレンズ側にはON/OFF切り替えスイッチがなく、ボディ側でコントロールすることになります。
ズーミングによる全長変化とレンズ前玉の移動がなく重心移動の少ない「インターナルズーム機構」が採用されています。またズームリング回転角70°とクイックになっているので、レンズを持ち直すことなく、広角⇔望遠端のズーム操作がスムーズにする事ができます。
この回転角70°は、小さな被写体を超望遠で追う際に非常に重宝します。例えば飛んでいる鳥などを焦点距離600mm側で探すのは非常に困難なのですが、焦点距離180mm側であればファインダー内に被写体を捉えることは比較的容易になります。焦点距離180㎜側で被写体を捉えてから焦点距離600mm側にクイックにズーミングすることで、被写体をアップで捉えられやすくすることができます。
レンズの全長は約315mmほどになるので、カメラバッグに収納するには少し注意が必要です。このサイズのレンズを収納するには、大きめのリュックタイプが必要になってきます。またフィルター径も95mmと大きいサイズになるので、少しコストアップしてしまいます。レンズを手に入れると同時に周辺機材の取り揃えも必要になってきますが、その投資以上に撮影できる範囲が広がるのが600mmという超望遠の世界です。
「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」を持って、身近に動物を撮影できる動物園に行ってみました。動物との距離は比較的近くで撮影できますが、「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の600mmの焦点距離は、今までに撮れなかった迫力ある動物たちの表情を切りとることが可能になります。動物園での撮影は三脚を使用せず、レンズの手ブレ補正効果(5.5段分)を頼りに手持ちで撮影しています。
「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」は「S-Line」シリーズのレンズではありませんが、その写りはズーム全域で開放値から満足のいくシャープな描写をしてくれます。
次に「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」を持って、「ふなばし三番瀬海浜公園」の干潟で野鳥の撮影をしてみました。小型の野鳥だと600mmの焦点距離でも足りないと感じることもありましたが、これ以上焦点距離が長いと動いている動物等を捉え続けることも難しくなるので、扱いやすさという観点から言えば満足度は非常に高いレンズです。もちろん「Z TELECONVERTER TC-1.4x」、「Z TELECONVERTER TC-2.0x」にも対応しているレンズですので、より望遠を必要とするユーザーは、テレコンを装着して撮影するのが良さそうです。
今回の撮影ではカメラは「Z 8」を使用し、積極的に「プリキャプチャー」機能を使って撮影をしてみました。この「プリキャプチャー」機能は、シャッターボタンを半押ししたまま狙いを定めて全押しすると、最大1秒前から4秒後まで画像を記録する設定が可能になります。狙った瞬間を確認してからシャッターボタンを全押ししても、その瞬間を逃さず撮影できる便利な機能です。今回のような鳥が飛び立つ瞬間や、魚などを捕食する瞬間などの難しいシーンも、簡単に撮影する事ができたりします。
足元の悪い干潟での移動でも「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」は、レンズ一本で様々なシーンに対応してくれるので、機動性が良く撮影をスムーズに行う事が可能でした。
「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」は、上位レンズなどに採用されているニコン独自の反射防止コーティング技術「メソアモルファスコート」や「ナノクリスタルコート」、「アルネオコート」は採用されていませんが、夕方の逆光のシーンを撮影していても、ゴーストとフレアの発生がよく抑えられておりクリアーな画像を撮影する事ができています。
「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の魅力は、なんと言っても望遠側の焦点距離600mmという点に尽きると思います。手持ち撮影ができるレンズの大きさでありながら、600mmという焦点距離を簡単に扱う事ができる非常に機動性の高いレンズで、100-400mmクラスの超望遠レンズとは違った世界を写しとることができます。野外スポーツやレースシーン、航空機、野鳥や動物などを撮影するユーザーにおすすめできるコストパフォーマンスの高いレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
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こんにちは、写真家のGOTO AKIです。今回はこれからミラーレス機で自然風景の撮影を楽しみたい皆様へ、キヤノンEOS Rシリーズのエントリーモデルである「EOS R100」をご紹介します。作例はキットレンズの「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」を中心に、単焦点、Lレンズとも組み合わせて撮影してきました。びっくりするほど軽くて小さい小型ミラーレス機を早速みていきましょう。
EOS Rシリーズの中でも最軽量の入門機である「EOS R100」は、質量約356g(バッテリーとカード含む)、サイズは幅116.3×高さ85.5×奥行68.8mmの超軽量・超小型のミラーレスカメラです。
以前にご紹介した「EOS R10」も十分に軽いカメラでしたが、「EOS R100」は「えっ!?」っていうくらいふわっと軽い第一印象です。カメラバッグではない普段使いのトートバッグなどにもスポッと入るので、写真愛好家の皆さんが感じたことがある「重いから今日は持って行くのやめようかな~。」という感情からも解放されそうです。静止画から動画まで日常的によく使う機能をシンプルに揃えたカメラでありながら、価格は7万円台。買いやすいのも魅力です。
「EOS R100」ボディに「RF28mm F2.8 STM」を装着している状態。ガイドナンバー約6の内蔵ストロボは、旅行の記念写真などで便利な機能です。ストロボは手動ポップアップ式で、自然風景の撮影では花のクローズアップ撮影で使用することが多い機能です。シーンインテリジェントオートで撮影すると、カメラが近接撮影に適した設定をして自動的に調整してくれます。軽いカメラだとブレやすいかな?という先入観がありましたが、グリップは持ちやすく、手の小さい方でもホールドしやすい形状です。
背面の液晶モニターは固定式で、バリアングルやチルト機能は非搭載。カメラ上部のアクセサリーシューは旧来の形状で、サードパーティーのストロボなども使えます。エレクトリックビューファインダー(EVF)は約236万ドットで明るい屋外でも被写体の状況が確認しやすい設計です。撮影情報もEVF内でチェックできます。
バッテリーは「LP-E17」を使用。小さいのがメリットですが容量はやや少なめ。撮影旅行などへお出かけの際は予備として、もう一つ「LP-E17」を持っていきましょう。記録メディアはシングルスロットでSD/SDHC/SDXCメモリーカードが使用可能です。
ビジュアルガイドは、カメラの撮影モードなどをイラストで教えてくれる機能です。初心者の方にもわかりやすく、直感的な操作をサポートしてくれます。
撮影モードはダイヤルを回すだけの簡単な操作です。絞り優先、プログラムオート、動画などの他、撮影シーンに合わせて自動で調整してくれるシーンインテリジェンスオートなどをここで選びます。自然風景の撮影でも撮影シーンの変化や、撮影の意図に応じて設定を変えるなど、使用頻度の高いダイヤルです。それぞれの撮影モードに合わせるとビジュアルガイドによるわかりやすい説明が表示されるので。いきなり撮影を始めても大丈夫。説明書PDFは辞書がわりに使いましょう。
大型CMOSセンサーと映像エンジンDIGIC 8の高い画像処理能力で、自然風景の光や色彩、被写体の細部を低ノイズで美しく捉えます。「EOS R100」も価格と画質や操作性のバランスがとても良い、高画質を楽しめるカメラです。ここから自然風景の作例をみていきましょう。
透過光を利用して森の中から空を見上げて撮影した、光の明暗の差がある作例です。色のグラデーションや被写体の繊細な線を描く解像感の高い画質です。
手持ち撮影で、ほぼ単色の輝度差の少ない静かな湖を焦点距離64mmで撮影(35mm換算で102mm相当)しました。AFの位置は画面中央で、瞬時にピントが合いサクサクとシャッターを切れます。
「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」の焦点距離130mm(35mm換算で208mm相当)の望遠域で撮影した作例です。実際には距離が離れている木々を望遠ズームレンズの圧縮効果を利用し、距離が近いように描写しています。偽色もなく、被写体の色彩に忠実な描写力ですね。撮影は手持ちで、ピント位置は画面のほぼ中央に合わせています。
夕方の日没の情景を逆光で捉えた一枚です。焦点距離は70mm(35mm換算で112mm相当)の中望遠域で撮影しています。
「EOS R100」はカメラ内手ぶれ補正機構が非搭載ですが、最近続々と発表されているRF-Sレンズはすべて手ぶれ補正機構が搭載されているため、「EOS R100」に装着すれば気軽に手ぶれを気にせず、暗い時間帯や室内の撮影が楽しめますね。
自然風景のシーンでは、滝や雲、波などがスローシャッターでよく撮影される被写体ですが、NDフィルターなしで撮影した2枚の作例を比較してみましょう。
▼1/80秒
シャッター速度1/80秒で撮影。肉眼で見る感覚に近い描写です。
▼1/4秒
スローシャッターとしては速めの1/4秒の撮影でも、水流が速いため、流れて描写されます。
撮影モードダイヤルで丸が重なって見えるマークが「クリエイティブフィルターモード」です。
撮影時や撮影後に「ラフモノクロ/ソフトフォーカス/魚眼風/油彩風/水彩風/トイカメラ風/ジオラマ風」など10種類のフィルターから選び、普通に撮影しただけでは撮れない、遊びごころのきいた写真を作ることが可能です。筆者がよく使うのが「ジオラマ風」。寄りと引きで撮影した2枚の作例をみてみましょう。
▼寄り
近接で撮影した木の幹です。上下がボケてジオラマ風の距離感が面白い作品が簡単に撮影できました。AF方式は1点AFです。
▼引き
森の遊歩道から見えた湖のある空間をジオラマ風で撮影した一枚です。ピントは必ずしも中央ではなく、上下の好きな場所で設定可能です。
「EOS R100」はAPS-Cカメラですが、フルサイズ用のRFレンズも装着することが可能です。
その際の焦点距離はレンズ表記の焦点距離×1.6倍の計算になります。フルサイズとAPS-Cのカメラを2台持ちの場合、同じレンズでも換算後の焦点距離が変わるので、撮影できる範囲が広がるのがメリットです。
作例は「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」の焦点距離324mm(換算距離518mm)で撮影。丘の上から見下ろした海岸を超望遠で遠方の海岸を切り取った一枚です。
「EOS R100」はエントリーモデルながら4K(24p)の動画撮影が楽しめます。現実的にSNSなどへの投稿を考えると、フレームレートが24p、30p、60pから選べるFHDでの撮影が便利そうです。さらにカメラ位置を縦にして、動画に「縦位置情報の付加」を設定するとスマホやショート動画にアップしやすいデータが簡単に得られるのも魅力です。
自然風景を題材に「EOS R100」をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。多機能なカメラが増える中、気軽に持ち運びシンプルに撮ることを楽しめる「EOS R100」は、初心者の皆さんだけでなく、フルサイズユーザーのサブ機としても十分楽しめるカメラです。
今回ご紹介した機能の他にもキヤノンのアプリ「Camera Connect」でスマホと連携させるなど、携帯電話のカメラに慣れた方が、本格的にカメラで写真を撮る第一歩としてもオススメです。機会がございましたら、小型軽量の「EOS R100」をぜひ手に取って触ってみてください。
■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。
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こんにちは。写真家の佐藤俊斗です。
肌寒い日々が続き、しっとりとした冬の光が美しい季節になりました。
柔らかい光は人物撮影において、とても最適な環境ですよね。
今回はクリップオンストロボを使用し、秋冬らしい光の質感で捉える昼の銀杏並木と、ファッション感のある夕方のロケ撮影の2テーマで写真を撮ってきました。
是非参考にしてみてください。
みなさんはクリップオンストロボとは何かご存知ですか?
スタジオで使用するモノブロックやジェネレーターとは対照的に、カメラに装着して使用する簡易的なストロボのことです。
使い方によってはカメラから離してワイヤレスで光を発光させる手法もありますが、クリップオンのいいところは、何よりも手軽さ。スタジオなどで使用する大型ストロボとは違い、軽くて持ち運びが便利なところも魅力的です。
私の思うクリップオンストロボの魅力は、
1.質感の変化
2.作品の幅の広がり
です。
自然光を活かした手法や、被写体の魅力を引き立てるような使い方が多く、良くも悪くも気軽に硬い光を照射できるため、それぞれの用途によって好きな質感を表現することができます。
この日の撮影開始時刻は14時頃。
日中の光があれば十分と言っていいほどの明るい時間帯ですが、先程お伝えした質感の変化という点においてストロボありとなしで比較してみました。
以下をご覧下さい。
全く同じ場所で撮った写真ですが、2枚の質感の差が分かりますでしょうか。
1枚目は通常の逆光、2枚目はストロボライティングです。
・肌色
・艶感
・陰影
誰が見ても一目瞭然なのは、肌色の明るさの違い。
人物の肌を綺麗に撮影する際、逆光のシーンでよくレフ板を使うのは皆さんお馴染みですね。
レフ板は光をバウンスさせて被写体に光を当てて明るくします。つまり言い換えれば、レフ板のフラッシュのようなもの。
しかし、ストロボを使うことによって明るさだけでなく、肌のツヤ感や陰影をしっかりと出すことができるのです。
明るい晴れ間でも、ストロボを使用して撮影することにより生っぽい質感や、フィルム写真のような陰影感のある1枚になります。
次に、ちょうど銀杏並木が見頃を迎えてとても美しかったので、黄金色に輝く銀杏をメインに撮影してみました。
まずは被写体を真正面に捉え、2人の距離感が伝わるような切り取り方をしてみました。
実際の目線より少し下くらい。恋人と遊びに来たかのような1枚になっているのが伝わりますでしょうか。
2枚目は、角度を変えてあえて右斜め下にしゃがんで見上げるような形で切り取りました。
少し角度が変わり、被写体の動線や余白が映し出されることで雰囲気が変わってきます。
そしてあえてピントを甘くすることで、髪の動きや不意打ちのような日常感のある1枚になっていますよね。
綺麗に美しく写真を撮る事が基本ですが、その時の温度感を大切に、力を抜いて切り取ってみるのもロケ撮影の醍醐味です。
次に、こちらの座っているシーン。
背景に木漏れ日も入っていて、ある程度バランスもよくモデルさんの可愛らしさを表現するには十分いい写真なのですが、私はまずこの写真に物足りなさを感じました。
次にこちらはどうでしょう。
さらに引いて全体の景色を入れただけでかなり印象が違って見えますね。
以前、shashaの記事にも書きましたが、人物を美しく撮影するにおいて被写体以外の情報を入れることは、私は不要な要素だと考えています。
ですが、今回は人混みの様子もあえてフレーム内に入れることにより、そこに集まる人々の温度感が伝わるように切り取ってみました。大きな銀杏の木の下にいる被写体の存在感や木漏れ日、あえて後ろの人を隠さずに入れることによって生まれる不完全さが心地いいと感じます。
通行人を隠さず入れるという選択肢は、観光客で賑わっている雰囲気やその日常感を伝えることができるため、状況に応じて活用してみましょう。
日も少しずつ傾いてきたので、夕陽のシーンでもストロボを使って撮影をしてみました。
夕陽のシーンで被写体が黒く影になってしまったという経験はありませんか?
シルエットももちろん綺麗なのですが、ストロボを使えば夕陽の色合いも美しく表現しつつ被写体も明るく写すことができます。
それでは、こちらの2枚をご覧ください。
みなさんは違いが分かりましたか?
1枚目はご覧いただければ分かるように、少し被写体の顔が暗い印象ですがレンズを通して逆光で捉えているので、綺麗なフレアが入っています。夕陽を活かしつつ、ストロボで顔の明るさを起こすことで美しく切り取ることを意識してみました。
2枚目は、そこから体の向きを少し変えて半逆光で光を捉えることで、髪の毛にハイライトが入っているのが分かるでしょうか。そして先程よりストロボの光量を強くすることで被写体の顔の陰影がしっかりと写されているのが分かりますね。
夕陽のシーンでは、いわゆる自然光と自分が作る光のバランスで写真が構成されています。
1枚目に比べて2枚目は、ストロボの光量の割合を強くすることで、被写体がより引き立つ写真になっています。
ストロボの光でアイキャッチと肌のツヤ感も出した写真に仕上げています。
このように、微妙な差ですが光量を調整することによって夕陽の光を活かしつつ被写体をより美しく見せる。
皆さんの好みや、撮影の用途に合わせて調整してみてください。
写真を撮るのが難しい時間帯は日没後の暗くなり始めた時間。
構図的にとてもいい場所なのに、暗くて自然光だと思ったような写真が撮れなかった、という経験が私自身もあります。
そんな時にストロボのいいところは、どの時間でも被写体を明るく写し出してくれる点。
この写真のように、実際は既に暗くなり始めているくらいの時間でしたが、被写体の写りにしっかりとメリハリがついています。
このように、どの時間帯でもシーンに応じてクリップオンストロボを使うことによって、より写真の質を高めることが出来ます。
ぜひ皆さんも自分好みの写真に仕上げる手段として、使用してみてはいかがでしょうか?
冬のロケ撮影を、クリップオンストロボを使用しながら撮影してきましたが、いかがだったでしょうか?
ストロボを使うことで格段に写真の質をあげることが出来ます。
この1年で街も人で溢れかえるようになり、自分の中の無駄と決めていた項目をあえて気にせず撮ってみたり、逆に人や無駄な情報を一切入れずに撮ってみたりと、自分でルールを決めた撮影をしてみるのもお勧めです。
何よりも、シーンに応じて情報の取捨選択をすることが大切であるということ。
撮影を終えて見返した時に、この時は楽しかったなとその時の情景を思い出すような、思い出を切り取ったような写真を撮り続けたいと最近よく感じています。
自分の世界観を広げるためにも、ぜひ色々試してみてください。
■モデル:ロンモンロウ
■写真家:佐藤俊斗
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こんにちは、旅写真家の三田崇博です。今回は2023年5月にタムロンから発売された、富士フイルムXマウントの広角ズームレンズ「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」をレビューします。似た焦点距離を持つレンズに富士フイルム純正のXF10-24mmF4 R OIS WRがありますが、タムロンのこのレンズは開放F値が2.8というのが特徴で、星やホタルの撮影でも重宝しそうです。
また、XマウントにはXF8-16mmF2.8 R LM WRというF2.8通しの高性能なレンズもありますが、その重さゆえ旅に持っていくには少し躊躇してしまいます。そんな中登場した本レンズです。今回はこのレンズを持って佐賀県のインターナショナルバルーンフェスタと唐津くんちのお祭りを中心に撮影してきましたので、その作例とともに紹介させていただきます。
APS-Cサイズミラーレズカメラ用としては世界初のF2.8通しの広角ズームとして登場した11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(現在はシグマ 10-18mm F2.8 DC DNもあります)。広角側は11mm(フルサイズ換算16.5mm)と最近の超広角レンズにしては控えめですが、その分望遠側は20mm(フルサイズ換算30mm)まであるので、広角域を広くカバーした画角になっています。
また、F2.8通しでありながらそのコンパクトさには驚きました。F4通しのXF10-24mmF4 R OIS WRと比べても一回りコンパクトになっています。加えてこのレンズは最短撮影距離が15cm(広角側)とかなり寄れるので、F2.8のボケ味を生かした簡易マクロ的な撮影もこなすことが可能です。
▼XF10-24mmF4 R OIS WRとの比較
11-20mm F/2.8 Di III-A RXD | XF10-24mmF4 R OIS WR | |
焦点距離(フルサイズ換算) | 16.5-30mm相当 | 15-36mm相当 |
寸法 | φ73mm×86.5mm | φ77.6mm×87mm |
質量 | 335g | 385g |
最短撮影距離 | 15cm | 24cm |
開放F値 | F2.8 | F4 |
レンズ内手ブレ補正 | – | 〇 |
フィルターサイズ | 67mm | 72mm |
絞り羽根 | 7枚 | 7枚 |
防塵防滴 | – | 〇 |
発売時期 | 2023.05 | 2020.11 |
▼最短撮影距離での比較
左が11-20mm F/2.8 Di III-A RXDの最短撮影距離の15cmで撮影。右はXF10-24mmF4 R OIS WRで同じ被写体を最短撮影距離で撮影しました。一目でその違いが実感できるかと思います。
同じF2.8の明るさを持つXF8-16mmF2.8 R LM WRと撮り比べてみました。有名な道頓堀のスポットです。ではグリコの看板部分を拡大してみましょう。
左が11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、右がXF8-16mmF2.8 R LM WRです。両方とも画角を11mmに合わせF2.8の条件で撮影しました。価格差が3倍近くあるレンズと比較するのは少し可哀そうな気がしますが、開放では少し甘めの描写となりました。
▼開放F2.8で比較
しかしF4に絞ると解像感がアップしているのが分かります。絞って撮影できる環境であれば、少し絞るほうがこのレンズの性能を引き出すことができるようです。
▼F4で撮影
目的地である佐賀県までは自宅から約700km。高速道路を使うと8時間ほどで到着できますが、今回はのんびりと下道を通って向かいます。実はこのルートはライフワークで撮影を続けている世界遺産の宝庫でもあるのです。
まずは姫路城に立ち寄りました。諸事情で夕日の時間帯には到着できなかったのですが、その後のマジックアワーの時間帯にライトアップされた真っ白な姫路城が撮れました。雲の感じがよかったので思い切って最広角側で空を広く写し込みました。
続いてちょうど奈良と佐賀の中間に位置する広島にも立ち寄りました。有名な大鳥居をアップで撮影するには標準から中望遠レンズが必要ですが、超広角ならではのアングルを見つけて撮影しました。超広角レンズではありますが前面にフィルターが装着できるので、PLフィルターを使って海面のコバルトブルーの色を引き出すことができました。
世界遺産ではないですが、福岡県には赤い宮島の大鳥居とは対照的な白の鳥居が立っている場所があります。ドライブコースとして人気のスポットです。こちらも快晴だったのでPLフィルターを使うと海面の色が綺麗にでます。
いよいよ佐賀県に到着してバルーンの撮影です。真っ暗のうちから会場に向かいます。対岸で川のリフレクションと一緒に撮れる場所までは指定の駐車場から徒歩30分以上かかるのです。それでも真っ暗な内から多くの人が場所取りに訪れていました。
いい場所はやはりすでに埋まっていましたが、奇跡的に空いていた場所から撮影。画面左に木が写り込むアングルだったので広角側では撮影ができませんでしたが、綺麗なリフレクションを撮影することができました。
気球は一斉離陸した後は当日の風の方向により風下方向に飛んでいきます。このバルーンフェスタは単なるショーではなく競技会なので、ある地点にいかに早く正確に着陸するかを競っているのです。飛び立った後の撮影は大忙しです。気球の向かう方向に走りながら撮影しました。広角だと周りの景色も写し込めるので空を見上げる人々と一緒に写してみました。
翌日は最広角側で撮影したくて夜中から待機しました。何度も来られる場所ではないので少しでもベストなポジションで撮影したいですよね。待つこと数時間、あたりが明るくなり始めたころには濃い霧が発生しました。バルーン競技は風があったり見通しが悪いとすぐに中止になるため祈るような気持ちで待ちました。(実際に前日の午後の競技は風のため中止でした)
祈りが届いたのか開催時刻前にはなんとか霧が晴れました。ベストポジションではないものの超広角を生かしたアングルで撮影ができ満足でした。このレンズの画角でも入りきらないほど広範囲に気球が飛んでいました。X-H2Sの高速連写(電子シャッターで最大40コマ/秒)とCFexpress Type Bカード採用による強力なバッファにより安心して連写することができました。
本レンズではありませんが動画撮影したものもありますのでご覧ください。時々私が横で撮影している手が入っていますがご勘弁ください(笑)
実は佐賀県ではこの時期にバルーンフェスタと唐津くんちの祭りの両方が開催されます。唐津くんちの初日は夜の巡行が行われました。動きながらの撮影で三脚等は使えず、F2.8で軽量コンパクトなこのレンズがとても役立ちました。レンズ本体に手ブレ補正は搭載されていませんが、X-H2Sの強力なボディ内手ブレ補正と積層型CMOSセンサーによる高速AFのおかげで、ピントを外さずブレなく撮影することができました。
手持ち撮影でも遅いシャッター速度で被写体ブレを生かした躍動感のある表現をすることもできました。
翌日の本祭ももちろん撮影しました。多くの人で賑わっていましたが、巡行ルートが長いので見物客が分散しているため比較的撮りやすいお祭りでした。移動していろいろなポイントで撮影することができて楽しかったです。
祭りの開催される唐津の町は鏡山展望台から一望することができます。扇を広げた形の唐津の町は広角レンズで撮影するとその広がりがよく分かります。
もう一か所話題の場所に行ってきました。福岡県との境にあるこの橋はその景観もさることながら現存する昇開式可動橋としては日本最古のもので、国指定重要文化財にも指定されている貴重なものです。佐賀県、福岡県双方から撮影することができますが今回は太陽と橋を絡めるために西向きに撮影ができる福岡県側から撮影しました。
最後にどこかで星を撮りたいと思い太良町の大魚神社、通称「海中鳥居」に立ち寄りました。満潮から干潮に変わるわずかな時間に浜に下りて撮影した一枚です。月明りがあったので星空はそれなりでしたが月をポイントにして撮影しました。ここでもレンズの明るさの恩恵で、真っ暗なのにオートフォーカスでピントを合わせることができました。ちなみにピントは鳥居に合わせているので星は少しぼやけています。
とてもコンパクトでお手頃価格のF2.8通し超広角ズームレンズ「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」。旅にも持っていきやすいレンズだと思います。このレンズとともにタムロンの18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDがあればほとんどの被写体に対応できるのではないでしょうか。
今回のテストでは絞り開放付近での画質で少し不安は残りましたが、それも一段絞ればしっかりと解像します。特に夜の祭りの撮影でF2.8の明るさと軽量コンパクトなこのレンズが大活躍してくれました。普段使いできるF2.8通し広角ズームが欲しいという方には大変おすすめできるレンズです。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師
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2024年1月9日(火)~1月28日(日)の期間で、新宿 北村写真機店6F イベントスペースにて開催された「フォトカルチャー倶楽部 写真部作品展」。カメラのキタムラが運営する「フォトカルチャー倶楽部(PCC)」の会員が、写真部の活動を通して撮影した渾身の一枚を持ち寄り展示しています。
フォトカルチャー倶楽部は「みんなで新しい写真体験を!」をモットーに活動する入会無料の写真コミュニティです。全国で写真教室を実施しているほか、年間を通して活動する“写真部”では12か月12種類の撮り方・撮影地を講師から教わることができます。毎月撮影会が行われるので、写真の技術を学びつつ、同じ写真部に参加するメンバー同士の交流も深まります。
■フォトカルチャー倶楽部WEBサイト
https://www.npopcc.jp/
3週間に渡って開催される今回の写真展ですが、1週目は「ハッピー写真部」と「北関東満喫写真部」のメンバーによる作品が展示されています。撮影会では参加者みんなが同じ被写体と対峙する一方で、構図や画角など表現方法は人それぞれ個性が現れるのが写真の面白いところ。今回の写真展でも共通の被写体を各々の視点で撮影した様子が分かります。
今年のハッピー写真部は「動きもの」と「スローシャッター」を中心に撮ってきましたから、皆さんそのスキルを上手く活かして撮影してくれたなと感じます。経験を活かした上で、各々の個性が出た作品になっているので見ていて楽しいですよね。
今回の展示では江ノ島で撮った作品を選んだ人が多かったですが、この時の撮影会では「露光間ズーム」をみんなでやってみたんです。こういう撮り方は普段あまりやらないと思いますが、ズーミングの仕方次第で光の写り方が変わってくるので、それこそ十人十色の作品が出来上がったと思います。
私としては、まずその人が「何を撮りたいのか」を考えるのが重要だと常々アドバイスしています。主役を決めよう、ピントを合わせる位置を意識しよう、そしたらそれを撮るためにカメラを設定していくという順序ですよね。みなさんしっかり上達していて、どれもよく撮れていると感じますね。そしてこうやって作品を飾ることで、自分の写真を見返す良い機会にもなったと思います。
今回展示された中から3人の作品をピックアップしてお話を伺いました。
羽田空港での撮影会で撮れた1枚で、飛行機がまっすぐ重なった瞬間を狙いました。前に停まった機体の尾翼がちょうど真ん中に被っており、面白い感じに撮れたと思います。滑走路を移動中の機体なので、連写した中で2機が最もきれいに揃ったタイミングの1枚をセレクトしています。
講師からは白い機体の明るい部分と影になった暗い部分を意識して、メリハリをつけて撮ろうとアドバイスをもらいました。レタッチする際も明暗を強調するようにしています。また、この日は小雨も降るような曇り空だったのですが、モノクロっぽく仕上げたことで一層雰囲気が良く仕上がったと思います。
この日は江ノ電をメインの被写体とした撮影会だったのですが、自分としては何気なく撮れたこの1枚が気に入っています。途中から曇ってきてしまったので、空は入れないように望遠で海を狙って、良いタイミングで立っていた人物を入れてみました。自然体な感じで撮れたのが良かったです。
住んでいるところは海が遠いので、こうやって写真部の撮影会では普段撮ることのない景色が撮れるのは楽しいですね。講師に教わって江ノ電の流し撮りも挑戦したのですが、なかなか上手くいかずほとんど失敗に終わってしまいました。まだまだ撮り方の勉強をしていきたいと思います。
竹がぐっと上に伸びている感じを表現したくて、ローアングルから広角で撮影した1枚です。竹の間から差し込む光も光条で表現できましたし、奥に人物を入れたことも写真のアクセントになったかなと思います。自分ひとりでは気づかないことも、撮影会なら講師の方がこうやって撮るといいよと教えてくれるのでとても参考になりますね。
この若竹の杜は元々行ってみたい場所だったので、ちょうど良く撮影会で行くことができて嬉しかったです。撮影した写真も、こうやってフレームに入れるとまた全然雰囲気が違って、すごくいい感じに仕上がったと思います。
カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部の写真部では、月1回みんなで集まって楽しく撮影会をしています。
写真は1人でも楽しめるけれど、仲間がいるともっと楽しい。
写真部には、世代・性別・地域・国籍を超えて、写真が好きな気持ちで結びつく仲間が集まっています。1年を通してメンバー同士の交流を深め、写真部講師のレクチャーを受けながら継続して写真を学んでいます。
本作品展では、各写真部のメンバーがこれまでの撮影会を通して学んだ成果を発表します。
メンバーの作品1点1点に込められた想いを、ぜひご覧ください。カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部
会期:2024年1月9日(火)~1月28日(日)
会場:新宿 北村写真機店 6F イベントスペース
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目26-14(JR新宿駅東口 徒歩4分)
時間:10:00 ~ 21:00
入場料:無料
※展示作品の入れ替えに伴い、1月15日(月)・1月22日(月)は終日閉場となります。
■ハッピー写真部・北関東満喫写真部(合同)
展示期間:1月9日(火)~1月14日(日) 10:00~21:00
■タムタク写真部
展示期間:1月16日(火)~1月21日(日) 10:00~21:00
■ニチロー写真部
展示期間:1月23日(火)~1月28日(日) 10:00~21:00
クリスマスローズという名前なのだから、クリスマスの時期に咲くのかと思いきや、花が見られるのは1月から3月です。もともとはクリスマスローズの原種であるキンポウゲ科ヘレボルス属ニゲル種はクリスマスの時期に咲き、バラのような美しい花であることから名付けられました。しかし、日本ではニゲル以外のヘレボルス属も含めてクリスマスローズと呼んでいて、それらの開花期が1月から3月でクリスマスを過ぎたあとなのです。そのため、名前にクリスマスとついているのに、早春になってから花が咲くのです。花色は白やピンクのほか緑色をしたものや黒に近い色の花もあります。また、一重咲きのものや八重咲きのタイプが見られます。今回は早春の花壇を彩るクリスマスローズの作品を見ていきましょう。
ピンクや白、緑といった花色のクリスマスローズを多く見かけますが、黒色の品種にも挑戦してみましょう。しかし、花色が地味なので、なかなか作品として仕上げるのが難しいです。そこで、露出を明るめにしつつ、ホワイトバランスを変えて青みを加えてみました。花の黒い部分は青に、葉の緑の部分は水色の色がつきました。また実際よりも明るい露出で撮影しているので、軽やかな印象です。しかし、明るい露出=元気なイメージになるとは限らず、寒色系の色合いを選んだり、花自体が下を向いていたり、小さめに配置するといった要素が入ることで、明るい写真であっても寂しい雰囲気を出すことができます。明るくも寂しい“冬の花らしさ”が感じられるのではないでしょうか。
クリスマスローズは公園の花壇や鉢植えなどで見ることができます。そのため、どのような場所に植えられているかによって、背景選びも決まってきます。写真は花壇に植えられていたクリスマスローズですが、背景に菜の花と桜が咲いていたので、その黄色とピンクを背景にいただきました。背景がうるさくならないように望遠ズームの最望遠側の150mmを選択し、絞りを開けて背景を大きくぼかしました。この色の組み合わせはよく使うのですが、春にぴったりの華やかな色合いですね。クリスマスローズが濃い目のピンク色だったので、背景の色に負けることなく、しっかり引き立ってくれました。
花の背後から強い光が当たった逆光の状態です。私は軟らかな光が好きなので、他の作品を見ても、薄曇りや木陰で撮影されたものがほとんどです。しかし、強い光しかなければ強い光なりの撮り方をしてみましょう。バリエーションを増やすためにも、どんな光であってもそれに合う撮り方を探そうとすることが大切です。光が強い時は露出の選択が難しいのですが、ハイライト部が白飛びしないように露出補正を行います。光が当たった最も明るい部分が白く飛ばない露出を選ぶといいでしょう。花は光が当たって明るいのですが、背景は日陰というシーンでは主役と背景とに明暗差があるので、背景が真っ黒く引き締まってくれます。
主役以外の、画面のほとんどがピンク色のボケで覆われています。これはクリスマスローズの前ボケです。奥の花にピントを合わせつつ、手前の花をぼかしました。前ボケを作るためには長い焦点距離のレンズを選び、絞りを開けます。また、前ボケになる花には近づいて、主役と前ボケにする花との距離は離れているという場所を選びましょう。そして、トンネル型にボケを作るには花と花との狭間を見つけ、その隙間から奥の花を覗くようにピントを合わせてみてください。前ボケを入れる場合は、すっきりとぼかさないとかえって主役の邪魔をしてしまいます。ぼかす花の輪郭がわからないくらいにぼかしましょう。
画面下には前ボケ、上には丸ボケを入れました。ボケというのは画面に軟らかな雰囲気を出すことができます。それにプラスして、下に入れた前ボケには主役の周囲のごちゃごちゃした部分を隠す役割があります。茎や葉を見せなくすることで花だけが目立ってきます。また、背景の丸いボケは木漏れ日をぼかしたものです。キラキラとしたボケはきらめきを感じさせることができます。前ボケ、木漏れ日のボケの両方を入れるにはローポジションかつ、少し見上げるようなアングルで撮る必要があります。ここでは斜面に咲いたクリスマスローズを狙ったので、ローポジションで見上げるアングルがとりやすかったです。
白いクリスマスローズと黒い背景の組み合わせです。色々ある背景のパターンの中でも黒バックは明暗差から、花の白さを引き立ててくれます。黒バックを作るには花と背景とにコントラストが必要です。3枚目の作品でも黒バックを選んでいて、そのときよりもコントラストが弱いシーンだったのですが、背景の林がとても暗かったために花と背景に明暗差が生じて、黒く写りました。加えて、木漏れ日のボケを入れることで単調な黒一色よりも変化が生まれ、ボケが空間を埋めています。丸ボケの配置にも工夫をし、花を包むように配置されるようなポジションを選びました。
早春らしくハイキーに仕上げた作品です。ハイキーとは全体が明るい調子の画像のことを指しますが、ただ露出を明るくすれば成功するわけではありません。選択を間違えれば露出オーバーの失敗写真にもなりかねません。ハイキーと露出オーバーでは主役の階調が残っているか、白飛びしているかで分けることができます。強く光が当たっているところでは花の中にも日向と日陰ができ、暗部を明るくしようと露出を上げると明部が白く飛んでしまいます。一方、日陰や薄曇りの日、弱めの逆光ではコントラストが低いので、暗部を明るくしても明部が飛びにくくなります。1/3EVずつ細かく調整しながら、明部が白く飛ぶギリギリの値を選んでいます。
黒い花は作品として美しく仕上げるのは結構難しいものです。ピンクなど彩りのあるクリスマスローズがある中で、あえて挑戦しようとは思いませんよね。しかし、どんな花でも綺麗に撮ろうと思う気持ちが大切です。1枚目の作品のようにホワイトバランスで色を青く変えてしまうのも手ですが、ここでは背景をシンプルにぼかしました。黒と言っても深い紫色をしているので、同じ寒色系の緑のボケで統一感を出しています。また花の配置にも注目しましょう。3つの被写体があるとき、不等辺三角形を描く配置がお勧めです。上下左右に並ばず、動きが出て、バランスも取れるのです。黒系の色をした花は他の種類でも見られるので、ぜひトライしてみてください。
クリスマスローズは公園の花壇や植木鉢で育てられていることが多いです。花の少ない時期に咲くので、花撮影ファンにとってはありがたい花ですよね。花がうつむいたように咲く、可憐な姿が素敵ですが、花を正面から撮るにはローアングルで撮る必要があるので、撮影時の姿勢がキツくなるのが難点です。地面に寝そべるようにするか、しゃがんでなるべく低く構えましょう。特に前ボケを入れるなら、より低く構えなくてはいけません。可動式の液晶モニターが搭載されたカメラであれば楽な姿勢でローアングル撮影をすることができます。うまく利用してみましょう。
■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。
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植田正治という写真家の不思議な魅力について、ときどき考え込んでしまうことがある。なぜ、私たちはその作品世界に惹かれてしまうのだろうか。生涯を「アマチュア」写真として生きた植田の作品は、時間や場所を超え、今なおファンを獲得し続けている。豊かな創造性の秘密に触れたくて、その歩みをこれからたどり直してみようと思う。
1945(昭和20)年8月15日、日本の第二次世界大戦は終わった。当時の人々の記録には快晴の暑い日だったと書かれている。
大多数の日本国民は、正午にラジオから流された昭和天皇による「終戦の詔書」、つまり玉音放送によって敗戦を知った。長い戦争が終わった直後の虚脱と解放感、あるいは憤まんと喪失感などが複雑に入り混じった、名付け難い感情を人々は味わった。
この日、植田正治は一枚の写真を撮っている。それは自転車の荷台に括りつけた大きなカボチャを写したもので、町並みには人の姿がなく不思議な静寂を感じさせる。見慣れたモノや風景をオブジェに変えてしまうシュルレアリスム的な表現だ。
シュルレアリスムとは、人間の深層意識を浮かび上がらせる芸術だと言われる。だとすれば、これはどんな心性が表れているのか。この一枚について、植田は次のように書いている。
「終戦の知らせは祖母と子どもたちの疎開先(鳥取県)で聞いた。当時、僕は40キロの距離を一日おきに自転車で往復し家族の食料を運んでいた。愛機のライカでもっぱら疎開先の田舎の人たちを撮ってやり、写真と米を交換したりしていた。この大カボチャを撮ったのは、何も終戦を記念しようなどという気持ちではなく、自転車にくくりつけたのを見て、なんの気なしにシャッターを切ったというだけなのだが、今になってみると、それは立派な終戦の記念写真になっている」
1939(昭和14)年に第二次世界大戦が始まって以降、アマチュア写真家たちの立場は戦時体制のなかで急速に苦しくなった。前回に述べたように好きな所で写真が撮れないだけでなく、美を求める芸術写真そのものが否定され、代わりに「報道写真」への転換が推奨された。その報道写真も、客観性に基づく自立した「フォトジャーナリズム」のことではない。それは近代的ヴィジュアルコミュニケーションとしての写真技術の総称であり、プロパガンダもその範囲に含まれていた。その報道写真によって国策の一端を担う、つまり「報道報国」への協力がアマチュアにも求められたのだった。
こうした時代の流れのなかで、植田にも思わぬ役割が与えられた。1940(昭和15)年に結成された全国のアマチュア写真家を糾合した国策団体、「興亜写真報国会」の米子支部長だ。その目的は防諜(スパイ活動の阻止)、出征兵士に送る慰問用写真の撮影、日本の文化の高揚、海外への文化工作などで、米子支部でも地元の生活文化をテーマとしたルポ「雪の生活」などを共同で制作している。
戦時下で求められた報道写真は、当然ながら植田の志向とは大きく違う。だが、立場上もあってか、彼はそれを取り入れようとした。たとえば1942(昭和17)年の『写真文化』(アルス)6月号に掲載された「植田正治作品集(農村に関する連作)」を見ると、報道と芸術写真の接点を探しているのが分かる。田舎の春の風情を感じさせる5枚の組写真はやはり植田調ではあるものの、どこかまとまりを欠いて見える。
『写真文化』12月号には同作に対する評価が掲載されているのだが、それは「技術的には報道写真家のそれには及びませんが、制作意図は敬意を表します」という実にそっけないものだ。この12月号には「わが足跡 植田正治作品集」という「少女四態」を含む一連の代表作が掲載されているだけに、当時の植田の心中が想像されよう。
日米が開戦して2年ほどで戦況が悪化し始めるとフィルムや印画紙などの写真材料が急速に不足し、写真館の仕事は続けられたものの、芸術写真家としての制作は停滞した。愛用していたローライフレックスも手放してライカDIIIを使い始めたのも、興亜写真報国会の仕事で35mm判のフィルムなら入手できたからだ。また配給の食料だけでは間に合わず、慣れないなかで畑も作っている。それでも植田自身はかなり痩せてしまい、2回応召しているのだが、栄養状態不良ということで帰宅させられている。だが家長としては、家族を飢えさせるわけにはいかないのだ。
植田の私生活を見ていくと、3つ年下で女学校を出たばかりの白石紀枝と結婚をしたのは1935(昭和10)年のこと。1937(昭和12)年には長男の汎(ひろし)が誕生し、その後も和子、充(みつる)、亨(とおる)と計4人の子どもを授かっている。三男の亨が生まれたのは大戦末期の1944(昭和19)年だから、暮らしはいっそう大変だったはずだ。
長女の和子の回想によると、敗戦直前には母の実家まで米を貰いに行くことも何度かあったという。紀枝は生後間もない赤ん坊を背負い、手には米の袋を両手に持ち、3人の子どもたちを引き連れて出かけた。乗っている列車が米軍機に空襲を受けたとき、子どもたちをかばいながら「死ぬときはみんな一緒だよね」と紀枝がきっぱり言ったことを和子はよく覚えている 。
子育てに加えて紀枝は写真館の実務も切り盛りし、生涯を通じて植田の作家活動の最も良き理解者であり続けた。もちろん、植田も彼女を深く愛した。2007年に出版された『僕のアルバム』(求龍堂)は、結婚すぐから紀枝をモデルに撮った写真で構成された一冊なのだが、そのすべてに慈しみがあふれているようだ。それが作品であるかどうかに関係なく、シャッターを切ること自体が愛情表現だったように思えてならない。
さて、あのカボチャの写真が撮られた敗戦の日に話を戻すと、疎開中の植田家では玉音放送を終りまで聞いていない。途中、植田の「あー終わった終わった、さあ帰ろ帰ろ」という声に急かされて座を離れたのだと和子は記憶している 。明日がどうなるかも分からない敗戦下ではあったが、家族がそろって、住み慣れた街で暮らせることが何より尊いものだった。
生活が落ち着き始めると、気になるのは写真のことだが、そのたびに植田は絶望に囚われた。「戦争が終わって、もう日本の写真界はだめだと、絶対だめだと、復活は不可能だと私は思った。もう写真は絶対できないと思っていた」 からだ。
だが、そこに一条の光が差し込む。その年の暮れのある日、「朝日新聞」(大阪版)の紙面にごく小さく「朝日写真展覧会」の開催と作品公募の社告を植田は見つけ「ああ、写真ができるぞということで、僕は涙が出た。またできるぞと思った」のだ。植田は薄い新聞を手にしながら、家族や従業員の前で男泣きに泣いたという。
この朝日写真展覧会は翌年2月に大阪の大丸百貨店で開かれている。植田が出品した、髪が風で逆立った幼女のポートレイト「童」は特選に入り、「これでまたやれる」という手ごたえを強く感じた。
この年1月、老舗のカメラ雑誌『カメラ』が復刊したこともアマチュアの心を奮い立たせた。植田も6月号に寄稿した「夏の田園」の冒頭で「何年か振りに平和な初夏であります。久し振りに、せめてカメラの塵でも払ってシャッターの快音をエンヂョイしようではありませんか」と軽快に呼びかけている。
以降、アマチュアの熱気を支えにカメラ雑誌の数は急速に増えていく。1947(昭和22)年に『光画月刊』(光画荘)が復刊、その翌年には新たに『日本カメラ』(日本カメラ社)の前身である『アマチュア写真叢書』(光芸社)や「フォトアート」(研光社)などが創刊された。最大手の『アサヒカメラ』も遅れて1949(昭和24)年に復刊している。
アマチュア写真界が盛り上がりを見せた背景にはカメラ業界の、他の産業分野に先駆けた復活がある。小西六写真工業(現・コニカミノルタ)、千代田光学精工(同上)、マミヤ光機(現・マミヤ・オーピー)、精機光学工業(現・キヤノン)などに加え、日本光学工業(現・ニコン)や高千穂光学工業(現・オリンパス)などの軍需に応えてきた光学メーカーも民生に転換、富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)もカメラ製造に乗り出していた。
敗戦直後から演出写真の制作を再開していた植田を、さらに奮起させたのは銀龍社への参加だった。銀龍社は、かつて中国写真家集団をつくった岡山出身のカメラ雑誌編集者石津良介の呼びかけで1947(昭和22)年に結成された、若いアマチュアとプロとが混在する写真グループだ。後に雑誌メディアで活躍する秋山庄太郎や林忠彦らやカメラ雑誌の編集長を歴任する桑原甲子雄が参加し、そこに植田や岡山の緑川洋一らアマチュアがいた。植田と緑川は会合に参加するために、東京行の夜汽車の床に新聞を引いて座り長い時間を過ごしたという。
銀龍社の活動は短く、わずか2回の展示で終了するのだが、彼らの垣根を超えた交わりは長く続く。そしてこれを母体として『日本カメラ』(日本カメラ社、1950年創刊)や二科会写真部(1953年創設)などが誕生し、戦後の写真界を活性させていくことになる。
この新しい風が植田にとって与えた希望の大きさは、『写真と技術』誌の「銀龍社特集号」に書いた一文からも想像できる。
「日本の写真界に、機智、皮肉、ユーモア、をもった写真が殆どありません。だから僕は、そんな写真を制りたいとおもいます。鹿爪らしい、深刻ぶった写真が、芸術写真という事になって居るなら芸術という言葉をあっさり返上して、僕は、大いに芸術でない写真を制ります」(「林檎」『写真と技術』 富士写真フイルム 1949年)
この言葉通り植田は突き進み、まさに「植田調」の代表作となる作品をこの時期に幾つも発表している。つまり『カメラ』誌11月号に掲載された「子狐登場」から始まり、「パパとママと子どもたち」、「ボクのわたしのお母さん」、「砂丘群像」、「妻のいる砂丘風景」、「砂丘ヌード」そして「ジャンプするボク」などの一連の自画像がそれにあたる。
「子狐登場」に関して、写真評論家の田中雅夫が『アルス写真年鑑 1949年版』で激賞している。田中は前年度のアマチュア写真界を振り返り、植田を「年度中一ばん充実したカメラワークを見せた一人」として位置づけ、「子狐登場」を挙げて、「幻想的なモチーフを自分の表現スタイルによって作画化した」、「作者の精進を示す傑作」だとしている。
確かに「同作」はまさに童画的な作品だ。狐の面を被った少年が、砂浜の向こうからぴょんとジャンプした瞬間を鮮やかに切り取り、プリントの段階で周辺の露光を絞る“ビネット効果”によって印象的に仕上げている。仮面をつけた少年は息子だというから、おそらく植田の次男、後にグラフィックデザイナーとなる充ではないか。
当初、舞台としてイメージされたのは麦畑や菜の花畑だったが、適した場所が見つからず、やっと夕方になって近所の浜辺で撮影されたものだという。だから狐の面が夕陽に照らされて不思議な輝きを放っているのだ。
【後編へつづく】
■執筆者:鳥原学
1965年、大阪市生まれ。近畿大学卒業。ギャラリー・アートグラフを経てフリーになり、おもに執筆活動と写真教育に携わっている。著書に『日本写真史(上・下)』(中公新書)、『教養としての写真全史』(筑摩選書)などがある。現在、日本写真芸術専門学校主任講師、武蔵野美術大学非常勤講師。2017年日本写真協会賞学芸賞受賞。
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今回紹介するのは、レンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」。あまり聞きなれないレンズかもしれませんが、Lensbaby(レンズベビー)シリーズは、アメリカ合衆国オレゴン州に本社を置くLensbaby社が製造するレンズラインナップで、日本では株式会社ケンコー・トキナーの取り扱いで販売されています。
とても癖のあるレンズがラインナップされており、普通のレンズに飽きた方にはとてもハマってしまうレンズです。レンズベビーの数あるラインナップから、今回は流れるような周辺ボケが特徴のティルトレンズ「コンポーザープロII Sweet 50」の特徴とその写りを紹介します。
レンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」の最大の魅力は、とにかく流れるような大きな周辺ボケです。絞りを開けて撮影すると、ボケ過ぎてピントを合わせるのが少々難しいぐらいのレンズで、普通に撮るのが難しいと感じてしまうレンズです。
若干手ごわさも感じるレンズですが、このレンズでしか撮れない世界があり、目で見る日常の風景が大きく変わって撮影できるレンズは、一度使ってみるとその写りにハマってしまうレンズでもあります。
コンポーザープロII Sweet 50 | |
焦点距離 | 50mm(フルサイズ) |
最短撮影距離 | 0.38m(レンズ先端からの距離) |
絞り開放 | F2.5 |
レンズ構成 | 1群2枚 |
ティルト角度 | 0-15°(任意方向) |
絞り羽根枚数 | 12枚 |
フィルター径 | 46mm |
全長x最大径 | 50.8mmx63.5mm |
重量 | 184g |
発売 | 2016年11月 |
今回紹介する「コンポーザープロII Sweet 50」は、正確には「コンポーザープロII」と「Sweet 50 オプティック」のセット商品で、「コンポーザープロII」の部分が筺体でピントリングやティルト機能を有する部分になり、「Sweet 50 オプティック」がレンズユニットになっている組み合わせです。
レンズ部分のオプティックは、単体でも発売されており焦点距離の違うものやボケの効果の違うものが各種ラインナップされています。交換しながら使うことも可能です。
ピントが合う部分はピンポイントになるので、撮影に慣れるまでに少々苦労する場合があります。上手く扱う方法としては、絞りは少し絞ってF4~F5.6あたりにするとピント合わせをしやすくなります。また撮影する際には、ピント拡大確認をしながら撮影をしたほうが良いでしょう。
また最初は、ティルト機能を中央固定にして撮影をした方が安定してピント合わせがしやすいので、レンズの特性に慣れるまではあまりティルトしない方が良いかもしれません。
焦点距離50mmのレンズですが、通常のレンズでは表現できない大きなボケと流れるボケが発生します。今回の撮影はフルサイズ機で撮影をしていますが、レンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」には、フジXマウントやマイクロフォーサーズのマウントもあります。その場合は、焦点距離が変わるのはもちろんのこと周辺の大きなボケの部分はカットされてしまうので、レンズベビーの独特な描写は少しスポイルされてしまいますので、APS-C機やマイクロフォーサーズ機で使用する場合は、少し注意が必要になります。
レンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」で、ミニチュア風の写真撮影にチャレンジしてみました。ミニチュア風の写真を撮るコツは、少し高いところから撮影するのがポイントです。ピントの合う部分がピンポイントになるので、周りの風景が大きくボケて俯瞰してみた景色がミニチュアっぽく見える写りになります。
撮影場所の設定や撮り方などの制限があり、なかなか難しいのですが普段とは違った写真が撮れるのはとても楽しく、試行錯誤しながらレンズを様々な方向に向けてティルト撮影を楽しんでしまいました。
レンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」で撮影して、一番楽しい被写体はイルミネーション。イルミネーションの点光源が大きくボケ、不思議な世界観を写し出してくれます。
ファインダーを覗きピント合わせをする被写体を探しながら、流れるボケを楽しむ時間はあっという間に過ぎていきます。
今回は夜のストリートイルミネーション撮影を気楽に楽しむ為に手持ちで撮影し、ティルト撮影ではなく、レンズをまっすぐ向けて周辺部に流れるボケを作るように撮影をしています。
ピント合わせはマニュアル、ピントの合うエリアは非常に狭く、周辺は大きく流れる個性的なレンズレンズベビー「コンポーザープロII Sweet 50」。オートフォーカスでの撮影に慣れている人には撮影の際の苦労や手間は多くはなりますが、他のレンズでは撮れない不思議な世界を撮影する事ができるレンズです。普通のレンズに飽きた人や、人とは違った撮影をしてみたい人におすすめできるレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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コシナのフォクトレンダー「NOKTON D23mm F1.2 Aspherical Zマウント」は、ニコンDXフォーマット(APS-Cサイズ)のミラーレス機対応の単焦点レンズです。今回は、この大口径準広角レンズの描写性能と魅力に迫るべく、沖縄の街並みをスナップしてきました。
絞り開放での描写は、NOKTONらしくなめらかで柔らか。どんなシーンでもオールドレンズで撮ったような優しさと、少しのノスタルジアを写真にプラスしてくれます。フリンジや周辺光量落ちも見られますが、これは味というもの。本レンズに興味を持つ人は、この描写を好むからこそだと、本レンズに魅力を感じる筆者は思います。
ピントを合わせた構図左の青い装飾から、奥に行くに従ってなだらかにとろけていく様子は、撮影していても体感できるほど。明暗の差があるシーンで少しアンダー目の露出がしっくりくる気がして、今回はそのようなカットを多く撮っていました。
写しすぎない、写りすぎない、掴めるような掴めないような、リアルとアンリアルの境目のような、そんな写真を撮りたいときに持ち出したいレンズです。
絞りを絞るとキリッとした切れ味の良い描写を見せてくれるのが、このレンズのいい意味の二面性です。夕方の空と雲を心地良い抜け感で描いてくれました。沖縄らしい街路樹も、葉っぱの細かい線が丁寧に再現されています。
こちらの写真は絞りF11で撮影。光の当たったビルも、その谷間で影となっている人々も、絞り開放のふんわり感からは信じられないほどのシャープな描写で、硬軟取り混ぜたスナップを撮影したい筆者にとっては、理想的なレンズと言えます。
レンズ構成は両面非球面レンズ1枚、異常部分分散ガラス2枚を採用した6群10枚構成。最新技術の光学性能が、高い解像力を実現させています。
特に絞り開放時の優しく大きなボケと、ピントが合っている面の被写体のディティールの再現性はとても高く、被写体の手触りを思い出せるほど。質感の記憶を呼び戻してくれるレンズは、なかなか貴重と言えるでしょう。
本レンズは電子接点を搭載しているので、対応ボディでしたらカメラのボディ内手ブレ補正(3軸)、ピント合わせサポート機能、Exif情報記録の機能が使用できます。
特にピント合わせサポート機能はとても便利で、ピントが合うとフォーカスポイントの色が赤から緑に変化する枠色変化は、マニュアルフォーカスでピントを合わせているとは思えないほど、シャッターチャンスを逃さない素早いピント合わせを行えます。
同じ被写体を、筆者がスナップでよく使用する絞り値で比較撮影しました。明るさは同じくらいになるように調節しています。
奥の提灯の点光源が丸ボケとなっていますが、F1.2ではボケは大きいものの、画面の隅にあるので丸ではなく楕円形に近くなっています。F2.8まで絞ると、丸に近い形になりました。金属の手摺りの冷たそうな質感や、手前の照明が反射している様子はF4から見て取れるようになり、F8では反射の光の赤い色までしっかりと描写されました。
本レンズの絞り羽根枚数は12枚で、絞り開放時は画面中心部の点光源は円形になり、中心部から遠くなるにつれてレモン型になっていきます。絞っていけばボケは丸に近くなりますが、滑らかさは失われます。自分が演出したいムードに合わせて、絞り開放からF2.8くらいの間の絞りにすると、ちょうど良さそうです。
最短撮影距離が0.18mと短いのも本レンズの特徴で、思っているよりもぐぐっと被写体に近付けます。筆者は絞り開放で、露出アンダー目の表現が気に入ったので、今回はひたすら暗めで点光源のある場所を求めて沖縄の街を彷徨っていました。
スナップ撮影をしていてとても気に入ったのが、小型軽量なサイズとクラシカルなデザインです。F1.2の大口径レンズとは思えないほど小さくて、手のひらにぽんっと乗せてもまだ余るほどのコンパクトさ。長さ45.2mm、重さ240g、フィルター径46mmの数字のスペックよりもさらに小さく感じるので、ぜひ実物を手にとって見ていただきたいです!
デザインも、中古カメラ店の棚から出てきたようなオールドレンズ調のトルクの溝と、懐かしさを感じる数字のフォントは、撮影する楽しみをさらに盛り上げてくれました。
明暗の差があるシーンのコントラストがキリッとして美しいのと、アンダー部の描写が丁寧で質感を感じさせてくれるのが、筆者が本レンズに感じた強い魅力でした。23mmの焦点距離はDX機で使用するとフルサイズ換算で35mmになるので、準広角から標準画角がお好みの方は、MFに慣れていない方でも比較的早く使いこなせるようになると思います。
標準から望遠系での撮影が多い筆者は、あらためて35mmの画角の魅力を感じさせてもらえたレンズでした。特に、オールドレンズっぽい質感の演出ができる点に、筆者の心はぎゅっと掴まれました。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。
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こんにちは。フォトグラファーのtomosakiと申します。
寒い日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
私が住む福井県は、冬になると晴れ間が少なくどんよりとした天気が多くなります。
そんな北陸の冬ですが、最高の楽しみが一つあります。
それが雪です!
今日はtomosaki流の雪の撮影方法をお伝えできればと思います。
撮影方法を解説する前に、まず注意点を説明します。
氷点下での撮影は機材に支障をきたすことが多く、今まで何度も失敗をしてきました。私の失敗談を踏まえて、注意していただきたいことを3つ挙げたいと思います。
1.結露
暖かい場所から寒い場所へ移動した際など、カメラに急激な温度変化があると「結露」が発生します。レンズが水蒸気で曇ってしまうのできれいに撮影できなくなりますし、場合によっては電子回路がショートしたり金属部品が腐食したりと故障の原因になるので、なるべくならカメラやレンズが結露するのは避けたいところです。
また寒がりな私は、まず車内で暖をとり「よし行くぞ」と意気込んで撮影に出ます。そしてしばらく撮影を続けた後、「もう無理!」となり暖かい車内に戻る、を繰り返す撮影スタイルでした。そのような温度変化によってレンズが結露してしまい、決定的な瞬間を撮り逃してしまったこともありました。
結露対策として
・使用前後はカメラレンズをバッグにしまう(温度変化が穏やかになる)
・寒い屋外から暖かい室内/車内に機材を持ち込むときは、徐々に室温にならす
これらに気を付けています。
2.バッテリーの減り
気温が低いとカメラのバッテリーの減りが早くなります。写真を始めたての頃「あれ?なんでもうバッテリーがないんだ?」と雪の中で思っていました。いつもより多めに予備バッテリーを持参したり、暖かいポケットの中にバッテリーを入れるなどして対策をしましょう!
3.雨雪の濡れ
私はカメラを始めたてのとき、なぜか「雪だったらいいかな」とカメラに雪を積もらせて撮影していました。もちろん雪が溶ければカメラが濡れてしまい故障の原因になるため絶対にやめましょう!
今は大切な機材を守るために、雪が降る環境ではカメラにレインカバーを着せて撮影しています。カメラやレンズが濡れている際にレンズ交換を行なうことも故障の原因になるため、タオルなどで表面の水分を拭き取ったあとは十分に乾燥させ、部屋の温度にカメラが馴染むまでメンテナンスは避けましょう。
降っている雪の撮り方を3つのステップで説明します。
1.ストロボを使おう
降っている雪をきれいに撮るにはストロボを焚く必要があります。ストロボの光が雪に当たった瞬間を露光してくれるので、降り積もる雪もしっかりと写し止めることができます。また、雪の粒がストロボの光を反射することで画面上で点光源となり、幻想的な玉ボケとなって写りやすくなります。
カメラに内蔵されているフラッシュでも撮影は可能ですが、それだと光の届く範囲や強さが調整できないため、より表現を追い求めるなら外付けのストロボがおすすめです。私はGodox(ゴドックス)のV1を使用しています。理由としては直感的に操作がしやすいからです。
2.黒色の背景を探そう
こちらの写真だと、黒い背景部分には雪がはっきりと写り、白い自販機のところは雪が写っていないように見えます。雪は白い背景と同化してしまうことが分かると思います。こちらはストロボありで撮影していますが、ストロボを持ち合わせていない時は黒い背景を探すことをおすすめします。
例えばこちらの写真だと、黒い制服と被っている箇所は雪がはっきり写っていますが、白い色調の背景では雪が見えにくく伝わりづらいですよね。ストロボがなくても黒い背景で撮ることにより雪をきれいに撮ることができます。ただ、シャッタースピードが速くないと雪を止めて写すことができないので、自分の思う表現に合わせて雪の降るスピードとシャッタースピードを意識して撮影してみてください。
3.F値を下げよう
レンズの至近距離にある雪ほど前ボケとなって大きく写ります。F値を小さくすればするほどボケは大きくなるので、ぜひ雪を撮影する際はF値を下げてみてください。個人的にはF5より小さいF値で撮影することで、ふわっとした雪の質感を演出することができると思っています。
雪とオールドレンズの組み合わせは特におすすめです。
私が愛用しているレンズはニコンの「AI Nikkor 50mm f/1.4S」。今から40年以上前に発売されたレンズで、現在も中古で購入することができます。現行のミラーレスカメラで使用する場合は、対応するマウントアダプターを介して装着します。
オールドレンズで撮ることによって、その時代の空気感や温度が写真に加わる気がします。
光の滲み方や輪郭の曖昧さがとても気に入っていて、雪の柔らかさを表現するのにぴったりです。
逆光や斜光で撮ることによりオールドレンズ特有のフレアを発生させることができ、幻想的な表現が可能です。
特に雪道の街灯はスポットライトのような役割を果たしてくれるので、ついつい撮りたくなる被写体です。
雪が降り積もった景色は白いキャンパスを想起させます。
私はよく雪景色の撮影を行うときには「この白画用紙に何の色をアクセントに足そうかなと」考えています。
特に雪景色の日の丸構図はポツンと感を引き立てるのでとても気に入っています。
目につくような原色をアクセントにするのもおすすめです。背景が白いことでより濃い色が目を引くので、モデルさんに赤いマフラーを用意してもらうなどしています。
機材がないからそんなすぐには撮れない…という方におすすめなのが「写ルンです」です。
写ルンです×雪の組み合わせも最強です。
夜にフラッシュを使えば、雪が降っている様子を簡単に写真に収めることができます。写ルンですのシャッタースピードは1/140秒なので、吹雪ではない限りこのように雪を撮ることができます。
ただし、一つ注意してほしいのが被写体との距離です。写ルンですのフラッシュの届く範囲は1~3mと言われています。遠ければ遠いほどノイズが乗った写真になるため、できるだけ被写体に近づきましょう。
いかがでしたでしょうか。雪を上手く活用すればグッと雰囲気の良い作品を撮ることができます。寒くて外に出るのが億劫になる季節ですが、ぜひこの記事を参考して雪の撮影に挑戦してみてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
■フォトグラファー:tomosaki
2000年生まれ、福井県出身。現在は福井県と神奈川県の二拠点を中心に活動中。「青春や物語を感じるシーン」をテーマに撮影している。2023年よりフリーランスフォトグラファーとして活動。2020年「東京カメラ部10選U-22 フォトコンテスト」に入選。2022年KADOKAWAより「あの頃にみた青は、」、モッシュブックスより「L&SCAPE 撮りたい世界が地元にある」を出版。
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皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。ショウケースからライカを出して見せてもらうという体験は、いつでも特別な気分が味わえるもの。今日はどんなライカにお目にかかれるのか楽しみです。
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュでライカフェローの肩書を持つ丸山さん。この前は、あの激レアな“段付き”ライカM3(連載vol.002参照)を出してきてくれていろいろ教えてくれたヴィンテージのスペシャリストですから、きっと今回も一筋縄ではいかないライカが出てくるのではないかと思いつつ、気を引き締めてカメラの登場を持ちます。
カウンターの上に、そぉっと置かれたカメラはライカM2のブラックペイントでした。道具感の溢れる精悍な雰囲気と経年変化による個性が魅力的です。最近では世界的にヴィンテージの黒いライカが人気で、東京のカメラ店でも見かける機会が減ってきているのを感じます。それはそれとして、黒塗りのM型ライカってどんなニーズで作られたのでしょう?
歴史を紐解けば戦前の1920年代に発売されたバルナック型ライカはブラックペイントのモデルからスタートしていて、そのライバルとして市場投入されたツァイス・イコンのコンタックスも黒塗りでした。1930年代にコンタックスⅡ型が都会的で洗練されたクロームメッキのボディで登場したことをキッカケにライカも銀色のトレンドに乗り、高級カメラはクローム仕上げという図式が出来上がったという次第です。その流れは戦後も続きます。
このライカM2は、ブラックペイントを施されたモデルとして1958年に500台作られた最初のロットに適合するそうです。その製造番号は948601からスタートしていて、だいたい200台目くらいがこの実機の番号とのこと。主力商品であるクロームのM2が発売されたのは1958年で926***から始まっているのでブラックペイントよりは先にリリースされ、同じ年の後半になってブラックペイントが登場したことになります。
そこで気になったのは、ライカM2より前のモデルで1954年から発売されているライカM3のブラックペイントとの関係です。丸山さんによれば、M3のブラックペイントが製造されたのは公式な記録では959401からスタートするので1959年とのこと。とはいえ、それより前の1958年には一部のカメラマン向けに特別仕様というかプロトタイプ的にペイントのモデルを出しているそうで、ライカ考古学の底なし沼の入り口を覗き見る気分です。
それにしても、このライカM2ブラックペイントは手が頻繁に触れる部分がハゲハゲで地金の真鍮が露出しています。ライカM2の初期型の特徴として、フィルムを巻き戻す際にスプロケットのテンションを解放する装置がライカM3で採用されていたレバー式よりも簡素なボタン式になっているのですが、そのパーツも黒い部分がほとんどない状態です。
私の個人的な印象としては、1920年代に製造された黒塗りのバルナック型ライカでは、ここまで派手にペイントが剥離した個体を見たことがありません。戦争が終わってラッカーペイントの質が悪くなったのか、金属塗装の基本である下地処理に変更があったのか、あるいは故意にペイントを剥がれやすくして地金を露出させることを意図したのか不明ですが、M型ライカのブラックペイント黎明期モデルは剥がれまくっているものが多いです。
黒塗りのM型ライカは、目立たず街に潜むカメラが欲しいという要望が生み出したものなのかもしれません。そうであるならば、ライカM3とライカM2の二者択一なら広角レンズの35mmファインダー枠が出せるスナップシューター向けのライカM2の方である。というニーズがあったのでしょうか? という問いかけに丸山さんは大胆な仮説を披露してくれました。
ライカM2のスプールを引き抜くと、残った軸の部分に切り欠きがあります。これは底蓋を交換して迅速巻き上げを可能にするライカビットMPと連結させるための形状です。ライカビットMPとは1956年から1957年にかけてプロに向けて少数製造されたライカMPというライカM3ベースの特殊なカメラ用のオプションパーツです。ライカMPブラックペイントの外観に合わせ、ライカビットMPにも黒塗りの仕様のものがありました。
そのビットが余ったのではないか? ライカM2はビットに対応できる巻き上げ軸をあらかじめ備えているのを基本の仕様としたけれど、クロームのボディにブラックのビットだと違和感がある。だからブラックペイントのライカM2を出して、黒いライカビットMPの在庫を一掃しようと目論んだのではないか。というのが丸山説の主旨となります。
「このM2に合わせたい、すごく剥がれたビットがあるんですよ」ということで、黒い部分がほとんど残っていないライカビットMPを黒塗りのライカM2に装着させてもらうと、雰囲気もバッチリですごくいい感じです。ビットはペイントがハゲハゲで真鍮の匂いが手に移ってくるほどのコンディション。でも動作はキレがよく、底蓋から飛び出したトリガーを操作することでファインダーから目を離さずに迅速にシャッターを切り続けることができます。
では、この黒塗りのライカM2に合わせるといい感じになると思うレンズは何でしょう?と丸山さんにお薦めを尋ねると、カウンターの上に登場したのは予想どおりブラックペイント仕上げのレンズでした。しかも、このレンズはマウント部分までブラックペイントが施され、真鍮の地金が出ているではないですか!
「M2といえばやはり35mmフレームが入って広角が使いやすくなった機種で、その当時のズミクロン35mm F2、通称8枚玉と呼ばれるブラックペイントで合わせてみました。1959年製のレンズなので、時代的にもほぼ一致しています。ブラスマウントと呼ばれるかなり初期の8枚玉ブラックです」と静かに語る丸山さん。8枚玉のブラックにはいろんなバリエーションがありますが、これはほとんどのパーツがペイント仕上げでなおかつ真鍮製のマウントなのがポイントなのです。
この時代の黒塗りのライカは、実用品としての手ズレが真鍮の地金の景色を生み出していて、日本の陶芸趣味の世界に近いものを感じます。たまたま焼き窯のどこに置かれていたかによって灰を被った釉薬が唯一無二の表情を焼き物に与えるように、どのように扱われたかによってカメラに刻まれていく景色を愛でる。それが黒塗りのライカの真骨頂だと思います。
そんな風に趣味の世界で珍重される前に、このライカは激しくカメラを取り扱わざるを得なかった職業カメラマンの手によって使い込まれた結果、ことさらペイントが剥がれまくったということなのでしょう。「ライカM2は報道写真家のニーズが多かったというから、そういう影響もあるかもしれません」とグラフジャーナリズム全盛期に想いを馳せる丸山さん。黒塗りのライカには、世紀を超えたロマンが溢れているのです。
■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカM2ブラックペイント(中古) 価格998万8千円
・ライカビット(中古) 価格572万円
・ズミクロンM 35mm F2 ブラックペイント 初期8枚玉
※価格は取材時点での税込価格
■ヴィンテージサロン コンシェルジュ:ライカフェロー 丸山 豊
1973年生まれ。愛用のカメラはM4 ブラックペイント
■執筆者:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
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前回まで2本の記事に分けて、野鳥に適したカメラCanon EOS R7とスターターレンズとしてRF100-400mm F5.6-8 IS USMの紹介をしてきました。軽くてリーズナブルという事を強調してきましたが、今回は「被写体をもっとアップで撮りたい」という方に向けて話を進めようと思います。
野鳥撮影のスターターセットは「APS-Cなら1.6倍になるから100‐400mmでいい」とここで書いたじゃないか!と思われるでしょうが、人間というもの「よりもっと」という要求がある事をご理解いただきたい。特に野鳥の場合、近づきにくい+小さい+動きが速いという事を考えればどうしても「もっと大きく撮りたい」と思うのは普通のことです。
ただし、600mmや800mmという超望遠レンズは一般的には大きくて重くて高価ですので、なかなか気軽に使うことは難しいですよね。でも使いたいという方に向けて、今回はキヤノンから出ているライト&リーズナブルな2本のレンズ「RF600mm F11 IS STM」「RF800mm F11 IS STM」を紹介しようと思います。2本ともF11でのF値固定という縛りはありますが、色収差を抑えるDOレンズを使用しているにもかかわらずリーズナブルという大きなメリットがあります。
この2本のレンズは沈胴構造になっているため、コンパクトに収納して持ち運ぶことが可能です。撮影時には鏡胴を伸ばして使用します。重さはRF600mm F11 IS STMが930g、RF800mm F11 IS STMが1260gと超望遠レンズながら手持ち撮影を想定してこの重さにしてあるのが特徴の一つです。APS-CセンサーのEOS R7と組み合わせた場合、焦点距離が1.6倍になるため35mm換算でRF600mmが960mm相当、RF800mmが1280mm相当になります。
焦点距離だけを考えたらRF100-400mm F5.6-8 IS USMにエクステンダーを装着するのもいいのですが、その際にテレ側での開放F値がF11(EXTENDER RF1.4x)、F16(EXTENDER RF2x)になるのが難点です。コンパクトな装備で200-800mmをカバーできるのは魅力的ですが、開放F16になるのは大きなデメリットですよね。
またキヤノン担当者曰く、この2本のレンズは一眼レフ用のLレンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」にエクステンダーを装着するよりも画像が美しく描写力は上とのこと。ただ最初に聞いた時には「ホントか?」というのが私の本音でした。
私がこの2本のレンズを初めて使った時のカメラはEOS R5でした。センサーがフルサイズなので焦点距離は600mmと800mm。普段から超望遠レンズを標準レンズと使う身としては、ファインダーをのぞいた時はさほど違和感はなかったのですが、RF800mm F11 IS STMをEOS R7で使ったときには流石に「サイズでか!」と感じました。このレンズが超望遠デビューという人は最初は焦るかもしれませんね。
すでにRF100-400mm F5.6-8 IS USMを使い慣れていて「物足りなさ」感じている方は、RF800mm F11 IS STMを追加して2本体制がいいでしょう。RF100-400mmは持っていないけれど「これ1本で勝負!」という方には、より軽くて機動力の高いRF600mm F11 IS STMが向いていると思います。
ここで改めて使用する際の注意事項とコツですが、撮影をするにはマウント側のロックリングを回転させ、レンズを伸ばしロックをさせると撮影が可能になります。ロックがされていないと「レンズを撮影準備位置にセットしてください」と親切に表示されます。
なくてもいいのですが、個人的には別売のレンズフードを使用することをお勧めします。理由はレンズフードの付け根を左手で持つと、あらま!不思議なほど手持ち撮影時のバランスが良くなります。三脚座周辺を持つ癖のある方はこのレンズフード周辺に持ち替えて使っていただきたい。
気になるのはAFの精度とスピードですが、明るい場所ではまったく問題が無いと言い切りましょう!ただし、F11と暗いのでやはり暗所ではAFの合焦スピードは落ちますが、追従性能に関してはあまり気にならないというのが私の感想です。
空を飛んでいる鳥を撮る場合、あらかじめ鳥に近い位置(バックの山の斜面や木の梢)などにピントを合わせておけばそれほどAFの遅さは感じませんが、最短からいきなりファインダーに入れる場合は、やはり明るいレンズに比べるのは酷なことだと実感。ただし、ファインダーに一度捉えてしまえば追従速度に不満は感じません。
超望遠レンズなので気になるのは「色収差」ですが、それをほとんど感じないのはキヤノンが誇るDOレンズの実力でしょう。絞りを変えることができない割り切ったF値固定の設計で、しかも暗めのF11という値はメーカーの自信と意地だと感じますね。
ただでさえ超望遠レンズなのに、2本とも1.4倍と2倍のエクステンダーが使用できます。メリットとしてはスーパー超望遠レンズになります。反対にデメリットは画角が狭くなることで被写体を狙う難易度が上がります。あわせて陽炎という物理的なデメリットを大きく受けることにもなります。
レンズ内手ブレ補正が搭載されており、シャッター速度換算でRF600mm F11は約5段分、RF800mm F11が約4段分となっていますが、それでもエクステンダー使用時は少しの手ブレも気になりますので、三脚使用は必須になると考えた方がいいでしょう。AFの正確さは2倍のエクステンダーを装着時のF22でも問題はないですが、やはりそれだけ暗いとAFの合焦スピードは落ちることは納得していただきたい。
以上から、エクステンダーは「どうしても」という場合に有効になると考えた方がいいでしょう。
この2本のレンズが発表された時は衝撃的でした。理由は使用する際にズームレンズでもないのにレンズを伸ばすという仕組み。個人的には「なんて格好の悪いレンズだ!」と最初は思ったものです。また見た目もチープで・・・こんなものを作るなんてちょっぴりキヤノンに落胆したことを思い出します。
そんな中、実際に手にして使った感想は「軽い!」でした。そして撮影した画像の美しさにびっくりしてすぐに注文をしました。私と同じように「こんなレンズ」と思って馬鹿にしていた人も多いと思います。ところが「思った以上に使えるいいレンズだ」という噂が流れた途端に、たちまち品切れ状態が続いたレンズとなりました。
私はこの2本のレンズを「ダサきゅんレンズ」と勝手に呼んでいます。「見た目はダサいが写りはきゅんきゅんしちゃう」という意味で、今ではとても気に入って使っています。もちろん最高峰であるRF800mm F5.6 L IS USMというすごいレンズと画質を比べてはいけませんが、「手持ちができるお手頃超望遠レンズ」として十分に魅力的なレンズに仕上がっています。
余談ですが、この記事を書いている最中にキヤノンからRF200-800mm F6.3-9 IS USMが発売されましたので、また使用した感想をShaShaで紹介できたらなぁと思っています。
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員
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