今日からできる、お家で簡単テーブルフォト(スピードライト/ストロボ編)

斎藤勝則

テーブルフォトでストロボ_スピードライトで撮影している画像.JPG

はじめに

 前回は、窓から入る自然光を使ったテーブルフォトの撮り方について解説しました。今回は、スピードライト(ストロボ)を使ったテーブルフォトの撮影方法について解説します。スピードライトについてですが、メーカーによってはストロボや外付けフラッシュと呼ぶメーカーもありますが、今回は呼称をスピードライトに統一して説明します。スピードライトというと、凄く難しく思われるかも知れませんが簡単に使いこなすことができます。窓から入る光に限りがある方、自由に使える時間が夜しかない方にとって、スピードライトが一つあるだけで家の中で楽しく撮影することができます。

作例_1.JPG
▅ 撮影機材:Nikon Z50+NIKKOR Z DX16-50mm f/3.5-6.3 VR SB-300
▅ 補助機材:三脚 レフ板(スチレンボードで自作) 1組 TTL調光コード
▅ 撮影環境:絞り優先オート(f/8 1/60) +1.0EV ISO800 WB(オート1) スピードライトは左側の低い位置から壁バウンスによる発光 ピクチャーコントロール:ビビッド

カメラとレンズについて

 スピードライトについて解説する前に、カメラとレンズについては、前回詳しく解説してありますので「今日からできる簡単テーブルフォトテクニック(自然光編)」をご覧下さい。まずは、レンズ交換ができるデジタル一眼レフカメラかデジタル一眼ミラーレスカメラに、標準ズームかマイクロレンズ、単焦点レンズがあれば撮影をすることができます。

 今回の撮影では、前回と同じくZ50にキットレンズのNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRと新たにZ7とNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sを新たに加えました。このレンズもZ6やZ7のキットレンズとして販売されています。最短撮影距離がズーム全域30cmで、テーブルフォトのように被写体に接近する撮影に適しています。

ニコン Z50製品画像.JPG
Z50と標準ズーム NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
ニコン Z7製品画像.JPG
Z7と標準ズーム NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

スピードライトについて

 テーブルフォトで使用するスピードライトは、プロやハイアマチュアが使うような大型で発光量の大きなものは必要ありませんが、できればTTL調光(TTL自動調光とも呼ぶ)機能が搭載されてると便利です。このTTL調光とは、発光直前にプリ発光させて被写体からの反射光をカメラが測定してスピードライトの発光量を自動的にコントロールする機能になります。最近は、各メーカーからもTTL調光機能を搭載するスピードライトは販売されていますが、外部調光やマニュアル発光機能しか使えなくても問題ありません。

 例えば、マニュアル発光なら撮影距離やカメラの露出により光量を調整する必要があります。今回の撮影では、TTL調光ができるニコンのスピードライトSB-300をメインにSB-5000も使った解説を行います。

スピードライトSB-300製品画像.JPG
スピードライトSB-300

 スピードライトSB-300は、ニコン製品の中でも一番小型で、電源はコンビニでも購入できる単4乾電池2本を使用します。小型で軽量だけでなく、フラッシュヘッドと呼ばれる発光部の角度を120°まで調整することができます。また、スピードライトというと使い方が凄く難しいと思われがちですが、SB-300はカメラに装着してスイッチをONにするだけの簡単操作です。

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スピードライトSB-5000

 スピードライトSB-5000は、プロやハイアマ向けの高機能スピードライトです。カメラから切り離して電波や赤外線通信のコントローラーで、スピードライトを発光させることができます。これにより、自由度が高いライティングができるだけでなく、複数台使用した本格的なライティングによる撮影も行うことができます。電源は、コンビニでも購入できる単3乾電池を4本使用。

TTL調光使用画像.JPG
TTL調光コードを使う

 この他、カメラとスピードライトをコードで繋いで撮影する方法もあります。スピードライトのTTL調光に対応したコードや単純にスピードライトを発光させるための信号を送るコードを使うことで、電波や赤外線通信とほぼ同じようにライティングの自由度は高くなります。

補助機材について

 今回、スピードライトを使う撮影においても補助機材となるレフ板は必要です。作り方などは、前回の「今日からできる簡単テーブルフォトテクニック(自然光編)」で解説していますので、ご覧になって下さい。さらに、三脚は持っている方は使うと撮影がとても楽です。三脚を購入する場合、テーブルフォトを撮影するときだけ使うのであれば、小型の物かトラベラータイプの物が使いやすいと思います。

自作のレフ版画像
自作レフ板

 今後、本格的にテーブルフォトを撮りたいと思っている方は、本格的なレフ板を作ってみてはいかがでしょうか。これは、筆者自作のレブ板ですが文具店で購入できるスチレンボードを使っています。スチレンボードをA4サイズに2枚カットして、その長編の角をテープで止めて二つ折りに開けるようにします。表の片面にはシワを作ったアルミホイルを両面テープで貼り付けています。

 これは、光を強く反射させるときに使用します。1時間程度あれば簡単にできるので、皆さんも是非作ってみて下さい。

スピードライトの基本的なライティング

 スピードライトの撮影において、ライティングはとても重要です。最近では、ソフトボックスやアンブレラが手頃な価格で購入できるので、これらを駆使したいろいろな撮影方法があります。今回は、スピードライト1灯のみの基本的なライティングについて解説します。

 スピードライトの特徴として、発光部の角度を変えることができます。これにより、撮影する画像の雰囲気は大きく変わります。そこで、発光部の角度を変えて発光させるとどのような効果があるのか詳しく見てみましょう。ここでは、Z50にSB-300を装着して撮影をしました。

08-テーブルフォトをストロボ_スピードライトを使って撮影している画像.JPG

フラッシュヘッドが被写体と正対している画像.JPG
フラッシュヘッドが被写体と正対

  これは、スピードライトのフラッシュヘッドを被写体に対して真正面に向けた状態で撮影した画像です。光が当たっている部分はかなり明るく、背後に強い影が出てコントラストがかなり高くなります。いかにもスピードライトを使って撮影したという感じの画像です。

作例_2.JPG
ストレート発光
フラッシュヘッドが天井に向いている画像.JPG
フラッシュヘッドが天井に向いている

 これは、フラッシュヘッドを天井に向け発光させて撮影した画像になります。天井に向けて発光させることで、ストレート発光よりも光が柔らかくコントラストが低くなります。被写体に対して光りが拡散し綺麗に当たるので、食べ物や小物を撮るときによく使われるオーソドックスなライティングです。

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天井バウンス
フラッシュヘッドが正面の壁に向いている画像.JPG
フラッシュヘッドが正面の壁に向いている

 これは、フラッシュヘッドを壁に向け発光させて撮影した画像になります。壁に当たった光が反射して逆光に近い状態になります。壁に反射させた光は、逆光でも柔らかい光になるので、食べ物や小物の撮影に最適なライティングです。特に、被写体に陰影を付けて立体感を出す際に効果的です。

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壁バウンス
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壁バウンス+レフ板
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壁バウンス+レフ板+露出補正

 このように、[壁バウンス]を使うことで窓から入る陽の光を再現することができます。しかし、逆光状態になりますので、影の部分はレフ板を使用したり露出補正で好みの明るさになるよう調整します。

 スピードライトの撮影は、とても奥が深く複雑な多灯ライティングによる撮影方法もありますが、まずはスピードライト1灯を使った基本的なライティングを覚えましょう。特に、テーブルフォトの撮影では光をバウンスさせることが重要です。

綺麗に撮るためのホワイトバランス

 スピードライトを使う場合、ホワイトバランスはオートのままで問題ありません。特に、食べ物は青く色かぶりをすると美味しそうに見えないので注意しましょう。ニコンの場合、ホワイトバランスは[オート0]、[オート1]、[オート2]の3種類ありますが[オート1]を選択して下さい。それぞれの効果については、前回の「今日からできる簡単テーブルフォトテクニック(自然光編)」で説明していますのでご覧下さい。尚、撮影では壁バウンスとレフ板を組み合わせて撮影をしています。

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WB(オート1)
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WB(晴天)
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WB(曇天)

 今回、ホワイトバランスを[オート1]、[晴天]、[曇天]で比較してみると、自然光で撮影したときのようにはっきりと分かるような違いはありませんが微妙に色合いが変化しています。[晴天]では若干マゼンタを帯びていて、[曇天]ではアンバーが強くなる傾向にあります。この3種類のホワイトバランスの中で、被写体に忠実な色再現をしているのは[オート1]です。

綺麗に撮るための画作り設定

 自然光を使ったテーブルフォトの撮影でも解説しましたように、カメラの画作り設定により撮影した画像の雰囲気は大きく変わります。これは、スピードライトを使った撮影においても同じことが言えます。ニコンのカメラには[ピクチャーコントロール]という画作り設定があります。そこで、代表的な[スタンダード]、[ビビッド]、[ニュートラル]について、スピードライトを使って撮影した効果を見てみましょう。他社でも同じような機能を持つカメラがあるので確認して下さい。

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スタンダード
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ビビッド
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ニュートラル

 スピードライトを使った撮影においでも、自然光で撮影したときと同じで、[スタンダード]は色鮮やかでメリハリがあります。また、[ビビッド]は彩度、コントラストが高く、インパクトのある画像になりますが、ライティングによってはコントラストと彩度を補うことができます。さらに、[ニュートラル]は彩度、コントラスト、輪郭強調が抑えられていて、画像処理で自分好みの画像に仕上げるには最適な設定です。

 そして、今回は[シーンモード]の中にある[料理]についても解説したいと思います。この設定は、カメラによって搭載されている機種とそうでない機種があることをご理解下さい。また、カメラメーカーによっては、同じように搭載されていない場合もあります。この[料理]という設定は、食べ物を撮影するとき青い色かぶりを防ぎ、食材の色を忠実かつ色鮮やかに撮影することができます。そこで、お皿にのったドーナツをピクチャーコントロールの[スタンダード]と[ビビッド]、シーンモードの[料理]と比較してみました。

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スタンダード
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ビビッド
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シーンモード[料理]

 [スタンダード]や[ビビッド]も基本的にはドーナツの色を忠実に再現しており、美味しそうに見えます。さらに、シーンモードの[料理]ではドーナツの色が鮮やかになり、[ビビッド]よりもコントラストが低く質感もしっかり再現されています。

 しかも、ホワイトバランスが絶妙にコントロールされていて、お皿の白い部分には色かぶりがありません。シーンモードの[料理]は、カメラの基本設定となる、絞り、シャッタースピード、ホワイトバランス、ピクチャーコントロール等はカメラが決めてくれるので、あとはシャッターボタンを押すだけです。ただし、状況に合わせて露出補正やISO感度は変えることができます。初めて料理やスイーツを撮影するなら、[料理]モードも使ってみましょう。

撮影してみよう!

 今回は、自然光の撮影とは違ってスピードライトを使った撮影になります。撮影する際、発光部の角度には注意しましょう。特に、スピードライトを装着したカメラを手持ち撮影するときは、発光部の角度が微妙に変わることがあるので注意して下さい。また、スピードライトをカメラから外して撮影するときは、スピードライトの位置により反射する光の強さが変わるので、最適な光を得るように位置を調整しながら撮影をしましょう。

 スピードライトでTTL調光による撮影をしたとき、画像が暗いときは露出補正をしますが、それでも暗いときはISO感度を上げることで、画像を明るく調整することができます。そして、撮影する部屋は、間接照明程度の明るさにしておきます。これは、室内照明とスピードライトの光がミックスされるのを防ぐのとライティング効果を出すためです。

スイーツを撮ってみよう!

 誕生日やお祝い事にケーキを1ホールで購入することがあると思います。カットしたケーキよりも大きく、とても画になるのでしっかり撮影したい被写体です。ここでは、イチゴのケーキを斜め上から撮影しています。この撮り方は、ケーキ立体感と飾り付けられたフルーツやクリームのディーテールがよく分かります。

 単純な日の丸構図ですが、ケーキの下に敷く布などで雰囲気作りをすることが大切です。ここでは、スピードライトをカメラに装着して正面の壁を利用して光をバウンスさせるライティングにしています。こうすることで、ホールケーキに立体感が出るだけでなくイチゴの照りにハイライトを作ることができます。 

作例16.JPG
▅ 使用機材:Z50+NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR+SB-300
▅ 補助機材:三脚 レフ板(A4サイズコピー用紙)2組
▅ 撮影環境:絞り優先オート(f/11 1/60) +1.0EV ISO800 WB(オート1)
▅ ピクチャーコントロール:スタンダード
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拡大してみると

 撮影した画像を拡大してみると、壁バウンスによるスピードライトの光がホールケーキの立体感を作り出し、イチゴや生クリームにあるハイライトの照りがシズル感を強調しています。さらに、イチゴの赤が色鮮やかで新鮮さも感じられます。

料理を撮ってみよう!

 これは、ブランチに作ったピザトーストを撮影したものです。画面右後ろにサラダを配置し、ランチョンマットやカトラリーを添えて雰囲気作りをしています。今回の撮影では、焼けたチーズの質感とサラミの肉汁による照りがポイントになります。

 そこで、地味な色になりがちのピザトーストを美味しそうな画像にするためシーンモードの[料理]を選択しました。スピードライトは、カメラに取り付けた状態で壁バウンスによるライティングです。こうすることで、サラミの表面の脂にハイライトを作ることができます。さらに、平面的なピザトーストの表面に陰影ができるので、焼けたチーズのディテールも際だってきます。当然、逆光状態になるためレフ板を使用して影の部分を明るくしました。

作例18.JPG
▅ 使用機材:Z50+NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR+SB-300
▅ 補助機材:三脚 レフ板(スチレンボード自作)2組
▅ 撮影環境:f/8 1/60 ISOオート(6400) WB(オート) ピクチャーコントロール(スタンダード)
▅ シーンモード:料理
作例19.JPG
拡大してみると

 壁バウンスによるライティングで、ピザトーストのチーズの焼き色やサラミの脂の照りがシズル感を演出しています。さらに、地味になりがちなピザトーストも色が鮮やかになり美味しそうです。初めて料理を撮る方や、細かな設定が分からないという方も、このシーンモードの[料理]はお勧めの設定ですので試してみて下さい。

切り花を撮ってみよう!

 季節的に暖かくなってくると、生花店の店先には色とりどりの花が並んでいます。この画像は、生花店で購入した切り花をワイングラス活けたものを撮っています。ここでも、スピードライトの壁バウンスで撮影をしていますが、カメラから外して電波通信により発光させていますが、TTL調光ケーブルを使えば同じように撮影をすることができます。

 ここでは、窓から入る強めの陽の光を再現するため、カメラよりも前にスピードライト配置(手持ち)し画面の左上あたりから壁バウンスさせました。当然、手前の部分が暗くなるのでレフ板を使って明るさを調整しています。

作例20.JPG
▅使用機材:Z7 NIKKOR Z 24-70mm f/4 S SB-5000+WR-10(電波通信用コントローラー)
▅補助機材:三脚 れふ板(スチレンボードで自作)1組
▅撮影環境:絞り優先オート(f/5.6 1/60) +2.0EV ISO400 WB(オート1) ピクチャーコントロール:スタンダード
作例21.JPG
拡大してみると

 スピードライトで逆光の状態を作っているため、レフ板を使うことで花の部分を適度な明るさにすることができました。また、花を活けたワイングラスのデザインされたカット面にハイライトが入り立体感も出ています。このように、スピードライト1灯あるだけで夜でも昼間と同じような状況を作ることができます。

オモチャを撮ってみよう!

 コレクションしていたオモチャも画になる被写体です。画像は、小さくてカラフルなオモチャで、ケースの中に無造作に入っている状態をそのまま撮影しました。それぞれ、小さいオモチャなので陰影を付けてしまうと、重なっている部分のディテールがつぶれてしまいます。この撮影では、スピードライトをカメラに装着した状態で天井バウンスをすることにより光を柔らかくして拡散させます。そのため、コントラストが弱くなる分はピクチャーコントロールの[ビビッド]に設定し補うようにしました。

作例23.JPG
▅使用機材:Z7+NIKKOR Z 24-70mm f/4 S+SB-5000
▅補助機材:三脚 れふ板(スチレンボードで自作)1組
▅撮影環境:絞り優先オート(f/5.6 1/60) +2.0EV ISO200 WB(オート1) ピクチャーコントロール:ビビッド
作例24.jpg
拡大してみると

 重なり合った部分を見ると、天井バウンスしたスピードライトの光が綺麗に拡散しているため、オモチャのディテールもはっきり確認することができます。ただし、天井バウンスをすることでコントラストが低くい画像になります。今回の撮影では、低くなったコントラストを補うため、ピクチャーコントロールの[ビビッド]に設定することで、画像全体にメリハリがついてカラフルなオモチャの色をより鮮やかにすることができました。

まとめ

 今回は、スピードライトを使って撮影する方法を解説しました。昼間は仕事や家事などで忙しく、日中窓から入る光を使って撮影する時間が無いという方が多くいらっしゃいます。でも、夜にちょっとした時間があれば、スピードライトを使ってテーブルフォトを楽しむことができます。

 スピードライトというと、設定が難しくて使いこなせないと思っていた方も、今回使用したような小型のスピードライト1灯でも、十分使えることをお分かりいただけたかと思います。また、解説しましたスピードライトの基本的なライティングを覚えておけば、いつでもでも窓から入る陽の光を簡単に再現することができます。美味しそうにできた夕ご飯や食後のデザート、部屋に飾った花などを撮影してみましょう。

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